中学生の学習を定着させる方法~分散学習・想起練習・ノート・学習計画~

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「勉強したのに、覚えていません」
「何度も教科書を読んだのに、テストでは答えられませんでした」
「ノートはきれいにまとめたのに、点数につながりません」
「計画表は作ったけれど、ほとんど計画どおりにできませんでした」
中学生から、よく聞く言葉です。
勉強した時間が短かったとは限りません。
本人なりに、長い時間をかけています。
教科書を何度も読みます。
重要なところへ線を引きます。
ノートを丁寧にまとめます。
学習計画表へ予定を書き込みます。
それでも、学習内容が十分に定着しないことがあります。
これは、本人のやる気だけの問題ではありません。
勉強しているように見える行動と、学習内容を思い出し、使えるようにする行動は、必ずしも同じではないからです。
教科書を読めば、内容に見覚えができます。
ノートを見れば、分かったような気持ちになります。
きれいに整理すれば、勉強したという実感も得られます。
しかし、教科書やノートを閉じたときに、その内容を自分で思い出せるかどうかは別です。
学習を定着させるために大切なのは、
長い時間勉強することだけではありません。
一度に覚えようとしない。
少し時間を空けて学び直す。
何も見ずに思い出す。
答えを確認する。
間違えた理由を考える。
次に何をするか決める。
この過程を繰り返すことです。

勉強時間と学習の定着は同じではない

生徒に、
「昨日は何時間勉強しましたか」
と聞くことがあります。
学習時間は、生活や学習習慣を把握する一つの情報になります。
ただし、三時間勉強したから、三時間分の内容が定着したとは限りません。
教科書を眺めていた時間。
ノートを書き写していた時間。
問題を解いていた時間。
間違いを直していた時間。
何も見ずに思い出していた時間。
同じ一時間でも、行っていることは異なります。
短い時間でも、自分の理解を確かめながら取り組めば、学習につながります。
反対に、長い時間机に向かっていても、内容についてほとんど考えていない場合があります。
したがって、
「何時間勉強したか」
だけでなく、
「その時間に何をしたか」
を見る必要があります。
英単語を二十個読んだ。
ではなく、
二十個を見ずに答え、間違えた六個を学び直した。
数学を一時間した。
ではなく、
一次関数の問題を五問解き、三問目の間違いの原因を確認した。
そのように、学習行動を具体的に捉えます。

エビングハウスの忘却曲線を単純化しない

以前、私は「エビングハウスの忘却曲線」を使って、中学生に復習の必要性を説明していました。
時間がたつにつれて、学習した内容を忘れていく。
だから、早めに復習しなければならない。
この基本的な考え方には、今も意味があります。
しかし、忘却曲線については、説明の仕方に注意が必要です。
エビングハウスは、意味のある学校教材を使って、多数の中学生を調べたわけではありません。
意味をできるだけ持たない音節の系列を使い、自分自身を主な実験対象として、覚え直す際にどれだけ時間を節約できたかという「節約法」によって記憶を測定しました。
後年の追試でも、同様の方法による忘却の傾向は再現されていますが、元の研究条件は、日常の授業や家庭学習とは大きく異なります。
したがって、
「人は一日後に必ず何%忘れる」
「一週間後には何%しか覚えていない」
と、全ての学習へ同じ割合を当てはめることはできません。
忘れ方は、学習内容によって変わります。
最初にどの程度理解していたか。
どのような方法で学んだか。
以前の知識と結びついているか。
その後に使ったか。
睡眠や体調はどうだったか。
さまざまな条件に影響されます。
忘却曲線から学ぶべきことは、
「決められた日に、決められた割合だけ忘れる」
ということではありません。
一度学んだだけでは、記憶は安定しにくい。
時間を空けて再び学ぶ必要がある。
ということです。

「ラッセルの復習曲線」は本記事では使用しない

以前の記事では、「ラッセルの復習曲線」という名称を使い、復習するたびに忘却曲線が緩やかになるという図を紹介していました。
しかし、今回、改めて学術的な資料を確認しましたが、「ラッセルの復習曲線」という名称に対応する明確な原典を特定できませんでした。
インターネット上には似た図が多数ありますが、誰が、どのような実験によって示したものなのかが明らかでないものがあります。
復習を重ねることで記憶の保持がよくなるという考え方自体は、分散学習や想起練習の研究によって支持されています。
しかし、原典を確認できない名称や図を、確立した学説として生徒に伝えるべきではありません。
そのため、本記事では「ラッセルの復習曲線」という名称は使用せず、分散学習と想起練習の研究に基づいて説明します。

