中学校の定期テストについて考えるとき、テスト範囲の示し方、テスト前の学習、問題作成、試験監督、採点、答案返却、平均点、テスト結果の分析、テスト後の振り返りなど、さまざまな場面があります。
これらは、別々に考えるものではありません。
定期テストは、
授業→テスト範囲の提示→学習→問題作成→試験→採点→返却→振り返り→次の授業
という一つの流れの中にあります。
そして、定期テストは単に「成績をつけるためのもの」ではありません。
生徒の学習状況を把握し、生徒自身の学習改善につなげ、教師の授業改善につなげるための大切な機会です。
さらに言えば、定期テストも生徒指導の一部です。
文部科学省の『生徒指導提要(改訂版)』では、「児童生徒理解を基盤とした教科の指導」「教科の指導と生徒指導の一体化」が示されています。
教科の指導と生徒指導を別々のものとして考えるのではありません。
実際、『生徒指導提要』では、授業での課題、小テスト、中間・期末試験なども、児童生徒理解のために収集する客観的情報として挙げられています。
定期テストを考えるときにも、この視点はとても大切です。
この記事では、現在の学習評価や『生徒指導提要(改訂版)』、次期学習指導要領に向けた中央教育審議会の「論点整理」なども踏まえながら、中学校の定期テストについて考えます。
- 定期テストは何のために行うのか
- 定期テストも「授業で生徒指導をする」一部
- テスト範囲は「誰でも分かる」が最低条件
- 「実力問題を出す」だけでは分からない
- テスト範囲を見れば「何をすればよいか」が分かる状態
- 「勉強させる」から「自分で調整する」へ
- 定期テスト前に生徒へ伝えたい6つのこと
- 勉強時間だけで生徒を評価しない
- テスト問題は「何を測るのか」から考える
- 正規分布を目標にしたテスト作成はしない
- 定期テストだけで全てを評価しない
- テスト問題作成の基本手順
- テスト問題を「ミス0」に近づけるチェックリスト
- 採点しやすさも問題作成の一部
- テスト当日は「取り締まり」より先に環境整備
- 試験前に学校でそろえておきたいこと
- 問題用紙を配布する瞬間まで決める
- 不正が疑われたときこそ人格を否定しない
- 「同じテストなら公平」とは限らない
- 答案返却は「採点の終了」ではなく「次の学習の開始」
- 点数をみんなの前で扱わない
- クラス平均点を「クラスの評価」に使わない
- テスト結果は短時間でも分析
- テスト結果の急な変化を生徒指導上の情報として見る
- テスト後の振り返りは「反省文」にしない
- 振り返りに「教師が期待する答え」を書かせない
- 何でも成績材料にしない
- 定期テストを通した「自分も学べる」という感覚
- 定期テストを行う教師のチェックリスト
- 定期テストは返却して終わりではない
- 参考資料
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定期テストは何のために行うのか
定期テストには、少なくとも四つの役割があります。
1 何を身に付けたのかを確認する
授業で学習した内容について、何を理解し、何ができるようになったのかを確認します。
これは定期テストの基本的な役割です。
しかし、「何点取ったか」だけを見るのでは不十分です。
どの内容を理解できているのか。
どこでつまずいているのか。
知識はあるけれど活用できていないのか。
問題文の読み取りで止まっているのか。
答案から、かなり多くのことが分かります。
2 生徒自身が現在地を知る
テスト結果を見るのは教師だけではありません。
生徒自身が、
「ここはできるようになった」
「ここはまだ分からない」
「この勉強方法は効果があった」
「次はこの方法を変えよう」
と、自分の学習を振り返るための材料になります。
点数は、そのための一つの情報です。
3 教師が授業を振り返る
例えば、クラスの多くの生徒が同じ問題を間違えていたとします。
そのとき、
「勉強不足です」
「授業を聞いていませんでしたね」
だけで終わらせてはいけません。
まず、教師自身の授業を振り返ります。
説明は十分だったでしょうか。
生徒が自分で考えたり、問題を解いたりする時間はあったでしょうか。
一度説明しただけで「教えた」と考えていなかったでしょうか。
問題の表現そのものが分かりにくくなかったでしょうか。
現行の学習指導要領でも、「指導と評価の一体化」が重視されています。
学習評価は、児童生徒の学習状況を把握するだけでなく、教師の指導改善にも生かすものです。
