中学校学習指導案の書き方~目標・評価規準・本時の展開とテンプレート~

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中学校の学習指導案を書こうとして、「何を、どこまで書けばよいのか分からない」「単元の目標と本時の目標の違いが分からない」「評価規準の書き方が難しい」と感じる先生は少なくありません。
特に、初めて研究授業を担当する先生や、採用試験、初任者研修、校内研究などで学習指導案を作成する先生にとって、見慣れない項目が並ぶ指導案は負担の大きいものです。
しかし、学習指導案は、文章を長く書くことを目的とした書類ではありません。
この授業で、生徒に何を学ばせたいのか。
そのために、どのような学習活動を設定するのか。
生徒の学びを、何によって見取るのか。
支援が必要な生徒に、どのような手立てを講じるのか。
これらを整理し、授業者自身と授業を見る人が、授業の意図を共有するための設計図です。
この記事では、中学校学習指導案の基本的な書き方を、単元の目標、評価規準、指導と評価の計画、本時の目標、本時の展開という順番で解説します。
国語、社会、数学、理科、英語、音楽、美術、保健体育、技術・家庭など、教科が違っても共通して使える基本を中心に整理します。
なお、学習指導案の様式は、自治体、学校、教科、研究授業の目的によって異なります。
所属校や教育委員会から指定された様式がある場合は、必ずその様式を優先してください。

中学校の学習指導案とは

学習指導案とは、授業の目標、学習内容、学習活動、指導上の留意点、評価方法などを整理した授業計画です。
学習指導案には、大きく分けて二つの役割があります。
一つ目は、授業者が授業のねらいと流れを整理することです。
二つ目は、授業を見る教職員と、授業の意図や検討点を共有することです。
よい学習指導案は、文章量が多い指導案ではありません。
読んだ人が、
「この単元で何を育てたいのか」
「本時は単元のどこに位置づくのか」
「生徒がどのように学ぶのか」
「何を見て目標の達成状況を判断するのか」
を理解できる指導案です。
研究授業であっても、授業の全てを文章にする必要はありません。
授業の中心となる学びが見えるように、必要な情報を選んで書くことが大切です。

学習指導案を書く前に確認する三つの資料

学習指導案を書き始める前に、次の三つを確認します。

1.中学校学習指導要領と学習指導要領解説

単元で扱う内容と、育成を目指す資質・能力を確認します。
教科書の目次や教師用指導書だけを見て目標を決めるのではなく、学習指導要領と教科別の学習指導要領解説で、その内容がどのように位置づけられているかを確認します。

2.年間指導計画と単元計画

本単元の前に何を学んでいるのか。
この単元の学びが、次のどの学習につながるのか。
年間指導計画の中での位置づけを確認します。
本時だけを切り離して考えるのではなく、単元全体の流れから本時を考えることが重要です。

3.教科別の学習評価に関する参考資料

評価規準を作成するときは、国立教育政策研究所が公開している「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料を確認します。
現在の学習評価は、原則として次の三観点で整理されています。
・知識・技能
・思考・判断・表現
・主体的に学習に取り組む態度
ただし、教科ごとに、各観点の具体的な内容や評価方法は異なります。
他教科の表現をそのまま流用せず、担当教科の資料を確認する必要があります。

中学校学習指導案の基本的な構成

一般的な中学校の学習指導案には、次の項目があります。
1.日時
2.対象
3.授業者
4.場所
5.教科・領域
6.単元名または題材名
7.単元設定の理由
8.生徒の実態
9.教材観
10.指導観
11.単元の目標
12.単元の評価規準
13.単元の指導と評価の計画
14.本時の位置づけ
15.本時の目標
16.本時の展開
17.板書計画
18.使用する教材・資料
19.座席表や教室環境
学校によっては、「単元観・生徒観・指導観」をまとめて「単元設定の理由」とする場合があります。
また、簡略版の指導案では、単元の目標、評価規準、本時の目標、本時の展開だけを記載する場合もあります。
全ての項目を機械的に埋めるのではなく、授業研究の目的に応じて必要な項目を選びます。

1.日時・対象・授業者・場所を書く

最初に、授業の基本情報を書きます。
【記載例】
日時:20○○年○月○日(○曜日)第○校時
対象:第2学年○組 ○名
授業者:○○○○
場所:第○学年○組教室
教科:○
欠席者や特別な配慮が必要な事項を、公開用の学習指導案へ安易に記載しないよう注意します。
生徒の個人情報や診断名などを書く必要がある場合は、校内の取扱い方針に従い、配布範囲を限定します。

