不登校の生徒を担任したら最初に考えたいこと|登校だけをゴールにしない、学びとつながりを支える実践

この記事は約77分で読めます。

不登校の生徒を担任すると、教師は迷います。
電話をした方がよいのか。
しない方がよいのか。
家庭訪問をした方がよいのか。
本人に会えなくてもよいのか。
教材はどのくらい届ければよいのか。
「明日は来られそう?」と聞いてよいのか。
そっとしておくべきなのか。
保護者には何と話せばよいのか。
別室へ来られたら、次は教室へ誘うべきなのか。
中学3年生なら、いつから進路について話せばよいのか。
そして、何をしても本人が学校へ来ないと、
「自分の関わり方が悪いのではないか」
「担任として何もできていないのではないか」
と思うことがあります。
この文章は、そのような先生のために書きました。
特に、次のような先生に読んでほしいと思っています。
・今年度、初めて不登校の生徒を担任している。
・不登校を経験した生徒の担任になったが、前年度の支援をどう引き継げばよいか分からない。
・三者面談を控えているが、何を話せばよいか迷っている。
・保護者や本人の気持ちをつかめている気がしない。
・家庭訪問を続けているが、これでよいのか分からない。
・別室登校している生徒への次の支援を迷っている。
・不登校の中学3年生の進路指導を担当している。
・教育支援センターやフリースクールとの連携について知りたい。
・評価や出席扱いについて保護者から質問され、自信を持って答えられない。
・担任自身が不登校対応に疲れてきた。
・後輩の先生から不登校対応について相談され、どう助言すればよいか迷っている。
不登校支援に関する本や実践記録を読むと、非常に熱心な実践に出会うことがあります。
毎日家庭訪問した。
何か月も手紙を書き続けた。
休日にも本人と関わった。
長期間関わり続け、やがて学校復帰につなげた。
すばらしい実践だと思います。
しかし、そのような「キラキラした成功談」を読んで、
「自分にはそこまでできない」
「もっと時間をかけなければいけないのではないか」
「自分は担任として力が足りないのではないか」
と苦しくなる先生もいます。
私は、そうなってほしくありません。
最初に、一番伝えたいことを書きます。
担任一人の力で、不登校を「解決」しようとしなくてよいです。
そして、
学校へ登校させることだけが、担任の仕事でもありません。
不登校支援には、
「この方法なら必ずうまくいく」
という魔法はありません。
電話を喜ぶ生徒もいれば、電話が鳴るだけで緊張する生徒もいます。
家庭訪問を楽しみにする生徒もいれば、自宅だけは学校から離れられる場所にしたい生徒もいます。
友達からの連絡を喜ぶ生徒もいれば、学校の友達とつながること自体が負担になる生徒もいます。
オンライン授業なら参加できる生徒もいれば、教室の声を聞くだけで苦しくなる生徒もいます。
同じ生徒であっても、状態は変わります。
4月には電話にも出られなかった。
6月には短いメッセージなら読めるようになった。
9月には教育支援センターへ行き始めた。
12月には自分から高校について質問した。
そのような変化もあります。
反対に、昨日できたことが今日はできなくなることもあります。
だから、不登校支援では、
「Aという状態ならBをする」
という単純なマニュアルをつくることが難しいのです。
私は、不登校の生徒を担当するとき、次の四つを土台にしたいと考えています。
一つ目。生徒と保護者に思いを馳せること。
二つ目。生徒と保護者のエネルギーを奪わないこと。
三つ目。中学校への登校だけをゴールにしないこと。
四つ目。学校へ来ていなくても、学びとつながりを切らさないこと。
この四つです。
ここでいう「エネルギー」は医学的な概念ではありません。
起きる。
考える。
話す。
人に会う。
外へ出る。
何かを選ぶ。
勉強する。
将来について考える。
そのために本人や家庭が使える「余力」をイメージした言葉です。
学校は善意で関わります。
しかし、善意であっても、本人の余力を奪うことがあります。
「明日は来られる?」
「宿題はどうする?」
「テストは?」
「このままで高校は大丈夫?」
「昼夜逆転を直そう」
「行事だけでも来ない?」
一つ一つの言葉が常に間違っているわけではありません。
しかし、本人がすでに大きく疲れているときに、毎日のように言われれば、それだけで苦しくなることがあります。
だから私は、
「何をしてあげるか」を考える前に、「何をしない方がよいか」を考える
ことが大切だと思っています。
そしてもう一つ。
「登校だけをゴールにしない」
ということは、
「学校へ来なくてよいのだから、学校は何もしなくてよい」
という意味ではありません。
むしろ逆です。
学校へ行けなくても学習できる。
相談できる。
必要な情報が届く。
人とつながれる。
進路を選べる。
学校外の学びにもつながれる。
そして本人が、
「少し学校へ行ってみようかな」
と思ったときには、その道が閉ざされていない。
そのような状態をつくることが学校の役割だと思います。
2026年8月現在、国の不登校施策も、「学校に登校する」という結果だけを目標にするのではなく、本人が自らの進路を主体的に捉え、社会的に自立していくことを目指す方向を明確にしています。また、不登校の時期が休養や自分を見つめ直す意味を持つ場合がある一方で、学習の遅れや進路上の不利益等にも留意し、学びを保障する必要があるとしています。
2026年8月時点では、次期学習指導要領に向け、不登校児童生徒に対する「特別の教育課程」を一般の義務教育段階にも広げる方向の検討が進んでいます。8月4日の教育課程企画特別部会資料では、本人自身が学習目標の設定に関わること、心身の状態や学習状況に応じて学習内容・方法等を柔軟に考えること、小さな「学びのサイクル」を実感できるようにすることなどが示されています。ただし、2026年8月現在はあくまで改訂に向けた審議段階であり、一般の学校が直ちに自由な特別の教育課程を編成できる制度になったわけではありません。
不登校をめぐる考え方は、大きく変わっています。
しかし、変わらないものもあります。
生徒のことを考える。
保護者の話を聞く。
約束を守る。
一人で抱え込まない。
本人が戻りたくなったときの居場所を守る。
必要な情報を届ける。
そのような日々の小さな実践です。
この文章では、制度だけではなく、
「明日の朝、担任として何をすればよいのか」
まで考えていきます。

1.不登校を見る目を変える

不登校は「問題行動」ではない

まず、学校側の基本的な見方を確認しておきたいと思います。
文部科学省は、不登校について、取り巻く環境によってはどの児童生徒にも起こり得るものであり、不登校というだけで問題行動であると受け取られないよう配慮する必要があるとしています。
これは非常に重要です。
「学校へ来ない生徒」
を見ると、
教師は無意識に、
「本来あるべき状態から外れている」
と捉えます。
すると支援も、
「どうすれば元へ戻せるか」
から始まります。
しかし、
学校へ来られない理由は一人ひとり違います。
心身の不調。
人間関係。
いじめ。
学習上の困難。
学校環境。
教職員との関係。
発達上の特性。
家庭状況。
疾病。
複数の事情が重なっている場合もあります。
本人にも明確な理由が分からない場合があります。
「学校へ行きたいけれど行けない」
「なぜ行けないか自分でも分からない」
という状態もあります。
そこで、
「なぜ来ないのか」
だけで生徒を見ないことです。
「今、どのような状態なのか」
を見ます。

「学校へ戻す」から始めない

不登校の生徒を担任すると、
「学校へ戻すこと」
が頭に浮かびます。
学校は教育の場です。
友達もいます。
授業もあります。
教師として学校へ来てほしいと思うのは自然です。
しかし、
「来てほしい」
という教師の願いと、
「今、その生徒に何が必要か」
は分けて考えます。
現在の国の考え方でも、不登校支援は登校という結果だけを目標にせず、児童生徒が主体的に進路を捉え、社会的に自立することを目指すことが示されています。
だから、
「どうやって登校させるか」
ではなく、
「この生徒が今の状態から、どう学び、どう人とつながり、どう次の段階へ進んでいくか」
を考えます。
学校へ来ることが、そのための一つの選択肢になることはあります。
しかし、唯一の選択肢ではありません。

「登校をゴールにしない」は学校を軽く見ることではない

ここは誤解されやすいところです。
「学校へ来なくてもいい」
と言うだけなら簡単です。
しかし、それだけでは支援になりません。
学校には大きな役割があります。
授業。
友人。
多様な大人との出会い。
文化・スポーツ活動。
進路。
社会との接点。
学校でしか得にくい経験もたくさんあります。
だから、学校の価値を否定する必要はありません。
むしろ、
学校へ行きたいと思った生徒が、安心して行ける学校にする
ことが大切です。
現在の文部科学省通知でも、不登校となった児童生徒への個別支援だけでなく、授業への満足感、教職員への信頼感、学校生活への安心感など「学校風土」を把握し、誰もが安心して学べる魅力ある学校づくりを進めることが求められています。
つまり、
「この子を学校へ戻す」
だけでなく、
「この学校は、この子が戻りたいと思える学校なのか」
も問わなければなりません。

休むことを美化もしない、否定もしない

不登校の時期に休養が必要な場合があります。
一方で、
「休んでいればいつか自然に回復する」
と決めつけることもできません。
休養によって状態が安定する生徒もいます。
学習や人とのつながりが失われることで、さらに不安が強くなる生徒もいます。
大切なのは、
「休ませるか、登校させるか」という二択にしないこと
です。
今は休む。
必要な情報だけ受け取る。
少し本を読む。
オンラインでつながる。
教育支援センターに行く。
午後だけ別室へ行く。
状況に応じて変わっていきます。

欠席日数だけで生徒を見ない

欠席日数は重要な情報です。
ただし、欠席日数だけでは本人の状態は分かりません。
学校には来ていない。
でも教育支援センターには週4日通っている。
学校には来ていない。
でも自宅で毎日数学をしている。
学校には来ていない。
でも夕方なら友達と話せる。
学校には来ていない。
でも高校について調べ始めた。
反対に、
一日学校へ来られたからといって、
すべてが回復したとも限りません。
本人がかなり無理をして登校していることもあります。
一日の登校によってエネルギーを使い切り、その後数日動けなくなる生徒もいます。
だから、
「登校した=良くなった」「欠席した=悪くなった」
という単純な評価をしないことです。

不登校の増加を「最近の子どもは弱い」で終わらせない

令和6年度の国の調査では、小・中学校の不登校児童生徒数は約35万4千人となり過去最多でした。一方で、増加率は前年度の15.9%から2.2%へ低下し、新規不登校児童生徒数の減少や不登校継続率の低下も確認されています。人数の多さを深刻に受け止めつつ、「際限なく同じペースで増え続けている」と単純化するのも正確ではありません。
人数が増えている理由を、
「最近の子は我慢ができない」
「家庭が甘くなった」
と説明しても、学校ができることは見えてきません。
文部科学省の調査では、不登校のきっかけ・要因について、本人・保護者と教師の認識に差があることも示されています。学校側には、一人ひとりの状況を把握するとともに、学校生活でつらいと感じる要因を減らす取組が求められています。

原因探しを急がない

「どうして学校へ来られないの?」
教師は聞きたくなります。
初期段階では必要な確認があります。
いじめ。
教職員からの不適切な対応。
健康上の問題。
学習上の困難。
友人関係。
安全に関わることは確認しなければなりません。
しかし、ある程度時間が経っているにもかかわらず、
「原因は何?」
と何度も本人へ問い続けることは避けたいところです。
本人自身が分からないことがあります。
分かっていても話したくないことがあります。
一つだけの原因ではないこともあります。
原因を「白状させる」ような関わりになってはいけません。
安全に関わる必要な確認をした上で、
「今、何が負担なのか」
「何ならできるのか」
「学校に変えてほしいことはあるのか」
へ視点を移します。

学校側の要因を必ず考える

不登校になると、
本人。
家庭。
生活リズム。
ゲーム。
体調。
に目が向きやすくなります。
しかし、学校側にも問いを向けます。
授業は理解しやすいか。
課題量は過剰ではないか。
失敗が許される教室か。
人前で叱責されることはないか。
集団活動を過度に求めていないか。
音、光、におい、人混みなど環境面の負担はないか。
休み時間に安心できる場所はあるか。
相談しやすい大人はいるか。
校則や暗黙のルールが過度な負担になっていないか。
本人が助けを求めたとき、学校は応じられていたか。
「なぜこの子は学校に来られないのか」
だけではなく、
「この学校で変えられることは何か」
を考えます。

本人の意見を支援の中心に置く

現在の教育を考える上で、以前よりはるかに重要になっているのが本人の意見です。
こども基本法は、こどもの年齢や発達の程度に応じて意見を表明する機会を確保し、その意見を尊重し、最善の利益を優先して考慮することを基本理念としています。
不登校支援でも、
大人だけで、
「週1回別室へ来る」
「家庭訪問を増やす」
「友達から連絡してもらう」
と決めないことです。
本人へ聞きます。
「学校からの連絡は、どのくらいなら大丈夫?」
「電話とメッセージならどちらが楽?」
「先生が家へ行くのはどう?」
「プリントはどのくらい欲しい?」
「友達から連絡が来るのはどう?」
「学校のことを知りたい?今はあまり知りたくない?」
「勉強するなら何ならできそう?」
すべて答えられる必要はありません。
「分からない」
「今は決めたくない」
も大切な意思です。

「本人の意思を尊重する」と「何もしない」は違う

本人が、
「学校と関わりたくない」
と言いました。
その言葉を尊重することは大切です。
しかし、
「では学校は何もしません」
と完全に関係を切ることが、本人にとって最善とは限りません。
必要な進路情報は届くようにする。
重要な手続は知らせる。
家庭との連絡は維持する。
本人が学びたくなったときの入口を残す。
安全に関わることは確認する。
本人の負担を減らしながら、必要な関係は維持します。
尊重とは、
本人の言葉を一度聞いて手を引くことではなく、本人が選べるように支援の形を調整すること
です。

