保護者から、「塾に行かせた方がいいのですか」「塾ってどんなところですか」と聞かれることがあります。
塾について、間違った考え方をしている中学校教師は次のようなイメージをもっています。
1.塾に行っているから、学校で眠そうにしている。
2.塾に行って先に習ってしまっているから、学校の授業を聞かなくなる。
3.塾は暗記させるばかりだ。だから生徒の思考力がなくなる。
4.塾に行っているから、家族で過ごす時間がなくなる。
5.塾は学校の悪口を言っている。
6.塾は、志望校合格だけを目標にしている。責任を持って指導していない。
7.偏差値は、生徒の心を歪める。偏差値を使うなんて信じられない。
8.塾に行くと点数のことばかりで、教科そのものに対する興味をなくさせる。
これらはすべて誤った考え方です。
1.「塾に行っているから、学校で眠そうにしている」のか?
「また、授業中に居眠りして。夜遅くまで塾に行っているからこんなことになるんだ。健康にも悪い。」
授業中にある教師が言いました。
本質をとらえていません。
生徒は夜遅くまで勉強しているのです。
ひょっとしたら、本人は塾に行きたくないかもしれません。
でも、頑張って行っているのです。
理由はどうあれ、このことは褒めてあげるべきです。
「眠くなるような授業」をしている自分自身を反省すべきです。
眠そうなら、
「体を動かす作業をする」
「生徒同士の活動を入れる」
「ミニ○○大会をする」
など工夫をすればよいのです。
それがプロの仕事です。
これには、続きがあります。
次の授業もその生徒は、頑張ったのにもかかわらず、授業中眠気に負けて「ガクッ」となってしまいました。
その教師は、
「そんなに眠たいなら、塾なんてやめてしまいなさい。学校の授業を聞けないなら、塾なんて言っても意味がない」
と言ってしまいました。
その夜、保護者が血相を変えて学校に来て話をしました。
「○○(生徒の名前)は、確かに授業中寝るなんて悪いと思います。でも、高校に行って○○するために、歯を食いしばって塾に行っています。私の家はお金がありませんから、やっとのことでお金をつくって行かせています。だから、塾に行っていることを否定するのではなく、どうやったら頑張れるか言ってあげてほしいのです。応援してあげてほしいのです。もし、次に○○のやる気を奪うようなことがあったら、私は許しません」(話の概要です)
この保護者は、モンスターペアレントでしょうか。
違います。
逆なのです。
教師が、モンスターティーチャーなのです。
「どこまでも生徒を応援する」という心がなければ、中学生を指導できません。
2.「塾に行って先に習ってしまっているから、学校の授業を聞かなくなる」のか?
これも、全く見当はずれです。
塾の先生は、「学校の授業も復習と思ってしっかり聞きなさい」と言っているところがほとんどなのです。
「学校の授業を聞く、聞かない」は、「授業内容を知っている、知らない」にはほとんど関係ないのです。
「知っているから聞かない」のではありません。
単純に授業が面白くないのです。
相手は中学生ですから、個人差が相当あります。
そうした個人差がある中での授業方法を知らないだけなのです。
例えば、問題を解かせるなら、10問用意して、
「今から、5分とります。全部で4コースあります。10問コース、5問コース、3問コース、1問コースです。得意な人は10問コース、メッチャ苦手だという人は1問コースをします。途中でコースを変えても構いません。できた人から教卓にもってきます。それではスタート」
これは、個人差がある場合に使う有名な方法です。
他にもたくさんあります。
面白くて知的な授業をするために勉強するしかないのです。
3.「塾は暗記させるばかりだ。だから生徒の思考力がなくなる」のか?
生徒が「思考」するには、エネルギーが必要です。
そのエネルギー源は、例えば、
・「その問題のそのものが面白い」
・「志望校に合格したい」
という気持ちからくるものです。
どちらが悪いということはありません。
「受験勉強で思考すること」に否定的な教師がほんの一部ですがいるのです。
「受験勉強で思考すること」はとても有効な思考力の鍛え方です。
それを否定してはいけないのです。
4.「塾に行っている時間から、家族で過ごす時間がなくなる」のか?
「土日の休みもなくクラブに明け暮れている教師」はどうなるのでしょうか。
塾は関係ありません。
「家族で過ごす時間」の長さに注目すべきではありません。
5.「塾は学校の悪口を言っている」のか?
ほんの一部の塾講師は、学校のことをよく言わない場合があります。
しかし、ほんの一部です。
ほとんどの塾講師の先生方は学校の味方です。
学校の先生を否定したところで、子どものためにならないことは分かっているのです。
むしろ、塾を悪く言う中学校教師の方が多いのです。
お互いを認め合うこと、少なくとも否定しないことが、子どものためになるのです。
6.「塾は、志望校合格だけを目標にしている。責任を持って指導していない」のか?
中学校の先生は、責任をもって指導しているのでしょうか。
私はそうは思いません。
「責任をもつ」なんてできないからです。
むしろ、塾の先生の方が現実的です。
合格の可能性を正確に言ってくれます。
不合格になった場合のフォローも一流です。
不合格になった生徒が、高校へ入学して頑張れるような話もします。
中学校の先生はどれだけそういうことを組織としてできるのでしょうか。
塾ではそういう研修があります。
中学校で、高校受験指導についての研修を聞いたことがありません。
それこそ、無責任なのだと思います。
7.「偏差値は、生徒の心を歪める」のか?
現在の「アラフォー」世代は、偏差値世代です。
中学校で受けていた業者テストで、偏差値が記載されていました。
だからと言って、現在の「アラフォー」世代は、何か問題を抱えているでしょうか。
そんなことはありません。
偏差値を悪者にしすぎなのです。
8.「塾に行くと点数のことばかりで、教科そのものに対する興味をなくさせる、勉強嫌いにさせている」のか?
以前私が塾の講師をしていた時、数学が嫌いな生徒がいました。
その生徒は「嫌いなままでいいから、とにかく他の教科に影響しないように点数だけとりたい」と、最初は言っていました。
ある定期テストで、50点台だった点数が80点台になりました。
もちろん生徒は大喜びです。
それ以来、数学が一番好きな教科になってしまったのです。
「点数が上がったから好きになった」、これはよくあることです。
「初めは、不純な動機でも・・・」
ということは大人だってあるはずです。
相手は中学生です。
どんな理由で気持の変化が起こるかなんて予想できないこともあるのです。
とにかく塾のことをよく知らなければ、学校の強みを活かすことはできません。
また、塾がこの日本の教育の水準を上げていることは間違いのない事実なのです。
さまざまな国際基準のテスト(OECD生徒の学習到達度調査(PISA)など国立教育政策研究所HPへ)がありますが、塾がなくなれば順位を下げるでしょう。
ぜひ、塾について勉強してください。
塾については、
塾はなぜ、「分かりやすい」のか
で記事にしています。
よろしければご参考になさってください。