次年度の希望を校長に伝えるときに考えたいこと

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次年度へ向けて校長と個別に話をするときに考えること

年度末が近づくと、次年度の校内人事について考える時期がやってきます。
「来年度はこの学年を担当したい」
「一度、進路指導を経験してみたい」
「学年主任に挑戦してみたい」
「今年と同じ仕事を続けたい」
「今の状況では、この仕事を続けるのは少し難しい」
教師にも、それぞれの希望があります。
では、その希望を校長や教頭に伝えてよいのでしょうか。
私は、希望があるなら、きちんと言葉にして伝えた方がよいと考えています。
ただし、大切なのは「希望を通してもらうこと」だけではありません。
自分がこれからどのような教師になりたいのか。
自分の力を学校の中でどのように生かしたいのか。
そして、学校全体にとって何が必要なのか。
そこまで考えて管理職と対話することに意味があります。

1.希望を伝えることは、わがままではない

「自分から希望を言うのは、わがままではないか」
「管理職から言われた仕事を黙ってする方がよいのではないか」
そのように考える先生もいると思います。
しかし、自分の希望や今後のキャリアについて管理職に伝えること自体は、わがままではありません。
管理職が職員一人一人の考えを完全に把握することはできないからです。
「担任をしたいと思っている」
「特別支援教育について学びたい」
「将来、学年主任を経験したい」
「研究主任に挑戦してみたい」
「管理職という道も少し考えている」
こうしたことは、本人が言葉にしなければ分からないことがあります。
文部科学省も、これからの学校マネジメントでは、教職員それぞれの強みを生かすことや、教師の自律的な成長を支えることを校長の重要な役割として位置付けています。
だからこそ、自分の考えを伝えることには意味があります。
ただし、
「希望を伝えること」と「希望どおりにしてもらうこと」は別です。
ここは分けて考えておく必要があります。

2.最初に考えるのは「何を希望するか」ではなく「なぜ希望するか」

「1年生がいいです」
「○○分掌をやりたいです」
「来年度も3年生を持ちたいです」
希望だけを伝えることは簡単です。
しかし、一度立ち止まって、
なぜ、それを希望するのか。
を考えてみてください。
例えば、
「3年生を持ちたい」
という希望でも、その理由は人によって違います。
・卒業までの3年間を見通した指導を経験したい
・進路指導について学びたい
・現在担当している生徒を卒業まで見届けたい
・3年生の学年運営に自分の経験を生かしたい
理由によって、希望の意味は大きく変わります。
校務分掌も同じです。
「生徒指導主事をやりたい」
だけではなく、
「これまで学年で生徒指導を担当してきた経験を、学校全体の仕組みづくりに生かしたい」
と考えることもできます。
「研究主任をしたい」
のであれば、
「授業研究を個人の研究で終わらせず、若手も参加しやすい校内研修をつくりたい」
という目的があるかもしれません。
希望を考えることは、実は、
自分はこれからどのような教師になりたいのかを考えること
でもあります。

3.自分の希望と学校の都合は、必ずしも一致しない

ここはとても大切です。
学校の校内人事は、一人の希望だけで決めることはできません。
学年構成、教科、経験年数、専門性、主任層の配置、若手育成、特別支援教育、生徒指導上の課題、学校規模など、多くの条件を組み合わせて考える必要があります。
文部科学省の通知でも、校務分掌は学校規模、教職員の配置数や経験年数、学校・地域の実情などを踏まえて具体的に定める必要があるとされています。また、特定の教員に仕事が集中しないことや、適材適所を考えることも示されています。
例えば、
「1年生を希望している先生」が4人いたとしても、4人全員を1年生に配置できるとは限りません。
本人にとっては第一希望でも、学校全体を見ると別の配置が必要になることがあります。
管理職は、
「その先生に何をお願いしたいか」
と同時に、
「学校全体をどう組み立てるか」
を考えています。
希望を伝えるときには、この視点を持っておきたいところです。

