第24回 欠員が出たとき、残った教職員の善意で学校を回さない

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教職員が急に休むことになった朝、職員室ではすぐに時間割変更や代替授業の相談が始まります。周囲の教員が「ここは私が持ちます」と手を挙げてくれることもあります。その協力はありがたいものです。しかし、欠員が数日、数週間と続くのに、同じ人の善意で穴を埋め続ければ、次に疲弊する教職員を生みかねません。

欠員への対応は、休んだ本人の問題でも、支える教員の献身に任せる問題でもありません。管理職が、子どもの安全と学びを守るために、限られた人員で何を続け、何を減らし、何を止めるかを決める学校運営の課題です。

この記事では、教員の欠員が出たときに管理職が行いたい初動、業務の組み替え、教育委員会への支援要請、残った教職員へのケアを具体的に整理します。特定の教職員に「もう少しだけ」と負担を寄せる前に、組織の仕組みを変えるための手順です。

1.欠員を「一人分の仕事」だけで考えない

一人が休むと、その人の授業や校務分掌だけが空くように見えます。実際には、時間割の変更、連絡調整、教材の引継ぎ、保護者への説明、記録の確認など、新しい仕事も発生します。欠員そのものに加えて、欠員対応の仕事が職員室全体に増えるのです。

ここで管理職が「みんなで少しずつ助けましょう」とだけ伝えると、引き受けやすい人、断りにくい人、経験がある人に負担が集中しがちです。若手は評価を気にして断れず、中堅は「自分がやるしかない」と抱え、主任は調整と実務の両方を背負います。表面上は学校が回っていても、実態は誰かの残業や持ち帰りで支えられている場合があります。

最初に確認したいのは、「誰が穴を埋めるか」ではなく、「現在の人員で安全に続けられる業務量はいくらか」です。欠員が出た時点で、通常運転を前提にしないことが出発点になります。

2.最初の24時間は安全と必須業務を固定する

急な欠員では、まず児童生徒の所在、安全、授業監督、給食、登下校、緊急時の連絡など、当日に外せない業務を確認します。授業を誰が担当するかだけでなく、休み時間、清掃、部活動、保護者連絡まで含めて、見守りの空白が生じないかを点検します。

このとき、管理職は指示系統を一本化します。複数の主任が別々に代替を頼むと、同じ教員に負担が重なったり、必要な場所が空いたりします。教頭や主幹教諭など調整担当を決め、変更内容を一つの表に集約します。「誰が、いつ、何を担当するか」「元の業務をどうするか」を同時に記録します。

重要なのは、代替を頼むときに元の業務を残さないことです。授業を一時間引き受けてもらうなら、その日の会議資料づくりを延期する、校内巡回を別の人に替えるなど、差し引きで考えます。追加だけを繰り返せば、協力はやがて無理に変わります。

3.「続ける・縮小する・止める」の三つに分ける

欠員対応では、業務を三つに分けると判断しやすくなります。第一は、安全確保、授業、出欠、重要な生徒指導など、優先して続ける業務です。第二は、内容や回数を減らして続ける業務です。第三は、延期または中止できる業務です。

例えば、校内研修の資料を簡略化する、会議を短縮する、掲示物の更新頻度を下げる、行事準備の一部を翌週へ送る、重複する調査や報告を見直すといった選択があります。教育活動にはそれぞれ意味がありますが、すべてを同じ水準で維持しようとすれば、限られた人員では無理が生じます。

文部科学省の働き方改革事例集も、限られた人・物・時間を有効に使うため、業務の優先順位をつけて精選する必要性を示しています。欠員時こそ、「前年もしていたから」ではなく、子どもの安全と学びに本当に必要かという基準で見直します。

止める判断を現場に委ねないことも大切です。担当者が自分で中止を決めると、「仕事を投げた」と受け取られる不安が残ります。管理職が学校として決定し、関係者への説明も引き受けることで、現場は安心して優先業務に集中できます。

4.負担配分を「頼みやすさ」で決めない

代替業務は、空き時間の数だけで決められません。担任かどうか、校務分掌、部活動、家庭の事情、健康状態、すでに抱える難しい案件などを合わせて見ます。特に、若手だから時間がある、独身だから頼める、中堅だから何でもできる、といった暗黙の配分は避けなければなりません。

管理職が確認したいのは、実際に増えた授業時数、代替した日数、時間外在校等時間、休暇の取得状況、本人の申告です。「大丈夫です」という返答だけで判断せず、普段との変化を見ます。関連して、第22回 若手の「大丈夫です」の捉え方の基本では、言葉だけでなく行動や業務量から状態を捉える視点を整理しています。

依頼するときは、期間と見直し日を明示します。「当面お願いします」では終わりが見えません。「金曜日まで」「来週月曜に再検討」と期限を決めれば、暫定対応が無期限に固定されるのを防げます。また、引き受けた人には「難しくなったら言ってください」ではなく、管理職側から定期的に声をかけます。

