中学校のクラス分けで最後に確認したい17の視点|一人の見方で決めない学級編成

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中学校クラス分けの最後のチェックポイント。椅子・教室の写真

年度末、中学校では次年度のクラス分けを考える時期があります。
学力。
友人関係。
生徒指導。
欠席状況。
特別な支援。
部活動。
リーダーシップ。
さまざまな情報を確認しながら、何度も生徒を入れ替えて学級を編成していきます。
時間をかけて話し合い、
「これで大丈夫だろう」
と思っても、私は最後にもう一度確認した方がよいと思っています。
なぜなら、
一人の教師が見ている生徒の姿は、その生徒のすべてではないからです。
担任には見せない姿を教科担任には見せることがあります。
授業では目立たなくても、部活動では中心になる生徒もいます。
ある教師の授業では落ち着いていても、別の場面では支援を必要としていることがあります。
文部科学省『生徒指導提要』でも、児童生徒の心理や人間関係を一人の教師だけで把握することの難しさが指摘されています。そのうえで、担任だけでなく、学年担当、教科担任、部活動顧問、養護教諭、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーなど、複数の立場から児童生徒を理解することが重要だとされています。
クラス分けに唯一の正解はありません。
だからこそ、最後の確認を丁寧に行います。

1.クラス分けの目的を「問題を均等に分けること」にしない

最初に確認しておきたいことがあります。
クラス分けは、
「大変な生徒を各クラスに均等に入れる作業」
ではありません。
もちろん、学級間に極端な偏りが生じないように考える必要はあります。
しかし、生徒を、
「生徒指導」
「不登校」
「学力」
「リーダー」
「要配慮」
などの枠だけで見てしまうと、その生徒自身が見えなくなります。
その生徒には得意なことがあります。
安心できる人があります。
力を発揮しやすい環境があります。
苦手な場面があります。
有効だった支援があります。
クラス分けで考えたいのは、
誰をどこに配置すれば教師が楽になるかではなく、一人一人の生徒が新しい学級で安心して学び、生活できる可能性をどう高めるか
です。
『生徒指導提要』は、児童生徒が安心して生活でき、個性を発揮し、集団の中で存在感を感じ、よりよい人間関係を築ける集団づくりを求めています。
学級編成も、この方向から考えたいところです。

2.担任の見方を「正解」にしない

1年間一緒に過ごしてきた担任は、生徒について多くの情報を持っています。
だから、クラス分けでも担任の意見は重要です。
しかし、
担任の見方だけで決めないこと
も同じくらい重要です。
「この二人は大丈夫です」
「この生徒は落ち着いています」
「この子は人間関係に問題はありません」
担任から見ると、その通りかもしれません。
しかし、教科担当は別の姿を見ていることがあります。
養護教諭は保健室での姿を知っています。
部活動顧問は放課後の人間関係を見ています。
学校にいる大人の誰か一人が、生徒のすべてを見ることはできません。
文部科学省も、児童生徒理解には担任の日常的な観察だけでなく、複数の教職員や専門職による多面的な理解が重要だとしています。
担任の情報を中心に置きながら、
「他の先生から見たらどうか」
を重ねていきます。

3.発言の多い先生の意見だけで進めない

会議では、よく発言する人がいます。
判断が速い人もいます。
経験豊かな先生の意見は説得力があります。
その結果、
数人の先生の意見を中心に、どんどんクラス分けが進むことがあります。
ここで注意します。
発言回数と、持っている情報の重要性は同じではありません。
ほとんど発言していない先生が、
「実は、この二人は私の授業ではかなり気になります」
という情報を持っていることがあります。
だから最後には、
「○○先生、このメンバーを見て気になることはありませんか」
と、意見の少なかった人にも聞きます。
全員が長く話す必要はありません。
「ありません」
でも構いません。
意見を言う機会が全員にあったか
が重要です。