教師の「成功」の定義を変える

不登校の生徒が学校へ戻った。
担任はうれしいと思います。
しかし、
学校へ戻らなかったからといって、担任の支援が失敗だったとは限りません。
本人が担任からのメッセージを読めるようになった。
保護者が学校へ相談できるようになった。
教育支援センターへつながった。
医療へつながった。
自宅で学習を再開した。
本人が自分の希望を言えた。
高校について考え始めた。
自分で進路を決めた。
学校には戻らなかったが、卒業後に学び始めた。
これらも支援の成果です。
担任の力量を登校日数で測らない。
これは、生徒のためだけでなく、担任を守るためにも大切です。

2.最初の対応を整える

30日休んでから動く必要はない

統計上、不登校には欠席日数に関する定義があります。
しかし、
支援開始まで30日待つ必要はありません。
欠席が連続し始めた。
遅刻・早退が急に増えた。
保健室へ行く回数が増えた。
朝になると腹痛を訴える。
「学校へ行きたくない」と言うようになった。
提出物が急に出なくなった。
表情が変わった。
この段階で気付きます。
現在の国の施策でも、1人1台端末等も活用しながら、小さなSOSを早く把握し、SC・SSWや関係機関と連携して支援する方向が重視されています。

新年度の引継ぎで最初に見ること

不登校の生徒を新しく担任したら、最初から自分のやり方を始めないことです。
まず前年度までの情報を確認します。
・いつ頃から欠席が増えたか
・どんな日は登校できたか
・本人が話しやすい教職員は誰か
・保護者との連絡方法
・本人への連絡方法
・家庭訪問の経過
・本人が負担に感じた支援
・本人が喜んだ支援
・別室利用の状況
・教育支援センター等の利用状況
・医療とのつながり
・SC、SSW等とのつながり
・学習状況
・成績評価上の課題
・進路に関する本人・家庭の考え
・友人関係
・学校から学級へ何を説明しているか
特に聞いておきたいのが、
「何をしたときにうまくいかなかったか」
です。
毎朝の電話が負担だった。
突然の家庭訪問が嫌だった。
友達を家へ連れて行ったら、その後学校との関係が悪くなった。
大量の教材を届けることがプレッシャーになった。
行事に誘い続けることが苦しかった。
こうした情報は、成功事例と同じくらい重要です。

引継ぎは答えではない

前担任が、
「本人は家庭訪問を嫌がります」
と引き継いだ。
だから今年も絶対に嫌だとは限りません。
本人は変化します。
家庭の状況も変化します。
去年は電話が難しかった。
今年は短い電話なら大丈夫かもしれません。
逆もあります。
引継ぎは、
地図ではありますが、答えではありません。
その時点の本人へ、改めて確認します。

最初の保護者面談は「調査」にしない

不登校の生徒を担当すると、
「まず情報を集めなければ」
と思います。
その結果、最初の保護者面談で、
幼少期は?
発達は?
家庭環境は?
夫婦関係は?
友達は?
ゲーム時間は?
何時に寝ていますか?
と質問を重ねてしまうことがあります。
必要な情報はあります。
しかし、最初から全部聞く必要はありません。
保護者にとっては、
「子育てを査定されている」
ように感じることがあります。
最初に、
「今日一度ですべてをお聞きするつもりはありません」
「今、学校が知っておいた方がよいことと、ご家庭が一番困っていることを教えてください」
と伝えます。
最初の面談は、
情報回収だけでなく、
「この学校には話してもよさそうだ」と感じてもらう時間
です。

最初に保護者の願いを聞く

保護者は何を望んでいるでしょうか。
学校へ戻ってほしい。
今はしっかり休ませたい。
学習だけは続けたい。
高校進学への選択肢を残したい。
担任との関係を切ってほしくない。
家庭訪問は減らしてほしい。
友達とはつないでほしい。
本人をそっとしておいてほしい。
願いは家庭によって違います。
その願いをすべて実現する必要はありません。
本人の希望と違うこともあります。
しかし、
保護者が何を一番恐れているのか
を知ることは重要です。
「このまま一生家から出なくなるのではないか」
「高校へ行けないのではないか」
「友達が一人もいなくなるのではないか」
その不安が分かれば、その後の話し方も変わります。

本人への最初の連絡は小さくする

新担任になると、
「一度本人と話さなければ」
と思います。
しかし、最初から面談を目標にしなくても構いません。

今年担任になった○○です。
学校のことで必要なことがあればいつでも連絡してください。
今すぐ返事はいりません。
これくらいでもよいことがあります。
担任が本人と直接話せていないことへの不安と、
本人が今必要としていることを分けます。
教師自身が安心するために、本人へ会おうとしない。

一人で対応しない

不登校支援で最も大切な原則の一つです。
一人で抱えません。
よくある危険な流れがあります。
担任一人で対応する。
最初に頑張りすぎる。
毎日電話する。
頻繁に家庭訪問する。
教材も準備する。
面談もする。
数か月後、続かなくなる。
本人や家庭から見ると、
「最初はあんなに来てくれたのに、最近は来なくなった」
となる。
学校への不信感が強くなる。
こうしたことは避けたいところです。
最初から、
一年間続けられる支援
を考えます。

チームの役割を分ける

例えば、
担任:日常の連絡、学級とのつながり
学年主任:担任支援、学年内調整
養護教諭:健康面、保健室等との連携
教育相談担当:校内支援の調整
不登校担当:校内外の支援資源との接続
SC:心理面の助言、本人・保護者相談、教員へのコンサルテーション
SSW:福祉・家庭・関係機関との調整
特別支援教育コーディネーター:特性や合理的配慮等の検討
進路担当:最新の進路情報
教務:評価、教育課程等の調整
管理職:学校としての判断、組織調整
というように役割を分けます。
学校の体制によって違って構いません。
重要なのは、
「○○さんのことは担任しか分からない」状態にしないこと
です。
現在の国の不登校対策でも、「チーム学校」での支援、SC・SSW、関係機関との連携が明確に重視されています。

約束したことは守る

保護者や本人から、様々な質問を受けます。
「定期テストを受けなかったら評価はどうなりますか」
「家でやった勉強は成績に入りますか」
「午後から学校へ行ってもいいですか」
「修学旅行はいつまでに決めればいいですか」
「高校入試で欠席日数はどう扱われますか」
すぐに答えられない質問もあります。
その場合、
分からないことをその場で答えない
ことです。

その件は確認が必要なので、○曜日までにお返事します。
と伝えます。
そして約束した期限までに答えます。
未来は約束しません。
しかし、
学校として約束できる行動は守る。
信頼は、大きな感動的実践より、こうした小さな約束から積み上がることがあります。

「すぐ返事する」と「教師が無理をする」は違う

以前なら、
「質問されたら、その日のうちに学校へ戻って調べて電話する」
という対応もあったかもしれません。
確かに迅速な回答は信頼につながります。
しかし、
教師が毎回自分の生活を削る必要はありません。
大切なのは、
早さより、約束した期限と正確さ
です。
「明日確認して連絡します」
と伝えたなら明日答える。
それで十分です。

支援記録を残す

不登校支援は長期間になることがあります。
記憶だけに頼りません。
・日時
・連絡方法
・本人との接触状況
・保護者から聞いた重要事項
・本人の希望
・学校から伝えたこと
・約束したこと
・次の対応
を必要な範囲で記録します。
「母親が過保護」
「本人にやる気がない」
といった評価語ではなく、
「保護者から○○という希望があった」
「本人から○○という発言があった」
と事実中心に記録します。

安全に関わることは優先順位を変える

不登校だから、いつでも「ゆっくり待つ」が正解ではありません。
いじめ。
虐待。
重大な疾病。
自傷。
「死にたい」という発言。
自殺企図。
生命・安全に関わる兆候がある場合は、通常の不登校支援とは優先順位が変わります。
担任だけで抱えません。
2026年4月には改正自殺対策基本法が全面施行され、文部科学省も同年7月、学校と関係機関との連携強化を含めた自殺予防の一層の充実を通知しています。
本人から、
「誰にも言わないで」
と言われても、生命を守るため必要な人と共有しなければならない場合があります。
そのときは、
「あなたを守るために、先生一人だけの秘密にはできないことがあります。誰にどう伝えるかは、できるだけ一緒に考えたいです」
と説明します。

3.本人との関係をつくる

「思いを馳せる」とは何か

この記事の中心となる言葉です。
思いを馳せる。
ただし、
「きっとこう思っている」
と本人の感情を決めつけることではありません。
むしろ、
「自分には本当の気持ちは分からない」
という前提に立ち、
相手の側から考えてみることです。
担任が毎週プリントを届ける。
教師には、
「学習が遅れないように」
という善意があります。
本人から見ると、
毎週増えるプリントの山が、
「みんなはどんどん進んでいる」
「自分は何もできていない」
という証拠に見えるかもしれません。
担任が、
「体育大会だけでもおいで」
と誘う。
教師には、
「楽しい行事なら参加しやすいだろう」
という善意があります。
本人は、
「久しぶりに行ったらみんなに見られる」
「何で休んでいたのと聞かれる」
「次の日から学校へ行かなければと思われる」
と考えるかもしれません。
だから、
善意だけで支援を評価しない。
「本人にはどう届くか」
まで考えます。
そして最後は、本人へ確認します。

エネルギーを「ためる」前に「奪わない」

教師は、
「元気になってほしい」
と考えます。
しかし、大人が本人を元気にしようとしすぎること自体が負荷になることがあります。
「外へ出よう」
「勉強しよう」
「友達に会おう」
「学校へ少し来よう」
何かを足す前に、
減らせるものを考えます。
連絡を減らす。
課題を減らす。
質問を減らす。
面談時間を短くする。
学校の話をしない日をつくる。
支援は、足し算だけではありません。

教師のエネルギーレベルを合わせる

家庭訪問へ行った教師が、部活動直後で非常に元気です。
玄関を開けた瞬間、
「○○!元気か!久しぶり!今日何時に起きた?」
と勢いよく話す。
本人は疲れることがあります。
元気な人の話を聞くには、こちらにもエネルギーが必要だからです。
暗く接する必要はありません。
しかし、
相手の状態より少しだけ明るいくらい
を意識します。
静かに話す。
質問を重ねない。
沈黙があっても焦らない。
教師の「いつものテンション」を相手に浴びせないことです。

「今日は答えなくてよい」を使う

教師の質問は、本人にとって宿題になります。
「最近どう?」
「来週来られそう?」
「高校どうする?」
答えなければいけないと思います。
そこで、

今、答えなくても大丈夫です。
考えたくなったらそのときでいいよ。
という言葉を使います。
答えを待てる教師でいたいと思います。

返事を求めない連絡を使う

例えば、

今週の連絡だけです。
来週は定期テストがあります。
受けるかどうかは今すぐ決めなくても大丈夫です。
必要な資料があれば教えてください。
返事はいりません。
この程度の短いメッセージでよいことがあります。
「返事はいらない」
と書いたのなら、
翌日、
「読んだ?」
とは聞きません。

「また来るね」を軽く約束しない

家庭訪問の帰りに、
「また来るね」
と何気なく言います。
本人がその言葉を楽しみにした場合、
「いつ来るのだろう」
と待つことになります。
教師側にとっては軽い言葉でも、本人には約束になることがあります。
次回が決まっているなら、
「次は○月○日の予定です。変更になる場合は連絡します」
と具体的にします。
決まっていなければ、
「今日はありがとう」
で帰ってもよいと思います。
期待を持たせるなら、責任を持てる形で。

「明日は行く」と言ったのに来なかった

これは「裏切り」ではありません。
前日の夜には、本当に行こうと思っていたかもしれません。
制服を準備した。
目覚ましをかけた。
でも朝になったら体が動かなかった。
学校を想像したら怖くなった。
「行きたい」と「行ける」は同じではありません。

昨日は行こうと思っていたんだね。今朝は難しかったんだね。
それくらいでよい場合があります。
「約束したよね」
とは言いません。

一度できたことを翌日のノルマにしない

別室へ来られた。
教師はうれしくなります。
「じゃあ明日も」
と言いたくなります。
体育大会へ参加できた。
「これをきっかけに学校へ戻れる」
と思いたくなります。
しかし、一度の参加に全エネルギーを使ったかもしれません。
今日できたことを、明日の最低ラインにしない。
不登校支援では非常に大切な原則です。

「みんな待っているよ」を慎重に使う

温かい言葉です。
本人が喜ぶこともあります。
しかし、
「みんなを待たせている」
「早く戻らないといけない」
と受け取ることもあります。
「○○さんがいないとクラスが寂しい」
という言葉も同じです。
励ましは、
言った側の善意ではなく、受け取った側への影響
まで考えます。

友達を教師の代理にしない

仲のよい友人がいると、
「プリントを届けてあげて」
「LINEしてあげて」
「学校へ誘ってあげて」
と頼みたくなります。
しかし、友達は支援スタッフではありません。
本人も、
「友達が先生の代理になった」
と感じることがあります。
本人と友達の自然な関係を大切にします。
友人を介する場合も、本人の意向と友人側の負担に十分配慮します。

本人の机を物置にしない

非常に小さなことですが、私は大切だと思っています。
不登校の生徒の机の上が、他の生徒の荷物置きになっている。
机が端へ寄せられている。
机の中にプリントが無造作に詰め込まれている。
久しぶりに来た生徒がそれを見たら、どう感じるでしょうか。
「自分の場所はもうない」
と感じるかもしれません。
だから、
来たときに居場所がある状態
を保ちます。
ただし、
「絶対に一年間同じ席を空ける」
という一律のルールではありません。
席替え等について本人に確認できるなら確認します。

