1学期から気になる教職員が、夏休み明けに休み始めたら|同僚・先輩・管理職にできること

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1学期を振り返ったとき、
「最近、少し元気がなかったな」
「遅刻や休みが増えていたな」
「以前より話さなくなったな」
「かなり無理をしていたのではないか」
そんな教職員がいることがあります。
そして夏季休業が終わりに近づいた頃、出勤できなくなる。
始業式を前に休みが続く。
一度出勤しても、再び休むようになる。
こうしたとき、周囲には何ができるのでしょうか。
大切なのは、「どうすれば勤務させられるか」と考えることではありません。
まず、その人が安心して休み、相談し、必要なら医療や専門職につながることのできる環境をつくることです。
同時に、一人の同僚や管理職だけで支えようとしないことも重要です。
メンタルヘルスの不調は、本人の弱さや気持ちの持ち方だけで説明できるものではありません。
学校という組織として、どう支えるかを考える必要があります。

1.教職員のメンタルヘルス不調は、一部の人だけの問題ではない

文部科学省「令和6年度公立学校教職員の人事行政状況調査」によると、精神疾患による病気休職者は7,087人で、全教育職員の0.77%でした。令和5年度の7,119人から人数はわずかに減少しましたが、割合は横ばいです。
さらに、教育委員会が把握した病気休職の要因として多かったのは、「児童・生徒に対する指導そのもの」「上司・同僚・部下等との職場の対人関係」「校務分掌や調査対応等の事務的業務」でした。
つまり、メンタルヘルス不調を、
「本人が弱かった」
「仕事に向いていなかった」
「もっと気楽に考えればよかった」
という個人の問題だけにしてはいけません。
仕事の内容、人間関係、業務量、役割、家庭生活など、さまざまな要因が重なります。
だからこそ、本人のセルフケアだけでなく、職場として支える必要があります。

2.1学期の「いつもと違う」を思い返す

文部科学省・公立学校共済組合が2026年に公表した管理職向け手引き「コンパス―教職員のメンタルヘルスを支援するための手引き」では、早期発見のポイントとして「いつもと違う」状態に気づくことを重視しています。
例えば、次のような変化です。

  • 表情が暗くなった、疲れた様子が続いていた
  • 食事量が減った、眠れていない様子だった
  • 遅刻、早退、当日の欠勤が増えた
  • 単純なミスや期限に遅れることが増えた
  • 報告・連絡・相談が減った
  • 職員会議などで発言しなくなった
  • 他の教職員との関わりが減った
  • イライラしたり、逆に極端に元気がなくなった
  • これまでと比べて仕事の能率が落ちていた
    重要なのは、チェック項目に何個当てはまったかではありません。
    その人の普段の状態と比べてどうだったかです。
    一つ一つは小さな変化でも、振り返ってつなげてみると、
    「1学期からかなり無理をしていたのかもしれない」
    と見えてくる場合があります。

3.「相談してこないから大丈夫」と考えない

しんどいときほど、自分から「助けてください」と言えるとは限りません。
藤井義久による教師542人を対象とした研究では、職務への意欲が低下している教師や職場不適応を抱えている教師の中に、専門的・情緒的支援を求めず、孤立する傾向が示されています。
つまり、
「何かあったら言ってね」
と伝えて終わるだけでは、届かない人がいます。
必要なのは、周囲からの小さな働きかけです。
「最近、少し疲れているように見えるけど、どう?」
「何か仕事で困っていることはない?」
と声をかける。
すぐに話してくれなくても構いません。
文部科学省の「コンパス」も、一度の声かけですぐ相談につながらなくても、タイミングを見ながら声をかけ、「気にかけている」というメッセージを送り続けることを勧めています。

4.夏休み明けに休み始めても、原因を決めつけない

1学期は何とか勤務していた。
夏季休業中も何日かは出勤していた。
ところが、2学期が近づくと出勤できなくなった。
そのような状態を見たとき、
「夏休みに休んだのだから元気になっているはず」
「長い休みがあったのになぜ来られないのか」
と考えてはいけません。
今回確認した公的統計からは、教職員の精神疾患による休職開始時期について「夏季休業明けに多い」と断定できるデータまでは確認できません。
したがって、「夏休み明けだからこうなった」と原因を単純化しないことが重要です。
原因を探し当てることよりも、現在の状態を確認し、必要な支援につなぐことを優先します。

