育休から教員復帰する前に準備したいこと

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育児休業から学校へ復帰することになったとき、
「以前と同じように働けるだろうか」
「授業についていけるだろうか」
「子どもが急に熱を出したらどうしよう」
「周りの先生に迷惑をかけないだろうか」
と、不安になることがあります。
特に、育休に入る前に長時間働くことが当たり前になっていた先生ほど、「限られた時間で本当に仕事ができるのか」と感じるかもしれません。
しかし、復帰前に目指すのは、
育休前とまったく同じ働き方に戻ることではありません。
家庭の状況も、学校も、自分自身も変化しています。
必要なのは、今の生活に合わせて、もう一度仕事の仕方を組み立てることです。
ここでは、中学校の先生が育休から復帰する前に準備しておきたいことを整理します。

1.「以前と同じように働く」を目標にしない

最初に考えておきたいことがあります。
育休前に、
・朝早く出勤する
・放課後遅くまで残る
・自宅へ仕事を持ち帰る
・休日も部活動や教材研究をする
という働き方をしていたとしても、それを復帰後の基準にする必要はありません。
むしろ、
限られた時間の中で仕事を成立させる方法を考えること
が大切です。
子育てをしていれば、保育所等への送迎があります。
突然の発熱もあります。
予定どおりにいかない日もあります。
そこを本人の努力だけで埋めようとすると、どこかに無理が生じます。
復帰とは「元の働き方に戻ること」ではなく、
新しい生活に合った働き方をつくること
だと考えてみてください。

2.復帰前に「何が不安なのか」を書き出す

「復帰が不安」という状態のままだと、何を準備すればよいのかが分かりません。
一度、具体的に書き出してみます。
例えば、
・授業についていけるか
・担当学年や校務分掌が分からない
・短時間勤務で仕事が終わるか
・部活動をどうするか
・子どもの体調不良時にどうするか
・周囲の先生との関係
・学校のICT環境が変わっていないか
・制度やルールが変わっていないか
・保護者対応ができるか
などです。
そして、それぞれを、
「今考えられること」
「学校に確認しなければ分からないこと」
に分けます。
学校に確認しなければ分からないことを、育休中に一人で考え続けても答えは出ません。
分からないことを分からないまま抱えないことが大切です。

3.復帰前に管理職と確認しておく

可能であれば、復帰前に校長や教頭と一度話す機会を持つことを勧めます。
確認しておきたいのは、例えば次のようなことです。
・勤務時間
・担当予定の学年
・担当教科と授業時数
・学級担任の有無
・校務分掌
・部活動
・会議の扱い
・時間外に行われる行事等
・保育所等への送迎との関係
・子どもの急病時の連絡方法
・利用できる休暇や育児関係制度
すべて自分の希望どおりになるとは限りません。
一方で、学校側も事情を知らなければ調整できません。
「何とかします」だけではなく、
できること、難しいこと、相談したいことを具体的に伝える
ことが重要です。
公立学校教職員には育児休業、育児短時間勤務等に関する制度が法令上設けられていますが、具体的な運用や手続は所属する自治体の条例・規則等によって確認する必要があります。
制度について分からない場合は、学校だけでなく教育委員会の人事・服務担当にも確認してください。

4.「周囲に迷惑をかける」と考え過ぎない

育休から復帰する先生が特に気にしやすいことの一つが、
「周りの先生に迷惑をかけるのではないか」
ということです。
確かに、急な休みなどによって誰かに仕事をお願いする場面はあるかもしれません。
しかし、学校では誰でも助けてもらうことがあります。
病気になることもあります。
家族の介護が必要になることもあります。
自分自身の事情で休むこともあります。
その時々で、支える側と支えられる側は入れ替わります。
だから、
「迷惑をかけないように全部自分でやる」
ではなく、
「必要な時に周囲と連携できる状態をつくる」
ことを考えます。
そして、助けてもらったことを「いつか返さなければならない借り」と考える必要もありません。
自分に余裕がある時に、困っている人を自然に支えられる職員室であればよいと思います。

5.子どもの急な発熱は「起こるもの」として準備する

復帰後、かなり高い確率で予定外のことが起こります。
朝になって子どもが発熱する。
保育所等から電話が入る。
感染症で登園できない。
こうした事態を、「起こらないこと」を前提にして勤務計画を組むと苦しくなります。
あらかじめ家庭で、
・誰が迎えに行くか
・配偶者とどう分担するか
・祖父母等に頼れるのか
・病児・病後児保育を利用できるか
・利用する場合の登録は済んでいるか
・急に休む場合、学校の誰へ連絡するか
などを確認しておきます。
すべての事態に対応できる完璧な計画は作れません。
それでも、
「最初に誰へ連絡するか」まで決めておくだけでも違います。

6.授業準備は「復帰前に全部取り戻そう」としない

育休期間が長いと、
「教育の流れについていけていないのでは」
と感じることがあります。
そこで大量の教育書を読んだり、教材を作ったりする必要はありません。
復帰後の担当学年や担当教科が分からない段階では、準備できることにも限界があります。
まず確認したいのは、
・現在使用している教科書
・年間指導計画
・学校の授業ルール
・ICT環境
・成績処理の方法
・学習評価の校内ルール
などです。
学校固有の情報については、学校に戻ってから確認した方が早いものも少なくありません。
育休中に学校の仕事を先取りし続けるのではなく、
復帰した後に必要なことを必要な順に学ぶ
くらいで構いません。

