生徒との関係をつくる教師の言葉・対応30のTips

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教師の仕事では、毎日、本当に多くの言葉を生徒にかけます。
「おはよう」
「どうした?」
「大丈夫?」
「ありがとう」
「今日はどうだった?」
「ちょっと話そうか」
一つ一つは何気ない言葉です。しかし、生徒から見れば、そうした日常の積み重ねが、「この先生は自分をどう見ているのか」「この先生には話しても大丈夫なのか」を判断する材料になります。
教師の言葉には力があります。
教師にはそのつもりがなくても、何気なく発した一言が、生徒の中に長く残ることがあります。一方で、教師がよかれと思ってかけた「頑張れ」「もっとできる」「あなたのためを思って言っている」といった言葉が、生徒の状態によっては負担になることもあります。
だからといって、「正しい言葉を使わなければならない」と身構えすぎる必要もありません。
大切なのは、上手な言葉をたくさん覚えること以上に、目の前の生徒を一人の人間として尊重することです。
文部科学省『生徒指導提要』では、生徒指導を、問題が起きた児童生徒だけへの対応ではなく、全ての児童生徒の発達を支える教育活動として位置付けています。そして、「自己存在感の感受」「共感的な人間関係の育成」「自己決定の場の提供」「安全・安心な風土の醸成」を生徒指導の実践上の重要な視点として示しています。
教師と生徒との関係づくりも、その日常的な生徒指導の一つです。
ここでは、これまで「応援の空」で書いてきた生徒との会話、褒め方、励まし方、叱り方、教育相談などの記事を整理し、生徒との関係をつくるために大切にしたい教師の言葉と対応を30のTipsとしてまとめます。

1.教師から挨拶する

生徒に「きちんと挨拶をしなさい」と指導することがあります。
しかし、その前に教師自身が挨拶をしているでしょうか。
廊下ですれ違ったら、「おはよう」。
教室に入ったら、「おはよう」。
放課後には、「また明日」。
特別な言葉は必要ありません。
教師から自然に挨拶することは、「あなたの存在に気づいています」という小さなメッセージになります。
生徒が挨拶を返してくれない日もあります。そこで、「挨拶のできない生徒だ」と評価する必要はありません。
考え事をしていたのかもしれません。体調が悪かったのかもしれません。友達とのことで悩んでいたのかもしれません。
一度の反応で生徒を判断しないことも大切です。
生徒との関係は、一度の特別な関わりではなく、毎日の小さな接点からつくられていきます。「何かあったときだけ話をする教師」ではなく、何も起こっていないときから自然に関われる教師でありたいものです。日常の関係づくりが生徒指導の土台になるという考え方は、現在の「応援の空」の生徒指導記事でも一貫している。

2.生徒の名前を大切にする

名前を呼ぶことは、教師と生徒とのコミュニケーションの基本です。
「ちょっと」
「そこの人」
「後ろの人」
ではなく、できるだけ名前を呼びます。
年度当初は、生徒の名前と顔をできるだけ早く一致させます。
これは単なる記憶力の問題ではありません。
教師が名前を覚えていることそのものが、「あなたを一人の生徒として見ています」というメッセージになるからです。
特に、よく発言する生徒、問題行動の目立つ生徒、リーダー的な生徒だけでなく、静かに学校生活を送っている生徒の名前を意識して呼ぶことが大切です。
教師はどうしても、「教師側から見えやすい生徒」と接する回数が多くなります。しかし、目立たない生徒にも教師から光を当てる必要があります。
一人の教師が全ての生徒の全てのよさを見つけることはできません。だからこそ、さまざまな教師が、さまざまな角度から生徒を見ることに意味があります。元記事でも「いろいろな先生が、いろいろな角度から光を当てる」ことの価値を述べている。