4 生徒を理解する
例えば、いつも80点前後を取っていた生徒が、突然40点になったとします。
「今回は勉強しなかったのでしょう」
だけで終わらせてはいけません。
答案を見る。
授業中の様子を見る。
欠席や遅刻を見る。
他教科の様子を見る。
必要であれば担任や学年の先生とも共有します。
逆に、これまで30点だった生徒が50点になったとします。
「まだ50点」と見るのか。
「20点も伸びた」と見るのか。
そして、
「何を変えたのですか」
と聞いてみます。
そこに、その生徒に合った学習方法が見つかることもあります。
『生徒指導提要』では、児童生徒を学習面だけでなく、さまざまな側面から理解していくことが大切にされています。
テストは、生徒を決めつける資料ではありません。
生徒をより深く理解するための一つの資料です。
定期テストも「授業で生徒指導をする」一部
『生徒指導提要(改訂版)』では、生徒指導の実践上の視点として、
・自己存在感の感受
・共感的な人間関係の育成
・自己決定の場の提供
・安全・安心な風土の醸成
が示されています。
また、教科指導についても、「個に応じた指導の充実」「児童生徒理解を基盤とした教科の指導」「教科の指導と生徒指導の一体化」が示されています。
この考え方は、定期テストにもつながります。
例えば、テスト範囲があまりに複雑だったらどうでしょうか。
「授業を聞いていたら分かるでしょう」
「自分でプリントを整理してください」
「大事なところは授業中に言いました」
このようなテスト範囲でも、自分で整理できる生徒は対応できます。
しかし、
「どのプリントか分からない」
「何から始めればいいか分からない」
「どこまで勉強すればいいか分からない」
という生徒もいます。
その生徒が学習内容に入る前に、「勉強の準備」で脱落してしまうことがあります。
授業そのものだけでなく、テストへ向けた準備の段階から、生徒が安心して学習に取り組める環境をつくることが大切です。
テスト範囲は「誰でも分かる」が最低条件
テスト範囲は、できるだけ分かりやすくします。
例えば、
「ワーク、プリント、教科書を中心に、しっかり復習すること」
と書いてあったとします。
教師には分かります。
しかし、生徒にとっては分からない部分があります。
「中心に」とはどこまででしょうか。
「しっかり」とは何をすればよいのでしょうか。
プリントはどれでしょうか。
ワークは何ページでしょうか。
特に、計画を立てたり、物を整理したりすることが苦手な生徒ほど困ります。
テスト範囲に示したいこと
少なくとも、次の内容は明確にしたいです。
・教科書のページ
・問題集、ワークのページ
・授業プリントの番号
・提出物
・提出期限
・漢字指定などの解答条件
・過去の学習内容から出題する場合の具体的範囲
・学習するときのポイント
プリントの種類が多いのであれば、番号を付けます。
「授業中に配ったプリント全部」
ではなく、
「授業プリントNo.12~No.18」
とします。
教師にとっては小さな違いに見えても、生徒にとっては大きな違いです。
「実力問題を出す」だけでは分からない
「実力問題を出します」
「応用問題も出します」
「授業を聞いていればできます」
このような表現だけでは、何を準備すればよいか分かりません。
もちろん、テスト問題を事前に全部教える必要はありません。
初めて見る資料を使ったり、学習した内容を別の場面で活用したりする問題も必要です。
しかし、
何を身に付けた結果として、その問題に挑戦してほしいのか
は、教師が明確にしておく必要があります。
生徒にも、努力する方向は伝えられます。
テスト範囲を見れば「何をすればよいか」が分かる状態
例えば、
「ワークをしっかり復習すること」
だけではなく、
「ワーク30~42ページを、答えを見ずに解けるか確認してください。間違えた問題は、解説を確認した後、もう一度何も見ずに解いてください」
とします。
「漢字も確認しておくこと」
ではなく、
「教科書○ページ~○ページの太字用語は、漢字で答えられるようにしてください」
とします。
教師にとっては数行増えるだけです。
しかし、勉強が苦手な生徒にとっては、「何をしたらよいか」が見えるようになります。
「勉強させる」から「自分で調整する」へ
定期テスト前になると、
「毎日2時間勉強しましょう」
「ワークを3回やりましょう」
「計画表どおりにやりましょう」
と指導したくなります。
もちろん、一定の目安が役立つ生徒もいます。
しかし、全員に同じ方法が合うわけではありません。