配布物をそのまま全部届けない

学校のプリントは大量です。
教科プリント。
学校だより。
学年だより。
学級通信。
保健だより。
給食だより。
行事。
進路。
広告。
全部届けることが親切とは限りません。
本人と家庭に確認します。
「教科プリントは必要?」
「どの教科が欲しい?」
「学年だよりは?」
「進路の資料は必ず届けるね」
というように整理します。
教材を届ける場合も、
教科別に分ける。
解答を付ける。
取り組む必要のないものを明確にする。
本人が少ないエネルギーで扱える形にします。

本人が大切にしているものを否定しない

ゲーム。
漫画。
スマートフォン。
音楽。
動画。
アイドル。
鉄道。
昆虫。
スポーツ。
プログラミング。
本人が大切にしているものがあります。
学校へ行っていない生徒がゲームをしていると、
「ゲームをやめれば学校へ行けるのでは」
と思うことがあります。
しかし、ゲームが、
友達とのつながり。
達成感。
役割。
安心。
嫌なことを忘れる時間。
になっている場合もあります。
それを理解せず、
「ゲームをやめなさい」
と指導すれば、
「この先生も分かってくれない」
と思われることがあります。
もちろん、生活への重大な影響等がある場合には、家庭や必要な専門家と一緒に考えます。
大切なのは、
ゲームを善悪で判断する前に、本人にとってどんな役割を持っているかを見ること
です。

外出を課題にしない

「週1回は外へ出ましょう」
という提案が合う生徒もいます。
しかし、
外へ出た=回復。
外へ出ない=停滞。
ではありません。
「学校には行けないのに買い物には行ける」
と責めることもしません。
学校と買い物では負荷が全く違います。
学校には、
時間割。
集団。
評価。
友人関係。
教師。
ルール。
過去の経験。
多くの負荷があります。
本人の状態を見ます。

生活リズムを登校の前提条件にしない

健康的な生活は大切です。
しかし、
「朝7時に起きられるようになったら学校へ来よう」
という一つの順番しかないわけではありません。
午後なら話せる。
夕方なら学べる。
オンラインならできる。
現在の状態から始めることもできます。
持続する体調不良がある場合は、必要な医療につなぎます。

起立性調節障害を「怠け」と見ない

中学生の不登校では、起立性調節障害について知っておく必要があります。
日本小児心身医学会は、起立時の頭痛、めまい、倦怠感などが生じ、午前中に症状が強く学校生活に支障を来すことがあると説明しています。また学校の理解と環境調整の重要性も示しています。
教師が診断することはできません。
「朝起きられないから起立性調節障害だ」
とも、
「夕方ゲームができるから病気ではない」
とも判断しません。
本人の症状を疑わず、必要な医療につなぎ、医療的助言を踏まえて学校生活を調整します。

4.保護者を一人にしない

保護者も支援される側

不登校になると、保護者に多くの負担がかかります。
朝、本人の様子を見る。
欠席連絡をする。
仕事を調整する。
学校から電話を受ける。
医療へ連れて行く。
支援施設を調べる。
進路を調べる。
夫婦で意見が違う。
祖父母から何か言われる。
きょうだいへの対応もある。
そして、
「自分の育て方が悪かったのでは」
と自分を責めていることもあります。
現在の文部科学省通知でも、不登校の早期支援には保護者への情報提供や相談支援が重要であるとされています。
本人を支えるために、
本人を支えている保護者も支える。
この視点が必要です。

「家庭で何とかしてください」を減らす

学校から家庭へ、
「朝起こしてください」
「生活リズムを直してください」
「ゲームを管理してください」
「勉強させてください」
「散歩させてください」
「病院へ行ってください」
と次々に依頼すると、家庭は疲れます。
一つ一つに理由があっても、全部集めれば大変です。
何かお願いする前に、
「これは学校が引き受けられないか」
を考えます。

保護者の願いと本人の願いが違っていてよい

保護者は、
「少しでも学校へ戻したい」
本人は、
「今は学校から離れたい」
と思っています。
どちらが正しいかを決める必要はありません。
まず、
「考えが違う」
ことを確認します。
その上で、
「高校への選択肢は残したい」
「心身の状態は悪化させたくない」
「必要な学びは続けたい」
など共通点を探します。

「親が甘い」という言葉を職員室から減らす

「親が甘い」
「もっと厳しくしたらいいのに」
という言葉は、支援を止めます。
なぜなら、
「家庭が変わらない限り学校には何もできない」
という発想につながるからです。
学校で変えられることへ戻ります。

保護者を安心させるために未来を約束しない

「この子なら大丈夫ですよ」
「GWまでには来られると思います」
「高校へ行けば変わります」
その瞬間は、保護者が安心するかもしれません。
しかし、そうならなかったとき、失望は大きくなります。
過去の似た生徒が学校へ戻ったとしても、今回も同じとは限りません。
私は、

どうなるかは今の時点では分かりません。
ただ、今できることは一緒に整理できます。
状況が変われば支援も変えていきましょう。
という方が誠実だと思います。
希望は持つ。でも未来は保証しない。

その代わり、学校として約束できることは約束する

評価について○曜日までに確認します。
進路情報は必ずお届けします。
来校するときは相談室を使えるよう調整します。
当面はこちらからの連絡を週1回にします。
こうした約束はできます。
そして守ります。

保護者から学校批判を受けたとき

「学校の対応が原因です」
と言われることがあります。
教師はつらく感じます。
すぐ、
「学校だけが原因ではありません」
と反論したくなることがあります。
しかし、まず聞きます。
いつ。
誰が。
どんな対応をしたのか。
本人がどう感じたのか。
学校側でも事実確認します。
学校の対応に問題があれば、認めて改善します。
確認できない部分は、
「確認します」
とします。
保護者の感情を受け止めることと、
事実をそのまま認定することは別です。

学校側に問題があったら謝る

教師の不適切な言動。
いじめへの不十分な対応。
必要な配慮の不足。
学校側に明らかな問題がある場合は、
「でも本人にも……」
と先に言い訳しません。
謝罪すべきことは謝罪します。
本人を学校へ適応させるために、学校側の課題を見えなくしてはいけません。

保護者の希望を全部引き受けなくてよい

保護者から、
毎日の授業を録画してほしい。
毎日ノートをコピーしてほしい。
毎週家庭訪問してほしい。
個別授業をしてほしい。
という希望が出ることがあります。
学校として継続できない場合もあります。
その場合、

その方法を年間継続することは難しいです。ただ、○○なら可能です。
と伝えます。
最初だけ無理をして、数か月後に続かなくなるより、
継続できる支援を最初からつくる
方がよいと思います。

欠席連絡そのものを負担にしない

毎日欠席している家庭が、毎朝同じ欠席電話をし続ける。
それが大きな負担になる場合があります。
学校や設置者のルールの範囲で、
欠席連絡アプリ。
学校指定の連絡手段。
「登校するときだけ別途連絡」
など、負担の少ない方法を検討します。
保護者が毎朝連絡する方が安心なら、その方法でも構いません。

情報を浴びせない

教育支援センター。
フリースクール。
医療。
親の会。
通信制高校。
学びの多様化学校。
オンライン教材。
一度に20種類紹介されたら、選ぶだけで疲れます。
「今の段階では、この3つを知っておくとよいと思います」
と絞ります。
必要になったら追加します。

面談の最後に三つ確認する

面談の最後は、
学校が次にすること。
家庭が次にすること。
次に話す時期。
この三つを確認します。

学校では評価について確認します。
ご家庭では今すぐ何かしていただく必要はありません。
来週金曜日に学校から連絡します。
これだけでも見通しができます。

5.学級とのつながりを整える

学級へ何を伝えるか

欠席が続けば、学級の生徒も気付きます。
「どうしたの?」
「病気?」
「いつ来るの?」
と聞かれます。
しかし、本人の事情を担任の判断だけで説明してはいけません。
本人の希望を確認します。
必要に応じて保護者とも相談します。
病名。
家庭事情。
相談内容。
本人の気持ち。
学級を納得させるために、本人のプライバシーを差し出しません。

○○さんについて心配している人もいると思います。個人の事情なので先生から詳しく説明することはしません。必要なことは本人や家庭と相談しながら対応しています。
程度でよい場合もあります。

久しぶりに来た生徒をイベントにしない

久しぶりに登校した。
「みんな!○○さんが来ました!」
と歓迎したくなります。
しかし、本人は注目されたくないかもしれません。
事前に、
「教室へ入ったとき、どんな感じがいい?」
と聞きます。
普通にしてほしい。
仲のよい友達だけ声を掛けてほしい。
先生から一言言ってほしい。
人によって違います。

教室復帰するときは逃げ道をつくる

本人が、
「3時間目だけ教室へ行ってみる」
と言った。
そのとき、
何時間目か。
どこから入るか。
誰と入るか。
席はどこか。
つらくなったらどこへ行くか。
誰へ伝えるか。
途中で帰ってもよいか。
確認します。
戻る道と同時に、出られる道を用意します。
挑戦できるのは、撤退できるからです。

行事を登校のチャンスにしすぎない

体育大会。
文化祭。
修学旅行。
卒業式。
「これなら来られるかもしれない」
と思います。
本人が参加したいなら、参加方法を一緒に考えます。
短時間。
一部分だけ。
見学。
別室待機。
途中退出。
参加しない。
いろいろあります。
「中学校最後だから」
「一生の思い出だから」
で参加を迫らないことです。

行事に参加できた翌日を期待しない

体育大会へ一日参加できた。
翌日欠席した。
教師は、
「せっかく来られたのに」
と思います。
しかし、その一日に全エネルギーを使ったのかもしれません。
行事参加と日常登校は負荷が違います。

卒業式を一つの形にしない

卒業式には出たい。
式には出たくない。
証書だけ受け取りたい。
人の少ない時間なら行きたい。
友達と写真だけ撮りたい。
本人によって違います。
中学校生活の最後を、
「通常の卒業式に出席できたか」
だけで評価しません。

6.学びを止めない

「遅れを取り戻す」から始めない

3か月休んだから、
3か月分のワークを全部やる。
これでは学習が借金返済になります。
今、何が分かっているか。
何ならできるか。
次に何を学ぶと、その後につながるか。
現在地から始めます。

過去の課題を一度リセットする

何か月分もの課題が未提出になっている。
全部終わらなければ新しい学習へ進めない。
そうする必要はありません。
必要なら、
「ここまでの未提出は一旦終了」
とします。
今週は数学5問。
英語は本文1つ。
小さく始めます。

得意な教科からでもよい

全教科を均等にやる必要はありません。
数学ならできる。
歴史は好き。
読書ならできる。
英語は今は難しい。
その状態から始めます。

学年相当だけに固執しない

中3だから中3内容。
だけではありません。
中1内容につまずきがあるなら戻ります。
次期学習指導要領に向けた2026年の議論でも、多様な個性・特性・背景を有する子どもを包摂する柔軟な教育課程や、不登校児童生徒の学習状況に応じた学びの在り方が具体的に検討されています。
学び直しを、
「遅れている子がする恥ずかしい勉強」
にしません。

本人自身を学習計画に参加させる

「今、何ならできそう?」
「どの教科ならやってみたい?」
「10分と30分ならどちらが現実的?」
本人へ聞きます。
答えられなければ選択肢を示します。
2026年8月の不登校児童生徒に係る特別の教育課程WG取りまとめ案でも、本人が学習目標の設定に関わり、学びを振り返る中で「学びのサイクル」を実感していく視点が重視されています。

教材を大量に渡すことを学習保障と考えない

学校側は、
「教材は全部届けています」
と言います。
でも本人は一枚も開けていない。
それなら支援方法を考え直します。
必要な教材を精選する。
解答を付ける。
どこまでやればよいか示す。
「全部やらなくてよい」
と明記する。
本人が取り組める入口をつくります。

提出できた課題は大切に扱う

本人が久しぶりに課題を提出した。
それを「見ました」スタンプだけで返すのではなく、
できる範囲で具体的なフィードバックを返します。

この考え方、よく整理できています。
ここまで取り組めたのですね。
この問題だけもう一度考えてみるとよいと思います。
長文でなくて構いません。
「学校が自分の学びを見てくれた」
と伝わることが大切です。
教師の負担が過大にならない範囲で続けます。

提出物の量を「主体性」と混同しない

大量に提出したから主体的。
提出しなかったからやる気がない。
ではありません。
現在の次期学習指導要領に向けた評価議論でも、提出物や締切など形式的な勤勉さへ偏った評価の課題が検討されています。
本人が何を学んだのか。
どう考えたのか。
どんな変化があったのか。
を見る必要があります。

欠席中の学習成果を評価できる制度を知る

2024年8月、学校教育法施行規則等が改正され、一定の要件の下で、不登校児童生徒が学校外の機関や自宅等で行った学習成果を学校が成績評価に考慮できることが法令上明確化されました。
令和6年度の調査では、欠席期間中に行った学習成果を指導要録へ反映した児童生徒が約8万1千人把握されています。
これは非常に大きな変化です。
ただし、
「家で勉強したら自動的に成績がつく」
わけではありません。
学校の教育課程との関係。
学習内容。
学校と家庭・支援機関との連携。
学校による学習状況の把握。
本人との継続的な関わり。
などの要件を確認します。

出席扱いと成績評価を混同しない

教育支援センターや一定の民間施設、自宅でのICT学習について、要件を満たせば指導要録上の出席扱いとする制度があります。
しかし、
出席扱いと教科の成績評価は別の話です。
出席扱いになったから自動的に成績がつくわけではありません。
逆に、出席扱いになっていなくても、要件を満たす学習成果を評価に活用できる場合があります。
担任一人で判断せず、教務・管理職・教科担当と確認します。

「学校へ来ないと評価できない」を登校圧力にしない

「このままだと成績がつきません」
「テストを受けないと高校へ行けません」
という言葉で登校させようとしないことです。
制度上の事実を伝えることは必要です。
しかし、不安を利用して本人を動かすこととは違います。

