中学校の学級経営を安定させる25のTips|担任が大切にしたい学級づくりの基本

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学級経営というと、「学級をまとめる」「規律を守らせる」「問題を起こさない」といったことを思い浮かべるかもしれません。
もちろん、落ち着いた学習環境をつくることは大切です。しかし、学級経営の目的は、単に静かな学級をつくることではありません。
生徒一人一人が安心して過ごせること。
自分の居場所があると感じられること。
失敗してもやり直せること。
必要なときには助けを求められること。
そして、自分たちの学級について自分たちで考え、よりよくしていけること。
そのような環境をつくっていくことが、学級経営の大切な役割だと考えます。
文部科学省『生徒指導提要』では、生徒指導の実践上の視点として、「自己存在感の感受」「共感的な人間関係の育成」「自己決定の場の提供」「安全・安心な風土の醸成」の四つを挙げています。また、学級・ホームルームは、児童生徒にとって学校生活の基盤となる場です。
学級経営と生徒指導は別々のものではありません。
日々の授業、朝の会、帰りの会、休み時間、行事、生徒との何気ない会話。こうした毎日の積み重ねそのものが学級経営です。
ここでは、中学校の学級担任が日々の学級経営で大切にしたいことを、25のTipsとしてまとめます。

1.4月から一年間を見通して学級を設計する

学級経営は、4月の最初の数日間だけで決まるものではありません。
4月にどのような学級にしたいのかを考えることは大切ですが、同時に、1学期、夏休み明け、行事、2学期、3学期、年度末まで見通しておく必要があります。
4月には教師が丁寧に説明する。
少しずつ生徒に任せる。
失敗しながら自分たちで考える経験を増やす。
年度末には、教師が細かく指示しなくても、自分たちで動ける場面が増えている。
そのような一年間の成長を考えます。
「4月に学級を完成させる」のではなく、「一年間かけて学級を育てる」という視点をもちます。

2.最初から完成した学級を求めない

4月から落ち着いている。
忘れ物がない。
時間を守る。
係活動がきちんとできる。
授業中も集中している。
そのような状態を最初から求めすぎると、教師も生徒も苦しくなります。
中学生は成長の途中にいます。当然、失敗します。
学級経営では、失敗させないこと以上に、失敗したあとにどう考え、どう修正するかが大切です。
教師がすべてを先回りして整えるのではなく、生徒が試行錯誤できる余白も残しておきます。

3.教師自身が時間と約束を守る

生徒に時間を守るよう求めながら、教師が時間を守らない。
提出期限を示しながら、教師の返却は大幅に遅れる。
「明日話します」と言いながら、そのまま忘れてしまう。
これでは、教師の言葉に説得力がなくなります。
学級経営の土台になるのは、特別なテクニックではなく、日常の小さな信頼です。
できない約束はしない。
約束したことは守る。
守れなかったときは説明する。
教師自身の行動が、学級の文化をつくります。

4.学級のルールを増やしすぎない

学級を落ち着かせようとすると、ルールを増やしたくなることがあります。
しかし、問題が起こるたびに新しいルールを追加していくと、やがて何のためのルールなのか分からなくなります。
ルールが多いことと、安心して生活できることは同じではありません。
本当に必要なのか。
既存のルールで対応できないのか。
生徒自身が判断できることではないのか。
新しいルールをつくる前に、一度立ち止まって考えます。

5.ルールの目的を説明する

「決まりだから守りなさい」だけではなく、なぜそのルールが必要なのかを考えることが大切です。
安全のためなのか。
他者の学習を保障するためなのか。
誰もが安心して生活するためなのか。
ルールの目的が説明できない場合、そのルール自体を見直す必要があるかもしれません。
『生徒指導提要』でも、校則について児童生徒がその意義を理解し、自ら守ろうとすることが重要とされ、見直しに際して児童生徒の意見を聴くことの意義も示されています。

6.教師によって基準が大きく変わらないようにする

A先生なら注意されない。
B先生なら厳しく注意される。
担任の前ではするが、他の先生の前ではしない。
この状態が続くと、生徒は行動の意味ではなく、「誰が見ているか」で判断するようになります。
すべての教師がまったく同じ指導をする必要はありません。教師にはそれぞれの個性があります。
しかし、安全や人権、授業を受ける権利など、学校として大切にする基本的な部分については、教職員間で共通理解をもつ必要があります。
学級の問題を担任一人の指導力だけで解決しようとしないことが大切です。

7.教室を毎日観察する

教室に入ったとき、すぐに用件だけを済ませて出ていくのではなく、少しだけ教室全体を見ます。
机の配置はどうか。
掲示物はどうか。
床に物が増えていないか。
いつもと違う場所に生徒が集まっていないか。
一人でいる生徒はいないか。
表情がいつもと違う生徒はいないか。
教室には、学級の状態が表れます。
特別な調査をしなくても、毎日の短い観察から分かることがあります。