大切なのは、
自分の現在地を知り、自分で学習方法を選び、実行し、結果を見て修正できるようになることです。
これは『生徒指導提要』が示す「自己決定の場の提供」とも重なります。
教師が全部決めるのではなく、生徒自身が考え、選び、行動する場面をつくります。
ただし、「自分で決めなさい」と丸投げするのでもありません。
計画を立てることが難しい生徒には、一緒に課題を小さく分けます。
選択肢を示します。
最初の一歩を一緒に考えます。
自己決定と自己責任を混同しないことが大切です。
定期テスト前に生徒へ伝えたい6つのこと
1 まず全部を見渡す
いきなり勉強を始める前に、テスト範囲、提出物、残り日数を確認します。
何があるか分からないまま始めると、後になって大量の課題が残っていることがあります。
2 課題を小さくする
「数学を勉強する」
では大きすぎます。
「ワーク30~33ページを解く」
「英単語20語を何も見ずに確認する」
まで小さくします。
始める行動が分かることが大切です。
3 見るだけで終わらせない
教科書やノートを何度も見ることだけが勉強ではありません。
教材を閉じて思い出す。
自分の言葉で説明する。
問題を解く。
白紙に書いてみる。
「分かった気がする」から「自分でできる」へ変えていきます。
4 間違った問題を大切にする
間違いは、できない証拠ではありません。
次に何を学べばよいかを教えてくれる情報です。
間違えた問題に印を付け、もう一度解きます。
5 計画どおりにいかなければ変える
計画表は、守るための契約書ではありません。
学習を調整するための道具です。
予定が遅れたら、残りの日数を見て優先順位を変えればよいのです。
6 睡眠を削って帳尻を合わせない
前日に全てを終わらせようとしないことです。
テスト前日は、新しいことを大量に始めるより、間違えやすいところや重要なところを確認します。
勉強時間だけで生徒を評価しない
「何時間勉強したか」は、学習状況を見る一つの情報にはなります。
しかし、勉強時間が長いことそのものを高く評価することには注意が必要です。
3時間机に向かっていれば、必ずよい学習になるわけではありません。
家庭の状況も違います。
部活動も違います。
習い事も違います。
生活環境も違います。
40分でも、自分の課題を明確にして集中して学べることがあります。
見るべきなのは、
「何時間勉強したか」
だけではありません。
「何をしたか」
「何ができるようになったか」
「どの方法が役立ったか」
「どこで止まったか」
「次回は何を変えるか」
を見ます。
現行の学習評価でも、「主体的に学習に取り組む態度」は、単純な勤勉さだけを見るものではなく、粘り強く学習に取り組む側面と、自らの学習を調整しようとする側面を捉えることが重要です。
テスト問題は「何を測るのか」から考える
問題を作るときに、
「この問題は面白い」
「これは難しくて差がつく」
「毎年出しているから」
というところから始めると、問題の寄せ集めになりやすくなります。
まず確認するのは、
今回の学習で、何を身に付けてほしかったのか
です。
単元の目標。
評価規準。
実際に行った授業。
この三つを確認します。
その上で問題を作ります。
正規分布を目標にしたテスト作成はしない
定期テストでは、得点をきれいに分散させること自体を目的にしません。
現行の学習評価では、集団の中で何番目にいるかを見るのではなく、学習指導要領に示された目標や内容に照らして、一人一人の学習状況を把握する「目標準拠評価」が基本です。
ですから、
「平均点を60点にしよう」
「90点以上が多すぎるから難問を入れよう」
「得点がきれいに分散するようにしよう」
ということをテスト作成の目的にはしません。
最初に考えるのは、
「今回の学習で身に付けてほしかった力を、適切に確認できる問題になっているか」
です。
もちろん、結果として平均点が極端に高かったり低かったりした場合には、問題の難易度や授業との関係を検討する必要があります。
しかし、正規分布をつくることそのものを目的にはしません。
定期テストだけで全てを評価しない
定期テストは重要な評価資料です。
しかし、定期テストで全てを見ることはできません。
例えば、
・実際に観察、実験する
・長い文章を書く
・資料を集めて考察する
・作品を制作する
・発表する
・他者と対話しながら考えを修正する
といった力は、ペーパーテストだけでは十分に見取りにくい場合があります。
だからこそ、テストを大切にすると同時に、テストだけに頼らないことも大切です。