一度に詰め込まず、時間を空ける

テスト前日に、同じ内容を何度も繰り返すと、その場では答えられるようになります。
短期的には、詰め込み学習が役立つ場合があります。
しかし、少し時間がたった後まで学習内容を残したい場合は、学習を複数の機会に分ける方が有効です。
これを、分散学習といいます。
学習方法に関する多くの研究を検討したDunloskyらのレビューでは、練習テストと分散学習は、年齢や学習内容を越えて比較的幅広い効果が確認されている方法として、高い有用性があると評価されています。
一方、再読、線引き、要約などは、方法や条件によっては役立つものの、それだけで安定した効果が得られるとは限らないと整理されています。
分散学習とは、単純に勉強時間を長くすることではありません。
同じ内容へ、別の日にもう一度戻ることです。
月曜日に英単語を学ぶ。
火曜日に、何も見ずに答えてみる。
金曜日に、間違えた単語をもう一度確認する。
翌週に、文章の中で使う。
一回の学習を長くするのではなく、短い学習機会を複数回つくります。

復習する間隔に万能の正解はない

「復習は、一日後、一週間後、一か月後に行えばよい」
という説明を見かけます。
分かりやすい目安ではあります。
しかし、全ての生徒、全ての内容に共通する最適な間隔が一つあるわけではありません。
明日の小テストへ向けて覚えるのか。
三か月後の定期テストへ残したいのか。
一年後の入試でも使いたいのか。
どの程度先まで覚えておきたいかによって、適切な間隔は変わります。
難しい内容で、最初の理解が十分でなければ、早めに学び直す必要があります。
すでに何度も使っている内容なら、少し長く間隔を空けられます。
研究でも、分散することの効果は広く確認されていますが、「間隔は長ければ長いほどよい」という単純な関係ではないとされています。
学校では、厳密な最適間隔を計算する必要はありません。
授業の最初に、前時の内容を短く思い出す。
一週間後に、以前の内容を含む問題を出す。
単元が終わってからも、別の単元の問題に混ぜる。
定期テスト前に初めて復習するのではなく、授業の中で何度も戻る。
このような設計ができます。

「もう一度見る」より「思い出してみる」

復習というと、教科書やノートをもう一度読むことを考えます。
読み直すことにも意味はあります。
忘れている内容を確認できます。
理解が不十分だった説明を、改めて読むこともできます。
ただし、読み直すだけでは、
「見れば分かる」
状態にとどまることがあります。
テストでは、教科書を見ずに答えなければなりません。
そのため、学習した内容を何も見ずに思い出す練習が必要です。
これを、想起練習といいます。
教科書を閉じて、今日学んだ三つのポイントを書く。
英単語の日本語だけを見て、英語を書く。
白紙へ図を再現する。
問題の答えだけでなく、解き方を説明する。
友達へ、学習内容を短く説明する。
自分で小さな問題をつくり、後から答える。
思い出そうとする行為そのものが、学習になります。
2022年の学習科学に関するレビューでも、学習機会を時間的に分散することと、記憶から積極的に取り出すことは、幅広い領域で学習を促す方法として整理されています。
さらに、間隔を空けた想起を組み合わせることで、単なる再読よりも長期的な保持につながることが示されています。

想起練習を「抜き打ちテスト」にしない

想起練習は、テストの回数を増やし、生徒を評価することではありません。
できない生徒を見つけるために行うものでもありません。
学習のための小さな確認です。
成績へ直結させると、生徒は間違えることを避けます。
分からなくても、友達の答えを写すかもしれません。
想起練習では、
間違えてもよい。
今の段階で思い出せないことを知るために行う。
という位置づけが大切です。
授業の最初に二問だけ出す。
三分間で、前時の内容を書く。
答え合わせをした後、間違いを直す。
成績には入れない。
このような低い緊張感の中で行います。
そして、想起した後には、必ず内容を確認できるようにします。
間違った答えをそのまま覚えないよう、教科書、解説、教師の説明などによってフィードバックを受けます。
想起練習は、思い出せなかったことを責める活動ではありません。
次に学び直す場所を見つける活動です。