3.名前の呼び方を雑にしない

名前を覚えれば、それでよいわけではありません。
どのように呼ぶかも大切です。
教師にとっては親しみを込めたあだ名でも、生徒本人は嫌だと感じているかもしれません。
名字を呼び捨てにすることを「親しさ」と考える教師もいますが、生徒によって受け止め方は違います。
「これくらい大丈夫だろう」と教師側だけで判断しないことです。
また、他の生徒が使っているあだ名だからといって、教師も同じように使ってよいとは限りません。
友人同士の関係と、教師と生徒との関係は違います。
教師には、教室の中で大きな影響力があります。
教師が使った呼び方が、学級全体へ広がることもあります。
親しさは大切です。しかし、親しさと馴れ馴れしさは違います。
生徒を一人の人間として尊重する。その最も基本的な部分の一つが、名前を丁寧に扱うことです。

4.生徒の話を最後まで聴く

教師は忙しい仕事です。
そのため、生徒が話し始めると、途中で内容を推測してしまうことがあります。
「ああ、それならこうすればいい」
「つまり、こういうことでしょ」
「分かった、分かった」
と、話を最後まで聴く前に答えを出してしまいます。
しかし、生徒が本当に伝えたかったことは、その先にあるかもしれません。
元記事「生徒との会話が苦手な先生に試してほしいこと」では、自分が一方的に話してしまうことで会話が途切れてしまう問題を扱っています。また、「人の話を聴くのが苦手な先生に試してほしいこと」では、答えを考えながら聴くのではなく、相手の言葉を引き出し、一緒に言語化していく姿勢を重視しています。
教育相談というと、教師がよい助言をしなければならないように感じます。
しかし、すぐに答えを出さなくても構いません。
「そうだったんだね」
「もう少し聞かせて」
「そのとき、どう思った?」
と話を続けてもらうだけでもよいのです。
教師が話す力以上に、教師が聴く力が必要になる場面があります。

5.話の途中で結論を決めつけない

生徒同士のトラブルが起きたとき、最初に話を聞いた生徒の説明だけで、教師の中にストーリーができてしまうことがあります。
「またAさんがやったのだろう」
「Bさんは普段からおとなしいから、きっと被害を受けた側だろう」
「この二人は以前にもトラブルがあったから、今回も同じだろう」
こうした判断は危険です。
教師が知っている「これまでの生徒像」と、今回起きた事実は分けて考える必要があります。
現在の「応援の空」の初期対応記事でも、一方の話だけで指導すると別の生徒を傷つける可能性があること、教師の前では話しにくい事情を抱えている場合があることを指摘しています。
まず聴く。
事実と本人の解釈を分ける。
必要なら他の情報も確認する。
そのうえで判断する。
「早く指導すること」と「早く決めつけること」は違います。

6.「なぜ?」で追い詰めない

生徒が問題を起こしたとき、
「なぜ、そんなことをしたの?」
と聞きたくなります。
理由を確認すること自体は必要です。
しかし、
「なぜ?」
「それで、なぜ?」
「だったら、なぜ?」
と繰り返すと、生徒にとっては事情を聴かれているのではなく、追及されている感覚になることがあります。
本人自身が、自分の行動の理由をうまく説明できないこともあります。
そのときは、
「その前に何があった?」
「そのときはどんな気持ちだった?」
「最初は何をしようと思っていた?」
「今から考えると、どうしたらよかったと思う?」
など、時間の流れや状況に沿って聞いた方が答えやすくなることがあります。
教師が求める「正解」を言わせる教育相談にしないことです。
話を聴く目的は、教師が納得するためではなく、生徒の状況を理解し、次にどうするかを一緒に考えるためです。

7.沈黙を急いで埋めない

教師が質問したあと、生徒が黙ることがあります。
その瞬間、教師は不安になります。
「聞き方が悪かったかな」
「話したくないのかな」
と思い、次の質問を重ねてしまいます。
しかし、生徒は考えているのかもしれません。
どう言葉にすればよいか迷っているのかもしれません。
話してよい内容なのか判断しているのかもしれません。
すぐ答えられないことと、答えたくないことは同じではありません。
少し待つ。
表情を見る。
必要なら、
「ゆっくりでいいよ」
と伝える。
それだけでも構いません。
教師は「何か言わなければ」と考えがちですが、教育相談では、何も言わず待つことが必要な場合があります。
元記事の「答えは相談者の中にあると思って聴く」という考え方にもつながります。教師が先に答えをつくるのではなく、生徒が自分の言葉を見つける時間を保障します。