8.目立つ生徒だけを見ない

教師の注意は、どうしても目立つ生徒へ向きます。
よく発言する。
問題行動が多い。
成績が高い。
リーダーとして活躍している。
一方、静かに学校生活を送っている生徒は、教師の視野から外れやすくなります。
「問題を起こしていないから大丈夫」とは限りません。
困っていても助けを求めない生徒もいます。
学級経営では、「誰を見ているか」だけでなく、「誰を見ていないか」を考えることが大切です。

9.褒められていない生徒を探す

いつも活躍する生徒は、教師から評価される機会も多くなります。
では、最近ほとんど名前を呼んでいない生徒はいないでしょうか。
最近、その生徒のよさを誰かに伝えたでしょうか。
目立つ成果だけを見るのではなく、
昨日より少し早く準備できた。
友達をさりげなく手伝っていた。
係の仕事を黙って続けていた。
提出物を出せるようになった。
そうした小さな変化を見ることが大切です。
ただし、無理に褒める必要はありません。教師が本当に見つけた事実を具体的に伝えることが重要です。

10.欠席している生徒を学級から切り離さない

欠席した生徒に必要な情報が届いているかを確認します。
プリント。
提出物。
時間割変更。
行事の連絡。
学習内容。
こうした情報が届かない状態が続くと、学校へ戻るハードルが高くなる場合があります。
一方で、欠席している生徒への連絡が過度な負担になる場合もあります。
「学校へ来させるための連絡」ではなく、その生徒の状況に応じて、必要な情報やつながりを保障するという視点をもちます。

11.小さな変化を見逃さない

急に遅刻が増えた。
提出物が出なくなった。
友達と離れて行動するようになった。
休み時間に一人でいることが増えた。
授業中に眠るようになった。
表情が変わった。
こうした変化だけで問題があると決めつけることはできません。
しかし、「少し気になる」という教師の感覚を無視しないことは重要です。
気になることがあれば記録する。
他の教師に様子を聞く。
必要に応じて本人と話す。
小さな変化を早く共有することが、大きな問題の予防につながる場合があります。

12.問題が起きやすい時期・時間を意識する

一年中、学級の状態が同じということはありません。
年度当初。
大型連休明け。
夏休み明け。
大きな行事の前後。
進路が具体化する時期。
年度末。
また、一日の中でも、朝、昼休み、授業間、放課後など、教師の目が届きにくい時間があります。
「いつ問題が起きても同じように対応する」だけでなく、変化が起こりやすい時期や時間を意識し、少し丁寧に観察します。

13.問題が小さい段階で対応する

大きなトラブルには誰もが気づきます。
難しいのは、その前にある小さな変化です。
少し嫌な言い方が増えた。
特定の生徒だけが笑われている。
物の扱いが雑になった。
教室の雰囲気が少し変わった。
「まだ大したことではない」と放置すると、対応が難しくなることがあります。
一方で、小さな出来事をすべて重大事案のように扱えば、生徒との関係を損なうこともあります。
必要なのは、早く気づき、事実を確認し、必要なレベルで対応することです。
※具体的な初期対応については、既存記事「問題が小さい段階でどう対応するか」へ内部リンクを設定するとよい。

14.最悪のシナリオまで一度考える

これは、生徒を疑うという意味ではありません。
問題が起きたとき、
「もし、この情報が事実だったらどうなるか」
「安全上の問題はないか」
「他にも関係している生徒はいないか」
「保護者への連絡が必要になる可能性はないか」
「管理職へすぐ報告すべき内容ではないか」
と、一度先まで考えます。
楽観的に決めつけず、可能性を考えた上で事実確認をします。
特に安全や生命、人権に関わることについては、「考えすぎだった」で終わる方がよい場合があります。

15.一人で抱え込まない

担任だから自分で解決しなければならない。
自分の学級だから人に迷惑をかけられない。
その考えが、対応を遅らせることがあります。
学年主任。
生徒指導担当。
養護教諭。
教育相談担当。
スクールカウンセラー。
スクールソーシャルワーカー。
管理職。
必要に応じて専門機関。
学校には、それぞれ異なる立場から生徒を支える人がいます。
『生徒指導提要』でも、チーム支援による組織的対応が生徒指導の基本として位置付けられています。

16.学級の問題を担任だけの問題にしない

「○組が落ち着かない」
「○組の担任は大変そうだ」
で終わらせないことが大切です。
学級の問題には、
教科授業での様子
休み時間の人間関係
部活動
家庭状況
発達上の課題
学習上のつまずき
など、さまざまな要因が関係することがあります。
担任一人だけでは見えない情報があります。
「担任の学級経営力」の問題だけに還元せず、学校全体で考えます。

17.生徒同士の関係を見る

学級経営では、教師と生徒との関係だけでなく、生徒同士の関係を見る必要があります。
誰と誰がよく話しているか。
いつも同じメンバーだけになっていないか。
一人になったときに不安そうな生徒はいないか。
特定の生徒だけが役割を引き受けていないか。
冗談のように見えて、誰か一人だけが傷ついていないか。
表面的にトラブルがなくても、関係性に偏りが生じていることがあります。