分からないまま何度もテストしない

想起練習が有効だからといって、まだ理解していない内容を何度も答えさせればよいわけではありません。
まず、学習内容を理解する必要があります。
教師の説明を聴く。
教科書を読む。
具体例を見る。
問題を一緒に解く。
意味や関係を考える。
その上で、何も見ずに思い出します。
思い出せなければ、もう一度学びます。
再び閉じて、思い出します。
学ぶ。
思い出す。
確認する。
もう一度学ぶ。
この往復が大切です。
意味の分からない言葉を音だけで覚えても、別の場面で使うことは難しくなります。
記憶と理解を、対立するものとして考えないことです。
基礎的な知識があるから、比較したり、理由を考えたり、別の問題へ応用したりできます。
一方、意味や関係を理解することで、記憶にも残りやすくなります。

「分かった感じ」に注意する

教科書を何度も読むと、文章が読みやすくなります。
ノートを見続けると、内容に見覚えができます。
教師の分かりやすい説明を聞くと、自分でも解けるような気持ちになります。
しかし、
「見れば分かる」
「聞けば分かる」
「読めば分かる」
と、
「何も見ずに説明できる」
「自分で問題を解ける」
は違います。
学習方法の研究では、再読のように負担が少なく、滑らかに進む学習を、生徒が効果的だと感じやすい一方、想起や分散のように努力や間違いを伴う方法は、効果を実感しにくいことが指摘されています。
勉強中に少し苦しく感じることが、必ずしも悪いわけではありません。
思い出そうとして、すぐに出てこない。
問題を解いて、間違える。
説明しようとして、言葉に詰まる。
その経験によって、自分が分かっていない部分が見えます。
ただし、難しすぎて全く手が出ない状態を長く続ける必要はありません。
少し考える。
ヒントを見る。
学び直す。
もう一度挑戦する。
できる可能性のある難しさに調整します。

ノートをきれいにまとめる目的

ノートを丁寧に書くことには意味があります。
後から読み返しやすくなります。
考えた過程を残せます。
重要な部分を整理できます。
自分の言葉や図で表すことで、理解が深まる場合もあります。
しかし、きれいなノートを作ること自体が、学習の目的になってはいけません。
教科書をそのまま写す。
教師の板書を色分けして再現する。
見出しを美しく飾る。
長い時間をかけて清書する。
その間、内容についてほとんど考えていないことがあります。
ノートの価値は、見た目だけでは決まりません。
後から学習に使えるか。
考えたことが残っているか。
間違いと修正が分かるか。
自分の理解を確かめられるか。
次の学習につながるか。
この点から考えます。

まとめノートが有効になる条件

以前、私は学期に一度、教科書の範囲を見開き二ページへまとめる「まとめノート」を作らせていました。
情報を選び、自分なりに構成し、表現する活動には価値があります。
しかし、教科書を短く写し直しただけでは、学習の定着に十分つながらない場合があります。
まとめノートを行うのであれば、次のような条件を入れたいと思います。
重要だと思う内容を自分で選ぶ。
なぜ重要なのかを書く。
複数の内容の関係を矢印や言葉で示す。
自分で疑問をつくる。
教科書を閉じた後に、覚えていることを別の紙へ書く。
作成後に、そのノートを使わず問題へ答える。
つまり、まとめる作業だけで終わらせず、想起や説明へつなげます。
まとめノートは作品ではありません。
自分の理解を整理し、確かめるための道具です。

優秀なノートを見せるとき

上級生の優れたノートを、下級生へ見せることがあります。
具体的な見本があることで、
どのように整理すればよいか。
どの程度書けばよいか。
間違いをどのように直せばよいか。
が分かります。
ただし、一冊の美しいノートだけを「正解」として見せると、同じように書くことが苦手な生徒は、自分にはできないと感じる可能性があります。
字の大きさ。
色の使い方。
情報の配置。
書く量。
学びやすい形は、人によって異なります。
見本を示す場合は、複数のノートを示します。
文章を中心に整理しているノート。
図を使っているノート。
間違いと修正が分かるノート。
余白に疑問を書いているノート。
必要最低限の内容を簡潔に整理しているノート。
何が優れているのかを、見た目ではなく機能で説明します。
掲載や提示をする場合は、本人の許可を得て、氏名などが分からないように扱います。