7.仕事を「全部やる」から「優先順位をつける」へ変える

時間に制約ができると、仕事の進め方を変える必要があります。
中学校の仕事には、
・授業
・教材研究
・学級経営
・生徒指導
・保護者対応
・校務分掌
・会議
・行事
・部活動
など、多くの業務があります。
すべてに同じ時間をかけることはできません。
そこで仕事を、
A 今日必ず行う
B 期限までに行う
C 誰かと分担できる
D やめても大きな問題がない
に分けます。
特に重要なのがDです。
仕事を速くするだけでは限界があります。
時には、
やらない仕事を決めること
も必要です。
復帰を機に、自分の仕事の仕方そのものを見直す機会にしてもよいと思います。

8.教材や校務を「自分しか分からない状態」にしない

急に休む可能性がある時ほど、情報を共有できる形にしておくことが重要です。
例えば、
・授業の進度を共有する
・教材を共有フォルダへ保存する
・予定をカレンダーへ入れる
・重要な対応は学年主任等と共有する
・校務分掌の資料を整理する
・引継ぎが必要な仕事は手順を残す
といった方法があります。
これは育児中の先生だけに必要なことではありません。
誰が休んでも仕事が止まらない仕組みは、学校全体にとって必要です。
「自分しか分からない」を減らすことは、周囲への遠慮ではなく、組織として仕事をするための工夫です。

9.育休経験を無理に「教師としての強み」にしなくてよい

「子育てを経験したから保護者の気持ちが分かるようになった」
「親になったから教師として成長した」
と言われることがあります。
実際、そのように感じる人もいるでしょう。
しかし、すべての人がそう感じる必要はありません。
子育てを経験しなくても優れた教師はたくさんいます。
育児を経験したからといって、すべての保護者の気持ちが分かるわけでもありません。
育休中の経験を無理に「教師力」に変換する必要はありません。
ただ、
「自分にも学校以外の生活がある」
「人にはそれぞれ事情がある」
と実感した経験が、誰かへの想像力につながることはあるかもしれません。
その程度でよいと思います。

10.復帰直後から100%を目指さない

復帰した最初の数週間は、
学校へ行くだけでも生活全体が大きく変わります。
起床時間。
送迎。
通勤。
勤務。
帰宅。
夕食。
入浴。
寝かしつけ。
翌日の準備。
まずは、新しい一日の流れをつくることが必要です。
ですから、最初から、
「授業も完璧に」
「学級経営も完璧に」
「校務分掌も迷惑をかけずに」
「家庭も完璧に」
と考えないことです。
まずは一日を終える。
次に一週間を終える。
少しずつ生活を調整する。
復帰直後は、それで十分です。

11.管理職や周囲の先生に考えてほしいこと

育休復帰は、本人だけが努力する問題ではありません。
文部科学省も、教育委員会に対して、教職員が出産や育児をしながら働きやすい環境を整えることを求めています。
管理職は、
「本人が何を希望しているのか」
をまず確認する必要があります。
こちらが良かれと思って役割を決めることが、本人の希望と一致するとは限りません。
また、
「短時間勤務なのだから、この仕事はできないだろう」
と最初から可能性を狭めることも適切ではありません。
勤務条件や本人の希望を確認しながら、
・授業時数
・担任
・校務分掌
・部活動
・会議
・学校行事
などを組織として調整します。
そして何より大切なのは、
育児中の教職員が申し訳なさそうに制度を利用しなければならない職員室にしないこと
だと思います。
誰かが休んだ時に学校全体で支えられる仕組みをつくることは、育児中の人だけではなく、すべての教職員にとって働きやすい学校につながります。

12.復帰前チェックリスト

復帰が近づいたら、次の項目を確認してみてください。
・勤務時間を確認した
・利用する育児関係制度を確認した
・管理職と働き方について話した
・担当予定を確認できる範囲で確認した
・保育所等の送迎時間を確認した
・子どもの急病時の対応を家族で相談した
・病児・病後児保育等の利用方法を確認した
・学校への緊急連絡方法を確認した
・家庭で朝から夜までの生活を一度シミュレーションした
・復帰直後から完璧を求めないと決めた
全部できていなくても構いません。
担当学年など、直前まで分からないものもあります。
自分で決められないことまで心配し続ける必要はありません。

13.「続けられる働き方」をつくる

育休から復帰するときに大切なのは、最初から以前と同じように働くことではありません。
一か月だけ頑張れる働き方でもありません。
何年も教師を続けられる働き方をつくること
です。
子育てをしている先生だけではありません。
介護をしている先生。
治療を続けながら働いている先生。
家族の事情を抱えている先生。
自分自身の生活を大切にしたい先生。
学校には、いろいろな人がいます。
誰かが何かを抱えた時、
「周囲に迷惑をかけるから言えない」
ではなく、
「一度相談してみよう」
と思える職員室であってほしいと思います。
温かい職員室とは、いつも誰かが誰かを一方的に助ける場所ではありません。
その時にできる人が、できるところを担う。
必要になった人は助けてもらう。
そうやって学校全体で仕事を続けていく。
育休からの復帰も、その中の一つです。

参考資料

・文部科学省「公立学校教職員の人事行政状況調査結果等に係る留意事項」
・e-Gov法令検索「地方公務員の育児休業等に関する法律」
・文部科学省「令和3年度公立学校教職員の人事行政状況調査について」
※公立学校教職員の育児に関する休業・休暇・短時間勤務等の具体的な対象、取得条件、申請方法は、所属する自治体の条例・規則等を確認してください。

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