4.教科担任の意見を聞く

中学校だからこそ、教科担任の視点は重要です。
例えば、担任の前では落ち着いている生徒が、特定の教科では友達との組み合わせによって落ち着きにくくなることがあります。
反対に、普段は教師との関係を築くことが難しい生徒が、ある教科では非常によく話していることもあります。
『生徒指導提要』では、授業観察について、担当教員本人の情報だけでなく、同僚教員や管理職による観察を加えることが示されています。また、複数の教職員による多面的な意見に基づいて児童生徒への配慮や支援を検討することも示されています。
クラス分けでも同じです。
「担任としてどうだったか」
だけでなく、
「授業ではどうだったか」
を確認します。

5.養護教諭・教育相談・特別支援の視点を入れる

忘れたくないのが、教室以外で生徒と関わっている教職員です。
養護教諭。
特別支援教育コーディネーター。
教育相談担当。
スクールカウンセラー。
必要に応じてスクールソーシャルワーカー。
こうした人が、担任や学年には見えていない情報を持っている場合があります。
『生徒指導提要』も、心理面だけでなく、学習面、社会面、健康面、進路面、家庭面から総合的に児童生徒を理解することを求めています。
もちろん、必要のない個人情報まで全員で共有するという意味ではありません。
クラス分けに必要な範囲で、
「新年度にどのような配慮や支援が必要なのか」
を確認します。

6.「事実」と「評価」を分けて話す

クラス分け会議では、生徒についてさまざまな言葉が出てきます。
「落ち着きがない」
「扱いにくい」
「わがまま」
「やる気がない」
しかし、こうした言葉は教師の評価です。
できるだけ事実に置き換えます。
「グループ活動では、特定の友達と一緒になると会話が増えて課題に入りにくいことが何度かあった」
「朝の登校が難しい日が週に○日程度あった」
「困ったときに自分から助けを求めることが難しかった」
こうすると、次年度に必要な支援が見えやすくなります。
「困った生徒」
という情報からは支援方法が見えません。
何が、どの場面で、どのように起きているのか
まで考えます。
これは生徒を決めつけないためにも重要です。

7.「誰と離すか」だけでなく「誰となら安心できるか」を考える

クラス分けでは、
「この二人は離そう」
という話が多くなりがちです。
必要な判断もあります。
しかし、それだけではなく、
「この生徒は、誰がいると安心できるだろう」
という視点も持ちます。
友達が多い生徒ばかりではありません。
新しい人間関係をつくることに時間がかかる生徒もいます。
不安が強い生徒もいます。
年度当初に登校するだけでも大きなエネルギーを使う生徒もいます。
一方で、
「仲のよい友達だから必ず一緒」
とも限りません。
関係が固定されすぎることで、新しい関係を築きにくくなる場合もあります。
離すこと、一緒にすることのどちらかを機械的なルールにするのではなく、
その生徒の安心と成長の両方
を考えます。

8.いじめや重大な人間関係上の課題は「安全」を最優先する

いじめが認知されている場合や、生徒の安全に関わる深刻な人間関係がある場合は、通常の友人関係と同じようには扱えません。
「もう解決したから大丈夫だろう」
という判断だけで新年度を迎えないことです。
文部科学省は、いじめを受けた児童生徒を徹底して守ることを学校の基本的な姿勢として示しています。
だからといって、
「いじめがあったら必ず別クラスにすれば解決する」
という単純な話でもありません。
本人や保護者の状況、現在の関係、支援体制などを踏まえ、いじめ対策組織や管理職を含めて組織的に判断します。
クラス分けだけに解決を委ねないことも大切です。

9.特別な教育的ニーズは「人数合わせ」にしない

特別な支援を必要とする生徒について、
「各クラス○人ずつ」
のような人数だけで分けると、本当に必要な支援が見えなくなることがあります。
必要な配慮は一人一人違います。
座席や刺激への配慮。
予定変更の伝え方。
学習上の支援。
友人関係。
教室環境。
大人への援助要請。
有効だった支援。
こうした情報を確認します。
『生徒指導提要』でも、多様化する子どもへの対応として、個々の課題や家庭・学校環境に応じた切れ目のない生徒指導が必要だとしています。
「配慮が必要な生徒を均等にする」から、「必要な支援が継続できる編成にする」へ。
ここは大きな違いです。

