教職員が育たない、と悩んでいる学校管理職は、ホスト界の軍神を参考にしてほしい

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学校管理職の皆さんに、少し意外な提案をしたい。

ホスト業界で「軍神」と呼ばれる心湊一希氏のYouTubeやインタビューを、校長・教頭の人材育成と組織づくりの教材として見てほしい。

「なぜ、学校管理職がホストから学ぶのか」と感じる人もいるだろう。学校とホストクラブでは、目的も制度も働く人の立場も異なる。だから、そこで行われている指導を学校へそのまま持ち込むべきだ、という話ではない。

それでも、異なる世界で人を育て、組織を率いる人が、何を考えて働きかけているかを観察する価値は大きい。とりわけ、軍神こと心湊氏の発信からは、相手の人生への関心、言葉を扱う力、利他的な行動、組織を支えるリーダーの責任という論点が浮かび上がる。

私は中学校の教員、教頭、校長を経験してきた。学校の管理職にとって難しいのは、教育理念を語ることだけではない。一人ひとりの教職員が力を発揮し、互いに学び合い、子どものために動ける職場を日々つくっていくことだ。そこにこそ、異業種から学ぶ理由がある。

まずは、この2本の動画を見てほしい

この記事を読み進める前に、まずは次の2本の動画を見てほしい。

ホスト業界と学校教育の世界。仕事の目的も、働く環境も、求められる成果も異なる。まったく関係のない世界のように見えるかもしれない。いや、だからこそ、学校管理職が学ぶべきことは多いと私は考える。

人を育てる仕事をしていると、ときには「この人に何を言っても無駄ではないか」「何度伝えても変わらない」と感じてしまうことがある。だが、そこで相手を見捨てるのか。それとも、その人が変わる可能性を信じ、伝え方や関わり方を変えながら、何とか力を引き出そうとするのか。この違いは大きい。

私が「軍神」の新人教育から特に学びたいのは、相手を簡単に諦めないという姿勢だ。目先の成果だけを追うのではなく、一人ひとりが成長すること、周囲の仲間も含めて幸せになることを考える。そして、自分だけが得をするのではなく、他者のために何ができるかという「利他の心」を大切にする。そうした視点で人を育てようとする姿から、学校管理職も多くを考えさせられる。

もちろん、動画に登場する言葉遣いや指導方法のすべてを、そのまま学校で実践すべきだということではない。ホスト業界と学校には明確な違いがある。しかし、教職員の成長を願い、簡単には見捨てず、個人だけでなく組織全体の幸せを考えるという姿勢は、業界の違いを越えて考える価値がある。

「自分なら、この人にどう関わるだろう」「自分の学校では、誰かを早々に諦めていないだろうか」。そんな問いを持って2本を見たうえで、以下の文章を読んでほしい。

1 「ホストから学ぶ」という先入観を捨てられるか

校長や教頭が管理職研修を受ける機会はある。文部科学省の指針や教育委員会の資料、学校経営についての書籍も数多い。それらはもちろん重要だ。

しかし、知識として「教職員の主体性を尊重する」「強みを生かす」「心理的安全性を確保する」と理解することと、実際に目の前の部下に何を言うか、どのタイミングで任せるか、どのように失敗から学ばせるかは、別の問題である。

人材育成は、理念を掲示するだけでは実現しない。日々の会話、表情、問いかけ、フィードバック、仕事の割り振り、会議の設計という、具体的な行動の積み重ねから生まれる。

異業種の実践を観察すると、「学校では普通だと思っていた自分の振る舞い」を相対化できる。ホスト業界の価値観を肯定する必要はない。むしろ、異なる職場であるからこそ、手法の前提条件まで考え直す教材になる。

2 軍神・心湊一希氏は、部下の「その先の人生」を語っている

心湊氏は、ホストクラブブランド「エルコレ」のプロデューサーとして知られ、YouTube「エルコレ〜歌舞伎超TV〜」やABEMAの番組などに登場している。

私が特に注目するのは、本人が受けた『GOETHE』のインタビューで語っている、人材育成の目的である。そこで心湊氏は、部下を現在の組織の利益のためだけに育てるのではなく、ホストを辞めた後の人生や本人の幸せまで考える、という趣旨を述べている。

この発想は、学校管理職にとって極めて重要ではないか。

例えば、ある若手教員が校内で必要な仕事を十分にこなせないとき、管理職はつい「この仕事をどうできるようにするか」に意識を向ける。もちろん業務上の支援は必要だ。しかし、その教員が5年後、10年後にどのような教師でありたいか、どんな専門性を伸ばしたいかという視点が抜け落ちることはないだろうか。

教務主任を育てるのは、来年度の教務を回すためだけではない。若手を指導するのは、校長の指示を速く実行できる人を増やすためではない。本人が、異動先でも、役職が変わっても、専門職として学び続けられる力を培うためでもある。