デジタルノートと紙のノート

現在は、学習用端末へ入力したり、写真や資料を保存したりすることもできます。
紙かデジタルかを、単純に優劣で決める必要はありません。
紙は、すぐに書けます。
自由に図や矢印を加えられます。
ページ全体を見渡しやすい場合があります。
デジタルは、修正や並べ替えが容易です。
資料や動画へつなげられます。
音声や写真など、複数の方法で記録できます。
重要なのは、どちらを使ったかではなく、どのように考えたかです。
コピーして貼り付けただけでは、紙に写しただけの場合と同じです。
自分で選ぶ。
関係づける。
説明する。
思い出す。
修正する。
その学習行動が必要です。

学習計画表を作れば勉強できるわけではない

中学生に学習計画表を書かせることがあります。
テスト前。
夏休み。
冬休み。
春休み。
計画を立てることには意味があります。
やるべきことを見えるようにできます。
期限から逆算できます。
学習の偏りに気づけます。
しかし、計画表を完成させたことと、学習できることは同じではありません。
色を塗る。
細かな予定を書く。
毎日の学習時間を決める。
そこに時間をかけすぎ、肝心の勉強が始まらないことがあります。
また、生徒は、自分が一問に何分かかるかを十分に理解していません。
一日にできる量を多く見積もります。
学校行事、部活動、家庭の予定、疲労などもあります。
計画どおりに進まないことは、当然あります。
計画の目的は、未来を完全に予測することではありません。
行動を始めやすくし、途中で修正することです。

計画は「勉強する」まで具体化する

「数学を頑張る」
「英語を復習する」
という計画では、何を始めればよいか分かりません。
行動できる大きさまで、具体化します。
数学の問題集12ページの例題を三問解く。
英単語20個を、見ずに答える。
理科の教科書45ページを読み、三つの要点を書く。
社会の間違えた問題だけを解き直す。
国語の漢字を十問確認する。
何を。
どこまで。
どの方法で。
を決めます。
さらに、
夕食後に。
自分の机で。
最初の十五分だけ。
と、始める時間や場所を決めると、行動へ移しやすくなります。
「二時間勉強する」
よりも、
「最初に何をするか」
を決めることが大切です。

計画を立てる力にも差がある

全員へ同じ複雑な計画表を配っても、使いこなせるとは限りません。
一週間全体を見渡し、教科のバランスを考え、必要時間を予測できる生徒がいます。
一方で、今日何をすればよいかを一つ決めるところから支援が必要な生徒もいます。
計画の得意な生徒には、目標、学習内容、予想時間、結果、修正まで書ける表を用意できます。
計画が苦手な生徒には、
今日取り組むものを一つ選ぶ。
終わったら印を付ける。
次にすることを決める。
という簡単な形から始めます。
文部科学省が示す個別最適な学びでも、児童生徒が自分の特徴や、どのような学習方法が効果的かを理解し、自分に合った学習の進め方を考えられるよう、教師が支援することが重視されています。
全員に同じ計画表を使わせることよりも、その生徒が実際に使える形を考えることが必要です。

選択させるだけで終わらない

複数の計画表を準備し、生徒に選ばせることには意味があります。
自分で選ぶ経験になります。
自分に必要な支援の程度を考える機会にもなります。
しかし、選ばせれば自動的に自己調整できるようになるわけではありません。
複雑な表を選んだが、記入できない。
簡単な表を選んだが、本人にはもう少し詳細な計画が必要だった。
友達と同じものを選んだ。
見た目だけで選んだ。
そのようなことがあります。
選択した後に、
なぜ、この表を選んだのか。
実際に使えたか。
どの項目が役立ったか。
次は同じ表を使うか。
を振り返ります。
文部科学省が2025年に紹介した中学校の実践事例でも、生徒が課題レベルを選ぶだけでなく、学習前・学習中・学習後を通して、教師が学習状況を見取り、必要な助言を行い、振り返りを蓄積する取組が示されています。
自己決定と、教師の支援は対立しません。
自分で学べるようにするために、必要な支援を行います。