次期学習指導要領に向けた中央教育審議会教育課程企画特別部会の「論点整理」でも、「指導と評価の一体化」をさらに進め、児童生徒の学習や教師の指導の改善につながる、真に意味のある評価に集中していく方向が示されています。
ただし、「論点整理」は現行の学習指導要領そのものではなく、次期学習指導要領に向けた検討の方向性です。
テスト問題作成の基本手順
1 単元の目標と評価規準の確認
何を身に付けてほしい単元なのかを確認します。
2 実際に行った授業の確認
計画上は扱う予定だったとしても、実際には十分扱えていない内容があるかもしれません。
実際の授業とテスト問題が対応しているかを確認します。
3 出題範囲の確定
生徒へ示したテスト範囲と一致しているか確認します。
4 問題作成
知識だけに極端に偏っていないか確認します。
必要に応じて、資料の読み取り、理由説明、学習したことを活用する問題なども取り入れます。
5 配点の設定
「難しいから高配点」だけではなく、何を評価する問題なのかを考えます。
6 解答用紙の作成
解答欄の大きさ、番号、位置を確認します。
7 教師自身による解答
問題を作った教師自身が、最初から最後まで解きます。
問題量。
問題文。
誤植。
解答欄。
必要時間。
全て確認します。
8 他の教師による確認
出題者には、見えなくなっているミスがあります。
同じ教科の先生に確認してもらえる環境があるなら、確認をお願いすることも大切です。
9 解答と採点基準の確定
特に記述問題では、
「ここまで書いていれば正答」
「この表現も正答」
「ここまでなら部分点」
という基準を事前に考えます。
テスト問題を「ミス0」に近づけるチェックリスト
□ テスト範囲外の内容が入っていない
□ 授業で十分扱っていないことを前提としていない
□ 問題番号が連続している
□ 問題番号と解答欄が対応している
□ 正答が存在する
□ 複数の正答が考えられないか確認した
□ 図や写真が鮮明である
□ 必要な図・資料が抜けていない
□ 問題文だけで何を答えればよいか分かる
□ 漢字指定、単位、記号等の条件が明確である
□ 解答欄が狭すぎない
□ 問題量が試験時間に対して適切である
□ 学習目標や評価規準と対応している
□ 採点基準を説明できる
□ 必要な受験上の配慮等を確認した
□ 自分で最初から最後まで解いた
□ 可能なら別の教師にも確認してもらった
テスト問題のミスは、教師が謝れば終わるとは限りません。
生徒はその日のために準備してきています。
最後の確認には時間を使いたいものです。
採点しやすさも問題作成の一部
採点が複雑になれば、採点ミスも増えます。
ですから、問題を作る段階から採点を考えます。
・解答欄をそろえる
・採点基準を先に決める
・記述問題の許容解答を整理する
・部分点を与える場合は基準を統一する
・途中で基準を変更した場合は、それ以前の答案も確認する
部分点について、一律に「つける」「つけない」と決める必要はありません。
教科や問題によっては、部分点が適切な場合があります。
大切なのは、
誰の答案を採点しても同じ基準になることです。
「普段よく頑張っているから1点追加」
「この生徒なら意味は分かっていたはず」
という採点をしてはいけません。
答案と採点基準に基づいて判断します。
テスト当日は「取り締まり」より先に環境整備
カンニングなどの不正に対しては、
不正が起こりにくい環境をあらかじめ整えておく
ことが大切です。
ただし、出発点を「生徒を疑うこと」にはしません。
目的は、
全員が公平に、安心して自分の力を発揮できる環境を整えることです。
これは『生徒指導提要』の「安全・安心な風土の醸成」という考え方にもつながります。
試験前に学校でそろえておきたいこと
・机上に置いてよいもの
・荷物を置く場所
・問題用紙、解答用紙の配布方法
・開始前に問題を見ることができるか
・質問するときの方法
・落とし物をした場合の対応
・トイレ等への対応
・終了時の回収方法
・欠席者への対応
・不正が疑われる場合の対応
教師によってルールが全く違う状態は避けたいものです。
生徒にも教師にも分かりやすい仕組みにします。
問題用紙を配布する瞬間まで決める
問題用紙を配ってから開始するまでの時間は、意外にトラブルが起きやすい時間です。
例えば、
「問題用紙と解答用紙を配ります。合図があるまで裏向けたままにしてください」
と統一します。
開始時刻になったら明確に開始を伝えます。
終了時も同じです。