4.希望は「学校への提案」として伝える

おすすめしたいのは、自分の希望だけで話を終わらせないことです。
例えば、
「来年度は2年生を希望します」
だけではなく、
「来年度は2年生を希望しています。今年1年間で学んだことを生かしながら、次は学年運営にも少し関わってみたいと考えています」
と伝えます。
あるいは、
「ICT担当を希望します。得意だからというだけでなく、授業で使いやすい形に整理して、苦手な先生も使いやすくなる仕組みをつくりたいと思っています」
という伝え方もあります。
大切なのは、
「自分が何をしたいか」+「学校や子どもにどう貢献できるか」
です。
この二つがつながると、単なる個人的な要求ではなくなります。
学校は一人では動きません。
教師一人一人が自分の強みを発揮しながら、互いに支え合って仕事をする組織です。中央教育審議会も、教師間の学び合いや支え合いを基盤としながら、ミドルリーダーを含む各教職員がそれぞれリーダーシップを発揮する組織運営の重要性を示しています。
「自分のため」と「学校のため」が重なるところを探してみる。
それが大切だと思います。

5.伝えるタイミングは「早ければよい」わけではない

次年度の希望については、学校ごとに面談や希望調査などの正式な手続があります。
まず、その手続を大切にしてください。
「早く言った者勝ち」と考える必要はありません。
一方で、自分のキャリアに関わる大きな希望や、管理職に知っておいてほしい事情がある場合は、正式な希望調査だけでは十分に伝わらないことがあります。
その場合には、
「次年度のことで、少し相談したいことがあります。お時間をいただいてもよいでしょうか」
と時間を取ってもらえばよいと思います。
廊下ですれ違ったときに突然話したり、忙しい時間帯に長時間話したりするよりも、短くても落ち着いて話せる時間を設定した方が互いに話しやすくなります。
また、学校や自治体によって校内人事の進め方は異なります。
正式な手続や時期が示されている場合は、それを尊重することが前提です。

6.希望を伝えるときの基本は四つ

私は、次の四つがあれば十分だと思います。
①希望
「来年度は○○を担当したいと考えています」
②理由
「これまでの○○の経験を、次は○○で生かしたいからです」
③貢献
「その立場になれば、○○について学校に貢献できると思っています」
④柔軟性
「もちろん学校全体の事情があることは理解しています」
この四つです。
例えば、次のように伝えることができます。
「来年度について、一つ希望をお伝えしておきたいことがあります。可能であれば、学年主任に挑戦してみたいと考えています。これまで担任、生徒指導担当として経験してきたことを、今度は学年全体を見る立場で生かしてみたいと思うようになりました。若手の先生を支える仕事にも関わりたいと思っています。もちろん、学校全体の構成があることは理解していますので、一つの希望として聞いていただければと思います」
これくらいで十分です。
必要以上に自分を大きく見せる必要もありません。
逆に、自分を小さく見せる必要もありません。

7.他の先生を下げて、自分の希望を通そうとしない

避けたい伝え方があります。
「○○先生より私の方が向いています」
「○○学年は大変なので行きたくありません」
「去年やったので、今年はもうやりません」
「普通なら私が主任になると思います」
このような話です。
人事について話していると、どうしても他の職員との比較になりがちです。
しかし、他人を下げても、自分の価値は上がりません。
伝えるのは、
他人の評価ではなく、自分の希望と考えです。
また、同僚の家庭事情や健康状態、人事上の情報など、自分が知る必要のないことを推測して話すことも避けるべきです。
自分のキャリアについて話す場では、自分の話をすればよいのです。

8.「できないこと」を伝えることも大切

希望というと、
「やりたい仕事」
だけを思い浮かべるかもしれません。
しかし、
「現在の状況では難しい仕事」
を伝えることも必要です。
育児、介護、健康上の事情などによって、働き方に一定の配慮が必要になることもあります。
もちろん、必要以上に個人的な事情を説明する必要はありません。
しかし、勤務上考慮してほしい重要な事情があるのであれば、必要な範囲で管理職に相談することは大切です。
無理を重ねてから、
「実はずっと難しかった」
となるより、早めに相談できる職員室の方がよいと思います。
そして管理職側にも、こうした相談を安心してできる環境をつくる責任があります。
文部科学省も、これからの校長のマネジメントとして、職場の心理的安全性を確保し、教職員それぞれの強みを生かすことを求めています。