計画どおりにできなかったとき

計画表に予定を書いたのに、実行できなかった。
そのとき、
「計画を守れませんでした」
「次は頑張ります」
だけで終わることがあります。
大切なのは、意思の弱さだけを原因にしないことです。
予定が多すぎた。
一つの課題にかかる時間を短く見積もった。
難しくて一人では進められなかった。
始める時刻が曖昧だった。
スマートフォンを使い始めた。
疲れていた。
家庭の予定が変わった。
原因によって、次の対策は異なります。
量を減らす。
問題を小さく分ける。
質問できる場所で取り組む。
開始時刻ではなく、夕食後などの行動を合図にする。
端末を別の場所へ置く。
休む日を最初から計画へ入れる。
計画は、守れなかった自分を責めるためのものではありません。
自分の学び方を知り、次の計画を現実的にするための資料です。

振り返りを感想で終わらせない

学習後に、
「頑張りました」
「次はもっと勉強したいです」
と書くことがあります。
気持ちを言葉にすることも大切です。
しかし、次の学習へつなげるためには、具体的な振り返りが必要です。
何をできるようになったか。
何も見ずに答えられることは何か。
まだ答えられないことは何か。
どの方法が役立ったか。
どこで時間がかかったか。
次に最初に取り組むことは何か。
このような問いを使います。
2026年の文部科学省の学習評価に関する検討資料でも、評価を評定の作成だけで捉えず、児童生徒が自分の学びを振り返り、次の学習に生かすことや、教師の指導改善へつなげることが重視されています。
同資料は次期学習指導要領に向けた検討段階のものですが、学習の成果を生徒自身がまとめ、次の学習へつなぐ方向が示されています。

勉強時間の見える化を目的にしない

勉強した時間を、一コマずつ塗りつぶすポスターを使う方法があります。
進んだ量が見えるため、達成感を得られる生徒がいます。
学習を始めるきっかけになることもあります。
しかし、塗りつぶした数を、学習の成果そのものとして扱わないことです。
一時間机に向かった。
だから十分に学んだ。
百コマ塗った。
だから高く評価される。
とは限りません。
時間を記録する場合は、
その時間に何を行ったか。
何を答えられるようになったか。
どこを学び直す必要があるか。
と組み合わせます。
また、教室に掲示して比較すると、家庭環境や利用できる時間の違いが見える形になる可能性があります。
部活動、家事、介護、通院、学習環境など、生徒の状況は異なります。
学習時間を競わせるよりも、本人が自分の学習を把握するために使う方がよいと思います。

教師は勉強法を明示的に教える

「自分に合った勉強法を見つけなさい」
と言われても、生徒は、どのような方法があるのか知りません。
学び方も、教える必要があります。
教科書を閉じて思い出す。
間違いを分類する。
時間を空けて再度取り組む。
複数の種類の問題を混ぜる。
説明できないところを見つける。
計画を小さな行動に分ける。
結果を見て計画を修正する。
これらを、授業の中で実際に経験させます。
教師自身が、
「今日の最初の三分は、前回の内容を何も見ずに思い出します」
「今から答えを確認します。間違いは失敗ではなく、次に学ぶ場所です」
「今週だけで終わらず、二週間後にもこの問題を入れます」
と、学習方法の意味を説明します。
生徒が方法を使えなかったときに、
「やる気がない」
と決めるのではなく、
方法を理解していたか。
一人で実行できる大きさだったか。
必要な教材があったか。
振り返る機会があったか。
を確認します。

授業の中に分散と想起を入れる

家庭学習の方法を教えるだけでは、生徒によって実行できる条件が異なります。
だから、授業の中にも効果的な学習方法を組み込みます。
授業開始時に、前時の問いへ答える。
新しい単元でも、以前の内容を一問入れる。
説明後に、教科書を閉じて要点を書く。
授業の最後に、今日の内容を一文で説明する。
小テスト後に、答え合わせと学び直しを行う。
単元末に、過去の単元を含む問題を出す。
これらは、特別な教材がなくてもできます。
毎回長い確認テストをする必要はありません。
二問。
三分。
一つの説明。
短い想起を、継続して入れます。

中学生が使いやすい学習の基本形

中学生には、次のような基本形を伝えることができます。
最初に、内容を理解する。
次に、教科書やノートを閉じる。
覚えていることを、書く、話す、解く。
答えを確認する。
間違えた部分だけを学び直す。
少し時間を空け、もう一度何も見ずに答える。
別の問題や文章の中で使う。
最後に、次に学び直す内容を決める。
これを一度で完璧に行う必要はありません。
一日に長時間行う必要もありません。
短くても、何度も戻ることが大切です。