2.単元名・題材名を書く

単元名は、教科書の単元名を基本にします。
研究テーマに合わせて独自の単元名を付ける場合もありますが、何を学ぶ単元なのかが伝わる名称にします。
【記載例】
単元名:○
小単元名:○
題材名:○
単元名だけで授業内容が伝わりにくい場合は、副題を加える方法もあります。

3.単元設定の理由を書く

単元設定の理由では、「なぜ、この単元を、このように指導するのか」を説明します。
長く書けばよいわけではありません。
次の三点を押さえると整理しやすくなります。
・学習指導要領上の位置づけ
・教材や単元がもつ教育的な価値
・生徒の実態を踏まえた指導上の重点
【書き方例】
本単元は、中学校学習指導要領第○学年の内容○に位置づけられている。生徒が○○について理解するとともに、○○を根拠として考察し、表現する力を育成することをねらいとしている。本学級の生徒は、○○について基礎的な知識を身に付けている一方、複数の資料を関連付けて考えることに課題が見られる。そこで、○○を比較する活動と、考えを説明し合う活動を設定する。
「この教材は大変すばらしい教材である」といった抽象的な説明だけでは不十分です。
教材のどの特性が、どの資質・能力の育成につながるのかを具体的に書きます。

4.生徒の実態を書く

生徒の実態では、本時の授業設計に関係する情報を書きます。
学級の雰囲気を感想的に書くのではなく、授業づくりの根拠となる事実を示します。
【書く内容の例】
・前時までに身に付けている知識や技能
・既習事項の理解状況
・アンケートや小テストの結果
・発言、記述、話合いに見られる傾向
・学習上のつまずき
・教材や課題への関心
・個別または集団として必要な支援
【避けたい書き方】
本学級は、明るく元気な学級である。
多くの生徒が学習に意欲的である。
一部に学力の低い生徒がいる。
これだけでは、授業設計との関係が分かりません。
【改善例】
前単元の確認問題では、基本的な計算は多くの生徒ができていた。一方、数量関係を式で表す問題では、根拠を説明できない生徒が見られた。また、全体の場での発言は限られているが、ペアで考えを説明する場面では、自分の考えを言葉にできる生徒が多い。そこで、本時では、個人で考える時間を確保した後、ペアで説明し合い、表現を整理してから全体で共有する。
実態を詳しく書きすぎると、個人が特定されるおそれがあります。
公開研究会などで外部へ配布する場合は、個人情報保護への配慮が必要です。

5.教材観を書く

教材観では、その教材や学習内容に、どのような価値や特性があるかを書きます。
【主な観点】
・この教材によって何を理解できるか
・どのような見方・考え方を働かせられるか
・既習事項とどのようにつながるか
・生活や社会とどのように関係するか
・どのような思考や表現を引き出せるか
【書き方例】
本教材は、複数の資料を比較し、共通点と相違点を見いだすことを通して、○○について多面的に考察できる教材である。また、生徒の生活に身近な事象を扱うことで、学習内容と実生活との関連を捉えやすい。
教材観は、教材を称賛する文章ではありません。
その教材を使うことで、どのような学習が可能になるのかを説明します。

6.指導観を書く

指導観では、生徒の実態と教材の特性を踏まえ、どのような指導を行うかを書きます。
【主な内容】
・どのような問いや課題を設定するか
・個別学習と協働学習をどう組み合わせるか
・ICTを何のために使うか
・つまずきに対してどのように支援するか
・学びをどのように振り返らせるか
【書き方例】
導入では、既習事項とのずれが生じる事象を提示し、生徒が問いをもてるようにする。展開では、個人で考える時間を確保した後、複数の考えを比較する活動を設定する。ICT端末は、考えを一斉に提出させるためではなく、異なる考えを共有し、比較するために活用する。終末では、本時の学習内容を自分の言葉で説明させ、次時の課題につなげる。
「グループ活動を行う」「ICTを活用する」だけでは、指導観にはなりません。
その方法を採用する理由と、目標との関係を書きます。

7.単元の目標を書く

単元の目標は、単元を通して、生徒にどのような資質・能力を育成するのかを示します。
基本的には、学習指導要領や学習指導要領解説を踏まえて、次の三つの柱に沿って整理します。
・知識及び技能
・思考力、判断力、表現力等
・学びに向かう力、人間性等
【記載例】
知識及び技能
○○の特徴や仕組みについて理解するとともに、必要な情報を資料から読み取ることができる。
思考力、判断力、表現力等
複数の資料を比較・関連付け、○○について根拠を明確にして考察し、表現することができる。
学びに向かう力、人間性等
○○に関心をもち、学習の見通しをもって課題を追究するとともに、学習を振り返り、考えをよりよくしようとする。
単元の目標を、教師が行うこととして書かないようにします。
【避けたい例】
資料を提示し、考えさせる。
グループで話し合わせる。
これは教師の指導方法であり、生徒が身に付ける資質・能力ではありません。

