教師のSWOT分析|自分の強みを生かすために

この記事は約9分で読めます。

教師として仕事をしていると、
「自分は何が得意なのだろう」
「次に何を伸ばせばよいのだろう」
「今の学校で、自分に何ができるのだろう」
と考える時があります。
特に、初任期を過ぎた頃、異動した時、主任を任された時、管理職を意識し始めた時などは、自分自身を一度整理してみることに意味があります。
その方法の一つがSWOT分析です。
SWOT分析は、自分に点数を付けるためのものではありません。
自分自身と、自分を取り巻く環境を分けて整理し、
「では、次に何をするか」
を考えるための道具です。

1.SWOT分析とは

SWOTは、次の4つの言葉の頭文字です。
S=Strengths 強み
W=Weaknesses 弱み・課題
O=Opportunities 機会
T=Threats 脅威・阻害要因
大きく分けると、
SとWは自分自身の内部にあるもの、
OとTは自分を取り巻く外部環境にあるもの
として整理します。
SWOT分析では、この内部環境と外部環境を分けて考えることが重要です。
学校教育でもSWOT分析は学校組織マネジメントの手法として用いられており、学校の現状を把握し、その後の改善策を考える方法の一つとして扱われています。
この記事では、それを教師個人の振り返りに応用します。

2.まず「強み」を書き出す

教師という仕事をしていると、自分のできていないことには気付きやすいものです。
授業がうまくいかなかった。
生徒への対応を迷った。
会議で十分に発言できなかった。
保護者への説明がうまくできなかった。
仕事が遅れた。
しかし、SWOT分析では弱みだけを見るのではありません。
まず、自分がすでに持っているものも整理します。
例えば、
・生徒の話を丁寧に聴くことができる
・授業づくりが好きである
・教材研究を継続できる
・ICTを活用できる
・行事の企画が得意である
・文章を書くことが得意である
・学級通信を継続できる
・保護者への説明を丁寧にできる
・特別支援教育について学んできた
・進路指導の経験がある
・生徒会活動を担当してきた
・若手教員に声をかけることができる
・校務を整理して仕組みにすることができる
・人と人をつなぐことができる
などがあります。
大きな実績である必要はありません。
自分では当たり前だと思っていることが、他の人から見ると強みである場合もあります。
「何ができるか」だけではなく、
「何を続けてきたか」
という視点でも考えてみます。

3.「弱み」は自分を責める材料にしない

Wには、自分の苦手なことや現在の課題を書きます。
例えば、
・仕事を抱え込みやすい
・大人数の前で話すことが苦手である
・授業準備に時間がかかる
・ICTが苦手である
・保護者対応に不安がある
・校務分掌全体を見渡す経験が少ない
・後輩へ仕事を任せることが苦手である
などです。
ここで大切なのは、
「弱み=教師として価値がない部分」ではない
ということです。
教師の仕事は非常に広範囲です。
授業。
学級経営。
生徒指導。
教育相談。
特別支援。
進路指導。
保護者対応。
ICT。
校務分掌。
行事。
後輩育成。
組織運営。
すべてを一人の教師が同じ水準で得意になることは現実的ではありません。
課題を明確にする目的は、自分を否定することではなく、
「学ぶのか」
「誰かに相談するのか」
「仕組みで補うのか」
「得意な人と協働するのか」
を考えることです。

4.「機会」は学校の外側だけにあるわけではない

OのOpportunityは、自分を取り巻く環境の中にある機会です。
例えば、
・授業研究に詳しい先生が同じ学校にいる
・校内研究のテーマが自分の関心と重なっている
・新しい校務分掌を担当することになった
・ICT環境が整備された
・研修に参加できる
・若手教師が増えた
・異動によって新しい経験ができる
・学校として新しい取組を始めようとしている
・地域との連携が進んでいる
・自分の専門性を生かせる役割がある
などです。
機会とは、
「自分の外側にある、成長や改善につながる条件」
と考えると分かりやすくなります。