10.欠席や不登校の状況も「登校させやすさ」だけで考えない

欠席が続いている生徒についても確認します。
ただし、
「この友達と一緒なら学校に来るだろう」
と簡単に決めつけることはできません。
不登校の背景は一人一人異なるからです。
本人にとって安心できる関係は何か。
これまで有効だった支援は何か。
誰とは連絡が取りやすかったか。
学校のどの場所なら過ごせたか。
次年度に支援をつなぐために必要なことを考えます。
『生徒指導提要』では、不登校支援について教育相談体制や教職員の連携、校種を越えた情報連携を位置付けています。
クラス分けは支援の一部であって、それだけで不登校を解決するものではありません。

11.学力は「高い・低い」だけで見ない

学級間で学習面が極端に偏らないよう確認する学校は多いと思います。
ただ、点数だけで生徒を見ないようにします。
学習には、
理解の速さ。
粘り強さ。
発言のしやすさ。
グループでの学び方。
援助要請。
得意教科。
学習への自信。
など、さまざまな側面があります。
『生徒指導提要』も、学習内容の習熟だけでなく、興味・関心、学習意欲、授業への参加状況、つまずきの背景などをきめ細かく把握することを求めています。
「成績を均等にすること」が最終目的ではありません。
どの学級でも学び合える環境をつくれるか
という視点で見ます。

12.「リーダー」を均等に配置する発想も一度疑う

「この子はリーダーだから各クラスに一人ずつ」
という考え方もあります。
これも少し立ち止まって考えます。
いつも同じ生徒に、
「まとめ役」
「しっかり者」
「みんなを引っ張る人」
という役割を背負わせていないでしょうか。
学級は、特定の数人が動かすものではありません。
文部科学省が示す学級集団の考え方でも、一人一人が役割を持ち、自分も集団の形成者であると感じられることが重視されています。
2024年の学級経営研究のレビューでも、自発的・自治的な活動や話合いを通して児童生徒自身が学級づくりに関わることの重要性が整理されています。なお、同研究は主として小学校の研究を扱っており、中学校へそのまま一般化することには注意が必要です。
「リーダーがいるから大丈夫」ではなく、
誰もが役割を担える学級をつくる
ことが大切です。

13.性別などの属性から性格や役割を決めつけない

人数構成を確認する際、性別などの分布を見ることはあります。
しかし、
「男子だから活発」
「女子だからまとめてくれる」
といった属性と性格を結び付けた判断は避けます。
同じように、
部活動。
成績。
家庭環境。
障害の有無。
これまでの生徒指導歴。
こうした一つの情報だけで、その生徒全体を説明しないことです。
教師自身にも、生徒を見るときの認知の枠組みがあります。
2025年の若手教員を対象にした事例研究でも、教師による児童の見方そのものが児童理解と関係するため、自分自身の認知の仕方を捉え直す必要性が指摘されています。ただし、一人の小学校教員を対象とした事例研究であり、結果の一般化には限界があります。
クラス分けの会議でも、
「自分たちの見方に偏りはないか」
を意識します。

14.「問題を起こしそう」という予測だけで生徒を固定しない

過去の情報は必要です。
しかし、
「去年こうだったから、来年もこうなる」
とは限りません。
中学生は変わります。
友人関係も変わります。
教師との関係も変わります。
環境が変わることで大きく成長することもあります。
だから、
「この生徒はこういう生徒」
ではなく、
「今年度、このような場面があった」
と捉えます。
過去の記録は、次年度の生徒を縛るためではありません。
よりよいスタートを支えるために使う情報
です。
クラス替えには、新しい人間関係をつくる機会という側面もあります。学級編成に関する研究でも、クラス替えには人間関係を広げたり、否定的な関係を再編したりする側面が論じられてきましたが、どのような編成が最適かについて単純な公式が確立しているわけではありません。