5.同僚としてできること

同僚だからできる支援があります。
専門的なカウンセリングをする必要はありません。
まず、これまでと同じように接することです。
休みが続いたからといって、急に腫れ物に触るような態度になると、本人はかえって職場へ戻りにくくなります。
一方で、
「大丈夫?」
と毎日何度も聞いたり、
「何の病気?」
「病院では何と言われた?」
と詳しい事情を尋ねたりする必要もありません。
「気にかけている。ただし、無理に聞かない」
くらいの距離が大切です。
学校に来ているときなら、
「今日は手伝えることある?」
「これはこっちでやっておくよ」
と、具体的な仕事を少し引き受けることもできます。
研究でも、身近な人から得られる情緒的なサポートは、教師のバーンアウトを緩和する要因になり得ることが示されています。
ただし、同僚一人が相談相手になり続ける必要はありません。
「自分だけがこの先生を支えなければならない」
となれば、今度は支える側が疲弊します。
深刻な不調が疑われる場合は、管理職や専門職につなぎます。

6.先輩教職員としてできること

先輩教職員には、同僚よりもう一歩踏み込んでできることがあります。
特に若手教員は、
「この程度のことで相談してはいけない」
「周りはもっと仕事をしている」
「自分だけできていない」
と考えている場合があります。
そこで、
「全部自分でやらなくていい」
「今、優先する仕事はこれでいい」
「これは来週でいい」
と、仕事を整理する手助けができます。
ここで大切なのは、精神論で支えないことです。
「若いうちは誰でも大変」
「私たちの頃はもっと忙しかった」
という言葉は、支援にはなりません。
文部科学省の「コンパス」も、昔の自分や他の教職員との比較、安易な「頑張れ」「大丈夫」といった励ましには注意が必要だとしています。
先輩として必要なのは、
「自分も乗り越えたから、あなたも乗り越えられる」
ではなく、
「今のあなたにとって何が負担なのか、一緒に整理しよう」
という姿勢です。

7.先輩教職員だけで抱え込まない

職場では、とても面倒見のよい先輩が一人で若手を支えていることがあります。
しかし、
朝に電話する。
授業を代わる。
保護者対応を引き受ける。
毎晩相談に乗る。
管理職への説明も代わる。
これを一人が続ける状態は、長続きしません。
先輩教職員の役割は、その人を一人で支え切ることではありません。
必要な支援につなぐ橋渡しをすることです。
「少し心配だから、管理職にも一緒に相談しようか」
と提案することができます。
本人が話しにくければ、本人の了解を得て同席する方法もあります。
支える人を増やすことは、本人を大げさに扱うことではありません。
一人に依存しない支援体制をつくることです。

8.管理職として最初にすることは「指導」ではなく「聴く」

管理職には「ラインケア」という役割があります。
厚生労働省のメンタルヘルス指針では、ラインによるケアとして、管理監督者による「職場環境等の改善」と「労働者に対する相談対応」が位置付けられています。
学校向けの「コンパス」でも、管理職だけでなく、同僚や先輩、校務分掌のリーダー等もラインケアの担い手になり得ると整理されています。
管理職として気になる教職員と話すときに、最初から、
「今後どうするつもり?」
「勤務できるの?」
「いつから戻れる?」
と結論を求める必要はありません。
まず、
「最近、かなり疲れているように見えて心配しています」
「何か困っていることがあれば聞かせてください」
と伝えます。
そして、話してくれたら、すぐに解決策を提示するより先に聴きます。
「コンパス」は、管理職自身の価値観や経験で相手の話を判断せず、まず相手が話したいことを話せるよう「聴き役」に徹することを勧めています。

9.管理職が病名を判断しない

管理職は医師ではありません。
「これはうつ病だろう」
「適応障害だと思う」
などと判断する必要はありません。
「コンパス」も、管理職が疾病かどうかを判断する必要はないと明確にしています。
一方で、業務に支障が出ている、不調が長く続いている、睡眠や食欲等の身体症状がある、強い抑うつや不安がある、安全上の懸念や希死念慮がある場合などには、医療機関や産業医等へつなぐことを検討するよう示しています。
つまり管理職の仕事は、診断することではありません。
「これは学校だけで抱える状態ではない」と気づいて、専門家につなぐことです。
自傷や「死にたい」など生命の安全に関わる言動がある場合は、通常の相談対応の範囲で終わらせず、安全確保を最優先にして、速やかに専門職・医療機関等との連携に移ります。