8.単元の評価規準を書く

評価規準は、単元の目標がどの程度実現しているかを判断するための、生徒の具体的な姿です。
現在の各教科の学習評価は、原則として次の三観点で整理されています。

知識・技能

学習内容を理解しているか。
必要な技能を身に付けているか。

思考・判断・表現

知識や技能を活用して、考え、判断し、表現しているか。

主体的に学習に取り組む態度

学習に粘り強く取り組み、自分の学習を調整しようとしているか。
評価規準は、単に単元の目標の文末を「している」に変えるだけでは不十分な場合があります。
教科別の学習評価参考資料を確認し、その教科で評価する具体的な姿を設定します。
【評価規準の例】
知識・技能
○○の特徴について理解し、資料から必要な情報を読み取っている。
思考・判断・表現
複数の資料を比較・関連付け、○○について根拠を明確にして説明している。
主体的に学習に取り組む態度
学習課題の解決に向けて粘り強く取り組み、学習の途中や終末に自分の考えや方法を振り返り、改善しようとしている。
「主体的に学習に取り組む態度」を、挙手の回数、提出物を出したか、教師の指示に素直に従ったかだけで評価しないことが重要です。
生徒が学習課題に粘り強く取り組む姿と、自分の学習方法や考え方を調整しようとする姿を、単元の中で見取ります。

9.単元の指導と評価の計画を書く

単元の指導と評価の計画では、単元全体を見通して、各時間の学習内容と評価場面を整理します。
【基本的な項目】
・時数
・主な学習内容
・学習活動
・評価する観点
・評価方法
・記録に残す評価か、指導改善に生かす評価か
【記載例】
第1時:既有の知識を確認し、単元の学習課題を設定する
第2時:資料Aと資料Bを比較し、それぞれの特徴を整理する
第3時:複数の資料を関連付け、課題について考察する
第4時:考察した内容を説明し合い、考えを修正する
第5時:単元の学習をまとめ、課題に対する考えを表現する
全ての時間で、三観点全てを記録に残す必要はありません。
単元のまとまりの中で、どの場面なら、生徒の学びを適切に見取れるかを考えます。
評価材料を増やしすぎると、評価すること自体が目的になり、生徒へのフィードバックや授業改善に使う時間が失われます。
評価場面を精選し、何のために評価するのかを明確にします。

10.本時の位置づけを書く

本時の位置づけでは、本時が単元全体の何時間目に当たり、前時と次時にどのようにつながるかを示します。
【記載例】
本時は、全5時間の第3時に位置する。前時までに、生徒は資料Aと資料Bの特徴を個別に整理している。本時では、二つの資料を関連付けて考察する。次時は、本時の考察を他者と共有し、根拠や表現を修正する。
単に「5時間中の3時間目」と書くだけでなく、本時の役割を書くと、単元の流れが伝わります。

11.本時の目標を書く

本時の目標は、授業終了時に、生徒がどのような姿になっていることを目指すのかを示します。
【基本形】
○○を通して、○○することができる。
【記載例】
二つの資料を比較・関連付けることを通して、○○が変化した理由を、根拠を明確にして説明することができる。
目標には、次の三点が入っていると分かりやすくなります。
・何を通して学ぶのか
・何を理解し、考え、できるようになるのか
・どのような姿を目指すのか
【避けたい例】
グループ活動を通して、理解を深める。
「理解を深める」だけでは、何をもって達成と判断するのかが分かりません。
【改善例】
異なる考えを比較する活動を通して、○○と○○の関係を、具体例を挙げて説明することができる。

12.本時の評価規準を決める

本時の評価規準は、本時の目標と対応させます。
【本時の目標】
二つの資料を比較・関連付けることを通して、○○が変化した理由を、根拠を明確にして説明することができる。
【本時の評価規準】
二つの資料を関連付け、○○が変化した理由を、資料中の事実を根拠として説明している。
目標と評価規準がずれていると、授業で目指したこととは別のことを評価してしまいます。
本時の目標。
中心となる学習活動。
評価規準。
評価方法。
この四つがつながっているかを確認します。

13.評価方法を具体的に決める

評価方法には、次のようなものがあります。
・ワークシート
・ノート
・レポート
・作品
・実技
・実験や観察の記録
・発表
・話合いの記録
・ペーパーテスト
・パフォーマンステスト
・ICT端末への提出物
・行動観察
重要なのは、「ワークシートで評価する」と書くだけで終わらないことです。
ワークシートのどの記述を見るのか。
どのような姿なら、おおむね満足できると判断するのか。
努力を要する生徒に、どのような支援を行うのか。
そこまで考えます。
【記載例】
評価方法:ワークシートの記述
おおむね満足できる状況:二つの資料を関連付け、変化の理由を資料中の事実を用いて説明している。
努力を要する状況への支援:二つの資料から変化している部分へ線を引かせ、「何が、どのように変わったか」を整理する補助発問を行う。

