これからの管理職試験対策①|面接・論文で「教師としての経験」を「学校を動かす視点」に変える

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「管理職試験の面接では、何を話せばよいのでしょうか」

「論文の書き方を勉強しているのですが、どうしても一般論になってしまいます」

管理職選考を考え始めた先生から、こうした相談を受けることがあります。

法規集を読み、教育施策を整理し、想定質問の答えを準備する。どれも必要な学習です。

しかし、それだけでは十分とは言えません。

私は、面接と論文に共通する最も大切な準備の一つは、教師として積み重ねてきた経験を、学校全体を支える立場の考え方へと結び直すことだと考えています。

この連載は、自治体ごとに異なる出題傾向を当てるものではありません。

教頭・校長として仕事をするうえで必要な考え方を、自分の言葉にしていくための連載です。

第1回は、面接にも論文にも通じる「視座の転換」を取り上げます。

1.管理職試験を「知識を披露する場」だけにしない

管理職選考の方法は自治体や年度によって異なります。

面接、論文、勤務実績、適性に関する資料など、何をどのように扱うかは一律ではありません。

まずは自分が受験する教育委員会の最新の実施要項と評価の観点を確認することが前提です。

そのうえで、私は試験準備を「知識の確認」と「考え方の整理」に分けることを勧めます。

法令や制度を正確に理解することは重要です。

しかし、学校で何かが起きたとき、知っている言葉を順番に並べるだけでは仕事は進みません。

何を優先するか。

誰と協議するか。

どこまで自分が判断し、どの段階で報告するか。

教職員が動ける条件をどう整えるか。

そうした判断の筋道を説明できるようになることが、面接と論文の双方に役立ちます。

2.書籍で伝えた「不合格になりやすい答え」の意味

拙著『管理職への道を考え始めた先生へ』の「管理職試験に受からない人に共通していること①②」(62〜65ページ)では、目的意識の曖昧さ、経験と学校運営の結びつきの弱さ、学校全体を見る視点の不足、問いに正対しない話し方などを取り上げました。

ここで述べたのは、特定の教育委員会の採点基準ではなく、私自身が経験から考えたことです。

面接の合否を単純な話法だけで説明できるわけではありません。

例えば「学級経営がうまくいきました」と話すこと自体は悪くありません。

問題は、その経験から何を学び、学校全体にどう生かそうとしているのかが伝わらない場合です。

経験を誇張する必要はありません。

経験の意味を、一段広いところから見直してみるのです。

3.「私は何をしたか」から「学校に何を残せるか」へ

担任として、生徒が安心して過ごせる学級をつくった。

授業を改善して、生徒がよく発言するようになった。

保護者との信頼関係を築いた。

いずれも大切な実績です。

ただ、管理職を目指すのであれば、そこで考えることを終わらせないでほしいのです。

「その実践ができた条件は何か」

「他の教職員にも生かせる部分はあるか」

「同じことが難しい先生をどう支えるか」

と問い直します。

例えば、学級づくりの成功を語るなら、「生徒の声を丁寧に聴くことが有効だった」だけでなく、「教職員同士が困りごとを早めに共有できる場を整え、個人の力量だけに頼らない学級支援につなげたい」と展開できます。

ここで大切なのは、学校全体という言葉を付け足すことではありません。

個人の成功を、他の人が再現・改善できる仕組みへ変える発想を持つことです。

4.志望動機は「きっかけ」と「目的」を分ける

「校長先生から勧められました」

これは受験を考えたきっかけとして、何もおかしくありません。

ところが、「なぜ管理職になりたいのですか」と聞かれたときに、そこで答えが終わると、自分自身の目的が見えません。

きっかけは他人から与えられることがあります。

しかし、管理職という仕事を引き受ける目的は、自分で考えなければなりません。

私は書籍の冒頭で、「何のために管理職になるのか」を考えることの重要性を書きました。

例えば「教職員一人一人の強みが生きる学校をつくりたい」という願いがあるなら、なぜそう思うようになったのか、現在の学校で何を見てきたのか、管理職という立場で何を実現したいのかをつなぎます。

