管理職試験を受けようか迷っている先生から、一番よく聞く言葉があります。
「私なんかが管理職になっても大丈夫でしょうか。」
この言葉を聞くたびに、私は少し立ち止まります。
その不安は、とても自然なものだと思うからです。
むしろ、何の不安もなく「自分なら大丈夫です」と言い切れる人の方が、少し心配になることもあります。
管理職になることを考えると、不安になるのは当然です。
責任が重くなる。
教職員をまとめなければならない。
保護者対応もある。
重大な事案が起きたときには前に立たなければならない。
校長や教頭の姿を近くで見ている先生ほど、「自分にできるのだろうか」と思うのではないでしょうか。
私も、管理職になった人が最初から特別な自信を持っていたとは思いません。
多くの人は、不安を抱えながら一歩を踏み出しています。
実際に管理職になってからも、迷うことはあります。
判断に悩むこともあります。
「これでよかったのか」と振り返る日もあります。
だから、「不安があるから管理職に向いていない」とは言えません。
大切なのは、不安をそのままにしないことです。
「何となく不安です。」
この状態のままだと、いつまでも考えは進みません。
できれば、一度紙に書き出してみるとよいと思います。
何が不安なのか。
教職員との関係なのか。
保護者対応なのか。
事務処理なのか。
人前で話すことなのか。
自分の体調や家庭との両立なのか。
不安を一つずつ言葉にすると、少し見え方が変わります。
漠然とした不安は大きく見えます。
しかし、言葉にすると、考えられる不安になります。
「保護者対応が不安」であれば、実際に管理職の先生に話を聞いてみる。
「事務処理が不安」であれば、教頭先生の仕事の流れを少し見せてもらう。
「人前で話すのが不安」であれば、今の立場で少しずつ話す経験を増やす。
不安は、準備に変えることができます。
もちろん、すべての不安が消えるわけではありません。
管理職になる前に、管理職の仕事を完全に理解することはできません。
実際になってみなければ分からないこともたくさんあります。
それでも、何に不安を感じているのかを知っておくことは、とても大切です。
それは、自分自身を知ることでもあります。
「私なんかが」と言う先生の中には、実はとても丁寧に人と関わってきた方が多いように感じます。
自分を大きく見せない。
人の話をよく聴く。
周りに迷惑を掛けたくないと思っている。
だからこそ、不安になるのだと思います。
その慎重さは、管理職にとって弱みだけではありません。
むしろ、大切な資質になることもあります。
ただし、「私なんかが」という言葉だけで、自分の可能性を閉じてしまうのはもったいないと思います。
自分には何ができて、何が不安なのか。
これまでどんな経験を積んできたのか。
周りの人は、なぜ自分に管理職を勧めてくれたのか。
そこを一度、丁寧に考えてみてもよいのではないでしょうか。
管理職になるかどうかは、最終的には自分で決めることです。
周りが勧めるから受ける必要もありません。
不安があるから必ずやめる必要もありません。
大切なのは、不安を避けるのではなく、不安の中身を見つめることです。
「私なんかが管理職で大丈夫ですか。」
その問いに、すぐ答えを出さなくてもよいと思います。
ただ、その問いを持ったまま、自分の経験や思いを一つずつ確かめていくこと。
そこから、管理職になるかどうかを考える準備が始まるのだと思います。