14.本時の展開を書く

本時の展開は、学習指導案の中心となる部分です。
一般的には、次のような表にします。
・時間
・学習活動
・予想される生徒の反応
・指導上の留意点と支援
・評価規準と評価方法
授業を、導入、展開、終末の三段階に整理すると書きやすくなります。

導入

既習事項を確認する。
生徒が問いや課題をもつ。
本時の学習課題を共有する。
学習の見通しをもつ。

展開

個人で考える。
資料を読み取る。
観察や実験を行う。
ペアやグループで考えを共有する。
複数の考えを比較する。
考えを修正・更新する。

終末

本時の学びを整理する。
学習課題に対する考えをまとめる。
目標の達成状況を確認する。
学び方を振り返る。
次時への問いをもつ。
時間配分は、授業時間に合わせて現実的に設定します。
50分授業に、説明、個人思考、グループ活動、発表、振り返りなどを詰め込みすぎると、一つ一つの活動が浅くなります。
本時の目標達成に必要な活動を優先します。

15.学習活動は生徒を主語にして書く

学習活動の欄には、生徒が何をするのかを書きます。
【教師を主語にした表現】
資料を提示する。
考えさせる。
発表させる。
【生徒を主語にした表現】
資料から変化している箇所を読み取る。
二つの資料の共通点と相違点を整理する。
考えと根拠をペアで説明し合う。
複数の考えを比較し、自分の説明を修正する。
学習活動を生徒の具体的な行動として書くことで、授業中に何が起きるのかが見えやすくなります。
ただし、「話し合う」「発表する」だけでは不十分です。
何について話し合うのか。
何を比較するのか。
話合いを通して何を明らかにするのか。
学習内容まで書きます。

16.指導上の留意点を書く

指導上の留意点には、教師が行う支援や、授業を成立させるための工夫を書きます。
【書き方例】
・既習事項を確認できるよう、前時の板書を提示する。
・課題を捉えにくい生徒には、二つの資料の異なる箇所へ着目するよう促す。
・自分の考えをもってから交流できるよう、最初に個人で考える時間を確保する。
・発言だけでなく、ワークシートや端末上の記述からも生徒の考えを把握する。
・異なる考えを比較できるよう、根拠の違いが分かる順番で意見を取り上げる。
・早く課題を終えた生徒には、別の根拠がないか検討するよう促す。
「机間指導を行う」「適宜支援する」だけでは、具体的な手立てが伝わりません。
何を見取り、どのような状態の生徒に、どのように支援するのかを書きます。

17.予想される生徒の反応を書く

予想される生徒の反応は、授業者が望む正解だけを書く欄ではありません。
生徒がどのように考える可能性があるかを予想し、その反応に対する手立てを考えます。
【記載する内容】
・目標につながる考え
・不十分だが価値のある考え
・よくある誤解
・既習事項に基づく予想
・考えが進まない場合の反応
【記載例】
・資料Aだけを根拠として説明する。
・二つの資料の変化には気付くが、関係を説明できない。
・○○が原因だと考える。
・複数の要因が関係すると考える。
実際の授業では、指導案に書いた通りの反応が出るとは限りません。
予想を生徒へ当てはめるのではなく、授業中の反応を丁寧に見取り、必要に応じて授業を調整します。

18.「個別最適な学び」と「協働的な学び」を具体化する

学習指導案に「個別最適な学び」「協働的な学び」と書くだけでは、授業の姿は見えません。
個別最適な学びでは、例えば次のような手立てが考えられます。
・複数の資料や課題から選択できるようにする
・補助資料やヒントを準備する
・自分の理解度に応じて学習方法を選べるようにする
・学習の途中で自分の考えや方法を振り返らせる
・読み上げ、拡大、入力補助などICTの機能を活用する
協働的な学びでは、例えば次のような活動が考えられます。
・異なる考えを比較する
・役割を分担して情報を集める
・互いの説明を聞き、考えを修正する
・一人では気付かなかった視点を得る
全員を同じ方法で学ばせることが個別最適な学びではありません。
また、机をグループにして会話させるだけで、協働的な学びになるわけでもありません。
一人一人の学びを充実させることと、他者との関わりによって学びを深めることを、授業の目標に応じて組み合わせます。