8.生徒の言葉を一度受け止める

生徒が、
「もう学校なんてどうでもいい」
「先生なんて誰も信用できない」
「絶対にあいつが悪い」
と言うことがあります。
教師として、その言葉に同意できない場合もあります。
しかし、すぐに、
「そんなことを言ってはいけない」
「それは違う」
と訂正すると、その先の話が止まることがあります。
まず、
「今はそう思っているんだね」
「そう感じるくらいのことがあったんだね」
と、その生徒がそう感じている事実を受け止めます。
受け止めることと、全てを肯定することは違います。
認められない行動については、後から明確に伝えればよいのです。
まずは、「自分の話をここでは話してよい」と感じられる状態をつくります。
教師が聞きながら反論を考えるのではなく、相手の思いを正確に知ろうとする姿勢が重要です。

9.教師の正論だけで押し切らない

教師の言っていることが正しい。
それでも、生徒が納得しないことがあります。
「校則だから守りなさい」
「中学生なんだから」
「みんなやっているよ」
「将来困るよ」
教師から見れば正論でも、生徒には響かないことがあります。
正しいことを伝える必要はあります。しかし、教師が正しいことと、生徒が自分で考えられることは別です。
例えば進路や部活動など、生徒自身が決めなければならないことでは、教師の考える「一番よい選択」を押し付けないことが重要です。
元記事「何にするか決断を迷っている中学生に、アドバイスする5つの言葉」でも、基本は生徒の自己決定を促すこととされています。教師は選択肢を示したり、考える視点を与えたりできますが、最後の決定まで奪わないことです。

10.雑談を大切にする

教師と生徒との関係は、教育相談室だけでつくられるものではありません。
むしろ、
「昨日の試合どうだった?」
「その本、面白い?」
「髪切った?」
「今日ちょっと眠そうだね」
といった何気ない会話の積み重ねの方が大きいことがあります。
元記事「若い先生は、もっと自由に、もっと大胆に、生徒との会話を楽しめばいい」では、若さを弱みとして縮こまるのではなく、生徒との会話を自然に楽しむことを勧めています。
教師だからといって、全ての会話を教育的な話にする必要はありません。
好きな音楽。
部活動。
ゲーム。
テレビ。
昨日の出来事。
そうした普通の会話があってよいのです。
何か問題が起きた日に突然、「先生に何でも話して」と言われても、生徒は簡単には話せません。
何も起きていない日に話しているからこそ、困った日に話してくれる可能性が高くなります。

11.話しかけられる余白をつくる

教師が生徒に話しかけることだけではなく、生徒が教師に話しかけられる状態をつくることも大切です。
いつも早足で廊下を移動している。
休み時間もパソコンから目を離さない。
教室に用事があるときだけ入る。
話しかけられるたびに「あとで」と答える。
これでは、生徒は「この先生は忙しいから話しかけない方がよい」と学習します。
もちろん、教師にも仕事があります。いつでも話を聴くことはできません。
だからこそ、「あとで」と言ったら、本当にあとで声をかけます。
「今は無理だけど、昼休みなら話せるよ」
と具体的に伝えます。
約束した時間を覚えておきます。
生徒が話しかけた瞬間から、その生徒にとっては相談が始まっていることがあります。相談を受ける側が、体を相手に向けて話を聴く姿勢を示すことの重要性も元記事で述べられています。

12.生徒との距離感を考える

生徒との距離は、近ければ近いほどよいわけではありません。
教師と生徒は友達ではありません。
しかし、「教師なのだから一定の距離を置くべきだ」と考えすぎ、何を考えているのか分からない存在になる必要もありません。
親しさをもちながら、必要な境界を保つことが大切です。
また、生徒によって心地よい距離感は違います。
たくさん話したい生徒もいます。
必要なときだけ話したい生徒もいます。
教師から積極的に声をかけてほしい生徒もいれば、頻繁に声をかけられることを負担に感じる生徒もいます。
「自分は生徒との距離が近い教師だ」という自己評価ではなく、「この生徒にとって、この関わり方はどうなのか」と考えます。
学校での見守りについても、必要な観察と過度な監視を区別し、生徒に不必要な干渉をしない距離感が重要だと整理されている。