18.「群れている」と「つながっている」を区別する

いつも一緒にいる生徒たちが、必ずしも安心できる関係にあるとは限りません。
その集団から外れることを恐れている。
同調しなければならない。
誰か一人がいじられ役になっている。
本当は嫌でも笑っている。
そうした関係もあります。
「友達が多いから大丈夫」と決めつけず、その集団の中で一人一人が自分の意思を出せているかを見ます。

19.少数派の生徒が安心できる学級にする

学級では、多数派の価値観が「普通」になりやすくなります。
みんな行事が好き。
みんな人前で話したい。
みんな友達と一緒に活動したい。
みんな同じことを楽しいと思う。
実際にはそうではありません。
大人数が苦手な生徒もいます。
一人で考える方が力を発揮できる生徒もいます。
人前で話すことに強い不安を感じる生徒もいます。
多数派に合わせられることだけを「成長」と考えず、多様な参加の仕方を認めます。

20.行事の勝敗で学級を評価しない

体育大会で優勝した。
合唱コンクールで賞を取った。
それ自体は素晴らしい経験です。
しかし、
優勝したからよい学級。
負けたからまとまっていない学級。
ではありません。
結果の陰で、無理をしていた生徒はいなかったか。
意見の違う生徒を排除していなかったか。
一部の生徒だけが頑張っていなかったか。
教師が結果を求めすぎていなかったか。
結果だけでなく、その過程を見ます。

21.行事の完成度を求めすぎない

教師は経験があるため、「もっとできる」と思ってしまうことがあります。
しかし、教師が完成度を求めすぎると、生徒の活動だったはずのものが、教師の作品づくりになってしまいます。
合唱。
体育大会。
文化的行事。
学年行事。
大切なのは、教師が思い描いた完成形に近づけることだけではありません。
生徒自身が考える。
話し合う。
失敗する。
修正する。
役割を果たす。
その過程に教育的な価値があります。

22.生徒が自分たちで決める機会をつくる

学級経営では、教師が決めたことを生徒に守らせるだけではなく、生徒自身が考え、決める経験をつくります。
係活動。
学級目標。
行事の進め方。
話合いのルール。
学級の課題。
すべてを生徒に任せればよいわけではありません。
教師が責任を負うべきこともあります。
しかし、生徒が考えられることまで教師が決めてしまわないことが大切です。
『生徒指導提要』でも、自己決定の場を提供し、児童生徒が自ら選択・決定する機会を設けることが重視されています。

23.学級の状態を定期的に振り返る

学級経営は、教師の感覚だけで判断しないことも大切です。
最近、発言する生徒が固定されていないか。
一人でいる生徒はいないか。
遅刻や欠席に変化はないか。
係活動は一部の生徒に偏っていないか。
生徒同士の言葉が荒くなっていないか。
生徒自身は学級をどう感じているか。
教師の観察、日常の会話、アンケート、他の教員からの情報など、複数の材料から学級を見るようにします。
「問題が起きていないから順調」と判断しないことが大切です。

24.保護者と情報を共有する

保護者への連絡を、「問題が起きたときだけするもの」にしないことが大切です。
学校で頑張っていたこと。
以前よりできるようになったこと。
友達を助けていたこと。
そのような情報も伝えます。
一方で、問題が起きた場合には、事実と教師の推測を混同せず、確認できていることを丁寧に伝えます。
学校と家庭が「どちらが正しいか」を争う関係になるのではなく、生徒の成長を支えるために必要な情報を共有する関係をつくります。

25.「問題のない学級」ではなく「安心して過ごせる学級」を目指す

表面的に問題が起きていない学級が、必ずしもよい学級とは限りません。
教師に注意されないよう、生徒が黙っているだけかもしれません。
困っていても言えないのかもしれません。
少数の生徒が我慢することで、表面的な秩序が保たれているのかもしれません。
目指したいのは、教師の言うことをよく聞く学級だけではありません。
自分の考えを言える。
違う意見を聞ける。
困ったときに助けを求められる。
失敗してもやり直せる。
自分もこの学級の一員だと思える。
そのような学級です。
学級経営は、特別なイベントによってつくられるものではありません。
朝、教師がどのような表情で教室に入るか。
誰に声をかけるか。
誰の変化に気づくか。
授業で誰を見ているか。
生徒同士の関係をどう見るか。
問題が起きたときにどう対応するか。
そうした毎日の小さな積み重ねによって、学級の文化はつくられていきます。
担任一人ですべてを背負う必要もありません。
生徒、保護者、学年、学校の教職員とともに、一年間かけて学級を育てていくことが大切です。

参考資料

・文部科学省「生徒指導提要(令和4年12月)」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1404008_00001.htm
・文部科学省「中学校学習指導要領(平成29年告示)」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/1384661.htm
・こども家庭庁「こども基本法」
https://www.cfa.go.jp/policies/kodomo-kihon

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