19.ICT活用は目的から考える

「一人一台端末を使うこと」を目的にしないようにします。
ICTを使うことで、何が可能になるのかを考えます。
【ICT活用の例】
・複数の資料を拡大して比較する
・考えを一覧にして違いを可視化する
・実験や運動を撮影し、繰り返し確認する
・個別の進度に応じた資料を選択する
・共同編集によって考えを整理する
・学習履歴を振り返る
・読み上げや文字入力支援を利用する
紙の方が目的を達成しやすい場合は、紙を使って構いません。
ICTを使用するかどうかではなく、生徒の学びにどのような効果があるかで判断します。

20.支援が必要な生徒への手立てを書く

学習指導案では、全体への指導だけでなく、学習上の困難を抱える生徒への支援も考えます。
【手立ての例】
・学習課題を短い言葉で示す
・作業手順を図や番号で示す
・記述例や文の型を提示する
・課題を小さな段階に分ける
・選択肢を用意する
・座席や活動人数を調整する
・読む、書く、聞く、話す方法を複数用意する
・教師や支援者が個別に確認する
・学習時間を調整する
ただし、指導案へ個人名や診断名を記載する必要はありません。
授業の中で、誰にとっても利用しやすい支援として準備できるものは、全体へ提供する方法もあります。

21.終末の振り返りを感想だけにしない

授業の最後に、
「今日の授業で分かったことを書きましょう」
とするだけでは、目標の達成状況を把握しにくいことがあります。
振り返りでは、本時の目標に対応した問いを設定します。
【振り返りの例】
・今日の課題に対する自分の考えを書きなさい。
・最初の考えと、授業後の考えは、どのように変わりましたか。
・どの資料や意見が、自分の考えを変えるきっかけになりましたか。
・まだ説明できないことや、次に調べたいことは何ですか。
・課題を解決するために、自分が工夫したことを書きなさい。
振り返りは、感想文を書かせる時間ではありません。
生徒が学習内容と学び方を捉え直し、教師が次の指導を考えるための情報を得る時間です。

22.板書計画を書く

板書計画は、黒板をきれいに使うためだけのものではありません。
授業の中で、生徒の思考がどのように進むかを可視化するために作ります。
【板書計画に入れる内容】
・本時の学習課題
・資料や条件
・生徒の考え
・考えの共通点や相違点
・重要な語句
・学習課題に対するまとめ
・次時につながる問い
ICTで資料を提示する場合も、授業後に何を残すかを考えます。
画面を次々と切り替えるだけでは、生徒が授業全体の流れを振り返れない場合があります。
黒板、電子黒板、端末、ワークシートの役割を整理します。

23.学習指導案でよくある失敗

項目を埋めることが目的になっている

様式を完成させることに集中し、授業で何を目指すのかが曖昧になっています。
最初に、単元の目標と本時の目標を明確にします。

活動が多すぎる

ペア活動、グループ活動、ICT、発表、振り返りなどを詰め込みすぎると、学びが浅くなります。
本時の目標達成に必要な活動を選びます。

目標と評価がずれている

目標では説明する力を求めているのに、評価は用語を覚えているかだけになっている場合があります。
目標、活動、評価規準、評価方法のつながりを確認します。

生徒の反応を決めつけている

「生徒は必ず驚く」「活発な意見交換が行われる」といった表現は避けます。
実態と教材に基づき、複数の反応を予想します。

「主体的な態度」を挙手や提出だけで評価している

教師にとって扱いやすい行動だけで判断せず、課題への粘り強い取組と、学習の自己調整を見取ります。

ICTを使うことが目的になっている

端末を使ったことではなく、端末によって学習がどう改善されるかを書きます。

指導案が長すぎて授業の中心が見えない

授業の意図を説明するために必要な情報へ絞ります。
文章を増やすより、目標と手立ての関係を明確にします。

最短で学習指導案を書く手順

時間が限られている場合は、次の順番で書くと整理しやすくなります。
1.学習指導要領と解説で単元の位置づけを確認する
2.単元終了時に目指す生徒の姿を決める
3.単元の目標を書く
4.単元の評価規準を設定する
5.単元全体の学習活動を並べる
6.本時の位置づけを決める
7.本時の目標と評価規準を書く
8.目標達成に必要な中心活動を決める
9.導入、展開、終末を組み立てる
10.つまずきへの支援と評価方法を書く
11.目標、活動、評価のつながりを確認する
12.不要な文章や活動を削る
本時の展開から書き始めると、活動を並べただけの授業になりやすくなります。
最初に、単元と本時の目標を決めることが重要です。

中学校学習指導案の簡易テンプレート

以下は、教科を問わず使える簡易版です。
学校指定の様式がある場合は、その様式へ内容を移してください。

1.基本情報

日時:
対象:
授業者:
場所:
教科:

2.単元名・題材名

3.単元設定の理由

学習指導要領上の位置づけ:
教材の特性:
生徒の実態:
指導上の重点:

4.単元の目標

知識及び技能:
思考力、判断力、表現力等:
学びに向かう力、人間性等:

5.単元の評価規準

知識・技能:
思考・判断・表現:
主体的に学習に取り組む態度:

6.単元の指導と評価の計画

時数:
主な学習内容・活動:
評価する観点:
評価方法:

7.本時の位置づけ

全○時間中の第○時
前時とのつながり:
次時とのつながり:

8.本時の目標

9.本時の評価規準

10.本時の展開

時間:
学習活動:
予想される生徒の反応:
指導上の留意点・支援:
評価規準・評価方法:

11.板書計画

12.使用する教材・資料

13.教室環境・座席配置

中学校学習指導案の最終確認チェックリスト

提出や研究授業の前に、次の項目を確認します。
・学校指定の様式を使用しているか
・学習指導要領と解説を確認したか
・単元の目標が資質・能力として書かれているか
・評価規準が担当教科の参考資料に基づいているか
・単元の目標と評価規準が対応しているか
・本時が単元全体の中に位置づいているか
・本時の目標が具体的な生徒の姿になっているか
・学習活動が生徒を主語にして書かれているか
・中心となる活動が本時の目標につながっているか
・評価方法が具体的に書かれているか
・努力を要する生徒への支援を考えているか
・活動を詰め込みすぎていないか
・ICTを使う目的が明確か
・個別の支援と協働的な学びが具体化されているか
・生徒の個人情報が不用意に記載されていないか
・誤字、時数、日付、学級名を確認したか

学習指導案についてよくある質問

学習指導案は詳しく書くほどよいですか

詳しく書くこと自体が目的ではありません。
授業の目標、学習活動、指導上の手立て、評価の関係が伝わることが重要です。
日常の授業では簡略な指導案、研究授業では詳細な指導案というように、目的に応じて使い分けます。

本時の目標は一つに絞るべきですか

原則として、本時の中心となる目標が分かるようにします。
一時間の授業で多くの資質・能力を同時に評価しようとすると、授業の焦点が曖昧になります。
単元全体で育成する資質・能力を整理した上で、本時で特に重視するものを明確にします。

毎時間、三観点全てを評価する必要がありますか

全ての時間で、三観点全てを記録に残す必要はありません。
単元全体の中で、それぞれの観点を適切に見取れる場面を設定します。
授業中の評価には、記録に残す評価だけでなく、その場で支援や授業改善へ生かす評価もあります。

「主体的に学習に取り組む態度」は、どう評価しますか

発言回数、忘れ物、提出の速さだけで評価するものではありません。
単元の学習に粘り強く取り組む姿と、自分の考え方や学習方法を振り返り、調整しようとする姿を見取ります。
振り返りの記述、課題への取組過程、考えの修正など、複数の情報をもとに判断します。

学習指導案には、生徒観・教材観・指導観が必ず必要ですか

様式によります。
詳細な研究授業では記載する場合が多いですが、日常の授業や簡略指導案では省略されることもあります。
ただし、項目として書かなくても、生徒の実態、教材の価値、指導の方針は授業設計の中で考える必要があります。

他校の学習指導案をそのまま使ってもよいですか

構成や表現を参考にすることはできますが、そのまま使うことは適切ではありません。
生徒の実態、年間指導計画、教科書、学校の研究主題などが異なるためです。
また、公開されている指導案にも著作権があります。
引用する場合は、必要な範囲にとどめ、出典を明示します。

次期学習指導要領に向けて考えること

2024年12月、文部科学大臣から中央教育審議会へ「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について」が諮問され、次期学習指導要領に向けた検討が始まりました。
2026年7月時点では、総則・評価、各教科、情報・技術、特別支援教育、不登校児童生徒に係る特別の教育課程などについて、専門部会やワーキンググループで審議が続いています。次期学習指導要領の内容は、まだ確定していません。したがって、現在作成する学習指導案は、現行の学習指導要領と三観点による学習評価に基づいて作成することが基本です。検討中の用語や制度を、決定事項として先取りしないよう注意する必要があります。
一方で、現在示されている諮問や論点整理からは、これからの授業づくりで重視される方向性を読み取ることができます。