5.「脅威」は人を敵として書かない

TのThreatsは、自分だけでは直接コントロールしにくい外部の阻害要因です。
例えば、
・業務が特定の人に集中している
・時間的な余裕が少ない
・人員配置が変わった
・担当業務が急に増えた
・経験者が異動した
・新しい制度への対応が必要になった
・学校が複数の課題を同時に抱えている
などです。
ここで、
「保護者が脅威」
「生徒が脅威」
「同僚が脅威」
と人そのものをTに置くことは勧めません。
人ではなく、
「何が仕事を難しくしているのか」
という状況や条件で捉えます。
そうすることで、改善できる部分が見えやすくなります。

6.SWOT分析は4つを書いて終わりではない

SWOT分析で重要なのは、
S、W、O、Tを埋めることそのものではありません。
その後に、
「何と何を組み合わせれば、次の行動が見えてくるか」
を考えます。
これをクロスSWOTと呼ぶことがあります。

S × O 強みを機会に生かす

自分の強みと、周囲にある機会を組み合わせます。
例えば、
S:ICTを使った授業づくりが得意
O:学校でICT活用研修を充実させようとしている
なら、
「自分の実践を短時間の校内研修で共有する」
という行動が考えられます。

W × O 機会を使って課題を補う

自分の課題を、周囲にある学習機会によって改善します。
例えば、
W:保護者対応に不安がある
O:学年主任が保護者対応の経験を豊富に持っている
なら、
「対応後に主任から振り返りを聞かせてもらう」
という方法があります。

S × T 強みを使って困難に対応する

例えば、
S:情報整理が得意
T:学年内の情報共有が増えている
なら、
「情報共有の方法を整理し、誰でも確認できる仕組みにする」
ことが考えられます。

W × T 無理をせずリスクを小さくする

例えば、
W:仕事を抱え込みやすい
T:担当業務が増えている
なら、
「一人で抱えず、早い段階で役割分担を相談する」
ことが重要になります。
SWOTは、分析結果そのものより、そこから具体的な行動へつなげることに意味があります。

7.教師のSWOT分析の具体例

例えば、教職8年目の教師が次のように整理したとします。
S 強み
授業研究が好きで、教材研究を継続している。
W 課題
自分の実践を他の教師へ伝えることが苦手である。
O 機会
学校に若手教師が増え、授業について相談されることが増えた。
T 阻害要因
校務が増え、十分な研修時間を確保しにくい。
ここから、
「大きな研修会を開く」
と考える必要はありません。
例えば、
・授業で使った教材を共有フォルダへ入れる
・放課後10分だけ授業について話す
・若手教師の授業を一度見に行く
・自分の授業も見てもらう
という行動でもよいのです。
重要なのは、
分析を立派にすることではなく、行動を具体的にすること
です。

8.強みは「弱みを隠すため」に使わない

自分の強みを伸ばすことは大切です。
しかし、
「強みが一つあれば、他の弱みは見られなくなる」
と考えるのは適切ではありません。
例えば授業が非常に得意な教師であっても、生徒の安全に関わる対応や、守るべきルール、必要な情報共有まで免除されるわけではありません。
教師として最低限必要なことについては、強みとは別に学び続ける必要があります。
一方で、
すべての弱みを同じ熱量で克服しようとする必要もありません。
強みを伸ばす。
必要な課題は学ぶ。
苦手なことは支援を受ける。
得意な人と協働する。
仕組みで補う。
このバランスが大切だと考えます。