13.小さな変化を言葉にする

「すごい」
「えらい」
「さすが」
という言葉も悪くありません。
しかし、それだけでは、何を見てもらえたのかが生徒に伝わりにくいことがあります。
「昨日より早く準備していたね」
「途中で分からなくなったけど、もう一回教科書を見ていたね」
「今日は自分から質問できたね」
「さっき、誰も見ていないところで片付けていたね」
教師が実際に見つけた事実を伝えます。
「中学生への褒め言葉100選」でも、見ていないことを褒めない、人格や能力を決めつけない、大げさにしないといった原則を置き、行動や工夫、変化を具体的に言葉にする構成にしています。
褒める技術より、生徒を見る力が先です。
生徒を見ているからこそ、具体的な言葉が出てきます。

14.結果だけでなく過程を見る

テストで100点を取った。
大会で優勝した。
コンクールで賞を取った。
生徒会役員に当選した。
こうした結果は分かりやすいため、教師も声をかけやすくなります。
しかし、成果が表面に出なかった生徒の中にも、多くの成長があります。
テストの点は変わらなかったが、以前より勉強時間が増えた。
大会では負けたが、自分から練習に参加できるようになった。
発表はうまくいかなかったが、逃げずに最後まで立っていた。
その過程を見つけることが教師の役割です。
「努力したのに結果が出なかった中学生への声かけ」の現在の記事も、単なる「大丈夫」という慰めだけで終わらせず、何ができたのかという事実と次の一歩を見る方向へ整理されています。
結果だけで人を評価しないことが、生徒との信頼関係にもつながります。

15.褒めるために褒めない

「生徒をもっと褒めましょう」と言われることがあります。
もちろん、生徒のよさを見つけ、伝えることは大切です。
しかし、「今日はまだ3人しか褒めていないから、もっと褒めなければ」と考えると、本末転倒になります。
心にもない褒め言葉は、生徒にも伝わります。
また、教師に評価されることばかりを意識し、「先生に褒められるために行動する」状態をつくることも望ましくありません。
現在の記事「生徒の意欲を高めるフィードバックとは」でも、「褒めれば意欲が高まる」と単純に考えず、教師の評価への依存を強める可能性などを踏まえ、具体的なフィードバックを重視しています。
「褒めること」を目的に生徒を見るのではありません。
生徒をよく見る。
小さな変化を見つける。
伝えたいと思ったら、具体的に伝える。
その順番が大切です。

16.具体的な事実を伝える

「あなたは優しいね」
「本当にいい子だね」
という言葉は、教師に悪意がなくても、人そのものを評価する言葉になります。
一方、
「落としたプリントを拾って渡していたね」
「誰も見ていないのに椅子を直していたね」
「困っている人に自分から声をかけていたね」
なら、教師が見た行動を伝えています。
行動を具体的に伝えると、生徒自身も「自分のどの行動が周囲に役立ったのか」を理解できます。
「中学生への褒め言葉100選」も、能力や人格のラベルを付けるより、学習を始めたこと、途中から参加したこと、工夫したことなど、観察できる行動を言葉にする形に改稿されています。
「優しい人」と決めるのではなく、「優しい行動を見つける」。
その方が、生徒を固定的に見ない教師にもなれます。

17.「ありがとう」に理由を添える

「ありがとう」は、教師から生徒へもっと使ってよい言葉です。
「手伝ってくれてありがとう」
でも十分です。
さらに、
「手伝ってくれてありがとう。助かったよ」
「早く準備してくれてありがとう。みんながすぐ始められたよ」
「教えてくれてありがとう。先生が気づいていなかったよ」
と、ほんの少し理由を添えます。
すると、その行動が誰にどのような影響を与えたのかが分かります。
教師は、生徒からしてもらったことを「あたり前」にしないことです。
教室を掃除してくれる。
プリントを運んでくれる。
係の仕事をする。
友達を助ける。
教師のミスを教えてくれる。
「それは生徒の仕事だから」で終わらせることもできます。
しかし、教師から自然に「ありがとう」と言える関係の方がよいと考えます。