5.教育委員会への連絡は限界まで待たない

代替教員や支援人材がすぐに確保できるとは限りません。それでも、校内で何とか回っているように見える段階から、教育委員会へ状況を伝える必要があります。限界を超えてからの要請では、調整に必要な時間を確保できません。

要請では、「大変です」だけでなく事実を整理します。欠員が始まった日、見込まれる期間、空いた授業時数、校内で行った調整、増加した負担、安全上・教育上の懸念、必要な支援を記録します。代替配置だけでなく、非常勤講師、教員業務支援員、事務支援、行事や調査の延期など、複数の選択肢を相談します。

文部科学省は、管理職に学校内外の情報を収集・整理・分析し、関係者をつなぐマネジメントが必要だとしています。校内の努力を尽くしてから外へ相談するのではなく、校内外の資源を組み合わせること自体が管理職の仕事です。

6.欠員者の情報は必要な範囲だけ共有する

休んでいる教職員の病名や家庭事情を、本人の同意なく職員室全体へ詳しく伝える必要はありません。一方で、何も説明しないまま負担変更だけを求めると、憶測や不満が生まれます。

共有するのは、業務運営に必要な情報です。「しばらく休む見込みである」「来週に体制を再検討する」「連絡窓口は管理職とする」「本人への直接連絡は控える」といった内容です。理由の詳細ではなく、学校がどう対応するかを明確にします。

保護者への説明も同様です。個人情報に踏み込まず、授業や学級運営の体制、相談先、連絡方法を伝えます。質問や不安への対応を代替担当者だけに任せず、管理職が窓口となります。第21回 難しい保護者対応を若手一人に背負わせないで示した役割分担は、欠員時にも有効です。

7.一週間を超えたら時間割と校務分掌を組み直す

数日間の応急対応と、数週間続く体制は分けて考えます。一週間を超える見込みがあれば、毎朝その場で穴を埋めるのではなく、時間割、担任業務、校務分掌、会議、行事を組み直します。特定の教員が毎日違う役割を担う状態は、見通しが立たず疲労を強めます。

組み直す際は、担当一覧と負担の増減を職員に示します。全員が同じ量を担うことが公平とは限りません。経験や役割に応じて差が生じても、なぜその配分にしたか、どの業務を免除したかが分かれば納得につながります。

主任や中堅には、調整力があるからこそ仕事が集まりやすくなります。中堅教師・学年主任が学校を動かすための20のTipsで扱ったように、人を動かすより動きやすい仕組みをつくる視点が必要です。主任を非公式な「何でも係」にせず、判断権限と免除する業務をセットで渡します。

8.残った教職員を二人目の休職者にしない

欠員が続くと、周囲は休んだ人への配慮から「自分まで弱音を吐けない」と感じることがあります。管理職は、残った人への支援を後回しにしてはいけません。文部科学省のメンタルヘルス資料は、本人のセルフケアだけでなく、管理職によるラインケアや職場環境への働きかけを重視しています。

週に一度は、追加業務と時間外在校等時間を確認します。遅刻や欠勤だけでなく、表情、ミスの増加、相談の減少、昼食を取れない、持ち帰りが増えるなどの変化にも目を向けます。状況によっては、業務の再削減、産業医や相談窓口への接続、休暇取得の促進を行います。

1学期から気になる教職員が、夏休み明けに休み始めたらでも、本人だけに回復の責任を負わせず、同僚・先輩・管理職がつながることを取り上げています。欠員対応は、休んだ人を責めないことと、支える人を守ることの両方が必要です。

9.復帰時に一気に「元通り」へ戻さない

休んでいた教職員が戻ると、周囲も本人も早く通常に戻したいと考えます。しかし、初日からすべての授業、担任業務、分掌を戻せば、再び負荷が急増します。医師や教育委員会の助言、本人との面談、校内の支援体制を踏まえ、段階的に担当を戻します。

復帰後も、代替していた教職員の疲労がすぐ消えるわけではありません。引継ぎの時間を確保し、追加業務を解除し、休暇を取りやすくします。「戻ってきたから解決」ではなく、学校全体の体制が安定するまでを欠員対応として捉えます。

10.管理職が持つ確認表

欠員が出たときは、次の項目を短い確認表にしておくと、善意への依存を減らせます。

  • 当日の安全確保と必須業務を確認したか
  • 指示と調整の窓口を一本化したか
  • 代替を依頼した人の元の業務を減らしたか
  • 続ける・縮小する・止める業務を決めたか
  • 負担を授業時数や在校等時間で可視化したか
  • 暫定対応の期限と見直し日を決めたか
  • 教育委員会へ事実と必要な支援を伝えたか
  • 本人の個人情報を必要な範囲で扱っているか
  • 残った教職員の心身の変化を定期的に確認したか
  • 復帰後の段階的な業務調整まで計画したか

欠員が出ても、学校は子どものために動き続けます。だからこそ、通常どおりを演じ続けるのではなく、無理のない形へ運営を変える必要があります。協力してくれる教職員への感謝は、さらに仕事を頼む言葉ではなく、業務を減らし、期限を区切り、組織で責任を負う行動で示したいものです。

参考資料

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