「今の学校に必要な人材」としてだけでなく、「一人の教師としてどう成長してほしいか」を考えられるか。 ここに、管理職の器が表れる。

3 「できない理由」を本人の意欲だけに求めない

『GOETHE』の同じインタビューでは、心湊氏が読解力や言語化力を重視し、国語ドリルなども活用していることが紹介されている。接客以前に、相手の言葉を理解する力、自分の考えを伝える力という基礎に立ち戻ろうとしている点が興味深い。

これは学校管理職に置き換えると、どうなるだろう。

「何度説明しても伝わらない」「報告が的を射ない」「保護者対応で言葉が出てこない」。そんな場面で、「本人の能力が足りない」「意識が低い」と結論づけていないだろうか。

必要なのは、より細かな診断である。そもそも目的を理解していないのか。前提知識が不足しているのか。状況を整理する枠組みがないのか。緊張で説明できないのか。管理職の指示が曖昧なのか。課題によって支援は異なる。

例えば「保護者への説明が苦手」という教員に対して、ただ「丁寧に説明しなさい」と指示しても改善しにくい。事実、学校としての判断、次の対応を三つに分けてメモする。最初の一文を一緒に考える。短時間のロールプレイを行う。実施後に、うまく伝わった言葉を本人と振り返る。こうした小さな支援の方が具体的だ。

優れた育成とは、相手に高度な要求を繰り返すことではなく、できないことを、練習可能な行動まで分解することだと考える。

4 「利他」を精神論で終わらせず、行動に翻訳する

心湊氏が発信の中で大切にしている価値観の一つが「利他」である。本人へのインタビューでも、自分の売上だけではなく顧客や仲間の幸福を考えるという趣旨が示されている。

学校で「子どものために」という言葉を聞かない日はない。けれども、その言葉が便利な精神論になってしまう危険もある。

「子どものためだから、長時間働く」「子どものためだから、会議を増やす」「子どものためだから、反論しない」。これらは必ずしも利他的ではない。教師の健康や家庭生活が損なわれれば、教育活動の持続可能性も失われる。

利他を学校組織に生かすなら、「相手にとって何が本当の利益か」を問い直さなければならない。児童生徒の学びと安心につながるか。若手教員が次に一人で判断できる力につながるか。同僚の負担を不必要に増やしていないか。判断の基準を具体化するのである。

「子どものために」を合言葉にして仕事を足すことよりも、「子どものために、やめる仕事を決める」ことが必要な場合もある。利他の名の下で自己犠牲を強制しない。そこまで考えて初めて、学校における利他が組織づくりの原則になる。

5 管理職の言葉は、部下の次の行動を生み出しているか

軍神に関連する動画を教材として見る際、特に観察したいのが「指摘の中身」と「相手の次の行動」の関係である。強い言葉や劇的な展開だけを見るのではなく、問題をどう捉え、何を改善課題として示し、本人にどのような行動を促しているのかを検討したい。

管理職の言葉には、部下を動けなくする言葉と、次に踏み出せるようにする言葉がある。

「もっと主体的に動いてほしい」と言われても、何をすればよいか分からないことがある。一方で、「次回の学年会では、最初にあなたから課題を一つ示し、解決策を二案出してほしい」と伝えれば、行動を具体化できる。

「報告が遅い」という評価だけではなく、「何か起きたときは、結論が出ていなくても、まず事実と現在の対応を共有してほしい」と伝える。「会議が長い」という批判だけではなく、「次回は決定することを冒頭に示し、情報共有は資料で済ませよう」と提案する。

ここで忘れてはならないのは、伝え方が厳しければよいわけではないということだ。事実に基づく具体性と、相手の尊厳を守る態度は両立しなければならない。人格を否定し、大勢の前で追い詰める手法を学校に取り入れる理由はない。

6 「正解を与える上司」から「考えを引き出す管理職」へ

管理職は経験がある。経験があるからこそ、部下の相談を聞いた瞬間に解決策を思いつく。しかし、それをすぐに伝えることが、育成になるとは限らない。

例えば、学年主任から「学年の先生が動いてくれない」と相談されたとする。

すぐに「あなたがもっと強く指示しなさい」と返せば、管理職は短時間で助言したつもりになれる。しかし、問題は担当分担の不明確さなのか、目的の共有不足なのか、仕事量の偏りなのか、関係性の行き違いなのか、まだ分からない。

そこで、「具体的に、どの仕事が止まっているのか」「相手は何を負担に感じていると思うか」「あなた自身は、どんな学年にしたいか」「私に担ってほしい役割は何か」と問う。

その問いによって、本人が状況を整理し、自分で選ぶ余地が生まれる。もちろん、いじめ、事故、重大な生徒指導事案などでは、管理職が直ちに判断すべき場面もある。すべてを部下に任せるのではなく、判断を引き受ける場面と、考える機会を渡す場面を見極めることが大切だ。

他者のマネジメント動画を観察する際も、発信者の言葉を丸暗記するのではなく、「自分ならこの場面で何を聞くか」「その問いは、相手の主体性を増やすか」を考えると学びが深くなる。