10.管理職は「本人を変える」前に仕事を変えられないか考える

メンタルヘルス支援というと、
「本人にカウンセリングを受けてもらう」
「本人にストレスへの対処方法を身につけてもらう」
という方向へ進みがちです。
しかし、それだけではありません。
管理職には職場環境を調整する役割があります。
担当している業務が一人に偏っていないか。
対応の難しい案件を一人で抱えていないか。
保護者対応が集中していないか。
校務分掌を減らせないか。
期限を延ばせる仕事はないか。
会議や行事を減らせないか。
本人だけの問題として考えるのではなく、
「この人が働き続けるには、学校側で何を変えられるか」
を考えます。
「コンパス」でも、職場環境改善の例として、特定の教職員への業務量の偏りをなくすこと、校務分掌や行事の見直し、休暇を取得しやすい雰囲気づくりなどが示されています。

11.休み始めた教職員への連絡は「管理」ではなく「つながり」

休みが長くなってくると、管理職も不安になります。
「いつまで休むのだろう」
「来週は来られるのか」
「代替の体制をどうするか」
組織を運営する以上、確認しなければならないこともあります。
しかし、本人への連絡が、
「いつ戻れる?」
「来月には勤務できる?」
という復職確認ばかりになると、療養中の本人には大きなプレッシャーになる場合があります。
「コンパス」は、病休中の関わりの目的を「管理」ではなく**「つながりを保つこと」**と整理しています。
連絡は本人が負担に感じにくい方法を選び、頻回・長時間の連絡や、病状・治療内容を詳しく聞くこと、復職時期を急かすことを避けるよう示しています。制度や手続きなど、療養に必要な情報は適切に伝えます。
連絡の頻度や方法については、所属する教育委員会の制度や本人の状態によって異なります。
できれば休みが長期化する前に、
「連絡は電話とメール、どちらが楽ですか」
「どのくらいの頻度なら負担になりませんか」
と確認しておくとよいでしょう。

12.本人の情報を職員室で共有し過ぎない

善意から、
「〇〇先生、どうもメンタルらしいよ」
「病院に通っているみたい」
と情報が広がってしまうことがあります。
これは避けなければなりません。
メンタルヘルスに関する情報は非常に個人的な情報です。
「コンパス」は、周囲の教職員への説明について、まず本人の同意を得たうえで、必要最小限の範囲の人へ必要最小限の情報を提供することを求めています。
周囲に必要なのは病名ではなく、
「しばらく休む」
「この業務は当面この体制で行う」
「問い合わせは管理職へ」
といった、仕事を進めるために必要な情報です。
好奇心を満たすための情報共有と、組織運営のために必要な情報共有は分けなければなりません。

13.復職をゴールにしない

休職していた教職員が学校に戻ってくると、周囲は安心します。
本人も、
「迷惑をかけた分、頑張らなければ」
と思うかもしれません。
しかし、復職したからといって、休職前とまったく同じ状態に戻ったとは限りません。
「コンパス」は、復職はゴールではなく回復過程の一段階であり、特に復職後数か月は再発・再休職のリスクが高い時期として、復職直後から以前と同じ業務量を求めず、段階的に負荷を戻すことを勧めています。
厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」でも、休業開始から復職後のフォローアップまでを一連の職場復帰支援として位置付けています。
「戻ってきた。これで終わり」
ではありません。
戻ってきてからこそ、無理をしていないかを見る必要があります。

14.復職した教職員に、過剰に気を遣わない

一方で、
「この仕事を頼んだらまた休むかもしれない」
「何も言わない方がいい」
と周囲が過剰に遠慮することも、本人にとって居心地のよい状態とは限りません。
基本は、以前と同じ一人の同僚として接します。
その上で、業務量や勤務時間など必要な配慮は、管理職と本人、必要に応じて主治医や産業医等が相談しながら調整します。
職員室全員が独自の判断で特別扱いをするのではなく、組織として決めた支援を静かに行う方がよいでしょう。
「お帰りなさい」
「また一緒にやりましょう」
それくらいの自然な言葉で十分なこともあります。