現在の資料では評価が難しい教科があります。
自宅等で取り組んだ学習を活用できる場合もあるので、学校で確認してお伝えします。
と正確に説明します。

定期テストを「登校できるかの試験」にしない

定期テストの日だけなら来られる生徒もいます。
本人が受験したいなら、
別室。
時間帯。
座席。
入退室。
休憩。
学校として可能な方法を検討します。
本人が受けられない場合は、それだけで評価の可能性を閉ざさず、教科の目標に照らして他の資料を検討します。

教科担当間で説明をそろえる

担任が、
「自宅学習も評価できる場合があります」
と説明した翌日、
教科担当が、
「授業へ出ていないので無理です」
と言う。
家庭は混乱します。
評価。
課題。
テスト。
出席扱い。
学校内で確認し、
学校として説明をそろえます。

オンライン学習を「教室の再現」にしない

学校へ来られないなら、
朝から毎時間オンラインで教室につなげる。
それが合う生徒もいます。
しかし、
教室の声を聞くのが苦しい。
顔を映したくない。
リアルタイムでは参加できない。
午前中は体調が悪い。
という生徒もいます。
録画。
オンデマンド。
教材配信。
チャット。
音声のみ。
個別の短時間接続。
本人に合わせます。

カメラONを参加意欲の指標にしない

オンラインで顔を映さないから、
「やる気がない」
ではありません。
オンラインという柔軟な手段を、新しい規律で苦しくしないことです。

生成AIを学習支援に使う場合

2026年には、生徒が家庭学習で生成AIを利用することも珍しくありません。
分からないことの説明を求める。
英作文への助言を得る。
学習計画を考える。
使い方はいろいろあります。
一方で、課題そのものを生成AIに作らせたものを、本人の学習成果としてそのまま扱うことはできません。
学校・設置者のルールや文部科学省のガイドラインを踏まえ、
本人が何を考え、何を理解したのか
を確認します。

7.多様な学びの場をつなぐ

校内教育支援センターを「教室復帰の待合室」にしない

校内教育支援センター、別室、教育相談室など名称は様々です。
ここへ来られるようになると、
「次は教室へ」
と考えたくなります。
しかし、
本人にとって今その場所が最も学びやすいのであれば、その場所自体を充実させます。
令和6年度通知でも、校内教育支援センターは、本人が自分に合ったペースで学習・生活できる環境として充実が求められています。

別室を質の低い自習室にしない

余ったプリント。
古い問題集。
パズル。
だけでは十分ではありません。
教科書。
デジタル教材。
学び直し教材。
図書。
教科担当からの支援。
本人の学習状況に合う環境をつくります。

「空いている先生が見る」だけにしない

担当が毎時間変わる。
誰も責任者がいない。
本人が来ても先生がいない。
これでは安心できません。
誰が中心になるのか。
誰がバックアップするのか。
何時なら利用できるのか。
学校として整理します。

一日の過ごし方を本人と考える

例えば、
9時30分 来校
9時40分 数学
10時10分 休憩
10時30分 読書
11時 進路について短く話す
11時20分 帰宅
本人の状態に応じてつくります。
通常の時間割をそのまま再現する必要はありません。

「何もしない時間」があってよい

学校へ来るだけで大仕事の生徒もいます。
読書。
絵を描く。
少し話す。
静かに過ごす。
そういう時期もあります。
ただし、長期間「ただ座っている」状態になり、本人も何をしたいか分からなくなっているなら、支援を見直します。
休息と放置を分けます。

教室へ戻ることを毎日聞かない

毎日、
「今日は教室へ行けそう?」
と聞かれると、
「別室にいる自分はまだ不十分」
と感じることがあります。
本人が教室参加を希望しているなら一緒に考えます。
希望していないなら、毎日確認する必要はありません。

教育支援センターを学校復帰施設とだけ考えない

教育支援センターで安定して学んでいる。
友達もいる。
活動にも参加している。
学校は、
「そこまで行けるなら学校にも来られる」
と考えないことです。
本人に合う場所で活動できていること自体を大切にします。
教育支援センターとは、
学習。
進路。
健康。
本人の希望。
必要な範囲で連携します。

フリースクール等との連携

民間施設には様々な形があります。
学校が、
「フリースクールなら全部安心」
とも、
「学校ではないから認めない」
とも決めません。
本人が利用している場合、家庭の同意等を踏まえて必要な情報を共有し、学習状況や支援状況を確認します。
出席扱いや成績評価については、それぞれの制度要件に基づき学校長等が適切に判断します。

学びの多様化学校を知っておく

2026年には、学びの多様化学校の指定が全国84校まで広がっています。
地域によって利用できる環境は異なります。
本人に合うとも限りません。
しかし、
「今在籍している学校しか選択肢がない」
と考えず、地域にどのような学びの場があるか把握しておきます。

2026年の次期教育課程議論が意味すること

2026年8月現在、不登校児童生徒に対する特別の教育課程について、対象となる児童生徒、教育活動、授業時数、個別の指導計画、学習評価、実施場所や体制などの具体的な制度設計が検討されています。
特に重要だと思うのは、
「子どもの状態に教育を合わせる」
という方向です。
同じ時間。
同じ場所。
同じ速度。
同じ方法。
それに子どもだけを合わせるのではありません。
もちろん制度が確定するまでは、現行法令・学習指導要領に基づいて運用する必要があります。
しかし、これからの学校が向かおうとしている方向として知っておく価値があります。

8.進路を本人に返す

中学校での登校を本当のゴールにしない

特に中学3年生を担当すると、
高校へ進学させること。
入学式へ行くこと。
が目標になりやすくなります。
しかし、私は、
その高校の「次」まで考えたい
と思います。
例えば今が中学3年生の12月なら、
4か月後の4月だけを見るのではありません。
3年4か月後の4月も考えます。
高校へ入学する。
その後学ぶ。
卒業する。
次の進路を選ぶ。
そこまで見ます。
高校はゴールではなく、次へ向かう過程です。

「合格できる高校」だけで選ばない

高校に合格できても、
通い続けられなければ本人は苦しくなります。
だから、
「合格できるか」
と同じくらい、
「通い続けられそうか」
「学び続けられそうか」
を見ます。
登校時刻。
通学時間。
登校頻度。
学習方法。
人数。
支援体制。
オンライン。
本人が興味を持てる学び。
具体的に確認します。

「今不登校だから通信制」と決めない

通信制高校は大切な選択肢です。
しかし、
不登校=通信制。
ではありません。
全日制で環境が変わり通えるようになる生徒もいます。
定時制が合う生徒もいます。
通信制の中でも仕組みは大きく違います。
本人の現在の状態と希望から考えます。

「行きたい」と「続けられそう」の両方を見る

現実性だけで学校を決めれば、
本人が行きたいと思えないことがあります。
希望だけで決めれば、
継続が難しくなることがあります。
そこで、
本人が行きたい学校と、今の状態で続けられそうな学校の重なる場所
を探します。

情報提供と意思決定を分ける

本人が、
「高校の話はしたくない」
と言います。
しかし出願時期は近づいています。
その場合、

今すぐ決めなくていい。ただ、後から「知らなかった」とならないように、選択肢だけ伝えてもいい?
と聞く方法があります。
今決めなくてもよい。
でも情報は届ける。
この関係をつくります。

高校情報は必ず最新の一次情報で確認する

入試制度。
募集人数。
コース。
学費。
登校日。
スクーリング。
オンライン。
毎年変わります。
「去年はこうだった」
だけで説明しません。
学校公式サイト。
都道府県教育委員会。
募集要項。
学校説明会。
最新の一次情報を確認します。

高校見学へ行けなかったことを「無理」の証拠にしない

見学へ行けなかった。
だから入学しても無理。
とは限りません。
学校見学自体が非常に緊張する活動です。
保護者だけ参加。
オンライン説明会。
個別相談。
別日の見学。
様々な方法があります。

通学を試すことは「テスト」ではなく情報収集

本人が希望するなら、
実際の通学時間帯に学校付近まで行ってみる。
電車に乗ってみる。
どのくらい疲れるか確認する。
これは有効な情報になります。
ただし、
「3日連続できたら受験OK」
のような判定にしません。
一つの判断材料です。

本人が自分で調べる

教師が高校を全部選ぶのではありません。
本人が調べられる状態なら、
自分で検索する。
パンフレットを見る。
比較する。
説明会を選ぶ。
教師は、
「この学校のどこが気になった?」
「朝何時に家を出ることになる?」
「卒業までの学び方は確認した?」
と支援します。
進路選択の過程そのものを本人へ返します。

保護者だけで決めない

本人が将来を考えられない時期には、保護者が先に情報収集することもあります。
しかし最終的には、
本人自身の意思へ戻します。
こども基本法が示す本人の意見尊重という考え方は、進路でも大切です。

高校へ行かないと言ったとき

「高校には行かない」
と本人が言う。
大人は焦ります。
まず、
高校へ行かないと決めているのか。
高校のことを今は考えたくないのか。
受験が怖いのか。
毎日通う高校しか知らないのか。
理由を分けます。
「高校へ行かない人生は失敗」
という前提で話さないことです。
一方で、義務教育卒業後は支援の仕組みが変わります。
選択肢、相談先、学び直しの道などは具体的に伝えます。

進学先への引継ぎに本人を参加させる

中学校から高校へ、
「不登校。欠席○日」
だけを引き継いではいけません。
何ならできるか。
有効だった配慮。
本人の強み。
好きなこと。
相談しやすい方法。
困ったときのサイン。
本人が伝えてほしいこと。
個人情報の取扱いや学校・設置者のルールに基づき、本人・家庭とも相談しながら必要な情報をつなぎます。

高校の先生に知っておいてほしいことはある?
と本人へ聞きます。

9.ケースで考える不登校支援

ここからは、具体的なケースをもとに考えます。
不登校支援について学ぶとき、制度や基本的な考え方を知ることは重要です。
しかし、実際に担任になると迷うのは、
「では、明日の朝、私は何をすればよいのか」
ということです。
そこで、ここからはできるだけ具体的な場面を扱います。
ただし、最初に一つ確認しておきたいことがあります。
事例は答えではありません。
「起立性調節障害ならこうする」
「ゲームをしている生徒ならこうする」
「中学3年生ならこうする」
というマニュアルにはしません。
同じように見える状態でも、その背景は一人ひとり違います。
本人の性格。
心身の状態。
友人関係。
家庭。
学習。
学校環境。
これまでの経験。
支援者との関係。
様々なものが関係します。
同じ本人でも、4月と10月では状態が違います。
だから事例を読むときには、
「この対応をまねしよう」
ではなく、
「この場面では、どんなことを考えているのか」
に注目してほしいと思います。
なお、以下の事例は特定の実在する生徒を記述したものではありません。不登校支援で起こり得る複数の場面を組み合わせて構成した架空のケースです。

ケース1 中学1年生。入学式には参加したが、翌日から一度も登校できない

小学校6年生の秋頃から欠席が増えました。
小学校では保健室へ行くこともありました。
卒業式には何とか参加しました。
本人も保護者も、
「中学校になれば環境が変わる。新しい友達もできる。今度は行けるかもしれない」
と期待していました。
中学校の入学式には参加できました。
しかし翌朝、起きられませんでした。
2日目も休みました。
3日目も休みました。
一週間がたちました。
担任は焦ります。
「まだ中学校生活をほとんど経験していない」
「一度だけでも教室へ来れば、案外大丈夫かもしれない」
「今のうちに来ないと、ますます入りにくくなる」
そう思います。
この考えがすべて間違っているわけではありません。
しかし、私はまず、
「一度学校へ来させること」から始めない
ようにしたいと思います。
最初に小学校からの引継ぎを確認します。
6年生では、いつから休み始めたのか。
朝はどのような状態だったのか。
学校の何が負担だったのか。
保健室では何をしていたのか。
誰なら話せたのか。
本人は中学校について何と言っていたのか。
家庭訪問はどうだったのか。
本人が嫌がった対応はなかったのか。
学習はどの程度できているのか。
医療や相談機関とのつながりはあるのか。
そして、重要なのは、
「前年度、何をしたときに本人の負担が大きくなったか」
です。
例えば小学校で、
毎朝担任から電話が来ることが苦しかった。
友達を家へ連れてこられたことが嫌だった。
「卒業式だけでも頑張ろう」と何度も言われるのがつらかった。
そのようなことが分かれば、中学校で同じことを繰り返さずに済みます。
新担任として本人へ連絡する場合も、小さく始めます。

今年担任になった○○です。
中学校のことで必要なことがあれば、いつでも連絡してください。
すぐ返事をしなくても大丈夫です。
これくらいでも構いません。
保護者には、
本人と直接話すことを急いでいません。学校からどのように連絡すると一番負担が少なそうでしょうか。
と聞きます。
保護者から、
「今は学校の先生とは話したくないと言っています」
と言われれば、一度受け止めます。
「でも担任なので、一度は本人と話さないと」
と考える必要はありません。
担任が本人に会えていないという教師側の不安と、本人にとって今何が必要かを分けます。
同時に、学校側では準備をします。
本人がある日の朝、
「今日は少し行ってみようかな」
と思ったとします。
そのとき、
「今日は相談室の先生がいない」
「別室は使えない」
「担任は授業なので対応できない」
では困ります。
本人を無理に誘わない。
一方で、
本人が動こうとしたときには受け止められる。
この二つを両立させます。
私は、こうしたケースで担任の目標を、
「4月中に一度登校させる」
にはしません。
最初の目標は、
本人と家庭が、「中学校も自分たちを責める場所ではなさそうだ」と感じられること
くらいでもよいと思っています。

