第11回 リーダーシップがない私でも、管理職になれるのでしょうか

管理職への道を考え始めた(迷っている)先生

管理職試験を受けようか迷っている先生から、よく聞く言葉があります。

自分にはリーダーシップがありません

この言葉を聞くたびに、私は少し立ち止まって考えます。

その先生が言っている「リーダーシップ」とは、どのようなものなのだろうか、と。

おそらく、多くの先生がイメージしているリーダーシップは、先頭に立って力強く組織を引っ張る姿ではないでしょうか。

職員会議で堂々と話す。
はっきりと方針を示す。
迷わず決断する。
教職員をぐいぐい動かす。

確かに、そのようなリーダーシップもあります。

方向性を明確に示し、必要な指示を出して組織を動かすリーダーシップは、「指示型リーダーシップ」と呼ばれることがあります。

学校事故や自然災害、いじめの重大事態など、迅速な判断が求められる場面では、管理職が責任を引き受け、明確に指示しなければなりません。緊急時に「皆で話し合って決めましょう」としていては、対応が遅れてしまいます。

学校にとって、力強く決断するリーダーシップが必要な場面は確かにあります。

しかし、管理職に必要なリーダーシップは、それだけではありません。

むしろ学校現場では、もっと静かなリーダーシップが大切になることがあります

人の話を最後まで聴く。
困っている先生に気付く。
教職員が安心して意見を言える空気をつくる。
一人一人の良さを見つける。
仕事を進めるうえで障害になっているものを取り除く。

このように、リーダーが自分の権限を示すことよりも、周りの人を支え、その成長や力の発揮を後押しする考え方は、「サーバント・リーダーシップ」と呼ばれています。

リーダーが上から人を動かすのではなく、教職員が力を発揮できるように支えるリーダーシップです。

例えば、経験の浅い先生が学級経営に悩んでいるとき、すぐに答えを与えるのではなく、まず話を聴きます。

「どこに難しさを感じていますか」
「これまで、どのような対応をしてきましたか」
「自分では、これからどうしたいと考えていますか」

このように問いかけながら、その先生自身が考え、行動できるように支えます。

これは、相手の成長を促す「コーチング型リーダーシップ」とも言えます。

管理職がすべての答えを持ち、すべてを教える必要はありません。相手が自分で答えを見つけることを支えるのも、管理職の重要な役割です。

また、学校の課題について教職員と話し合い、意見を取り入れながら方針をつくっていく「参加型リーダーシップ」もあります。

授業改善の進め方や学校行事の見直し、校内組織の変更などは、管理職だけで決めても、教職員の納得を得られなければ動かないことがあります。

そのような場合には、管理職が最初から結論を示すのではなく、教職員が感じている課題を共有し、意見を出し合う場をつくることが必要になります。

ただし、参加型リーダーシップは、何でも多数決で決めるということではありません。

管理職が最終的な責任を持つことを前提に、決定に至る過程に教職員が参加できるようにする考え方です。

さらに、学校が進む方向を示し、教職員の意識や学校文化を変えていく「変革型リーダーシップ」もあります。

「子どもたちに、どのような力を育てたいのでしょうか」
「この学校を、どのような学校にしたいのでしょうか」
「今の取組を続けるだけで、本当に子どもたちのためになるのでしょうか」

こうした問いを教職員に投げかけ、学校の目指す姿を共有します。

単に仕事を割り振って管理するのではなく、教職員の意欲を引き出し、組織全体をよりよい方向へ変えていくリーダーシップです。

ただし、管理職一人が大きな理想を語り、教職員全員を引っ張ればよいわけではありません。

学校には、さまざまな専門性を持った教職員がいます。

授業づくりに強い先生。
生徒指導の経験が豊富な先生。
ICTの活用に詳しい先生。
保護者との関係づくりが得意な先生。
若い先生を支えることが上手な先生。

その一人一人が、それぞれの得意な分野で力を発揮できるようにする考え方を、「分散型リーダーシップ」と呼びます。

リーダーシップを校長や教頭だけのものにせず、主任や担当者、時には役職を持たない教職員も含めて、学校全体で担っていく考え方です。

管理職がすべてを抱え込んでしまえば、教職員は指示を待つようになります。

反対に、教職員の専門性を認め、役割と権限を適切に渡せば、それぞれが学校を支える当事者になっていきます。

管理職のリーダーシップとは、管理職自身が目立つことではありません。

学校の中に、さまざまなリーダーシップが生まれる状態をつくることでもあります。

このように、リーダーシップにはいくつもの型があります。

・明確な指示を出す、指示型リーダーシップ
・相手を支え、力を引き出す、サーバント・リーダーシップ
・対話を通して成長を促す、コーチング型リーダーシップ
・教職員の意見を取り入れる、参加型リーダーシップ
・学校の目指す姿を示す、変革型リーダーシップ
・組織の中で役割と力を分かち合う、分散型リーダーシップ