15.支える周囲の教職員も守る

一人が休めば、その仕事を誰かが担うことになります。
その現実を無視して、
「みんなで温かく支えよう」
だけでは長続きしません。
残された教職員の負担が増えれば、次の不調者を生む可能性があります。
だから管理職は、
「誰が代わりに全部やるか」
ではなく、
「今やらなくてもよい仕事は何か」
「学校全体で減らせる仕事は何か」
まで考える必要があります。
厚生労働省の職場復帰支援の考え方でも、復職する本人だけでなく、その人を支える管理監督者や同僚のストレス軽減を図ることが重視されています。
誰かの善意と自己犠牲だけに依存する支援は、持続可能な支援ではありません。

16.1学期に気づいていたなら、2学期を待たなくてよい

「あの先生、少し心配だな」
そう思っている教職員がいるなら、夏休み明けまで待つ必要はありません。
大げさな面談を設定しなくても構いません。
日常的に声をかける。
仕事量を確認する。
困っていることを聞く。
一緒に優先順位を整理する。
必要なら管理職や専門職につなぐ。
文部科学省の「コンパス」では、毎日一言声をかけることや定期的な面談、他の教職員の力も借りながら「いつもと違う」に気づく仕組みづくりが提案されています。
倒れてから支援を始めるのではなく、まだ働けている段階で支えることに意味があります。

17.温かい職員室とは「休まない職員室」ではない

誰も休まない。
誰も弱音を吐かない。
全員が最後まで頑張る。
それがよい職員室ではありません。
「少ししんどいです」
「今、この仕事は抱えられません」
「助けてください」
と言える。
そして、その言葉を聞いた周囲が、
「甘えるな」
ではなく、
「どうすればいいか一緒に考えよう」
と返せる。
そんな職員室の方が、結果として長く働ける職員室になるのではないでしょうか。
メンタルヘルスの問題をゼロにすることはできません。
しかし、
早く気づく。
声をかける。
話を聴く。
仕事を調整する。
専門家につなぐ。
休むときは休める。
戻るときは急がせない。
そして、支える側も一人にしない。
学校としてできることは、たくさんあります。
大切なのは、休み始めた人を責めないことです。
そして同時に、休むまで誰も気づかない職場にしないことです。

参考資料

文部科学省「令和6年度公立学校教職員の人事行政状況調査」
公立学校教育職員の精神疾患による病気休職者数と、教育委員会が把握した休職要因を確認できます。
文部科学省「教職員のメンタルヘルス対策について」
文部科学省による教職員のメンタルヘルス対策の総合ページです。最新の手引きや自治体の取組事例等が掲載されています。
文部科学省・公立学校共済組合「コンパス―教職員のメンタルヘルスを支援するための手引き」
管理職向けの2026年の手引きです。「気づく」「聴く」「つなぐ」「職場環境を把握し改善する」というラインケアの実践が具体的に整理されています。
文部科学省・公立学校共済組合「とまり木―心の不調による病気休暇・病気休職中の手引き」
病気休暇・休職中の教職員本人向けの2026年の手引きです。療養、復職準備、復職後の経過、職場や家族の関わり方などがまとめられています。
厚生労働省「メンタルヘルス対策(心の健康確保対策)に関する施策の概要」
セルフケア、ラインによるケア、産業保健スタッフによるケア、事業場外資源によるケアという「4つのケア」の考え方を確認できます。
厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」
休業開始から復職判断、職場復帰支援プラン、復職後のフォローアップまでの基本的な流れが示されています。
貝川直子「学校組織特性とソーシャルサポートが教師バーンアウトに与える影響」『パーソナリティ研究』
職場内の情緒的サポートと教師のバーンアウトとの関係を検討した研究です。
藤井義久「悩んでいる教師の発見とその支援の在り方に関する研究」『学校メンタルヘルス』
教師542人を対象に、悩みの内容と教師が求める支援の関係を検討した研究です。支援を求めず孤立する教師の存在についても示唆されています。

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