9.経験年数によってSWOTの問いを変える

同じSWOT分析でも、経験年数によって見るポイントは変わります。

一校目の先生

・これまでにできるようになったことは何か
・困った時に相談できる人は誰か
・どんな授業や仕事に興味があるか
・今、最も学ぶ必要があることは何か

二校目の先生

・一校目で身に付けた強みは何か
・新しい学校で生かせる経験は何か
・これから専門性を高めたい分野は何か
・学校から期待されている役割は何か

三校目以降の先生

・自分の強みを組織へどう還元するか
・若手をどう支えるか
・自分にしかできない仕事を、誰でもできる仕事へ変えられないか
・学校全体を見る役割を担えるか

管理職を考える先生

・自分はどの領域で学校に貢献してきたか
・授業や学年だけでなく学校全体を見られているか
・人を通して仕事を進められるか
・自分の不得意分野を誰と補完できるか
SWOT分析は、現在地によって問いを変えると使いやすくなります。

10.15分でできる教師のSWOT分析

紙を1枚用意します。
4つに区切って、次の問いに答えます。

S Strengths

・周囲からよく頼まれることは何か
・自分が比較的苦労せずできることは何か
・これまで続けてきたことは何か
・人より経験していることは何か

W Weaknesses

・繰り返し困っていることは何か
・避けがちな仕事は何か
・学ぶ必要を感じていることは何か

O Opportunities

・今の学校だからできることは何か
・学べる人は誰か
・新しく任された役割は何か
・今後広がりそうな教育活動は何か

T Threats

・自分だけでは変えにくい条件は何か
・今後負担になりそうなことは何か
・継続して仕事をする上で気になることは何か
全部書いたら、最後に一つだけ決めます。
「来週までに何をするか」
です。
例えば、
「○○先生の授業を一度見せてもらう」
「教材を一つ共有する」
「主任に相談する」
「研修を一つ申し込む」
「担当業務の手順を文書化する」
程度で構いません。
SWOT分析のゴールは、4つのマスを埋めることではありません。
次の行動を一つ決めることです。

11.一人で行うSWOTには限界もある

自己分析には、どうしても主観が入ります。
自分では弱みだと思っていることを、周囲は強みだと感じていることもあります。
反対に、自分では強みだと思っていても、実際には十分に発揮できていないこともあります。
SWOT分析には、主観に左右されやすいことや、項目の優先順位が曖昧になりやすいという限界も指摘されています。
そのため、
・実際の出来事を根拠にする
・項目を書きすぎない
・優先順位を付ける
・信頼できる同僚から意見を聞く
・一定期間後に見直す
ことが大切です。
SWOTは診断ではありません。
自分を決めつけるものでもありません。
今の自分を一度整理するための「スナップショット」
として使う程度でよいと思います。

12.自分の強みを、周囲のために使う

教師として長く働いていると、
「あれもできない」
「これも苦手だ」
と、自分に足りないものばかりが目に入る時があります。
もちろん、学ばなければならないことはあります。
しかし、自分がすでに持っているものにも目を向けたいものです。
授業が得意。
人の話を聴ける。
文章を書ける。
ICTに詳しい。
生徒会活動が好き。
特別支援について学んできた。
行事を動かすことができる。
人と人をつなげられる。
若手を支えることができる。
その強みを、自分の評価を高めるためだけではなく、
目の前の生徒や、周囲の先生のためにどう使うか
を考えます。
そして、弱い部分は一人で抱えません。
得意な人に教えてもらいます。
助けてもらいます。
自分も、自分の得意なところで誰かを助けます。
学校は、異なる強みを持った人が働く組織です。
自分のすべてを強くすることより、
自分の強みを知り、
周囲の強みを知り、
互いに生かせる職員室をつくる。
SWOT分析は、そのための小さな入口として使えると思います。

参考資料

文部科学省「新しい学校評価を創る-学校組織マネジメントの展開」
独立行政法人教職員支援機構「学校組織マネジメント研修におけるケースメソッドの可能性」
独立行政法人教職員支援機構「校内研修で『学校組織マネジメント』を!」
University of Cambridge Institute for Manufacturing「SWOT」
University of Kansas Community Tool Box「SWOT Analysis」
Phadermrod, Crowder & Wills, “Importance-Performance Analysis based SWOT analysis”

タイトルとURLをコピーしました