反対に、今の自分には管理職を引き受ける理由がまだ見つからない場合もあります。

その迷いまで含めて考えることが必要です。

受験することを目的にしてしまわないためです。

5.志望動機を三つの問いで組み立てる

最初から立派な文章を書こうとすると、抽象的な言葉が増えます。

まずは次の三つを、短い文章で書き出してみてください。

一つ目は「学校で見過ごしたくないことは何か」。

例えば、経験の浅い先生が相談できず、一人で困っていることです。

二つ目は「なぜ、それを大切に思うのか」。

自分が困ったとき、同僚の支えによって授業や学級経営を立て直した経験があるかもしれません。

三つ目は「管理職なら、何を変えられるのか」。

個別に励ますだけでなく、相談先を複数用意し、業務量を調整し、支援を継続して確かめる仕組みを整えることが考えられます。

この三つがつながると、借り物の志望動機ではなくなります。

もちろん、面接でこの順番をそのまま暗唱する必要はありません。

考えを整理するための下書きとして使うのです。

6.面接では質問に正対してから話す

面接で話が長くなる人は、知識や経験が不足しているとは限りません。

伝えたいことが多すぎるのです。

質問が「教職員の意見が対立したらどうしますか」なのに、学校経営方針、チーム学校、働き方改革と話題を広げてしまうと、結局どうするのかが見えなくなります。

私は、最初に判断の方向を一文で示し、次に理由と具体的な行動を述べる練習がよいと思います。

例えば、

「まず対立している論点と共通の目的を整理します。そのうえで関係者の意見を聴き、学校として判断すべき事項を明確にします」

と答えます。

続けて、

「児童生徒の安全に関わる事項なら、合意を待たずに必要な対応を優先します」

と条件を加えれば、場面による違いも伝わります。

長く話すことより、問われたことに答えること。

言葉を飾ることより、判断の順序を示すことを意識したいものです。

7.「成功体験」を語るときは周囲の変化を入れる

面接で「これまでの成果を教えてください」と問われることがあります。

部活動でよい結果を残した、学級が落ち着いた、研究授業が評価された。

どれも実際の経験であれば話してよいのです。

ただ、私は四つの観点を付け加えることを勧めます。

「課題は何だったか」

「誰と協力したか」

「何が変わったか」

「残った課題は何か」

です。

例えば、若手の授業づくりを支えた経験なら、

「私が指導して改善させました」

より、

「本人の困りごとを聴き、同教科の先生と教材を共有する場をつくりました。本人が次の授業を自分で考えられるようになった一方、相談時間の確保は課題として残りました」

と語る方が、協働と振り返りが伝わります。

数値を使う場合は、実際に記録があるものだけを使います。

効果が確認できていないのに、成果が出たことにしない。

この誠実さは試験のためだけでなく、管理職の仕事そのものに必要です。

8.失敗体験は「反省しました」で終わらせない

「これまでの失敗を教えてください」という質問を恐れる必要はありません。

失敗のない教師など、ほとんどいないでしょう。

むしろ、失敗をどう捉え、次の仕事へどう生かしたかを整理する機会です。

例えば、保護者への説明を急いでしまい、十分に事実を確認できなかった経験があるとします。

「反省しています」だけでは、再発防止の考えが見えません。

「当時は早く解決することを優先しすぎました。以後、事実と推測を分けて記録し、説明前に関係職員と確認するようにしました。管理職になれば、個人任せにせず、確認と報告の手順を整えたいです」

と語ることができます。

ただし、児童生徒や保護者、同僚を特定できる情報は話さないこと。

失敗談を印象的にするために、他者の事情を材料にしない配慮も欠かせません。

9.想定外の質問には「分かったふり」をしない

準備していない質問が出ると、焦ることがあります。

そんなとき、知らない制度を知っているかのように話すことは避けたいものです。

学校運営では、不確かな理解に基づく判断が大きな問題につながることがあるからです。

「その点について、正確な制度の内容を今ここで断定することはできません。ただ、実際の学校運営では、児童生徒の安全を確認し、関係する規程や教育委員会の方針を確認したうえで対応します」

といった答え方も考えられます。

もちろん、基本的な法令を理解しておく努力は必要です。

準備不足を正当化するための言い方ではありません。

知っていることと知らないことを区別し、必要な確認を行う姿勢を示すことが大切なのです。

10.論文は「課題の羅列」より「実行の筋道」

論文でよく見られるのが、

「信頼関係を構築する」

「組織的に対応する」

「研修を充実させる」

といった言葉の連続です。

いずれも重要ですが、具体的に何をするのかが分からないままでは、読み手は実行場面を想像できません。

私は論文を書く前に、五つの問いを置く方法を勧めます。

何が課題か。

なぜ起きているのか。

誰と取り組むのか。

どのように実行するのか。

何をもって改善を確かめるのか。

例えば「若手教員の育成」がテーマなら、「校内研修を充実させる」で止めず、相談の機会が確保されているか、特定の先輩に負担が集中していないか、授業や学級経営の困りごとが早めに共有されるかを確認するところまで書きます。

