1.防災教育について
中学生にも「防災教育」が必要です。
「東日本大震災を受けた防災教育・防災管理等に関する有識者会議」 最終報告(平成24年7月)
を文部科学省は発表しました。
この中の項目にある、
3.東日本大震災の教訓を踏まえた防災教育・防災管理等の展開
(1)防災教育
①防災教育の指導時間の確保と系統的・体系的な整理
において、
「中学校段階では、 地域の過去の災害や他の地域の災害例から危険を理解し、災害へ の日常の備えや的確な避難行動ができるようにする。また、学校、 地域の防災や災害時のボランティア活動の大切さについて理解を 深めるようにする。」
と記載されています。
今回の授業は、
有識者会議の内容とも特に重なっている部分である、
「地域の過去の災害や他の地域の災害例から危険を理解し、災害へ の日常の備えや的確な避難行動ができるようにすること」
に焦点を当てました。
なお、地域の実情や指導段階により、指導内容を変えてください。
2.東日本大震災【中学校】授業案~事実と防災に焦点を当てて~スライドイメージ
(2)スライド全体イメージ
特集 東日本大震災 : 防災情報のページ – 内閣府に資料が掲載されています。
最新の資料については、新聞記事等でご確認ください。
3.東日本大震災【中学校】授業パワーポイントダウンロード
4.東日本大震災【中学校】授業の流れ
〇:教師の発問・指示・説明
△:PC操作
◆:予想される生徒の反応
(1)シーン1東日本大震災
△(東日本大震災の写真を提示)
〇何の写真ですか
◆東日本大震災の写真です
〇そうです。東日本大震災の写真です。
(△次の内容をスライドを通して説明する。)
・2011年(平成23年)3月11日14時46分18秒宮城県沖で発生。
・M9.0で、発生時点において日本周辺における観測史上最大の地震。
・波の高さ10m以上、最大津波約40m。
・東北地方や関東地方の太平洋沿岸部に壊滅的な被害。
2014年(平成26年)1月10日時点で、
・震災による死者・行方不明者18524人。
・建物の全壊・半壊約40万戸。
・ピーク時、避難者40万人以上。
・停電世帯800万戸以上。
・断水世帯180万戸以上。
・被害額20兆円。
・死因のほとんどは、津波による水死。
・福島第一原発による汚染水被害。
・膨大な量のがれき
〇また、東京をはじめとする都市では、課題が浮き彫りになりました。( )にあてはまる語を書きなさい。
(△スライドを提示する。)
・( )に長蛇の列ができた。
・( )が不通になった。
・515万人が( )(4字の漢字で)となった。
◆ノートに書かせた後、列指名などで生徒に答えさせる。
△(帰宅難民を表す写真を提示する。)
〇公衆電話に長蛇の列ができました。携帯電話が通信規制のためほとんどつながらなかったのです。鉄道は不通になりました。安全が確認できるまで、運転できなかったのです。515万人が帰宅難民となりました。バスも電車も車も、渋滞で動けなかったためです。
(2)シーン2海外の震災で人々がとった行動
(△次のスライドを提示する。)
〇海外で震災が起こった時、日本では考えられないことが海外でおこりました。何だと思いますか。
◆列指名などで生徒に答えさせる。
△(暴動や奪い合いを表す写真を提示する。)
〇震災時、海外の物資の奪い合いや暴動が起きました。
中国で起こった四川大地震、M8.0、死者数万人でした。
被災地へ救援物質が届けられたのですが、配布する時に奪い合いになりました。
アメリカのハリケーン「カトリーナ」、1800人以上死者がでました。
この時は、商店からの略奪が横行しました。
しかし、東日本大震災は、略奪、暴動は一切ありませんでした。
これは後に海外から絶賛されることになります。
(3)シーン3南海トラフ地震とは
〇( )にあてはまる語を書きなさい。
(△次のスライドを提示する。)
いつ起こってもおかしくないと言われている、南海トラフ地震。
3つのエリア( )、( )、( )が連動する「南海トラフ三連動地震」のことを言います。
〇3つのエリアとは、「南海」、「東南海」、「東海」エリアです。
被害想定は、
・M9.1の巨大地震。
・津波、大阪では5m。
・死者32万人。
・被害額169兆円。
(校区のハザードマップも提示できればなおよい。)
(4)シーン4日常の心がけ(この授業の柱)
地震が起きる前に考えておくことがあります。
〇( )にあてはまる語を書きなさい。