1.活動ではなく、学習後に残るものを考える

次期学習指導要領に向けた検討では、各教科の中核的な概念を分かりやすく構造化し、個別の知識や技能を関連付けた「統合的な理解」と、複数の思考力・判断力・表現力等を組み合わせて働かせる「総合的な発揮」を明確にすることが検討されています。
これは、学習指導案に新しい用語を書き加えればよいということではありません。
授業後に、生徒の中へ何が残るのか。
学んだ知識を、別の課題や生活場面でどのように使えるようにするのか。
複数の知識や考え方を、どのように関連付けるのか。
学習指導案を作成するときには、活動の種類よりも、学習によって生じる理解の深まりを考える必要があります。
例えば、「グループで話し合う」「端末で調べる」「発表する」という活動だけを並べても、深い学びになるとは限りません。
話合いを通して、どの考えとどの考えを比較するのか。
調べた情報を、どのような基準で選び、関連付けるのか。
発表後に、自分の考えをどのように修正するのか。
活動の先にある思考や理解を、学習指導案に示すことが重要です。

2.一時間の授業よりも、単元全体を設計する

次期学習指導要領に向けた検討では、各時間で学習する個別の知識や技能を、単元全体の中で関連付けていくことが重視されています。
一時間ごとに、
「今日は、この内容を教える」
「次の時間は、別の内容を教える」
と分断して考えるのではなく、単元終了時に生徒が何を理解し、何ができるようになるのかを先に考えます。
その上で、
どの時間で基礎となる知識や技能を身に付けるのか。
どの時間で知識を関連付けるのか。
どの時間で複雑な課題に活用するのか。
どの時間で自分の理解を振り返り、修正するのか。
という流れを設計します。
2026年6月の総則・評価特別部会資料でも、「統合的な理解」「総合的な発揮」と単元目標を参照しながら、各時間の学習活動を構想する考え方が例示されています。
今後の学習指導案では、詳細な一時間の展開だけでなく、単元全体で資質・能力がどのように深まるのかを示すことが、さらに重要になると考えられます。

3.個別最適な学びと協働的な学びを「形式」にしない

現行の学習指導要領の下では、「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実が進められてきました。
一方、次期学習指導要領に向けた論点整理では、学習形態だけが強調され、「主体的・対話的で深い学び」につながっていない場合があることも課題として挙げられています。
個別最適な学びは、生徒を一人ずつ別々に学ばせることではありません。
協働的な学びも、毎時間グループ活動を行うことではありません。
生徒が自分の理解状況に応じて、資料、方法、時間、支援などを選べるようにする。
一人で考える時間を確保した上で、他者の考えと比較する。
他者との対話を通して、自分の考えを修正する。
必要な場面では教師が明確に説明し、方向づける。
このように、学習の目的に応じて個別の学び、教師による指導、協働的な学びを組み合わせることが必要です。
学習指導案には、「個別最適」「協働的」とだけ書くのではなく、生徒が何を選び、誰と何について関わり、それによって学びがどう深まるのかを具体的に記載します。

4.デジタルと生成AIを、学習の基盤として捉える

次期学習指導要領に向けた諮問では、デジタル学習基盤を前提とした資質・能力の示し方、情報活用能力の抜本的な充実、生成AIの活用などが検討事項に挙げられています。
これからの学習指導案では、ICTを使うか使わないかという二者択一ではなく、学習の目的に応じて、紙、対面での対話、実物、体験、デジタル教材、端末、生成AIなどを使い分ける視点が必要です。
生成AIを使って文章を作成させるだけでは、学びになりません。
生成された情報は正確か。
根拠は示されているか。
別の立場から見るとどうなるか。
自分の考えとどこが同じで、どこが違うか。
著作権や個人情報の問題はないか。
生成AIの出力を批判的に吟味し、自分の判断と表現につなげる学習を設計する必要があります。
また、ICTは教師が教材を提示するためだけの道具ではありません。
読み上げ、文字の拡大、入力補助、学習履歴の確認など、多様な生徒が学習へ参加するための基盤にもなります。
学習指導案には、使用する機器名だけでなく、デジタルを使う目的と、生徒の学びにもたらす効果を書きます。

5.多様な生徒が参加できる授業を設計する

次期学習指導要領に向けた検討では、不登校傾向、学習面や行動面での困難、特定分野の才能、日本語指導の必要性など、教室にいる生徒の多様性を前提として、柔軟で包摂的な教育課程をどのように実現するかが重要な論点となっています。
学習指導案に書かれた一つの活動へ、全員が同じ方法、同じ速さ、同じ表現方法で参加できるとは限りません。
文章を読んで理解する生徒。
図や映像によって理解しやすい生徒。
考えを話すことはできても、文章で書くことに時間がかかる生徒。
一斉の話合いでは発言しにくいが、個別のやり取りでは考えを表現できる生徒。
さまざまな生徒がいます。
資料の提示方法を複数用意する。
課題を段階に分ける。
考えを表す方法を選べるようにする。
補助資料やヒントを準備する。
個人、ペア、グループ、教師との対話を使い分ける。
合理的配慮が必要な生徒には、個別の手立てを講じる。
このような選択肢を、授業の目標を下げることなく設計します。
「全員に同じことをさせること」と「全員の学びを保障すること」は同じではありません。