論文は施策名の展示会ではありません。

学校の実態を踏まえて、実行可能な道筋を説明する文章だと考えています。

11.論文の基本構成を四段階で考える

文字数や制限時間は自治体ごとに異なるため、決まった型を万能なものとして扱うべきではありません。

そのうえで、練習の段階では「目的」「課題」「具体策」「検証」の四段階が使いやすいと思います。

最初に、児童生徒の学びや安心といった、学校が目指す目的を示します。

次に、その実現を妨げる具体的な課題を挙げます。

そして、管理職として誰に何を働きかけ、どの仕事を調整するのかを書きます。

最後に、実施しただけで終わらず、何を確かめ、どのように見直すのかを示します。

「私は全職員に徹底します」

と書くより、

「校内の現状を把握し、担当者と実施方法を協議し、必要な判断を行い、一定期間後に効果と負担を確認します」

と書いた方が、学校運営の姿が見えてきます。

12.論文の例題で考える

例えば、次のような練習問題を設定します。

これは私が作成した例題であり、実際の出題を再現したものではありません。

「教職員一人一人の強みを生かした学校づくりについて、管理職としての考えを述べよ」

この問いに対して、

「対話を大切にし、風通しのよい職場をつくる」

とだけ書くと、理念は伝わっても具体策が見えません。

まず、教職員の強みを把握する場面を考えます。

授業参観、日常の会話、本人との面談、校務の振り返りなどです。

次に、強みを生かす役割分担を考えます。

ただし、得意な人に仕事が集中することは避けます。

さらに、教職員が提案し、相談できる機会を確保します。

そして「強みを生かせたか」を、役割を任せた数だけで判断しないことです。

本人が力を発揮できたと感じているか、児童生徒の学びにどのような変化があったか、業務負担が偏っていないかまで確かめます。

13.同じ題材を面接の答えに直してみる

先ほどの論文テーマを、今度は面接で「あなたは教職員の強みをどう生かしますか」と問われたと想定します。

私は次のような答え方を考えます。

「一人一人の強みを知ることから始めます。授業や日常の仕事を見て、本人の考えも聴きます。そのうえで、学校の課題と本人の希望を照らし合わせ、役割を相談して決めたいと考えています。ただ、強みのある人に仕事が集中してはいけません。新たな役割をお願いするときは、既存業務の調整も併せて行います。実施後は、本人の負担と児童生徒への効果を確認します」

これは唯一の正解ではありません。

大切なのは、同じ考えを、論文では論理の流れとして、面接では短い言葉として表現できることです。

両者を別々の暗記科目にしない方が、準備は進めやすくなります。

14.「対話」と「指導」を使い分ける視点

面接や論文で「教職員の意見をよく聴きます」と答えることは大切です。

しかし、どの場面でも話し合いを続ければよいわけではありません。

児童生徒の安全や権利が関わる場合には、管理職が必要な判断を行い、明確に指示すべきことがあります。

一方、授業改善や校内研修の進め方など、教職員の創意工夫を生かせる場面では、対話や協議によってよりよい方法が見つかることがあります。

私は、管理職に必要なのは「いつも優しい」「いつも厳しい」といった一つの態度ではなく、目的と状況に応じて関わり方を選ぶ力だと考えています。

試験でも「まず聴く」の次に、いつ判断し、誰が責任を担うのかまで考えておくと、答えが具体的になります。

15.法令・施策の学習を自分の言葉へつなぐ

制度の勉強を軽視してよいという意味ではありません。

学校教育法第37条には、校長が校務をつかさどり、所属職員を監督することが規定されています。

また、文部科学省の「校長及び教員としての資質の向上に関する指標」の指針では、学校経営や教職員が力を発揮できる環境づくりが重視されています。

こうした一次資料を読むときは、「条文を覚えた」で終わらず、「自分がその責任を担うなら、日常の何を変えるか」を考えます。

例えば、教職員の負担を把握すること、仕事の優先順位を示すこと、問題が起きたときに組織として動くことなどです。

ただし、最新の法令や通知の内容は改正され得ます。

受験する自治体の最新資料と国の一次資料を照合してください。

ここに書いた考え方は、特定年度の出題予測ではありません。

16.論文は「書いた回数」より「直した理由」

論文の練習を重ねることは大切です。

しかし、毎回同じ構成で、似たような言葉を書いているだけでは、考え方が深まらないこともあります。

書いた後に、

「この具体策は誰が実行するのか」

「校長・教頭として何を判断するのか」

「教職員の負担は増えないか」

「児童生徒にとっての意味は何か」

を点検します。

例えば「校内研修を月1回実施する」と書いたら、その時間をどこから確保するのか、研修内容を誰が決めるのか、授業にどう還元するのかまで考えます。

現実に実行できない施策を並べるより、小さくても実行と検証ができる提案の方が、考えの深さが伝わります。

添削を受けたときは、言い回しの修正だけでなく、「なぜ、その部分を直した方がよいのか」を尋ねてみてください。

17.試験対策の前に、最後に確かめたいこと

面接や論文が上達することと、管理職として働く準備が整うことは、重なる部分もありますが同じではありません。

試験に合格するための答えを用意するうちに、本当は何のために管理職になりたいのかが見えなくなることもあります。

私は書籍で、管理職への道を選ぶかどうかは、自分の人生の「哲学」と管理職の仕事を深く知ることから考えてほしいと書きました。

周囲に勧められたから受験する人も、自分から挑戦したい人も、ここは省かないでほしいのです。

学校を変えたいと思うなら、まず自分は何を大切にする人間なのかを考えること。

教職員を育てたいと思うなら、相手の強みや事情に目を向けること。

学校の課題を解決したいと思うなら、自分一人で解決しようとしないこと。

面接も論文も、そうした考えを整理する機会にできます。

受験の結果だけではなく、その準備がこれからの教師人生に残るものであってほしいと思います。

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※本記事は管理職選考に向けた考え方の整理を目的としたものであり、特定の自治体の試験問題、採点基準、合格方法を示すものではありません。

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