「真面目に頑張った生徒が力を発揮できる問題を作りたい」
心ある教師なら、このように思うはずです。
しかし、中学3年のテストでは評価のこともあるので、これだけではうまくいきません。
「真面目に頑張った生徒が力を発揮できる問題」かつ「上位層や下位層の人数が極端に多くならない問題」をつくるという視点も必要です。
1.「真面目に頑張った生徒が力を発揮できる問題」を作成する方法
「真面目に頑張った生徒が力を発揮できる」ためには、授業中に「教える」「説明する」だけではなく、「できる」ようにしておく必要があります。
「この問題、問題集の問題と全く同じ問題ですよ、できないとダメです」
「この文章、板書して、教書にも線引いて、大事だから覚えておきなさいって、何回も言ったのに・・・(できていないあなたたちが悪い)」
よく、このようなことを授業中に言っていませんか。
生徒に指導として言うのは構いませんが、本気で生徒の責任にしていませんか。
中学校教師の誤った考え方です。
中学校教師は、
「授業中にできるようにまで生徒を育てる」
という感覚がありません。
「できるようにまで」というのは、「問題として出題して、丸になる」までです。
写させっぱなし、ミニテストやらせっぱなし、説明しっぱなしで終わってしまうのです。
授業中にたとえ教師が「問題集をやって解説をして理解させた。テストに出るから、家でもう一回やっておきなさい、とも言った」としても、テストで点数をとれない生徒はたくさんいるのです。
この事実に向き合わないといけません。
学力の低い生徒や家庭学習の習慣がついていない生徒は、これだけではテストで点を取れないのです。
これを防ぐためには、「授業内でできるようにまでする」必要があるのです。
塾は、この点ではプロフェッショナルです。
中学校も、見習う点が多々あるのではないでしょうか。
さて、「できるようにまでする」ためには、教師が意図的に繰り返しその内容について触れなければなりません。
私が授業をしていた頃は、「テストで絶対にできてほしいこと」については、
・次の授業でもう一回
・次の次の授業でもう一回
・テスト1週間前にもう一回
・テスト直前にもう一回
少なくとも合計4回はやり直しをさせていました。
ポイントは、「授業中」です。
「授業時間が足りなくなるのでは」と言われてしまいそうですが、それは大丈夫です。
回数が多いだけで、一回当たりの時間は、そういう問題をまとめてやっても、1分~2分しかかっていません。
授業中に余計な話もほとんどしていません。
説明する内容も厳選しています。
教師には、そういう感覚が必要なのです。
4回やっても、テストでできない生徒はいます。
そのたびに私は、「どうやったらこの生徒がテストでできるようになるのか」と考えていました。
「実技教科などで週に1回しか時間がないから、どうしても時間が取れない」という場合は、なかなか難しいかもしれませんが、それでも、工夫して繰り返しやってほしいのです。
いまどき、時間割をより弾力的に運用することが可能になっています。
例えば、「ある授業の最後の5分だけミニテストをするために授業時間をもらう」、「土日の課題や朝学習で課題を準備する」などの方法があります。
テストの内容は、「頑張った生徒が力を発揮できる問題」ということを優先するならば、テスト問題で次のような配慮をしなければなりません。
・授業で使用した図と同じ図で問題を出す
同じ図というのは、まったく同じ図です(著作権はクリアしてください)。
「まったく同じ図」でないと、「あ、同じ問題が出ている」と思えない生徒も出てくるのです。
同じ内容を表す図でも、「タッチがほんの少し違う」だけで、「違う問題」と思う生徒もいる
のです。
さらに、
・問題集や教科書の言い回しを変えすぎない
・1年間を通して、「出題パターン」を変えない
ことが必要です。
私の教科は、「どこを勉強したらよいか分かる」「勉強したら点数とれた」とよく言われます。
こういう工夫をしてきた結果だと思っています。
問題集を使っている場合の注意点です。
いろいろなタイプの生徒がいます。
短期集中型で、直前に2、3日集中して勉強するタイプです。
ただし、長期間は続きません。
これに対し、じっくり型の生徒もいます。
長期間かけてじっくりやることで力を発揮する生徒です。
じっくり型の生徒に対して、テストでの問題集の範囲や教科書の内容をいつ提示しているでしょうか。
私は、
4月の中旬に「年間テスト出題予定表」を作成して配布
していました。
どの時期に何を学習して、どの範囲がテスト範囲になるかを4月に示しておくのです。
「じっくり型」の生徒も準備ができ、よりテストで力を発揮するようになる
のです。
国語以外の教科なら、国語力が影響する問題は避けるべきです。
もちろん、観点別評価の内容に含まれている場合は仕方ありません。
しかし、例えば、中1の中間テストで次のような問題はどうかと思うのです。
「スキー板をつけて歩く場合と、つけずに歩く場合で、どのような違いがあるか、書きなさい」
「どのような」と聞かれたら、戸惑う生徒が出てきます。
これをそのまま問題にすれば、採点も大変です。
また、国語力の部分で差が出てしまいます。
これは、国語が苦手で理科が得意な生徒のために、次のようにしてほしいのです。
「次の( )にあてはまる語のうち適当なものの記号を選び、ア~ウの記号で答えなさい。
スキー板をつけて歩くと、つけない場合と比べて、雪のへこみ方が( )。
ア小さくなる イ大きくなる ウ変わらない」
「自分の勉強した問題が出た」と生徒が感じるためには、「問題数を多くする」ことも必要です。
点数は同じ50点でも、
「自分の知っていることをしっかり書けた。力を出し切った」50点と