15.学級を一人ずつではなく「集団」として眺める

個々の生徒を確認した後は、少し離れて各クラス全体を見ます。
「この学級で、孤立しそうな生徒はいないか」
「困ったときに周囲へ助けを求めにくい生徒が集中していないか」
「特定の人間関係が強くなりすぎていないか」
「大人の支援を必要とする場面が一つの学級に集中していないか」
「誰か一人が学級を支える構図になっていないか」
というように見ます。
学校教育では、学級は単に生徒を収容する単位ではなく、学習と生活の基盤です。『生徒指導提要』も、一人一人が安全・安心に学べる学級・ホームルームを「居場所」とすることを求めています。
名簿を完成させることが目的ではありません。
4月から、どのような集団を育てていくのか
を考えます。

16.会議の最後に「全員に一度」聞く

クラス分けが終わったら、最後の5分を使います。
各クラスを順番に見ながら、
「気になることはありませんか」
と全員に確認します。
特に、
教科担当。
養護教諭。
副担任。
部活動顧問。
教育相談担当。
普段は発言の少ない先生。
こうした人の一言が、重要な情報になることがあります。
「今さら言いにくい」
という空気をつくらないことです。
修正が必要なら、修正します。
もう一度考えることは、失敗ではありません。
新年度に生徒が安心してスタートすることの方が、会議を予定どおり終えることより重要です。

17.最後に確認したいのは「この子は大丈夫か」ではなく「支えられるか」

クラス分けの最後に、
「これで問題は起きないだろう」
と考えたくなります。
しかし、どれだけ丁寧に編成しても、新年度には予想していなかったことが起こります。
完璧なクラス分けはできません。
だから最後の問いを少し変えます。
「このクラスで問題は起きないか」
ではなく、
「何か起きたとき、この学年・学校で支えられるか」
です。
この視点は重要です。
クラス分けだけで生徒指導上の課題を防ごうとすれば、組み合わせに過大な意味を持たせることになります。
必要なのは、
担任が抱え込まないこと。
学年で情報を共有すること。
教科担任が気づきを伝えること。
養護教諭や教育相談担当とつながること。
必要なら管理職や専門職も加わること。
そして、4月以降も生徒の姿を見ながら支援を更新することです。
『生徒指導提要』では、児童生徒理解によって得た情報を関連する教職員が共有し、複数の教職員の多面的な意見を基にチームとして支援することが示されています。
クラス分けは、一年間の学級経営を決定する「答え」ではありません。
新しい一年を始めるためのスタートラインです。
そして、そのスタートラインをつくるときには、一人の教師の見方だけで生徒を決めない。
担任から見える姿。
教科担当から見える姿。
部活動で見える姿。
保健室で見える姿。
本人が語っていること。
客観的な記録。
それらを重ねながら、一人一人の生徒をできるだけ立体的に見ていきます。
文部科学省は、児童生徒の感情や人間関係を把握することは、経験のある教職員であっても容易ではないとしています。だからこそ、「自分はこの生徒を分かっている」と思ったときほど、もう一人の先生の見方を聞くことに意味があります。
最後まで意見を言わなかった先生にも聞いてみる。
「このメンバーを見て、少しでも気になることはありませんか」
その一言で、見えていなかった生徒の姿が見えてくることがあります。
温かい学級をつくる最初の仕事は、温かい職員室で、多くの目から子どもを見ることなのだと思います。

参考資料

文部科学省「生徒指導提要(令和4年12月)」
文部科学省「学校におけるいじめ問題に関する基本的認識と取組のポイント」
水流卓哉・赤坂真二「自治的集団に関する研究動向と今後の展望に関する一考察」日本学級経営学会誌
阿部緑「若手教員の児童認知の変容に関する事例研究」日本学級経営学会誌

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