9.管理職の話も聞く

希望を伝えたら、それで終わりではありません。
管理職から、
「なぜ、その仕事をしたいのですか」
「別の仕事も考えてもらえませんか」
「あなたには、こちらをお願いしたいと考えています」
と言われることがあります。
そのときは、一度聞いてみてください。
自分では考えていなかった役割を、管理職が考えていることもあります。
「なぜ私なのですか」
と尋ねてもよいと思います。
すると、
「若手を支えてほしい」
「この学年にはあなたの経験が必要だと思っている」
「次のステップとして、この仕事を経験してほしい」
という話が出てくるかもしれません。
自分の希望を伝えることと、相手の考えを聞くこと。
この二つがあって初めて「対話」になります。

10.希望が通らなかったときに考えたいこと

一生懸命考えて伝えても、希望どおりにならないことがあります。
これは普通にあります。
そのとき、
「評価されていない」
「嫌われている」
とすぐに結論付けないことです。
校内人事には、自分からは見えない多くの条件があります。
希望が通らなかった場合には、
「分かりました。差し支えなければ、今後その仕事を目指すために、私に足りない経験や力があれば教えてください」
と聞いてみてもよいと思います。
この質問には大きな意味があります。
単年度の「希望」から、中長期的な「キャリア」に話が変わるからです。
今年できなくても、来年できるかもしれません。
今年経験した仕事が、数年後に生きることもあります。
教師のキャリアは、一年だけで完成するものではありません。

11.若手・中堅・ベテランで希望の意味は変わる

若手の先生であれば、
「何を経験したいか」
を考えてみてください。
担任、進路指導、生徒指導、特別支援教育、研究、行事など、経験の幅を広げることが今後の土台になります。
中堅の先生であれば、
「自分の力を誰に還元するか」
という視点を加えてみてください。
自分が仕事をできるようになるだけでなく、若手を支える、学年を動かす、学校全体をつなぐ役割が増えてきます。
ベテランの先生であれば、
「何を残すか」
という視点もあります。
経験や知識を自分だけのものにせず、後輩へ渡すことも大切な仕事です。
そして、管理職という道を考え始めているのであれば、それを管理職に伝えてよいと思います。
管理職になるかどうかを今すぐ決める必要はありません。
「少し考えています」
でも十分です。
言葉にすることで、主任や学校運営に関わる仕事など、次の経験につながることがあります。

12.希望を伝えることは、自分のキャリアを考えること

次年度の希望調査は、単なる人事上の書類ではありません。
私は、
一年に一度、自分の教師人生を考える機会
にしてもよいと思っています。
今年、何ができるようになったのか。
どんな仕事にやりがいを感じたのか。
何が苦しかったのか。
次に何を学びたいのか。
どんな教師になりたいのか。
そして、そのために来年度、何を経験したいのか。
そこまで考えれば、希望を書く意味は大きく変わります。
自分の希望を押し通す必要はありません。
管理職に迎合する必要もありません。
駆け引きをする必要もありません。
自分の考えを整理し、相手の立場も考えながら、必要なことを丁寧に伝える。
そして、相手の考えにも耳を傾ける。
それで十分です。
職員室は、多様な経験、多様な得意分野、多様な事情を持った人たちで成り立っています。
だからこそ、一人一人が自分の考えを言葉にでき、それを互いに聞くことのできる職員室でありたいものです。
温かい職員室は、何でも希望どおりになる職員室ではありません。
自分の希望を安心して話せる職員室です。
その対話の積み重ねが、教師一人一人の成長につながり、最終的には子どもたちに返っていくのだと思います。

参考資料

・文部科学省「学校教育法・組織関係法令」
・文部科学省「『令和の日本型学校教育』を担う教師の養成・採用・研修等の在り方について」
・文部科学省「教諭等の標準的な職務の明確化に係る学校管理規則参考例等」
・中央教育審議会「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について」

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