ケース2 毎週、月曜日になると休む中学2年生

火曜日から金曜日までは比較的登校しています。
ところが月曜日になると欠席します。
担任は、
「土日に夜更かしして生活リズムが崩れているのだろう」
と考えました。
確かに、その可能性はあります。
しかし、私は一度、
「月曜日に何があるか」
を見るようにします。
月曜日の1時間目は何の授業か。
学年集会はないか。
体育はないか。
苦手な教師の授業はないか。
部活動で週末に何か起こっていないか。
友人関係はどうか。
席はどうか。
週末を挟んで集団生活へ戻ること自体が負担ではないか。
本人に聞くなら、

月曜日の朝が特にしんどそうだけれど、自分では何か思い当たることはある?
くらいにします。
本人が、
「分からん」
と言うかもしれません。
それでも構いません。
本人に原因説明を要求しません。
教師側で観察します。
そして火曜日。
本人が登校してきました。
教室へ入った瞬間、
「昨日どうしたん?」
と聞かないことです。
本人は、せっかく学校へ来た瞬間から、
「昨日休んだ理由」
の説明を求められます。
私はまず、
おはよう。
でよいと思っています。
休み時間など落ち着いたときに、
月曜日にしんどいことが多いみたいだから、学校で変えられるものがあるなら先生も考えたいと思ってる。
と伝えます。
ここで主語を変えます。
「あなたがどうすれば月曜日も来られるか」
ではなく、
「学校で変えられることはないか」
です。
本人が何も言わなくても構いません。
例えば、よく見ると月曜1時間目の体育が大きな負担だった。
あるいは日曜日の夜に翌日の準備を考えるだけで強い不安が出ていた。
そうしたことが後から分かるかもしれません。
一方で、本当に生活リズムが大きく影響している場合もあります。
その場合も、
「日曜は10時までに寝なさい」
という指導だけにしません。
本人の睡眠や健康状態について必要に応じて家庭・専門職と相談します。
大切なのは、
「月曜欠席」という行動だけを見て原因を決めないこと
です。

ケース3 起立性調節障害と診断されている中学2年生

朝起きられません。
頭痛。
めまい。
強い倦怠感。
午前中はほとんど動けません。
ところが夕方になると少し元気になります。
夜はゲームをして友達と話すこともあります。
保護者から、
「本当に体調が悪いのでしょうか。夕方にはあんなに元気なんです」
と相談されます。
担任の中にも、
「学校が嫌だから朝だけしんどいのでは」
という思いが生まれるかもしれません。
しかし、教師が医学的判断をしてはいけません。
日本小児心身医学会は、起立性調節障害について、立ち上がった際の頭痛、めまい、倦怠感などを伴い、午前に症状が強く、学校生活へ大きな影響を及ぼすことがあると説明しています。また、家庭や学校での理解と環境調整が重要とされています。
だから、
「夕方ゲームができた」ことを「朝も学校へ行ける証拠」にしない
ことです。
学校がするのは診断ではありません。
本人・保護者から医療的助言を確認し、学校生活を調整します。
例えば、
午後からの登校。
3時間目からの登校。
週に数回。
短時間。
別室。
オンライン。
休憩場所。
体育等への配慮。
本人の状態によって考えます。
ただし、
「午後なら元気なんですよね。じゃあ毎日午後から来ましょう」
と新しい義務をすぐにつくらないことです。
本人に、

午後なら比較的動きやすい日があるんだね。学校との関わり方で、何かやってみたいことはある?
と聞きます。
本人が、
「週1回なら」
と言えば、そこから始めてもよい。
一度来られた翌日に休んでも、
「昨日は来られたのに」
とは言わない。
心身の状態には波があります。
このケースで担任に伝えたいのは、
「医学的なことまで自分で何とか理解し切らなくてよい」
ということです。
分からないことは医療へ聞く。
学校でできる環境調整を考える。
教師は教師の役割を果たせばよいのです。

ケース4 学校には行けないが、一日中ゲームをしている中学2年生

保護者から電話があります。
「学校には行かないのに、ゲームならずっとしています」
「友達と楽しそうにしゃべっています」
「ゲームを取り上げた方がよいでしょうか」
保護者が腹立たしく感じるのも無理はありません。
毎朝、
「学校は無理」
と言って布団から出ない。
しかし午後になるとゲームを始める。
笑い声まで聞こえる。
「だったら学校へ行けるでしょう」
と思いたくなります。
しかし、
学校へ行く負荷とゲームをする負荷は同じではありません。
学校には、
決まった時間。
集団。
人間関係。
授業。
評価。
ルール。
教師。
音。
視線。
過去の経験。
多くの要素があります。
自宅でゲームをすることとは違います。
そしてゲームが本人にとって、
友達とつながる場所。
役割を持てる場所。
努力が成果に返ってくる場所。
失敗してもやり直せる場所。
嫌なことを一時忘れられる場所。
になっている可能性もあります。
だから私は、
「ゲームを取り上げてください」
とは簡単に言いません。
もちろん、睡眠や食事、生活全体へ重大な影響が出ている場合には対応が必要です。
その場合も、必要に応じて医療等と相談しながら考えます。
本人と話せるなら、

最近何やってるの?
くらいから聞いてもよいでしょう。
ここで注意したいのは、
ゲームを学校へ来させるためのテクニックとして利用しすぎないことです。
「先生もそのゲームやってるで」
「ゲームの話なら心を開くはずだ」
という操作的な関わりは、本人に伝わることがあります。
本人が好きなものは、
まず、
好きなものとして尊重する。
そこから本人を知る。
それくらいがよいと思います。
また、
「ゲームができている」
という事実を、少し別の角度から見ることもできます。
集中できる。
友達と会話できる。
ルールを理解できる。
何かを調べられる。
役割を果たせる。
本人には、まだ様々な力があります。
不登校になると、
「できないこと」
ばかりが見えます。
学校へ行けない。
朝起きられない。
勉強できない。
でも、
できていることもある。
その力を教師が見失わないようにします。

ケース5 担任からの電話に一切出ない中学1年生

電話をしても本人は出ません。
保護者が、
「先生から電話だよ」
と言っても、
「無理」
と部屋へ入ります。
家庭訪問しても顔を出しません。
担任は、
「本人との関係が何もできていない」
と思います。
ここで、
「直接話せること」を支援の成功にしない
ようにします。
本人は、
「学校の先生」
という存在そのものと距離を置きたい時期かもしれません。
担任個人が嫌いとは限りません。
電話という方法が苦手かもしれません。
学校の話をすること自体が負担かもしれません。
保護者とはつながっています。
必要な情報は届けられます。
本人へ短いメッセージを渡してもらうこともできます。
例えば、

○○さんへ。
今週の学校からの連絡だけです。
来週は定期テストがあります。
受けるかどうかは今すぐ決めなくても大丈夫です。
必要な資料があれば、お家の人を通してでも知らせてください。
返事はいりません。
これくらいです。
「先生はずっと待っています」
「クラスのみんなも心配しています」
「また笑顔を見せてください」
と長文の手紙を書きたくなるかもしれません。
それ自体を否定するわけではありません。
しかし、本人にとっては、
読むだけでもエネルギーを使う
ことがあります。
短く、具体的に、返信不要。
これも一つの方法です。
そして数か月後、
本人が保護者に、
「進路のことだけ先生に聞いて」
と言った。
これは大きな変化です。
本人と直接話せていなくても、
学校との関係は完全には切れていません。
担任は、
「自分が本人と会わなければ」
という主役意識を少し手放してもよいと思います。
学校には多くの大人がいます。
本人が養護教諭なら話せる。
SCなら話せる。
前年度の先生なら話せる。
それなら、その関係を大切にします。
「担任が一番信頼されなければならない」必要はありません。

ケース6 週1回、30分だけ別室に来ている中学2年生

毎週水曜日の午後。
保護者と一緒に来校します。
相談室で30分ほど過ごします。
担当の先生と少し話します。
時々数学をします。
そして帰ります。
半年近く同じ状態です。
担任は、
「このまま週1回でいいのだろうか」
と悩みます。
管理職から、
「そろそろ次のステップへ行けないかな」
と言われることもあります。
ここで考えたいのは、
「週1回」を何と比べているのか
です。
毎日教室へ来る状態と比較すれば少ない。
しかし半年前は、学校の近くへ来るだけでも難しかったかもしれません。
今は毎週、
決まった時間に。
決まった場所へ。
先生と会い。
30分過ごせている。
本人にとっては大きな変化です。
だから、
「停滞している」
と大人だけで評価しません。
本人に、

今の水曜日の感じ、どう?
と聞きます。
「これくらいがちょうどいい」
なら、それも情報です。
一方、
「もうちょっと何かしてみたい」
という言葉が出れば、選択肢を出します。
10分長くする。
好きな教科を一つする。
図書室へ行く。
放課後に誰もいない教室を見てみる。
友達一人と会う。
別の曜日にも一度来る。
でも、
「次は教室」
とは限りません。
そして大切なのが、
今の週1回を続けるのも選べるよ。
と伝えることです。
今の場所を失わずに、新しいことを試せる。
その方が挑戦しやすい場合があります。
もし教室へ行ってみるなら、
「無理だったらいつでも戻れる」
場所を保証します。
別室から教室へ出た瞬間、
別室の利用資格を失うような雰囲気にしません。
挑戦できるのは、戻れる場所があるからです。

ケース7 教育支援センターには週5日通えるが、学校へは全く来ない

学校には半年近く来ていません。
しかし自治体の教育支援センターへはほぼ毎日通っています。
朝も起きています。
学習もしています。
友達もできています。
教師の中に、
「それだけできるなら学校にも来られるのでは」
という思いが出ます。
しかし、教育支援センターと学校では環境が大きく違います。
人数。
時間。
音。
人間関係。
授業形態。
評価。
ルール。
本人の感じる安全性。
違います。
だから、
教育支援センターへ行けることを、学校へ来られる証拠にしない
ことです。
むしろ、
「本人が安定して活動できる場所がある」
と考えます。
学校としては、
教育支援センターと、
どのように学んでいるか。
本人の状態はどうか。
進路はどう考えているか。
学校から必要な情報は何か。
学習成果をどう評価するか。
必要な範囲で連携します。
COCOLOプランも、学校内外の多様な学びの場を確保し、学びたいと思ったときに学べる環境を整えることを大きな柱としています。
「教育支援センターから学校へ戻す」
ことだけを連携の目的にしない。
本人がそこで充実しているなら、
その学びを学校がどう支えるかを考えます。

ケース8 保護者が「何としてでも学校へ戻したい」と考えている

本人は、
「今は学校へ行きたくない」
と言っています。
母親は、
「無理をさせない方がいい」
と考えています。
父親は、
「このままでは将来困る。少しくらい無理をさせないと」
と言います。
毎朝、父親が本人を起こします。
本人は怒ります。
親子関係も悪くなっています。
担任が、
「無理に学校へ行かせないでください」
と一言で終えると、父親には、
「学校があきらめた」
「先生は将来の責任を取ってくれない」
と聞こえる場合があります。
だから、まず、
登校を求める背景にある不安
を聞きます。

このままずっと家から出られなくなるのではないか、という心配が一番大きいでしょうか。
高校へ進学できなくなることが心配ですか。
保護者が、
「そうです。この子の将来が心配なんです」
と言えば、
そこは学校も同じです。
私たちも、この先につながってほしいという願いは同じです。ただ、今は登校だけを唯一の方法にせず、学びや進路、人とのつながりをどう確保するかを一緒に考えたいと思っています。
と伝えます。
保護者と学校を、
「行かせたい側」と「休ませたい側」
に分けないことです。
共通する目的を確認します。
そして、
「見守ってください」
だけで終わらせないことも大切です。
保護者は、
「見守るって、具体的に何をすればいいのですか」
と困ります。
例えば、
学校との連絡は保護者が引き受ける。
本人と学校の話をする時間を減らす。
進路資料は見たいときに見られる場所へ置く。
医療等へつながっているなら助言を確認する。
本人が話してきたときは聞く。
家庭だけでは難しいことは学校へ相談する。
具体的にします。
そして、保護者自身が疲れている場合には、SC、SSW、保護者相談等につなぐことも考えます。
本人を支える人を支えることも、不登校支援です。

ケース9 学校への不信感が強く、「学校のせいで不登校になった」と言われた

保護者面談で、
「先生方の対応が原因です」
と言われました。
担任自身は今年からの担当です。
前年度の出来事について強い不満があります。
学校側には、
「家庭にもいろいろ事情があった」
という認識があります。
こういう場面では、
学校は防御的になりやすくなります。
「学校だけが原因ではありません」
「こちらにも言い分があります」
と言いたくなります。
しかし、それを最初に言えば、
保護者には、
「また学校は自分たちを守る」
と聞こえます。
まず、

どのようなことがあったと受け止めておられるのか、教えていただけますか。
と聞きます。
具体的な事実へ落とします。
いつ。
誰が。
何を言ったのか。
何が起きたのか。
その後本人はどうなったのか。
学校側でも記録や関係者から確認します。
ここで重要なのは、
保護者の気持ちを受け止めることと、事実認定は別
だということです。
そのように感じておられることは分かりました。学校として確認しなければならない内容がありますので、確認した上で改めて説明します。
とします。
そして、学校側に明らかに不適切な対応があったなら、謝罪します。
「でも本人にも……」
から始めません。
現行の文部科学省通知でも、不登校の背景について本人・家庭だけを見るのではなく、学校としてなじめない要因の解消等に努めることが求められています。
不登校になった本人へ、
「学校に適応できるようにしよう」
と求めながら、学校側は何も変わらない。
それでは支援になりません。
一方で、学校への要望すべてをそのまま受ける必要もありません。
毎日の授業録画。
毎日の個別授業。
毎週長時間の家庭訪問。
学校体制として継続できない要望もあります。
その場合は、
その方法を年間通して続けることは難しいです。その代わり、○○という方法であれば学校として継続できます。
と伝えます。
できないことを曖昧に約束しないことも信頼です。