小さなことですが、この小さなことを曖昧にしないことが公平性につながります。
不正が疑われたときこそ人格を否定しない
不正が疑われた場合は、学校で定められた方法に従って対応します。
その際、
「あなたはカンニングをする人間です」
という人格への評価にしてはいけません。
何を見たのか。
いつ見たのか。
どのような状況だったのか。
まず事実を確認します。
必要な職員と共有し、学校のルールに基づいて対応します。
みんなの前で必要以上に叱責することも避けます。
規律を守ることと、生徒の尊厳を守ることは両立できます。
「同じテストなら公平」とは限らない
同じ問題を解いていても、テストまでの状況は一人一人違います。
長く欠席していた。
教材を受け取れていなかった。
病気などで学習できなかった。
学校で決定している配慮が必要だった。
そうした場合に、
「同じテストを受けるのだから公平です」
と単純に考えないことです。
少なくとも教師側として、
・テスト範囲が届いているか
・必要な教材が届いているか
・提出物が何か分かっているか
・学校で共有されている配慮が実施されるか
は確認します。
全員に同じことをすることと、公平に学ぶ条件を整えることは、必ずしも同じではありません。
答案返却は「採点の終了」ではなく「次の学習の開始」
テスト返却時、生徒の関心はどうしても点数へ向きます。
だからこそ、教師の言葉が大切です。
一つの方法として、「1分コメント」があります。
40人全員と毎回1分ずつ話すことは、時間的に難しい場合もあります。
無理に行う必要はありません。
大切なのは「1分」という時間ではありません。
返却を、次の学習につながるフィードバックの機会にすることです。
例えば、
「70点。惜しかったですね」
だけで終わらせるより、
「計算問題はほぼ全部できています。次は文章題で何を文字にするのかを確認すると、さらに伸びそうですね」
と伝えます。
「頑張りましたね」
だけではなく、
「前回間違えていたグラフの読み取りが、今回は全部できています」
と伝えます。
抽象的な評価ではなく、具体的な情報を返します。
生徒が、
「次に何をすればよいか」
を分かるようにするのです。
点数をみんなの前で扱わない
個人の点数を、他の生徒に聞こえる形で伝えないようにします。
答案を机に置く場合も、点数が不用意に見えないようにします。
教師にとっては毎回扱う数字でも、生徒にとっては大きな意味をもつことがあります。
返却時ほど配慮したいものです。
クラス平均点を「クラスの評価」に使わない
平均点という統計情報そのものが悪いわけではありません。
問題なのは、
「1組65点、2組62点、3組58点。3組が最下位です」
「このクラスは授業態度が悪いから平均点も低いです」
「隣のクラスに負けています」
という使い方です。
一つの平均値を、
「よいクラス」
「悪いクラス」
という評価にしてはいけません。
まして、学級間競争をあおって学習させようとする必要はありません。
平均点の背景には、問題の難易度、学級構成、欠席状況、授業進度など、さまざまな要因があります。
見るべきなのは、
一人一人が何を理解し、何につまずいているかです。
テスト結果は短時間でも分析
全問題を細かく分析する時間がない場合には、
「予想よりできていた問題」
「予想よりできていなかった問題」
を数問ずつ選びます。
そして、
「なぜでしょう」
と考えます。
授業で何度も扱ったからでしょうか。
実験や活動と結び付いていたからでしょうか。
説明方法が効果的だったのでしょうか。
問題文が長すぎたのでしょうか。
練習量が不足していたのでしょうか。
前提となる学習内容でつまずいていたのでしょうか。
問題の聞き方が分かりにくかったのでしょうか。
重要なのは、その分析を次の授業へつなげることです。
「正答率が低かった」
で終われば、分析した意味がありません。
「次の授業で5分扱う」
「次年度は練習を増やす」
「問題文を修正する」
「前提となる内容を先に復習する」
という行動に変えます。
テスト結果の急な変化を生徒指導上の情報として見る
クラス全体だけでなく、一人一人の答案も見ます。
例えば、
「記述問題だけ突然空欄が増えた」
「以前できていた基本問題がほとんどできなくなった」
「これまで空欄だった問題にも取り組むようになった」
という変化があります。
一回のテストだけで、その理由を決めつけてはいけません。
しかし、
「何か変化があった」
と気付く材料にはなります。
『生徒指導提要』では、小テストや中間・期末試験なども、児童生徒理解のための情報として示されています。