・各個人が、3日分~1週間分、( )すること。
・家族で、( )ときにどうするかを考えておく。
◆列指名などで生徒に答えさせる。
〇解答は、
・各個人が、3日分~1週間分、水や食料を備蓄すること。
そもそも、食料や水があれば、略奪などは起きないのです。
目安として、水の量、1人、1日3リットル、5人家族だと、105リットル。
食糧は、1週間分、5人家族だと、105食。
・家族で、連絡がつかないときにどうするかを考えておく。
〇また、起きてしまったときにどうするのかも、考えておきます。
・災害用伝言ダイヤル(171)を利用する。
・携帯なければ、各携帯会社の災害伝言板(メール)を使用する。
・メールの通信規制はない場合が多いので、使える可能性大。・ショートメールも同様。
・LINEは、その時になってみないと分からないが、使える可能性が高い。
・各会社に食糧、水を備蓄している場所があります。公共機関、駅や学校、公共の場所などです。そこに行くのもよいでしょう。
・緊急通報の携帯電話の通信規制(最大90%)がある。むやみに家族に電話をかけない(緊急用に使えなくなる)。
・「ブレーカー」を落として逃げることも忘れない。
(5)シーン5まとめ
〇次の内容を説明する。
・被害想定を見て、あきらめることをしない。政府は、危機感をもってもらうために、最大想定している。
・1つづつ対策をとること。
・地震を知ること。
・その上で、行動起こすこと。
・それが、自分、家族、多くの人の命を救うことにつながる。
〇今日の授業の感想を書きましょう。
5.YouTube動画「気仙沼市立階上中学校の卒業式における答辞」
また、東日本大震災の授業では、
「全国に感動を与えた気仙沼市立階上中学校の卒業式における卒業生代表梶原裕太君の答辞」も欠かせない内容です。
TVでも放映されました。
YouTubeでも閲覧可能です(「卒業式答辞・東日本大震災」YouTubeサイトへ)。※リンクが切れている場合は、再度検索してください。
ぜひ、卒業間近の中学3年生に、学年便りとして紹介するのもよいでしょう。
文部科学白書「 全国に感動を与えた気仙沼市立階上中学校の卒業式における卒業生代表梶原裕太君の答辞」(pdfファイル)サイトへ
pdfファイル14ページ中、9ページ目に答辞が全文掲載されています。
文部科学省サイト、東日本大震災への対応>第1節 震災による被害の概況>1 被害の状況
にも、詳細が記載されています。
6.NHK東日本大震災アーカイブス(~証言WEBドキュメント~)は必見
・[東日本大震災アーカイブス]~証言WEBドキュメント~
は必見です。
この中の動画を生徒に見せるのもよいでしょう。
その他の資料
・総務省消防庁「東日本大震災特集」
7.新聞記事で印象に残った部分を読むだけでもいい
東日本大震災に触れること、思いをほんの少しでも伝えること、それが大切だと思います。
2021年3月11日から直前1週間くらいの記事を見て、線を引き、特に伝えたい部分の読み合わせでも十分だと思います。
次の項目に説明を加えました。
8.2021年版中学生へ語り【大切なのは、思いを馳せること】
(2021年3月10日追記)
この1カ月、東日本大震災の新聞記事や報道番組を注視してきました。
生徒へどのように伝えるのかという視点で考えると、当然のことですが、
「被災者の方々に思いを馳せること」
これが、大切です。
被災者の方への本当の心からの思いがなければ、生徒に話をしても効果は半減してしまいます。
新聞記事等の多くの資料を読んで、まずは事実を知ってください。
10年目の節目となる2021年、被災者へ思いを馳せながら、直近の新聞記事に線を引いていきました。
線を引いた主な内容は次の通りです。
・風化させないということ
・10年で起こっていることを知ること
・被災者たちの現在の思い(なぜ自分は生かされているのか)を知ること
・関連死について知ること
・被災者でない私は、被災地を忘れることなく、励まし続けることが大切なこと。これが持続可能な未来を創っていく上でも大切だということ。
・被災者の悩みや苦労は尽きないこと
・被災地域では、力を合わせて復興していること。
・希望もあるということ
・心の復興、一人一人に寄り添い続けることが大切なこと。
生徒へ話しているうちに、涙が出そうになり話せなくなったこともあります。
今年も被災者や東北に住んでいる方に思いを馳せて、生徒たちへ語ろうと思っています。