そして、どれか一つだけを身に付ければよいわけではありません。

緊急時には、管理職が前に出て決断します。
学校の将来を考えるときには、目指す方向を示します。
教職員の納得が必要なときには、話し合いの場をつくります。
経験の浅い先生には、丁寧に説明しながら支えます。
力のある先生には、任せて見守ります。

相手の経験や課題、置かれている状況によって、関わり方を変える必要があります。

「いつでも強く引っ張る人」が優れたリーダーなのではありません。

必要なときには前に出て、必要なときには横に立ち、必要なときには後ろから支えます。

その使い分けができる人が、学校に必要なリーダーなのだと思います。

私自身、若い頃から強いリーダーシップを発揮するタイプだったわけではありません。

人前で力強く話すことが得意だったわけでもありません。むしろ、周りの様子を見ながら考え込むことも多かったと思います。

だから、「管理職には強いリーダーシップが必要です」と言われると、少し苦しく感じることもありました。

しかし、管理職を経験する中で、リーダーシップの考え方は変わりました。

学校は、一人の強い力だけで動く場所ではありません。

教職員一人一人の力が合わさって動く場所です。

だから管理職に必要なのは、「自分が前に出る力」だけではなく、「人の力を引き出す力」なのだと思うようになりました。

例えば、学年主任として一年間、学年をまとめた経験がある先生。

教務主任として、さまざまな先生と調整しながら学校を支えた先生。

生徒指導や進路指導、研究推進などで、周りの先生と協力しながら仕事を進めてきた先生。

若い先生の相談に乗ってきた先生。

職員室で意見が対立したときに、双方の話を聴き、間をつないできた先生。

そのような経験があるなら、すでに何らかの形でリーダーシップを発揮してきたと言えるのではないでしょうか。

本人は、「自分はただ必死にやってきただけです」と思っているかもしれません。

しかし、周りと協力しながら何かをやり遂げる力は、管理職にとって非常に大切な力です。

大きな声で引っ張ることだけがリーダーシップではありません。

人と人をつなぐこと。
話し合いの場を整えること。
誰かの不安を受け止めること。
目立たないところで準備をすること。
周りの人が力を発揮できるようにすること。

そうした力も、学校を動かす大切なリーダーシップです。

管理職になると、もちろん決断しなければならない場面があります。

教職員の意見が分かれても、最後には管理職が決めなければならないこともあります。いつまでも迷っていられないこともあります。

その意味で、管理職には一定の覚悟が必要です。

しかし、最初からすべての型のリーダーシップを使いこなす、完璧なリーダーである必要はありません。

管理職になってから学ぶことはたくさんあります。

判断を誤り、振り返ることもあります。教職員との関わりの中で、自分の伝え方や任せ方を見直すこともあります。

むしろ、管理職になってからでなければ分からないことの方が多いと思います。

大切なのは、「自分にはリーダーシップがない」と決めつけないことです。

もしかすると、あなたが思っているリーダーシップと、学校が必要としているリーダーシップは違うかもしれません。

静かに人を支える力。
丁寧に話を聴く力。
周りの人を安心させる力。
対立する人の間をつなぐ力。
人の良さを見つけ、役割を任せる力。

そういう力を持っている先生が、管理職として大きな力を発揮することもあります。

管理職になることを迷っている先生には、自分にないものばかりを数えないでほしいと思います。

自分がこれまで学校で大切にしてきたこと。
周りの先生と一緒に乗り越えてきたこと。
子どもたちや保護者と向き合ってきた経験。
誰かのために、目立たないところで動いてきたこと。

その中に、すでにあなたらしいリーダーシップの芽があるかもしれません。

「リーダーシップがないから無理です」と考える前に、一度問い直してみてください。

自分は、どのような形で人を支えてきたのでしょうか。
自分は、どのような場面で周りから頼られてきたのでしょうか。
自分がいることで、少し安心できた人はいなかったでしょうか。
自分だからこそ、つなぐことができた人や仕事はなかったでしょうか。

その答えの中に、管理職としての可能性が見えてくることがあります。

管理職に必要なのは、誰かのようになることではありません。

いつでも先頭に立つことでもありません。

必要な場面では前に出て、別の場面では人の話を聴き、時には任せ、時には支えます。

自分らしい形を大切にしながら、場面に応じて関わり方を変え、学校を支える覚悟を持つことです。

リーダーシップは、一つではありません。

あなたには、あなたのリーダーシップがあるのだと思います。

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