テストは、点数を見るだけのものではありません。
子どもを見るための資料でもあります。
テスト後の振り返りは「反省文」にしない
テスト後に振り返りをする場合、
「授業を真剣に聞けたか」
「忘れ物をしなかったか」
「提出物を出したか」
「何時間勉強したか」
だけをチェックして終わらないようにします。
振り返りは、次の五つくらいに整理できます。
1 今回できるようになったこと
テストまでの学習を通して、できるようになったことを書きます。
2 今回つまずいたこと
「できなかった」で終わらせず、どこで止まったかを考えます。
3 役立った学習方法
問題を解いた。
何も見ずに思い出した。
説明した。
間違い直しをした。
質問した。
何が役立ったかを確認します。
4 うまくいかなかった理由
「努力不足」で終わらせません。
始めるのが遅かった。
課題量を多く見積もりすぎた。
問題が難しかった。
方法が合っていなかった。
体調がよくなかった。
予定が変わった。
できるだけ具体的にします。
5 次回、一つだけ変えること
全部変えようとすると続きません。
「次は10日前に一度ワークを開く」
「間違った問題に印を付ける」
「分からない問題を翌日先生に聞く」
など、一つの行動を決めます。
振り返りは、生徒に後悔させるために行うものではありません。
次の学習を調整するために行います。
振り返りに「教師が期待する答え」を書かせない
「次はもっと計画的に勉強したいと思います」
という文章がクラス全員から出てきても、それだけでは十分な振り返りとは言えません。
生徒が、
「先生はこう書いてほしいのでしょう」
と考え始めると、振り返りは形骸化します。
教師が読みたい文章を書かせるのではありません。
本人が、自分の学習を理解するために行います。
次期学習指導要領に向けた議論でも、「記録に残す評価」に過度な労力を割くのではなく、学習途中でのアセスメントやフィードバックなど、「学習改善等に生かす評価」を充実させていく方向が示されています。
何でも成績材料にしない
小テスト。
ノート。
ワーク。
発表。
振り返り。
提出物。
授業中の発言。
定期テスト。
全てを点数化し、全てを成績材料にしようとすると、教師は評価材料を集めることに追われます。
生徒も、
「これ、成績に入りますか」
ばかりを気にするようになります。
評価には、成績を付けるためのものだけではなく、その場で学習を改善するためのものがあります。
教師が生徒を見る。
話を聞く。
その場で助言する。
授業を変える。
そうした評価も大切です。
次期学習指導要領に向けた議論でも、評価場面を精選しながら、「学習改善等に生かす評価」を充実させる必要性が示されています。
定期テストを通した「自分も学べる」という感覚
定期テストは、生徒にとって大きな学校体験の一つです。
私には、今でも忘れられない生徒の言葉があります。
中学3年生の卒業が近づいたある日のことです。
放課後の教室で、一人の生徒がふと、
「俺だって、勉強できた時あるねん」
と言いました。
何のことかと思って話を聞くと、中学1年生の最初の定期テストのことでした。
その生徒は、5教科の合計点を「218点」と、一の位まで覚えていました。
中学1年生の最初の定期テストから、もう3年近くたっています。
それでも、その点数を覚えていたのです。
「最初は頑張ってん」
という言葉も印象に残っています。
私はこのとき、定期テストの点数は、教師が考えている以上に、生徒の中に長く残ることがあるのだと感じました。
もちろん、このエピソードから、
「最初の定期テストは簡単にすればよい」
「全員に高得点を取らせればよい」
という結論にはなりません。
まして、平均点や得点分布を教師が意図的に操作することを目標にするものでもありません。
大切なのは、
「勉強してみたら、前よりできた」
「やり方を変えたら、分かるようになった」
「自分にもできることがあった」
という経験を、生徒が積み重ねていくことだと思います。
218点という数字そのものが大切だったのではありません。
その生徒にとっては、
「自分も頑張ったことがある」
「自分もできたことがある」
という記憶と結び付いた数字だったのではないかと思います。
だからこそ、教師は点数だけを見てはいけません。
30点だった生徒が50点になった。
これまで解けなかった問題が解けた。
ワークの使い方を変えた。
質問できるようになった。
間違った問題を解き直した。
テスト勉強を以前より早く始めた。