18.励ますことと追い込むことを区別する

「あと少しだから頑張れ」
「ここまで来たんだから最後までやろう」
そう言われて力が出る生徒もいます。
しかし、すでに限界まで頑張っている生徒には、さらに追い込む言葉になることがあります。
元記事「『あともうひと頑張り』ができない生徒への語り」では、「あと10分」「もう少し」と具体的な小さな一歩へ落とし込む語りを扱っています。
一方、「英語の励まし言葉」には、「Step by step」「Don’t overdo it」「Just do what you can」など、頑張らせるだけではなく、少しずつ進むこと、頑張りすぎないこと、できることをすることを認める言葉も並んでいます。
励ますとは、必ず前へ押すことではありません。
ときには立ち止まってよいと伝えることも、教師からの大切な励ましです。

19.「頑張れ」を万能語にしない

困っている生徒を見ると、
「頑張れ」
と言いたくなります。
しかし、生徒によっては、「これ以上どう頑張ればいいのか分からない」と感じています。
勉強ができない。
提出物が出せない。
朝起きられない。
部活動で結果が出ない。
人前で話せない。
同じ「頑張れ」でも、必要な支援は全く違います。
「最初の一問だけやってみよう」
「今日はここまででいい」
「10分だけ一緒にやろう」
「何が一番困っている?」
と、具体化します。
中学生が勉強したくない背景についても、睡眠、学習上のつまずき、失敗経験、友人関係、家庭環境など多数の要因があり、「本人の努力不足」と一括りにはできません。
「頑張れ」と言う前に、「頑張れない理由は何だろう」と考える教師でありたいものです。

20.叱る目的を考える

教師は、何のために生徒を叱るのでしょうか。
教師が腹を立てたから。
自分の指示に従わなかったから。
周囲の生徒に教師の厳しさを見せるため。
これでは、「指導」ではなく教師の感情の発散になってしまう場合があります。
元記事「何のために叱るのかを考えれば、生徒への叱り方が変わる」は、まさに「何のために叱るのか」を出発点にしています。
安全を守るためなのか。
他者の権利を守るためなのか。
本人に行動を振り返ってほしいのか。
次は違う選択ができるようにしたいのか。
目的が決まれば、必要な言葉も変わります。
大声で叱る必要がないこともあります。
短く伝えた方がよいこともあります。
時間を置いて話した方がよいこともあります。
「叱ったかどうか」ではなく、「その後、生徒がどう行動できるようになったか」で考えます。

21.人格ではなく行動について話す

「だらしない」
「無責任だ」
「あなたはいつもそうだ」
「やる気がない」
こうした言葉は、行動ではなく人そのものを評価しています。
しかし、教師が改善してほしいのは、多くの場合、その生徒の人格ではありません。
提出物が期限を過ぎている。
約束した役割を果たしていない。
授業中に友達の学習を妨げた。
危険な行動をした。
こうした具体的な行動です。
「あなたは無責任だ」ではなく、
「今日までにすると約束した仕事が終わっていない。どうする?」
と話します。
行動は変えられます。
人格を否定する必要はありません。
褒める場面でも人格を決めつけすぎないことが重要であるのと同じく、注意するときにも「あなたはこういう人」というラベルを貼らないことです。

22.人前で必要以上に叱らない

危険な行動をしている。
他の生徒を傷つけようとしている。
授業を止めなければ安全が確保できない。
そのような場面では、その場で明確に制止しなければなりません。
しかし、安全を確保した後に詳しく話す必要がある場合、みんなの前で長時間叱り続ける必要はありません。
大勢の前で強く叱られると、生徒は指導内容よりも、
「恥をかかされた」
「みんなに見られた」
という感情へ意識が向く場合があります。
また、周囲の生徒に「教師の力」を見せるための指導になる危険もあります。
早期対応と威圧的な対応は同じではなく、まず安全を確保し、場を落ち着かせ、事実を確認することが重要です。
叱る目的は、教師が勝つことではありません。
生徒が次の行動を変えられる状態をつくることです。