ケース10 友人トラブル後に欠席が増えた。本人は「いじめではない」と言っている

保護者から、
「いじめられているのではありませんか」
と相談があります。
本人へ聞くと、
「別に」
「ちょっと友達とあっただけ」
「いじめとかちゃうし」
と言います。
ここで、
「本人がいじめではないと言っているので、いじめではありません」
と終了しないことです。
何が起きたのかを確認します。
SNS。
グループ内のやり取り。
無視。
からかい。
部活動。
周囲の生徒が見ていたこと。
教職員が把握していること。
本人は、
大ごとにしたくないのかもしれません。
仕返しが怖いのかもしれません。
「自分にも悪いところがあった」
と思っているかもしれません。
一方で、保護者が心配しているからといって、直ちにいじめと断定することもできません。
学校として、いじめ防止対策推進法や学校の基本方針に基づき必要な確認・対応を行います。
そして、
「二人で話させれば解決する」
と急がないことです。
本人がその相手へ会うことを怖がっているなら、
関係修復より先に安全を考えます。
席。
授業。
部活動。
休み時間。
登下校。
安心して過ごせる条件を整えます。
仲直りより、安全。
この順番を間違えないようにします。

ケース11 担任の指導が不登校のきっかけの一つだと言われた

これは担任にとって非常につらいケースです。
保護者から、
「先生にみんなの前で叱られてから、学校へ行けなくなりました」
と言われました。
担任は、
「必要な指導だった」
「本人にも問題行動があった」
と思っています。
人は自分を守りたくなります。
私も同じだと思います。
しかし、ここで、
「でも○○さんが先に……」
と話し始めれば、
支援の中心が、
生徒から教師自身の正当性へ
移ってしまいます。
まず事実を確認します。
どんな場面だったか。
どんな言葉を使ったか。
周囲に誰がいたか。
本人はどう受け止めたか。
必要なら管理職も入ります。
教師の対応に改善すべき点があれば改善します。
そしてもう一つ。
担任自身が支援の中心から一旦離れる
という選択肢もあります。
本人が、
「担任とは会いたくない」
と言っているなら、
「担任なのだから関係修復しなければ」
と迫らない。
養護教諭。
学年主任。
教育相談担当。
SC。
本人が話しやすい人へつなぎます。
これは担任の敗北ではありません。
本人が安心するための役割調整です。
同時に、担任自身も支えてもらう必要があります。
「自分のせいで不登校にした」
と教師が自分を責め続けることがあります。
振り返りは必要です。
不適切だったことがあれば認めます。
しかし、担任一人で自責を抱え続ける必要はありません。
管理職や同僚、専門職へ相談します。
支援する教師自身も支援される必要があります。

ケース12 中学3年生。11月なのに進路の話を一切したくない

半年近く学校へ来ていません。
11月です。
周囲の生徒は進路希望を固めています。
願書等の話も始まります。
本人は、
「高校の話したくない」
と言います。
担任は焦ります。
本人の意思を尊重して待ち続ければ、
制度上の期限を逃すかもしれません。
一方、
「もう時間ないで」
と迫れば、本人はさらに進路の話から逃げるかもしれません。
ここで私は、
「情報を知ること」と「決めること」を分けます。

今すぐ高校を決めなくていい。ただ、あとで「そんな学校があるって知らなかった」とならないように、今ある選択肢だけ伝えてもいい?
と聞きます。
本人が、
「資料置いといて」
と言えば、資料を渡します。
そして20校分を一度に渡さないことです。
今の本人の希望や生活状況から、まず3校程度。
そこから考えます。
本人が、
「高校行かん」
と言うこともあります。
このときも、
「高校へ行かなかったら人生終わる」
とは言いません。
高校へ行かないともう決めているのか、今は高校のことを考えるのがしんどいのか、どちらに近い?
と分けて聞くことがあります。
「今は考えたくない」
なら、少し時間を置く。
ただし、
制度上待てない期限は正確に伝える。
本人の意思を尊重することと、必要な情報を隠すことは違います。

ケース13 周囲が「不登校だから通信制高校がいい」と決めている

担任も保護者も、
「通信制なら無理なく通える」
と考えています。
本人は、
「普通の高校にも行ってみたい」
と言います。
ここで、
「中学校へ来られていないのに全日制は無理」
と決めつけません。
環境が変わることで通えるようになる生徒もいます。
一方、
「高校になれば絶対変わる」
という希望的観測だけで学校を決めることも慎重にします。
考えるのは、
学校種ではなく条件です。
朝何時に起きる必要があるか。
通学時間。
電車。
登校日数。
一日の授業時間。
人数。
授業方法。
相談体制。
欠席時の支援。
本人が学びたい内容。
費用。
そして、
「行きたい」と「続けられそう」の重なる場所
を探します。
通信制高校も多様です。
自宅中心。
週1日程度。
週数日。
ほぼ毎日。
オンライン中心。
学校によって大きく違います。
だから、
「通信制だから安心」
とも限りません。
最新の公式情報を確認します。
本人が調べられる状態なら、本人自身にも調べてもらいます。

この学校のどこが気になった?
朝は何時に出ることになる?
週何日?
卒業するにはどんなことが必要?
教師が答えを渡すのではなく、
進路を選ぶ力そのものを支える
ことが大切です。

ケース14 高校に合格した。しかし本人は「4月から行ける気がしない」と泣いている

合格発表。
家族は喜びました。
担任もほっとしました。
しかし数日後、本人が言います。
「受かったのはうれしいけど、毎日行ける気がせえへん」
ここで、
「大丈夫。高校になったら変わるよ」
と未来を保証しません。
本人の不安を具体化します。
朝起きられるか。
電車へ乗れるか。
教室へ入れるか。
友達をつくれるか。
勉強についていけるか。
困ったとき誰に相談すればよいか。
不安を一つずつ分けます。
本人・保護者の意向を確認し、必要なら進学先へ相談します。
入学前相談。
学校の相談窓口。
有効だった配慮。
本人が不安を感じやすい場面。
医療的配慮。
伝えてほしいこと。
本人へ、

高校の先生に何を知っておいてもらったら少し安心できそう?
と聞きます。
逆に、
「これは伝えてほしくない」
ということもあるかもしれません。
個人情報の取扱いや学校・設置者のルールに従いながら、本人の意向も踏まえて必要な情報を引き継ぎます。
中学校教師の仕事は、
合格通知を渡して終わりではありません。
ただし、
高校生活まで中学校担任が抱え続けるわけでもありません。
次の支援者へ、丁寧にバトンを渡す。
それが進路指導です。

ケース15 卒業式だけは出たいと言った

3年生になってから、ほとんど学校へ来ていません。
2月。
本人が保護者に、
「卒業式はちょっと出たい」
と言いました。
教師はうれしくなります。
「じゃあ卒業式練習も出よう」
「予行だけでも来よう」
と言いたくなります。
しかし、
本人が参加したいと言ったのは、
卒業式
です。
練習とは言っていません。
確認します。
最初から最後まで参加したいのか。
証書授与だけか。
途中からか。
別室で待つか。
人が少ない場所から見たいか。
式には出ず、後で証書を受け取りたいか。
友達と写真だけ撮りたいか。
様々な方法があります。
そして卒業式当日。
本人が来ませんでした。
担任は残念です。
本人も、
「行くつもりだった」
かもしれません。
ここで、
「せっかくみんな準備していたのに」
とは言いません。

今日は難しかったんだね。卒業証書をどうやって渡すかは、また一緒に考えよう。
それでよいと思います。
卒業式へ出られなかったことを、
「最後まで学校へ来られなかった」
という本人の人生物語にしない。
卒業式への出席と、中学校3年間の価値は同じではありません。

ケース16 本人から「死にたい」とメッセージが来た

夜、学校で認められた連絡手段を通して、
「もう死にたい」
というメッセージが届きました。
これは、
「不登校の生徒への言葉掛け」
というレベルだけで扱う場面ではありません。
生命・安全に関わる危機として扱います。
担任だけで抱えません。
学校の危機対応手順に従い、管理職、保護者、必要な専門職・医療・関係機関と連携します。
2026年7月の文部科学省通知でも、児童生徒の自殺予防について、学校と関係機関が連携した対応の一層の充実が求められています。
本人から、
「誰にも言わんといて」
と言われることがあります。
その場合でも、

話してくれてありがとう。あなたを守るために、先生一人だけの秘密にはできないことがあります。ただ、誰に何を伝えるかは、できるだけ一緒に考えたい。
と説明します。
信頼関係を守りたい。
その気持ちは大切です。
しかし、
命を守る責任を担任一人で背負わない。
そしてこの場面で、
「学校へ来れば気分転換になる」
「勉強だけでもしよう」
といった話を優先しません。
生命・安全が最優先です。

ケース17 保護者が疲れ切り、学校からの電話にも出なくなった

最初の頃、母親は毎日のように学校と話していました。
半年後。
学校から電話しても出ません。
折り返しもありません。
学校では、
「家庭と連絡が取れない」
という話になります。
しかし、少し確認すると、
担任。
養護教諭。
SC。
教育相談担当。
それぞれが別の日に電話をしていました。
本人の支援のため、みんな善意で連絡していました。
しかし保護者からすれば、
毎週何度も「学校」から電話が来ます。
仕事中。
夕食中。
本人が近くにいる時間。
学校の着信を見るだけでしんどくなっていたかもしれません。
そこで、
学校側の連絡を整理します。
窓口を一人にする。
週1回にする。
電話ではなく学校で認められている別の方法を使う。
緊急性がないものはまとめる。
保護者に、

学校からの連絡が多くなっていたかもしれません。今後は○○を窓口にして、基本的には週1回にします。別の方法の方がよければ教えてください。
と伝えます。
不登校支援では、
本人のエネルギーを奪わないことを考えます。
同じように、
保護者のエネルギーも奪わない。
学校は「熱心に連絡している」と思っていても、家庭には負担になっている場合があります。

ケース18 担任自身が限界に近づいている

最後は生徒のケースではありません。
教師のケースです。
担任は熱心な先生です。
不登校の生徒のことをいつも考えています。
毎週家庭訪問。
保護者へ何度も電話。
教材を自分で準備。
別室へ来た日は空き時間をほとんど使って対応。
高校も十数校調べました。
それでも本人は教室へ戻りません。
保護者から、
「先生はほかに何かできないんでしょうか」
と言われました。
その言葉が頭から離れません。
夜も生徒のことを考えています。
休日にも進路資料を調べます。
朝、欠席連絡を見ると気持ちが沈みます。
最近、寝付きも悪くなりました。
この状態を、
「責任感のある教師」
として放置してはいけません。
支援体制を変えます。
家庭への連絡を学年主任と分担する。
ケース会議を開く。
評価は教務や教科担当へ任せる。
進路は進路担当へ任せる。
SCから担任自身がコンサルテーションを受ける。
強い保護者対応には管理職が入る。
家庭訪問を複数で行う。
必要のない訪問は減らす。
そして教師自身の心身の不調が続いているのであれば、適切な相談先や医療等を利用します。
ここで、担任に伝えたいことがあります。
不登校の生徒を大切にするために、あなた自身を壊さないでください。
支援者が倒れるまで続けなければ成立しない支援は、持続可能な支援ではありません。
毎日家庭訪問する先生がすばらしくて、週1回しか連絡できない先生が駄目なのではありません。
大切なのは、
その支援が本人に合っているか。
家庭にとって負担になっていないか。
学校として継続できるか。
です。
担任自身も学校組織の一員として支えられる存在です。

10.保護者との面談を具体的に考える

面談前に「今日の目的」を一つ決める

保護者との面談は長くなりがちです。
これまでの経過。
本人の状態。
家庭の様子。
学習。
医療。
進路。
全部を話そうとすると、90分でも足りません。
私は、
「今日は何を一番確認するのか」
を決めておくとよいと思います。
最初の面談なら、
「現在の状態と、本人・家庭が学校へ望んでいること」
でもよいでしょう。
中学3年生の秋なら、
「今後2か月の進路情報をどう届けるか」
でもよい。
目的を絞ることで、保護者も疲れにくくなります。

最初の5分で安心できる関係をつくる

面談開始直後から、
「何時に寝ていますか」
「ゲームは何時間ですか」
「家庭では勉強していますか」
と聞かないことです。
まず、

今日は来ていただいてありがとうございます。全部を今日決める必要はありません。まず今の様子をお聞きして、学校でできることを一緒に考えたいと思っています。
と伝えます。
保護者の中には、
「学校から何を言われるのだろう」
と緊張して来る人もいます。
「親の育て方を注意されるのでは」
と思っていることもあります。
面談は、
学校が家庭を指導する場
ではありません。
同じ本人を支える人同士が情報を持ち寄る場です。

「原因は何だと思いますか」と最初から聞かない

保護者自身が原因を探し続けている場合があります。
「あのとき私が仕事を優先したから」
「スマホを買ったから」
「小学校で厳しくしすぎたから」
自分を責めています。
そこで学校まで、
「ご家庭として原因は何だと思いますか」
と聞けば、さらに責任を求められているように感じる場合があります。
代わりに、

最近、家ではどんなふうに過ごしていますか。
比較的しんどくなさそうな時間はありますか。
学校の話をするとどんな様子ですか。
学校からの関わりで負担になっているものはありますか。
具体的な現在の状態を聞きます。

保護者の願いを言葉にしてもらう

今の段階で、学校に一番してほしいと思っておられることは何でしょうか。
と聞きます。
答えが、
「学校へ戻してほしい」
でも構いません。
否定しません。
そこから、
学校へ戻ってほしい一番の理由は、どんなところですか。
と聞きます。
「将来が心配」
「友達がいなくなる」
「勉強が遅れる」
願いの奥が見えてきます。
そうすると、
学校へ戻ること以外にも、
将来へつなぐ方法。
友達とつながる方法。
学習を続ける方法。
を一緒に考えられます。