「自分の知っていることを書く回数が少なかったけど」50点では、次のテストへのモチベーションも違ってきます。
2.上位層や下位層の人数が多くならない(正規分布になる)問題の作成法
本来なら、「絶対評価」ですので、こちらが求める基準の問題を作成しなければなりません。
また、授業での指導もしていかないといけません。
しかし、授業ではうまくいかずに、それでも何かの理由で、得点分布を正規分布に近づけたい場合を考えます。
これは、問題作成に少し経験が必要です。
問題を作成していくと同時に、問題の難しさを5段階に分類していきます。
A・・・学力の低い生徒でもできる問題
B・・・AとCの間
C・・・中位くらいまでの生徒ならできる問題
D・・・EとCの間
E・・・上位(10%)の生徒しかできない問題
これは結構難しい作業になります。
普段の生徒の力が分かっていないとできないからです。
ふつうに問題をつくると次のようになってしまう集団があるとします。
これを、次の図のような50点を中心としたきれいな正規分布にしたいとします。
どのような問題構成にすればよいでしょうか。
一番下の山をなくすためには、「A」問題を増やせばいいのです。
一番上の山をなくすためには、「E」問題を増やせばいいのです。
そうすれば、正規分布に近づいていきます。
極論すれば、「ウルトラ簡単な問題を50点分」、「ウルトラ難しい問題を50点分」出せばよいのです。
しかし、これは単純にできることではありません。
難しい問題の設定があるからです。
授業の内容を逸脱せずに、生徒から「こんな問題できるわけがない」というクレームなしに、E問題をつくるのは難しいのです。
これは、問題作成ができる教師に問題を見てもらうしかありません。
ちなみに、ほぼすべてをB問題にした場合の分布の様子は、
指導が上手くいっている教科の場合
指導が上手くいっていない教科の場合
自分が作成したテスト問題で分析してみましょう。
3.採点しやすい問題の作成法、採点時のポイント
・記号問題を増やす
・配点をややこしくしない
・配点は各1点、各2点の2段階(多くても各3点までも含めて3段階)
・それ以上配点を増やしたい問題があるなら、問題を分ける。
・同じ配点の問題は同じ色で採点
・「×にしたけど、生徒が何か言ってくるかもしれない解答部分」については、赤で、「これはダメ」とはっきり書いておく。また、返した瞬間にも伝えるのも可。
・△はつけないようにする(テスト問題にも書いておく。国語等はしかたがないでしょう)
・横に解答欄を続けない
1>2>3>4
ではなく、
1
2
3
4
にする。
4.問題作成の一般手順
(1)テスト範囲の決定
(2)問題ネタ収集
教科書、ノート、問題集、プリントに印をするなど
(3)問題作成
(4)問題確認、訂正
漢字問題の指定、分野ごとのバランスの確認、観点別に振り分け
(5)解答用紙作成
(6)自分で解く
(7)他人に解いてもらう
(8)解答作成
(9)印刷、袋詰め
(10)採点、記録、返却
(11)点数変更分の追記
5.テスト問題やワークシートを「ミス0」にするチェックリスト
<誤植パターン>
例えば、
・記号のミス「(ア)の次の問題が(ウ)」、「(1)の次も(1)」など。
・解答欄や名前欄がない。
・タイプミス「眠かかった」。
・図から選びなさいという問題で「図」がない。あるいは、図が対応していない。
・図や写真が汚すぎて見にくい。
・テスト範囲外からの出題。
・正解がない。
<問題、解答の内容パターン>
・解答欄がせまい。
・半角、全角が混合している。
・同じことを何回も聞いている。
・問題量があまりに少ない(50分テストなのに、20分でほぼ全員が終了している)または、その逆で、問題量があまりに多い(最後まで問題を解いていない生徒が1割以上いる)
・難易度があまりに難しい。平均点38点。
(平均点は、各中学校の設定に合わせてください)
・実力テストにもかかわらず、入試問題とかけ離れた問題構成になっている
など。
<その他>
・問題ができたら自己チェック(自分で問題を解く)すること。
・自己チェックを行った後は、少なくとも2人の先生にはチェックしてもらうこと。
・その2人のうちの1人には、校長先生または教頭先生が入っていることが望ましい。
・テスト問題作成は、直前にはしない。
・1週間前には完成して、チェックしてもらう先生にお願いすること。
資料作成後に、間違いチェック表を使用したり、他人にやってもらうのは、教師に限らず、仕事の基本です。
また、書店に行けば、書類を間違わずに書くための本があります。
「もし、間違っていたら、その場で訂正すればよい」では決して済まされません。
生徒は、間違った問題に時間をかけてしまうかもしれないのです。
また、「この問題、正しいのかなぁ」と思いながら、テストを受けることになるかもしれません。
これでは、生徒の学力を正確にはかることができません。
6.返却時のポイント
・返却時は教室(生徒が一番安定する教室)がいいでしょう。
・返却中は呼ばれる生徒以外は、必ず着席しておく。
・答案は、コピーを作成しておく(詳細は、定期テスト返却時の「1分コメント」で生徒との信頼感を高める)
・机の上は赤ペンのみ(1分コメントをしない場合)。
・模範解答(配点有)は、全員の答案配布が終了し、落ち着いた時点で配布する。
・クラス毎の平均点は絶対に発表しない。
7.その他
・漢字を間違えた時の方針は、テスト前から伝えておく(問題用紙にも書いておく)。
・各クラスを巡回する時、とにかく追加説明しなくて済むようにする。
・訂正がある場合は、試験監督に迷惑がかからないように工夫する。
・テスト後、第一回目の授業で必ず返却する。
・不登校の生徒への配慮を絶対に忘れない(すべての教材、授業ノート等が渡っているか)。