23.昔の失敗を何度も持ち出さない

新しい問題が起きるたびに、
「前にも同じことをしたよね」
「去年も問題になったよね」
「小学校の頃からそうだったらしいね」
と過去を並べることがあります。
必要な経過を確認することはあります。
しかし、過去を何度も責め続ければ、生徒は、
「自分は変わっても認めてもらえない」
「先生はずっと昔の自分を見ている」
と感じることがあります。
生徒指導では、これまでの情報を把握しながらも、目の前の事実を確認することが重要です。教師の中にできあがった生徒像だけで判断しないことです。
「あの子はこういう子だから」という見方を固定しない。
昨日まで失敗していた生徒が、今日は違う行動を選ぶかもしれません。
教師は、その可能性を残しておく必要があります。

24.他の生徒と比較しない

「○○さんはできているのに」
「みんなはもう終わっているよ」
「お兄さんはそんなことなかった」
比較すれば、一時的に生徒が動くことはあるかもしれません。
しかし、比較された生徒が、
「自分は○○さんより劣っている」
と感じたり、比較された相手へ反感をもったりすることもあります。
教師が見るべきなのは、その生徒自身の変化です。
昨日より一問多く解けた。
先週より早く教室へ来られた。
以前なら途中でやめていたことを最後まで続けた。
教師の評価ではなく、生徒自身が「少し前の自分と比べて変わった」と感じられる言葉の方が、次の行動につながりやすくなります。
褒め言葉100選も、他者との比較より、本人の行動や工夫、成長を具体的に伝える構成になっています。

25.皮肉や笑いで生徒を動かさない

教師が少し面白いことを言うと、教室が笑いに包まれることがあります。
ユーモアは大切です。
しかし、その笑いが一人の生徒を対象にしている場合には慎重になる必要があります。
「また○○か」
「さすが○○」
教師としては軽い冗談だったとしても、周囲の生徒には、
「この生徒はいじってよい」
というメッセージになる可能性があります。
笑われた本人も、その場では一緒に笑うかもしれません。
しかし、本当に面白いと思っているとは限りません。
教師は教室の中で、生徒同士よりも強い立場にいます。
その影響力を自覚する必要があります。
「信頼され、成長し続ける先生」の記事でも、誰かを人前で笑いものにしないことを、日常的な信頼に関わる行動として扱っています。
笑いをつくるなら、誰かを下げなくても笑える教室にします。

26.教師の機嫌で対応を変えない

教師にも感情があります。
疲れている。
腹が立っている。
家庭で嫌なことがあった。
仕事が立て込んでいる。
そんな日もあります。
しかし、
昨日なら何も言われなかったことを、今日は教師の機嫌が悪いから強く叱られる。
それでは、生徒は「何が正しいか」ではなく、「今日は先生の機嫌がどうか」を読むようになります。
教師の不機嫌によって学級をコントロールしないことです。
「優しい先生に近づく方法」という過去記事では、性格を簡単に変えることはできなくても、「優しい行動を続ける」ことによって変化していくという考えを書いています。
教師として大切なのは、「私はこういう性格だから」で終わらせず、自分の行動を選ぶことです。
機嫌が悪くても、生徒への対応はできる限り安定させます。

27.感情が高ぶったときほど短く話す

教師が腹を立てているときほど、たくさん言いたくなります。
「前から言っているでしょう」
「あなたはいつもそう」
「先生は何度言えば分かるの」
と話が長くなり、途中から今回の問題とは関係のないことまで出てきます。
感情が高ぶっているときは、むしろ短くします。
危険なことは、その場で止める。
必要な指示だけ伝える。
詳しい話は落ち着いてからする。
「今は先生も少し冷静ではないから、あとで話そう」
と判断できることも教師の力量です。
元記事「あの時、厳しくしてもらったおかげで」は、一部の成功例だけを根拠に「厳しい指導」を正当化することへの疑問を示しています。ある生徒にはよかった指導でも、別の生徒には違う結果をもたらす可能性があります。
強く言えば伝わるとは限りません。