「大丈夫です」は慎重に

保護者が、
「高校に行けるでしょうか」
と聞きます。
教師は安心させたい。
「大丈夫ですよ」
と言いたくなります。
しかし、
何が大丈夫なのか分かりません。
代わりに、

現時点で選択肢がなくなったわけではありません。今ある選択肢を一緒に確認しましょう。
と言います。
希望を伝える。
しかし未来を保証しない。
誠実な安心
を目指します。

分からないことは持ち帰る

評価。
出席扱い。
高校入試。
制度。
すぐに答えられない質問があります。

そこは私の判断だけでは答えられないので、学校で確認します。金曜日までに連絡します。
それでよいです。
そして金曜日までに答えます。
不登校支援では、
「何でも知っている先生」
より、
分からないことを分からないと言い、確認して返してくれる先生
の方が信頼されることがあります。

面談の最後は「次の一歩」を小さく決める

90分話した最後に、
「では頑張りましょう」
で終えない。
次を具体化します。

学校は、評価について教科担当と確認します。
お家では、今週新しく何かしていただく必要はありません。
来週木曜日に、担任から一度連絡します。
これだけです。
本人へ学校から聞いてほしいことがあれば、
それも一つだけにします。

保護者が泣いたとき

教師は何か言わなければと思います。
「お母さんが悪いんじゃないですよ」
「絶対大丈夫です」
と言いたくなります。
でも、すぐに励まさなくてもよいことがあります。
少し待つ。
話を聞く。

ずっと心配しながら過ごしてこられたんですね。
くらいでよいことがあります。
保護者も、
解決策より、
まず苦しさを受け止めてもらいたいときがあります。

保護者へ言わない方がよいこと

「もっと厳しくした方がいいです」
「甘やかしすぎではないですか」
「家では元気なんですよね?」
「親が不安になると子どもにも伝わります」
「ゲームを取り上げてください」
これらの中には、状況によって話し合う必要があるテーマもあります。
しかし、
家庭を評価するような言い方は慎重にします。
学校から見えているのは家庭生活の一部です。

本人と保護者の意見が違う場合

本人は、
「連絡してほしくない」
保護者は、
「先生からもっと連絡してほしい」
と言います。
どちらかを勝たせません。
例えば、
本人への直接連絡は月1回。
保護者とは週1回。
進路等重要情報は必ず本人にも届く形にする。
調整します。
本人の意見尊重は、現在のこども政策でも重要な原則です。こどもの意見は、言葉にされたものだけでなく、意見を表しやすい環境づくりを含めて考える必要があります。

11.学習と評価をさらに具体的に考える

不登校になった瞬間から「学力低下」を恐れすぎない

教師は教育を仕事にしています。
だから、学校へ来られなくなると、
「勉強が遅れる」
ことが非常に気になります。
それ自体は当然です。
しかし、本人が心身ともに大きく疲れている時期に、
大量の課題を届けることで学習が再開するとは限りません。
本人にとって、
教科書を開くこと自体が学校を思い出す行為になっていることもあります。
まず状態を見ます。
今は休養が必要なのか。
何かなら学べそうなのか。

「全部やる」から「今、意味のあるところをやる」へ

例えば中学2年生の数学。
3か月欠席しました。
学校ワークは40ページたまっています。
「全部終わらせてください」
では、始める前から挫折します。
教科担当と相談し、
今後の学習につながる内容。
本人が理解できそうな内容。
特に重要な内容。
を精選します。
「ここだけでもいい」
とします。
これは、
学習を甘くすることではありません。
学習へ再び入る入口をつくる
ということです。

学び直しを当然の選択肢にする

中学3年生だから中3数学だけ。
とは限りません。
方程式につまずいているなら中1へ戻る。
英語の基本文構造が難しいならそこへ戻る。
「中1内容をやるなんて恥ずかしい」
という雰囲気を学校側がつくらない。
2026年の次期学習指導要領に向けた論点整理では、「多様性の包摂」が大きな方向性の一つとされ、不登校児童生徒等について個別の教育課程編成を可能とする制度の検討が進められています。現時点では次期制度の審議段階ですが、教育を子どもの実態へより柔軟に合わせる方向が明確に議論されています。

得意な教科は「逃げ」ではない

数学ばかりする。
社会だけ好き。
絵なら描く。
教師は、
「苦手教科もしないと」
と思います。
もちろん将来的には幅広い学習が必要です。
しかし、学習から完全に離れていた時期なら、
「自分は学べる」という感覚を取り戻す
ことも重要です。
得意な教科を入口にします。

学校教材だけが学習ではない

自宅で本を読む。
動画で歴史を学ぶ。
プログラミング。
英語の動画。
科学実験の動画。
博物館。
本人が自分で調べている。
すべてがそのまま学校教育の成績評価対象になるわけではありません。
しかし、
「学校ワークをしていないから何も学んでいない」
とも言えません。
本人が何を学んでいるのかを知ることから始めます。

2024年の成績評価制度改正は全教職員が知っておきたい

2024年8月29日、学校教育法施行規則等の改正により、一定の要件の下で、不登校児童生徒が学校外の機関や自宅等で行った学習成果について、学校の判断で成績評価に考慮できることが法令上明確化されました。
重要なのは、
「学校へ来なければ成績を評価できない」と機械的に決めない
ことです。
一方で、
自宅学習なら何でも自動的に成績評価できるわけではありません。
学習内容。
学校の教育課程との関係。
学校との連携。
本人の学習状況の把握。
その他、通知・法令上の要件を確認して、学校が判断します。

担任一人で成績を約束しない

保護者から、
「この問題集を全部やれば5になりますか」
と聞かれる。
担任が、
「大丈夫です」
とは答えません。
教科ごとの目標・評価基準があります。
教科担当。
教務。
管理職。
必要な確認をします。

定期テストを受けるかどうか

本人が、
「テストだけなら行きたい」
と言う。
希望を聞きます。
別室。
時間帯。
休憩。
入退室。
学校として可能な方法を考えます。
一方、
「テストだけは絶対来なさい」
としません。
テストを受けない場合にどのような評価資料が考えられるかを、教科担当と整理します。

提出物は「量」だけで見ない

何十ページ提出した。
だから主体性がある。
提出していない。
だから主体性がない。
ではありません。
本人の実際の学びを見ます。

コメントを書くなら、本人が次へ進めるコメントにする

「すごい!」
だけでもなく、
赤ペンで間違いをすべて直すだけでもない。

この考え方は合っています。
ここまでは理解できています。
次はこの1問だけ考えてみてください。
具体的に返します。
ただし教師が毎日長文を書く必要はありません。
続けられるフィードバック
にします。

オンライン学習を新しい「登校」にしない

学校へ来ないならオンラインへ毎時間参加。
カメラはON。
時間通り。
これでは、教室を自宅画面へ移しただけになる場合があります。
本人に合わせて、
オンデマンド。
教材配信。
録画。
チャット。
個別短時間。
選びます。

「今日は勉強できなかった」を失敗にしない

昨日30分勉強できた。
今日はできなかった。
人の状態は直線的に回復しません。
本人自身が、
「昨日できたのに今日はできなかった」
と落ち込んでいることもあります。

今日はできなかったんだね。またできそうなときに考えよう。
くらいでよいことがあります。

12.進路指導をさらに具体的に考える

中3担任が一番避けたいこと

私は、
進路情報を伝えること自体を遠慮しすぎること
だと思っています。
「今はしんどそうだから」
と進路の話を避け続ける。
気付けば冬。
本人が知ったときには選択肢が狭くなっていた。
これは避けたいところです。
本人を焦らせない。
でも、情報は届ける。
この両立が必要です。

「今決めなくていい」という言葉の後に情報を置く

今決めなくていいよ。ただ、この時期に知っておいた方がいい情報だから、資料だけ渡しておくね。
本人に選択権を残します。

高校を偏差値だけで選ばない

不登校経験の有無にかかわらず同じですが、特に本人の生活状況を見る必要があります。
通学時間。
始業時刻。
授業形態。
クラス人数。
相談体制。
オンライン対応。
学習内容。
本人の興味。
卒業要件。
学校生活。
総合的に見ます。

「通えるか」だけでも選ばない

通いやすい。
でも本人が全く興味を持てない。
それでは続きにくいことがあります。
本人が、
「ここなら少し行ってみたい」
と思える要素も大切です。

学校見学は本人の評価試験ではない

当日行けなかった。
途中で帰った。
だからその高校は無理。
ではありません。
「何がしんどかった?」
を確認します。
朝。
電車。
人の多さ。
説明会。
校舎。
制服。
一つずつ見ます。

通学経路を一度試す

本人が希望するなら、実際の通学時間帯に行ってみることには意味があります。
朝の電車。
駅から学校。
疲労。
実際に知る。
ただし、
「3日できたら受験OK」
のようなテストにはしません。
情報収集です。

高校合格後こそ引継ぎを丁寧にする

中学校担任が一番安心するのは合格した瞬間かもしれません。
しかし本人にとっては、
新しい不安が始まります。
入学後の相談先。
必要な配慮。
本人の強み。
学び方。
伝えられる範囲で必要な情報をつなぎます。

卒業後を担任が抱えない

「何かあったらいつでも先生に連絡して」
温かい言葉です。
しかし、卒業後も中学校担任だけが唯一の相談相手になるのは望ましくありません。
新しい学校。
地域の支援。
専門機関。
次の支援者へつなぎます。
つなぐことと、抱え続けることは違います。

13.学校として不登校支援を設計する

担任の熱意に依存する学校は危うい

熱心な担任の年だけ支援が手厚い。
異動すると支援がなくなる。
それでは学校の支援ではありません。
文部科学省も、小さなSOSを見逃さず、「チーム学校」で速やかに支援し、教育と福祉等が連携して本人・保護者につなぐことを求めています。

欠席状況を早めに共有する

30日休んで初めて、
「不登校ケース」
として会議へ上げるのではありません。
連続欠席。
遅刻・早退。
保健室利用。
本人の発言。
小さな変化から共有します。

ケース会議の型を決める

長いケース会議は必要ありません。
私は次の順で十分だと思います。
1.確認できている事実
2.本人の希望
3.保護者の希望
4.現在行っている支援
5.今困っていること
6.次に誰が何をするか
7.いつ見直すか
感想を一人ずつ長く話す会議にしません。

本人のいない場所で本人の目標を決めない

ケース会議で、
「週1回は登校させる」
と決めた。
でも本人は知りません。
それでは本人の目標ではなく、
学校の目標
です。
学校が提案できる選択肢をつくる。
本人に戻す。

「今週何回来た?」だけを成果指標にしない

管理職から毎週これだけ聞かれれば、担任は登校日数を増やすことが役割だと感じます。
代わりに、
「本人は今どんな状態?」
「家庭は?」
「学習は?」
「担任が困っていることは?」
「学校側で変えられることは?」
と聞きます。

校内教育支援センターの役割を明文化する

何時から利用できるか。
誰が担当するか。
学習はどうするか。
教科担当は関われるか。
相談はどうするか。
本人が自分で過ごし方を考えられるか。
曖昧にしません。

校内教育支援センターを第二の教室にしない

教室と同じ時間割。
同じ課題。
同じルール。
同じペース。
それでは教室が合わなかった本人に、別の部屋で同じものを求めることになります。
一方、何の学習支援もなく「好きに過ごしていい」だけにもならない。
本人の状態に合わせて学びを設計します。
次期教育課程の論点整理でも、校内外の教育支援センターについて、単なる居場所機能だけでなく、学習意欲や資質・能力につながる指導の充実が課題として整理されています。

学びの多様化学校も選択肢として知る

2026年には、文部科学省の指定一覧で学びの多様化学校の指定が84校まで広がっています。地域によって利用可能性は異なりますが、教師側が存在を知らなければ情報提供もできません。

SCを本人との面談だけに使わない

本人がSCと会えない。
それでも担任が相談できます。
保護者が相談できます。
ケース会議に参加してもらえます。

SSWへ早めに相談する

家庭の経済。
福祉。
保護者の疾病。
きょうだい。
生活環境。
学校だけでは難しい課題があります。
「家庭が大変になってから」
ではなく、必要性を感じた段階で相談します。

養護教諭へ業務を集中させない

不登校。
別室。
体調不良。
すべて保健室。
では養護教諭が持ちません。
学校全体の体制にします。

教務主任にも不登校支援の役割がある

授業時数。
評価。
教育課程。
時間割。
別室学習。
オンライン。
不登校支援は教育相談担当だけの話ではありません。
「学びをどう保障するか」
には教務の視点が必要です。

進路担当もチームに入る

中3になってから慌てて情報を集めない。
中1・中2段階から、
どんな選択肢があるのか。
地域にどんな学校があるのか。
学校として情報を更新します。

担任が休める支援にする

担任が年休の日。
誰も本人のことを知らない。
保護者から電話が来ても答えられない。
これでは担任が休めません。
支援記録。
役割分担。
複数の窓口。
つくります。

成功事例だけを校内研修で扱わない

毎日家庭訪問して学校復帰。
感動的です。
でも、そこだけを紹介すると、
「毎日家庭訪問しなければ」
という新しい規範になります。
学校へ戻らなかった。
でも本人が自分で高校を選べた。
教育支援センターで安定した。
電話を減らしたら関係がよくなった。
そうした事例も価値付けます。

不登校の人数だけで学校を評価しない

不登校の人数は重要な指標です。
しかし、それだけでは支援の質は分かりません。
相談できているか。
学べているか。
つながっているか。
本人の意見を把握できているか。
保護者が孤立していないか。
学校が改善したか。
見ます。
私は、
「不登校ゼロ」だけでなく「孤立ゼロ」
を目指したいと思っています。

14.一年間の流れで考える

4月――関係を急がない

新しい担任。
本人にとっては大きな変化です。
前年度の関係を大切にします。
「今年は自分が担任だから自分が一番関わる」
とは考えません。
連絡方法。
支援体制。
本人が信頼している人。
確認します。