そうした一人一人の変化を見つけることが大切です。
そして、
「前よりここができるようになったね」
「今回、何を変えたのですか」
「この勉強方法は自分に合っていたのかもしれませんね」
と返します。
一方で、
範囲が分からない。
何を勉強すればよいか分からない。
努力する方向が分からない。
頑張ったのに、授業とのつながりが見えない問題ばかり出る。
クラス平均で叱られる。
点数をみんなの前で言われる。
間違いを責められる。
このような経験が繰り返されれば、
「学校の勉強は自分には無理だ」
と思う生徒が出てきても不思議ではありません。
反対に、
何を勉強すればよいか分かる。
努力する方向が分かる。
できることが少しずつ増える。
間違っても、次に何をすればよいか分かる。
自分に合った学習方法を少しずつ見つけられる。
先生が自分の変化を見てくれている。
このような経験が積み重なることで、
「自分も学べる」
という感覚につながっていきます。
定期テストで大切なのは、「高い点数を取らせること」ではありません。
また、低い点数を取らせて危機感を持たせることでもありません。
生徒が自分の学習状況を知り、
「何ができるようになったのか」
「何がまだ難しいのか」
「次は何を変えるのか」
を考えられるようにすることです。
そして教師も、その結果を見ながら授業を振り返ります。
定期テストを、生徒を選別するためのものだけにしない。
生徒が自分の学びを知り、次の一歩を考える機会にする。
そこに、定期テストと生徒指導の大きな接点があると考えています。
定期テストを行う教師のチェックリスト
テスト範囲を出す前
□ 範囲が明確である
□ 教材が特定できる
□ 提出物と期限が分かる
□ 「しっかり」「実力問題」などの曖昧な表現だけで終わっていない
□ 欠席していた生徒にも情報が届く
問題作成時
□ 授業の目標や評価規準と対応している
□ 範囲外の問題がない
□ 問題文が明確である
□ 問題量が適切である
□ 配点に合理性がある
□ 解答欄が適切である
□ 自分で解いた
□ 可能なら他の教師にも確認してもらった
試験当日
□ 試験ルールを教師間で共有している
□ 机上に置けるものが明確である
□ 問題配布から開始までの手順が決まっている
□ 公平で落ち着いた環境になっている
□ 必要な配慮を確認している
採点時
□ 採点基準が統一されている
□ 記述問題の許容解答を確認している
□ 部分点の基準が明確である
□ 採点基準を途中で変えた場合は全答案を確認している
□ 普段の印象を採点に持ち込んでいない
返却時
□ 個人の点数が他の生徒に不用意に見えない
□ 点数だけでなく次につながる情報を返している
□ 平均点を学級間競争や叱責に使っていない
□ 疑問がある生徒が確認できるようにしている
テスト後
□ 予想以上にできた問題を確認した
□ 予想以上にできなかった問題を確認した
□ 原因を授業との関係から考えた
□ 一人一人の大きな変化にも気付いている
□ 必要に応じて担任や学年で情報共有した
□ 生徒が自分の学習方法を振り返る機会をつくった
□ 次の授業で変えることを一つ決めた
定期テストは返却して終わりではない
テストを作ります。
テストを実施します。
採点します。
答案を返します。
これだけなら、定期テストは単なる学校行事になってしまいます。
その前にある授業。
生徒の準備。
生徒のつまずき。
答案に表れた変化。
返却時の言葉。
テスト後の振り返り。
そして、教師自身の授業改善。
そこまで含めて、定期テストです。
「この生徒は何点だったか」だけではなく、「この生徒は何ができるようになり、次に何を必要としているのか」を見ます。
定期テストも授業です。
定期テストも生徒指導です。
点数を付けることがゴールではありません。
その結果を、次の学びにつなげることが大切です。
参考資料
・文部科学省「生徒指導提要(令和4年12月改訂)」 文部科学省「生徒指導提要」
・文部科学省「教育課程の実施と学習評価」 文部科学省「教育課程の実施と学習評価」
・文部科学省「小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について」 文部科学省「学習評価及び指導要録の改善等について」
・中央教育審議会教育課程企画特別部会「論点整理」 文部科学省「教育課程企画特別部会における論点整理」
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