28.教師自身の間違いを認める

教師も間違えます。
生徒の名前を間違える。
説明を間違える。
予定を勘違いする。
一方の話だけを聞いて判断してしまう。
約束を忘れる。
そのとき、
「先生が間違っていました」
「ごめんなさい」
と言えることは、教師の権威を下げることではありません。
むしろ、間違えたら認め、修正する大人の姿を生徒に見せることになります。
教師が絶対に間違わない存在である必要はありません。
間違ったのに認めない教師にならないことの方が大切です。
また、自分だけでは生徒を十分に理解できていないと認めることも必要です。保健室、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーなど、他の立場から得られた情報を謙虚に受け止める必要があることも、過去記事で繰り返し述べています。

29.約束したことを守る

「あとで話を聞くね」
「確認しておく」
「明日返す」
教師にとっては何気ない一言でも、生徒は覚えていることがあります。
特に、「あとで話を聞く」と約束した生徒は、その時間を待っています。
忙しくて忘れてしまうこともあります。
そのときは、
「昨日、話すと言っていたのにできなかった。ごめん」
と言えばよいのです。
大切なのは、「教師は忙しいのだから仕方ない」で終わらせないことです。
不登校生徒への関わりを扱った記事でも、「また来るね」のような言葉が、いつ来るのか分からない期待や不安を生徒に抱かせる可能性を指摘しています。
約束は、教師にとっては小さくても、生徒にとっては小さくない場合があります。
信頼は、大きな言葉ではなく、こうした小さな約束によってつくられます。

30.言葉より日常の行動で信頼をつくる

「先生はみんなの味方です」
「何でも相談してください」
「一人一人を大切にします」
どれも大切な言葉です。
しかし、何度言っても、教師の日常の行動と一致していなければ生徒には伝わりません。
話しかけたときに、手を止めてくれた。
困っていたことを翌日も覚えていてくれた。
失敗したときに、最初から決めつけなかった。
他の生徒と比較しなかった。
みんなの前で笑いものにしなかった。
他の先生の前でも自分のことを大切に扱ってくれた。
約束したことを守ってくれた。
間違えたら謝ってくれた。
そうした経験から、生徒は、
「この先生なら話してもいいかもしれない」
と思うようになります。
信頼は、話が面白いことや、生徒に人気があることだけで生まれるものではありません。日々の関係性、約束、聴き方、公平な対応などの蓄積によってつくられます。
教師の言葉は大切です。
しかし、言葉だけで信頼関係をつくることはできません。
教師が生徒をどう見るか。
どう聴くか。
どう待つか。
どのように声をかけるか。
失敗した生徒をどう見るか。
自分が間違えたときにどうするか。
その全てが、生徒へのメッセージになります。
そして、一人の教師だけで全ての生徒と理想的な関係を築かなければならないわけでもありません。
ある教師には話しにくいことを、別の教師には話せる生徒がいます。
担任には見えなかったよさを、教科担当が見つけることがあります。
教室では分からなかった様子を、養護教諭が知っていることもあります。
「いろいろな先生が、いろいろな角度から光を当てるからいい」という過去記事の考え方は、現在でも大切にしたい視点です。
何か問題が起きてから、生徒との関係をつくろうとするのではありません。
何も起きていない日の挨拶。
休み時間の雑談。
授業中の短い声かけ。
失敗したときの一言。
話しかけられたときの表情。
そうした日常を積み重ねます。
それが、授業にも、学級経営にも、生徒指導にもつながっていきます。

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参考資料

・文部科学省「生徒指導提要(令和4年12月)」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1404008_00001.htm
・文部科学省「中学校学習指導要領(平成29年告示)」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/1384661.htm
・こども家庭庁「こども基本法」
https://www.cfa.go.jp/policies/kodomo-kihon/

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