一週間の学習例

たとえば、月曜日に新しい内容を学んだとします。
月曜日は、内容を理解し、最後に三つの要点を何も見ずに書きます。
火曜日は、前日の要点を一分で思い出し、答えを確認します。
木曜日は、関連する問題を数問解きます。
日曜日は、一週間分の内容を混ぜて確認します。
翌週は、以前の内容を含む小テストや問題へ取り組みます。
これは一例です。
全ての内容を同じ予定にする必要はありません。
すぐに忘れていた内容は、早めに戻ります。
簡単に答えられた内容は、少し間隔を空けます。
自分の結果に合わせて、次の学習時期を変えます。

学習を定着させる五つの問い

生徒が自分の学習を振り返るとき、次の五つを使うことができます。
一つ目は、
「何も見ずに答えられるか」
です。
見れば分かる状態と、自分で取り出せる状態を分けます。
二つ目は、
「間違えた理由は何か」
です。
覚えていなかったのか。
意味を理解していなかったのか。
問題を読み違えたのか。
方法を選べなかったのか。
を考えます。
三つ目は、
「いつ、もう一度取り組むか」
です。
一度の学習で終わらせず、次の機会を決めます。
四つ目は、
「別の場面でも使えるか」
です。
言葉の暗記だけでなく、説明、比較、問題解決へ使います。
五つ目は、
「次に最初に何をするか」
です。
曖昧な決意ではなく、次の行動を一つ決めます。

勉強法を一つに決めない

分散学習や想起練習には、多くの研究があります。
それでも、一つの方法だけで、全ての学習ができるわけではありません。
初めて学ぶ内容は、丁寧な説明が必要です。
複雑な問題には、考える時間が必要です。
実験や実習によって理解する内容もあります。
友達との対話で見方が広がることもあります。
資料を調べ、自分の考えを表現する学習も必要です。
想起練習は、記憶した知識を取り出すために有効です。
しかし、それだけで深い理解や創造的な思考が自動的に生まれるわけではありません。
基礎的な知識を定着させ、その知識を使って考える。
個人で思い出し、他者と考えを比べる。
教師から学び、自分でも方法を選ぶ。
これらを組み合わせます。

学習計画表より大切なこと

立派な計画表を完成させることが目的ではありません。
美しいノートを作ることが目的でもありません。
何時間勉強したかを競うことでもありません。
大切なのは、
自分が今、何を分かっているか。
何をまだ思い出せないか。
どの方法で学ぶか。
いつ、もう一度戻るか。
結果を見て、次の方法をどう変えるか。
を、生徒自身が少しずつ考えられるようになることです。
教師が全ての計画を立てれば、その場では学習が進むかもしれません。
しかし、教師がいなければ学べない状態が続きます。
反対に、最初から全てを生徒に任せれば、何をすればよいか分からない生徒が取り残されます。
最初は、教師が方法を示す。
一緒に計画する。
短い学習を経験する。
結果を振り返る。
少しずつ選ぶ範囲を広げる。
その過程が必要です。
学習が定着しない生徒へ、
「もっと繰り返しなさい」
「もっと長く勉強しなさい」
と伝えるだけでは不十分です。
何を繰り返すのか。
どのように思い出すのか。
いつ学び直すのか。
どこで間違えたのか。
次に何をするのか。
そこまで具体的に伝えます。
勉強ができる生徒とは、最初から何でも覚えられる生徒ではありません。
自分が分かっていないことを確かめ、必要な方法を選び、学び直すことのできる生徒です。
その力を育てることが、これからの学習指導には必要なのだと思います。

参考資料

文部科学省「『個別最適な学び』と『協働的な学び』の一体的な充実」
文部科学省「育成を目指す資質・能力と個別最適な学び・協働的な学び」
文部科学省・教育課程部会「学びの自己調整等に係る位置づけ」令和7年12月15日
文部科学省・総則・評価特別部会「学習評価の在り方について」令和8年5月14日
Murre, J. M. J. & Dros, J. “Replication and Analysis of Ebbinghaus’ Forgetting Curve,” PLOS ONE, 2015
Dunlosky, J. et al. “Improving Students’ Learning With Effective Learning Techniques,” Psychological Science in the Public Interest, 2013
Carpenter, S. K., Pan, S. C. & Butler, A. C. “The Science of Effective Learning with Spacing and Retrieval Practice,” Nature Reviews Psychology, 2022

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