7 組織づくりとは、優秀な一人に依存しない仕組みをつくること

優れた校長が一人いれば学校は変わる。そう見える瞬間はある。しかし、校長が異動した途端に元に戻るなら、組織の力になったとは言い難い。

学校組織で必要なのは、特定の管理職の魅力や発信力に頼らず、教職員が互いに学び、支え、引き継げる仕組みを育てることだ。

例えば、経験豊かな教員の授業づくりを本人だけの技術にしない。短い授業交流や共同の教材検討に変える。保護者対応の成功例を武勇伝で終わらせず、初動、記録、関係者への連絡という手順にする。若手から出た改善案を、管理職が認めるだけでなく、試行し、検証し、学校全体に広げる機会をつくる。

組織の課題を個人の根性で埋め続けるのではなく、仕事の構造を変える。これは人材育成であると同時に、働き方改革でもある。

異業種の発信を見る際には、その人のカリスマ性に注目しすぎないことを勧めたい。「本人がいなくても、その職場の人が再現できる仕組みは何か」という視点で見ると、学校に持ち帰れる学びが変わってくる。

8 学校組織研究とも重なる視点がある

ここまでの話は、単にホスト業界の人物を魅力的に感じたという印象論だけで終わらせたくない。

文部科学省の学校管理職向け説明資料では、校長の基本的役割を「学校経営方針の提示」「組織づくり」「学校外とのコミュニケーション」と整理している。また、教職員の強みの活用、心理的安全性、働きがい、人材育成、学び合う職場環境づくりが求められている。

学校改善研究紀要に掲載された三沢良・鎌田雅史(2024)の研究は、校長のエンパワリング・リーダーシップと教師の組織的な学びを、心理的安全性との関係から検討している。また、三谷登代美(2025)は校長の働きかけ、教職員の心理的安全性、ワーク・エンゲイジメントを扱い、同僚性やミドルリーダーの役割にも着目している。

これらは軍神の指導法の効果を実証した研究ではない。それぞれ別の研究であり、両者を同一視するのは誤りだ。だが、現場で見られるリーダーシップの行動を、学校の研究知見に照らして吟味することはできる。

つまり「軍神が言っているから正しい」ではない。「軍神の働きかけのどの部分が、学校の組織づくりに通じ、どの部分は条件が異なるのか」を検証する。その姿勢こそ、学校管理職にふさわしい学び方ではないだろうか。

9 絶対に、学校へそのまま持ち込んではいけないもの

異業種から学ぶときほど、線引きを明確にしたい。

ホストクラブは営利事業であり、顧客との関係や報酬のあり方も学校とは大きく異なる。映像には演出や編集があり、一場面だけでは、その働きかけが継続的にどのような結果を生んだかまでは分からない。

学校は、公教育として児童生徒の権利と学びを保障し、教職員の専門性と法令に基づいて運営される組織である。売上を競う文化、過度な上下関係、公衆の面前での叱責、長時間労働や精神的負荷を当然視する姿勢を模倣してはならない。

また、厳しい指導によって短期的に行動が変わったとしても、それだけで育成が成功したとは言えない。自律性、信頼関係、心身の健康、長期的な成長を含めて判断する必要がある。

学ぶのは、発信者のすべてではない。目的を持って相手を観察する姿勢、課題を具体化する技術、本人の将来を考える視野である。取り入れる内容には、教育的妥当性、人権・労務上の適切さ、再現可能性という三つのフィルターをかけたい。

10 明日からの管理職の行動を変える三つの問い

動画を見終えたとき、「面白かった」「あの人はすごい」で終わるなら、娯楽の域を出ない。学校管理職として学ぶなら、翌日の行動を一つ変えてほしい。

第一の問いは、「この先生の5年後を、私は考えているか」。 担当業務を割り振るとき、本人の成長機会になっているかを考える。希望や不安を聞き、数年先の専門性まで視野に入れる。

第二の問いは、「私の指示は、次に何をすればよいかまで伝わっているか」。 「しっかり」「主体的に」「連携して」という抽象語を減らし、期待する行動を一つ具体的に示す。同時に、管理職側の説明不足がなかったか確かめる。

第三の問いは、「私がいなくても機能する組織になっているか」。 自分が解決した件数ではなく、教職員同士で相談できる仕組み、失敗を共有できる雰囲気、次のリーダーを支える関係が育っているかを見る。

学校管理職は、人を管理するだけの仕事ではない。人が育つ条件をつくる仕事である。だからこそ、学校教育の世界の内側だけに学びを閉じ込めてはもったいない。

ぜひ、実際の発信を見てほしい。そして、気になった一つの場面を止めて、「私なら、この教職員にどう関わるか」と自問してほしい。

参考資料・視聴先

以下は、一次発信・本人への直接インタビュー・公的資料・研究論文を中心に挙げた。動画は編集された公開コンテンツであり、個々の発言の背景や効果をすべて示すものではない。

※本記事は心湊氏の全発言・全活動を評価するものではなく、公に確認できる発信から学校経営への示唆を検討した論考である。

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