5月――新しい環境の負担を見る

大型連休の前後。
欠席が増える生徒もいます。
ただし、
「GWで生活リズムが崩れた」
と決めません。
4月に無理をしていた可能性。
友人関係。
学習。
部活動。
様々です。

6月――支援を一度見直す

最初の支援方法が本人に合っているか確認します。
電話頻度。
教材。
家庭訪問。
別室。
一度決めた方法を一年固定しません。

7月――夏休みを「リセット期間」と押し付けない

「夏休みで生活リズムを整えて、2学期から頑張ろう」
と言いたくなります。
しかし夏休み明けを新しい期限にすると、それ自体がプレッシャーになります。
夏休み中の学校との連絡。
進路情報。
本人が望む学習。
必要な範囲で考えます。

8月――始業前に一度だけ選択肢を確認する

本人が、
「2学期は少し行ってみたい」
と思っているかもしれません。
一方、
始業式の話を聞きたくない場合もあります。
本人・家庭と調整します。

9月――夏休み明けの一日を成功・失敗にしない

始業式へ行けた。
それで完全復帰ではありません。
行けなかった。
それで失敗でもありません。
また状態を見ます。

10月――中3は進路情報を確実に届ける

本人がまだ決められなくても、情報を届けます。
説明会。
出願。
制度。
本人が後で選べる状態を残します。

11月――「もう時間がない」で追い詰めない

制度上の期限は伝えます。
しかし、焦りをそのまま本人へぶつけません。
選択肢を絞る。
短時間面談。
情報と決定を分けます。

12月――冬休み前に必要なものを整理する

大量の課題を渡さない。
本人が学びたいなら教材を準備する。
進路上必要な手続は確実に伝えます。

1月――進路の最終確認と心身状態を両方見る

受験が近づきます。
「受験生だから頑張る」
という圧力が高まります。
本人の体調も見ます。

2月――卒業をどう迎えたいか聞く

卒業式。
卒業証書。
写真。
友達。
本人の希望を確認します。

3月――「学校へ戻れなかった一年」で終わらせない

年度末の評価を、
登校日数だけにしません。
本人がどのように一年を過ごしたか。
何につながったか。
何を選んだか。
次へ何を引き継ぐか。
見ます。

15.担任自身を守る

不登校支援は際限なくできてしまう

もう一回電話しよう。
もう一回家庭訪問しよう。
もっと教材を用意しよう。
高校をもっと調べよう。
終わりがありません。
だからこそ、
組織として支援量を考える
必要があります。

自分の時間を削るほどよい教師ではない

休日に家庭訪問。
夜遅く電話。
自費で教材。
それをしたい教師を否定するつもりはありません。
しかし、
それが標準になってはいけません。
教師にも家庭があります。
生活があります。
健康があります。

担任が自分を責め始めたら言葉にする

「もっとできたと思います」
「自分が悪かったのかもしれません」
同僚へ話します。
一人で考えていると、責任が無限に大きくなります。

保護者の強い言葉を一人で受け続けない

「先生のせいです」
「何もしてくれない」
言葉は残ります。
必要なケースでは管理職と共有します。
組織で受けます。

本人の人生全体は教師には見えない

中学校時代に一度も教室へ戻らなかった。
その後高校へ進学した。
数年後働いている。
そういうことがあります。
逆に、中学校で再登校しても、その後また苦しくなることもあります。
教師は人生の一部分に関わります。
だから、
自分がその人生を成功させなければならない
と思わなくてよいです。

「何もしなかった日」も支援は続いている

今日は電話していない。
家庭訪問していない。
でも、
学校に本人の席がある。
進路情報を整理した。
学年で共有した。
本人が来たら受け入れられる。
関係は切れていません。

休むことも仕事の一部

担任が疲弊すれば、
本人にも他の生徒にも十分に関われません。
休んでください。
そして、担任が休める学校にしてください。

16.最後に――不登校を担当している先生へ

ここまで、とても長い文章になりました。
不登校について、
考え方。
本人との関係。
保護者。
学習。
評価。
別室。
教育支援センター。
進路。
組織。
たくさん書きました。
ここまで読んだ先生の中には、
「不登校対応って、こんなにいろいろ考えないといけないのか」
と、かえって不安になった人がいるかもしれません。
だから、最後にもう一度伝えます。
全部を担任がするために書いたのではありません。
むしろ逆です。
これだけ多くのことが関係するのだから、
担任一人でできるはずがない。
そのことを知ってほしいのです。
担任にしかできないことは、案外少ないと思っています。
日常のつながりを残す。
本人を学級で忘れない。
重要な情報を届ける。
約束を守る。
本人や保護者の話を聞く。
そして、必要な人につなぐ。
それくらいです。
医療は医療の専門家がいます。
心理はSCがいます。
福祉はSSWがいます。
評価は教科担当や教務と考えます。
進路は進路担当がいます。
学校全体の判断は管理職がします。
一人で全部できないことは、教師としての力不足ではありません。
不登校の生徒を担当すると、
教師は「結果」を求めたくなります。
今月は何日来た。
別室へ来た。
教室へ戻った。
そういう変化は分かりやすいからです。
でも、
本人が先生からの電話を嫌がらなくなった。
保護者が学校へ相談できるようになった。
本人が一つだけ希望を言えた。
教材を一ページ開いた。
教育支援センターへ行った。
高校について検索した。
友達と話した。
「今日は学校の話をしたくない」
と自分の気持ちを言えた。
それも変化です。
反対に、
半年間、目に見える変化がほとんどないこともあります。
その半年を、
「無駄だった」
と思わないでください。
本人に必要な時間だったかもしれません。
家庭内の緊張が少し減ったかもしれません。
学校が追いかけてこない安心を知ったかもしれません。
今は外から分からないだけかもしれません。
教師には、そのすべては分かりません。
だから私は、
思いを馳せる
という言葉に戻ります。
本当の気持ちは分かりません。
だから想像する。
でも、想像を答えにはしない。
本人へ聞く。
保護者へ聞く。
反応を見る。
違ったら変える。
また考える。
それを繰り返します。
そしてもう一つ。
本人や保護者の、
エネルギーを奪わない。
学校は善意でたくさんのものを届けます。
電話。
課題。
励まし。
情報。
助言。
でも、ときには、
「何かをする」
より、
「一つ減らす」
ことが支援になります。
電話を減らす。
課題を減らす。
返事を求めない。
行事への誘いを一度やめる。
今日決めなくてよいと伝える。
そのことで、本人に少し余力が生まれることがあります。
さらに、
登校だけをゴールにしない。
これは、
学校へ来なくてよいから放っておく、
という意味ではありません。
学校へ来られないときにも、
学べる。
情報が届く。
人とつながれる。
相談できる。
進路を選べる。
そして、本人が学校へ行こうと思ったときには、
戻れる道がある。
そこまでを支えます。
2026年8月現在、国の不登校支援でも、不登校をどの児童生徒にも起こり得るものとして捉え、本人・保護者の意思を尊重しながら、「学校に登校する」という結果のみを目標とせず、社会的自立と学びの保障につなげることが基本とされています。
また、2024年の制度改正によって、一定の要件の下では学校外や自宅での学習成果を学校の成績評価へ考慮できることも法令上明確になりました。
さらに、次期学習指導要領に向けた議論では、「多様性の包摂」が大きな方向性として掲げられ、不登校児童生徒についても本人の実態に応じた柔軟な教育課程の制度設計が検討されています。現時点では審議中の内容も含まれるため、実際の運用では必ずその時点の法令・通知・教育委員会の方針を確認する必要があります。
時代は変わります。
制度も変わります。
不登校に対する考え方も変わっていきます。
しかし、私は変わらないこともあると思っています。
本人を一人の人間として大切にすること。
保護者を責めないこと。
約束を守ること。
困ったときに一緒に考えること。
分からないことを分かったふりをしないこと。
一人で抱え込まないこと。
そういうことです。
不登校の生徒を担当していると、
自分の無力さを感じる日があります。
電話に出ない。
家へ行っても会えない。
教材もやっていない。
学校にも来ない。
高校についても話したくない。
そのとき、
「自分はこの生徒に何もできていない」
と思います。
でも、本当にそうでしょうか。
本人が学校のことを考えたとき、
「先生に怒られる」
ではなく、
「先生なら話してもいいかもしれない」
と思える。
保護者が困ったとき、
「学校にはもう言えない」
ではなく、
「一度先生に聞いてみよう」
と思える。
本人が勉強したくなったとき、
教材がある。
高校について知りたくなったとき、
情報がある。
別室へ行ってみたいと思ったとき、
場所がある。
教室へ行ってみたいと思ったとき、
自分の席がある。
学校ではない場所で学びたいと思ったとき、
学校がその学びを否定しない。
これは、
何もしていない状態ではありません。
私は、
「不登校を克服させた教師」
を目指さなくてもよいと思っています。
むしろ、
苦しかったときに、急かさなかった先生。
学校へ来なくても、自分の存在を消さなかった先生。
必要なことはちゃんと教えてくれた先生。
自分の話を勝手に解釈せず、聞いてくれた先生。
自分の人生を、大人だけで決めなかった先生。
そんな教師でありたいと思います。
そして、不登校を担当する先生にも言いたいことがあります。
あなた一人が、
その生徒の人生を背負わなくて大丈夫です。
あなたが今日電話をできなかったからといって、
その生徒の未来が閉ざされるわけではありません。
家庭訪問へ行けなかった日があっても大丈夫です。
年休を取っても大丈夫です。
家に帰って家族と過ごして大丈夫です。
休日に仕事をしなくても大丈夫です。
教師にも生活があります。
教師にも人生があります。
本人を大切にする支援が、
教師自身を壊すものであってはいけません。
本人を一人にしない。
保護者を一人にしない。
そして、
担任を一人にしない。
私は、この三つがそろって初めて、
学校の不登校支援になるのだと思っています。
今日、本人は学校へ来なかったかもしれません。
家で眠っていたかもしれません。
ゲームをしていたかもしれません。
一冊の本を読んだかもしれません。
家族と少し話したかもしれません。
何もしていなかったかもしれません。
私たち教師には、
その一日の意味はすべて分かりません。
だから、
分かったつもりにならない。
思いを馳せる。
そして、本人がいつか、
「少しやってみようかな」
と思ったとき、

ここからでいいよ。
と言える学校でありたいと思います。
中学校の3年間は大切です。
しかし、
人生のすべてではありません。
今、学校へ行けているかどうかだけで、
その子の未来を決めない。
同時に、
「学校へ来なくてもいい」
という言葉だけで、
学びや人とのつながりを手放さない。
本人の人生には、
まだたくさんの続きがあります。
教師ができることは、
その続きへつながる道を、
一つでも多く残しておくことです。
目の前の一人を、
「不登校の生徒」
というカテゴリーだけで見るのではなく、
一人の人間として大切にする。
結局、私はそこへ戻ってきます。
そして、その一人を大切にしようと毎日悩んでいる先生自身も、
学校の中で大切にされてほしいと思っています。
温かい職員室が、温かい教室を生む。
不登校支援ほど、
その言葉が問われる場面はないのかもしれません。

参考資料

・文部科学省「令和6年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果及びこれを踏まえた対応の充実について」―不登校児童生徒数、不登校支援の基本的な考え方、本人・保護者の意思の尊重、「学校に登校する」という結果のみを目標としない支援、チーム学校、学校風土改善等について確認できます。
・文部科学省「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)」―学校内外の多様な学びの場、早期SOS把握、安心して学べる学校づくり等の基本方針です。
・文部科学省「不登校児童生徒が欠席中に行った学習の成果に係る成績評価について」―2024年8月29日の学校教育法施行規則等の改正により、一定の要件の下で学校外・自宅等の学習成果を成績評価へ考慮できることが法令上明確化されています。
・中央教育審議会教育課程企画特別部会「論点整理」―次期学習指導要領に向けて、「主体的・対話的で深い学び」「多様性の包摂」「実現可能性」の三つを大きな方向性として整理し、不登校児童生徒等のための柔軟な教育課程制度について検討しています。
・文部科学省「不登校児童生徒に係る特別の教育課程ワーキンググループ」関連資料―2026年現在、本人の実態に応じた教育課程や個別の指導計画等について具体的な制度設計が審議されています。確定制度ではない内容については、実施時点の最新通知を確認してください。
・こども家庭庁「こどもの意見聴取と政策への反映」及び関連資料―こどもの意見を聴き、その声を尊重する考え方について確認できます。
・一般社団法人日本小児心身医学会「起立性調節障害」―起立性調節障害の症状、午前中に症状が強くなり得ること、家庭・学校での環境調整等について解説されています。
・文部科学省「学びの多様化学校(いわゆる不登校特例校)の設置者一覧」―2026年時点の指定状況等を確認できます。
・文部科学省「令和8年7月3日児童生徒の自殺予防に係る取組について」―生命・安全に関わるケースについて、学校と関係機関との連携を含む自殺予防の取組が示されています。

SEOタイトル

中学校の不登校対応|担任・担当者が知っておきたい支援の完全ガイド

メタディスクリプション

中学校で不登校の生徒を担任したとき、教師は何を考え、どう関わればよいのか。本人・保護者との関係、家庭訪問、学習・成績評価、別室・校内教育支援センター、教育支援センター、進路、起立性調節障害、SC・SSWとの連携、18の具体事例、次期学習指導要領の方向まで、不登校支援を現場の視点から体系的に解説します。担任一人で抱え込まないための実践ガイドです。

メタキーワード

不登校,不登校対応,中学生不登校,不登校担任,中学校教師,不登校支援,保護者対応,家庭訪問,別室登校,校内教育支援センター,教育支援センター,フリースクール,学びの多様化学校,起立性調節障害,進路指導,成績評価,出席扱い,SC,SSW,COCOLOプラン

タイトルとURLをコピーしました