6.学習評価を、成績を付ける作業だけにしない

次期学習指導要領に向けた諮問では、学習評価の在り方や、子どもによる学びの自己調整と教師の指導性との関係も検討されています。
現時点では、学習指導案の評価規準は、現行の三観点に基づいて作成します。
ただし、評価規準や評価材料を増やしすぎないことも重要です。
授業中に全ての生徒を、全ての観点で、細かく記録しようとすれば、教師が生徒を見る余裕を失います。
本時では何を見取るのか。
単元のどの場面で記録に残すのか。
その評価を、次の指導や生徒へのフィードバックにどう生かすのか。
評価の目的を明確にします。
また、生徒自身が、
何を理解できたのか。
どこでつまずいたのか。
どのような方法が有効だったのか。
次に何を改善するのか。
を考えられるようにすることも必要です。
教師が評価するだけでなく、生徒が自分の学習を捉え、調整するための評価を授業の中へ位置づけます。

7.教師が持続できる授業設計にする

次期学習指導要領に向けた検討では、教育課程の実施によって教師へ過度な負担や負担感が生じないようにすることも、主要な論点に位置づけられています。
よい授業をつくるために、毎時間、長大な学習指導案、複雑なワークシート、多数の評価記録、特別なデジタル教材を作成し続けることは現実的ではありません。
既存の教材を生かす。
教科書を丁寧に研究する。
学校内で教材を共有する。
単元で評価する場面を精選する。
効果の低い活動や重複する内容を減らす。
教師が生徒を見る時間を確保する。
こうした視点も、授業の質を支えます。
2026年6月の総則・評価特別部会では、カリキュラム・マネジメントについて、手段そのものを目的化せず、学校教育目標の実現に向けて、教育課程の編成・実施、評価・改善を循環させる考え方が検討されています。
学習指導案についても、文書を完成させることを目的にせず、授業の課題を明確にし、実施後の改善へつなげるために使う必要があります。

次期学習指導要領を待たずに始められること

次期学習指導要領に向けて必要なのは、検討中の新しい用語を学習指導案へ並べることではありません。
単元終了時に、生徒へどのような理解を残したいのかを明確にする。
個別の知識や技能を関連付け、別の場面で活用できるようにする。
生徒が考え、選択し、他者と関わりながら学べるようにする。
デジタルと対面、個別と協働、教師の説明と生徒の探究を、目的に応じて組み合わせる。
多様な生徒が参加できる選択肢と支援を準備する。
評価を、生徒の学習改善と教師の授業改善へつなげる。
学校と教師が継続できる授業設計にする。
これらは、現行の学習指導要領の下でも取り組めることです。
次期学習指導要領を見据えた学習指導案とは、未来の様式を先取りした書類ではありません。
目の前の生徒の学びを丁寧に捉え、学習の目的、内容、活動、支援、評価のつながりを、これまで以上に明確にした授業の設計図です。

学習指導案は、授業をよくするために書く

学習指導案を書くとき、形式を整えることに多くの時間を使ってしまうことがあります。
もちろん、他者に伝わる文書として整えることは必要です。
しかし、学習指導案の本来の目的は、美しい書類を完成させることではありません。
生徒に何を学ばせたいのか。
そのために、どのような問い、教材、活動、支援が必要なのか。
生徒が学んだことを、何によって確かめるのか。
授業後に、どのように指導を改善するのか。
これらを考えることです。
活動を先に決めるのではなく、目標から授業を考える。
評価を授業の最後に付け加えるのではなく、目標と学習活動と評価をつなぐ。
全員に同じ方法を求めるのではなく、多様な生徒が学習へ参加できる手立てを考える。
学習指導案は、そのための設計図です。
形式に振り回されるのではなく、生徒の学びを具体的に想像し、授業を改善するために活用していきたいものです。

参考資料

文部科学省「平成29・30・31年改訂学習指導要領(本文、解説)」
文部科学省「中学校学習指導要領解説」
国立教育政策研究所「指導と評価の一体化のための学習評価に関する参考資料(中学校編)」
文部科学省「教師向け参考資料・学習評価」
文部科学省「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について(諮問)」令和6年12月25日
中央教育審議会教育課程企画特別部会「教育課程企画特別部会における論点整理について(報告)」
中央教育審議会教育課程部会「総則・評価特別部会(第9回)配付資料」令和8年6月1日

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