中学生の学習を定着させる方法|分散学習・想起練習・ノート・学習計画

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「勉強したのに、覚えていません」
「何度も教科書を読んだのに、テストでは答えられませんでした」
「ノートはきれいにまとめたのに、点数につながりません」
「計画表は作ったけれど、ほとんど計画どおりにできませんでした」
中学生から、よく聞く言葉です。
勉強した時間が短かったとは限りません。
本人なりに、長い時間をかけています。
教科書を何度も読みます。
重要なところへ線を引きます。
ノートを丁寧にまとめます。
問題集を繰り返します。
学習計画表へ予定を書き込みます。
それでも、学習内容が十分に定着しないことがあります。
これは、本人のやる気だけの問題ではありません。
「勉強しているように見える行動」と「学習した内容を思い出し、使えるようにする行動」は、必ずしも同じではないからです。
教科書を読めば、内容に見覚えができます。
ノートを見れば、分かったような気持ちになります。
きれいに整理すれば、「勉強した」という実感も得られます。
しかし、教科書やノートを閉じたときに、その内容を自分で思い出せるか。
初めて見る問題でも使えるか。
自分の言葉で説明できるか。
そこまで確認する必要があります。
学習方法についての研究では、練習テストなどによって記憶から情報を取り出すことや、学習機会を時間的に分散させることは、比較的幅広い条件で有効性が確認されています。一方、再読や線引きなどは、それだけで高い学習効果が安定して得られるとは限りません。
学習を定着させるために大切なのは、
理解する→思い出す→確かめる→学び直す→時間を空けてもう一度取り出す
という流れです。
この記事では、中学生にどのような勉強法を伝えればよいのか、教師の立場から具体的に考えます。

勉強時間と学習の定着は同じではない

生徒に、
「昨日は何時間勉強しましたか」
と聞くことがあります。
学習時間は、生活や学習習慣を知る一つの情報になります。
しかし、3時間勉強したから、3時間分の内容が定着したとは限りません。
教科書を眺めていた1時間。
ノートを書き写していた1時間。
問題を解いていた1時間。
間違いを直していた1時間。
何も見ずに思い出していた1時間。
同じ1時間でも、行っている学習は違います。
ですから、
「何時間勉強したか」
だけではなく、
「その時間に何をしたか」
を見ます。
「英語を1時間勉強した」
ではなく、
「英単語20個を何も見ずに答え、間違えた6個を学び直した」
とします。
「数学を1時間した」
ではなく、
「一次関数の問題を5問解き、間違えた2問の原因を確認して解き直した」
とします。
学習時間を伸ばすことより先に、学習行動を具体的にします。

「見る」だけの復習から「思い出す」復習へ

復習というと、
教科書をもう一度読む。
ノートを見直す。
重要なところへ線を引く。
という方法が思い浮かびます。
これらにも意味はあります。
忘れている内容を確認できます。
理解できなかった説明を読み直すこともできます。
しかし、見るだけの学習が続くと、
「見れば分かる」
状態にはなっても、
「何も見ずに答えられる」
状態になっていないことがあります。
そこで大切になるのが、想起練習です。
想起練習とは、学習した内容を記憶から取り出してみることです。
例えば、
・教科書を閉じて今日学んだことを三つ書く
・日本語を見て英単語を書く
・白紙に図を再現する
・問題を何も見ずに解く
・学習内容を誰かに説明する
・自分で問題をつくって後から答える
といった方法があります。
「もう一度見る」のではなく、
「いったん閉じて、自分の中から取り出す」
ことがポイントです。
RoedigerとKarpickeの研究では、学習した内容を再び読むだけの場合と比べ、記憶から取り出す練習を行った場合に、時間が経過した後の保持が高くなることが示されています。

想起練習を「テスト攻め」にしない

想起練習が有効だからといって、テストの回数を増やして、生徒を評価し続ければよいわけではありません。
想起練習は、
「できる生徒とできない生徒を分ける」
ためではなく、
「今、自分が何を思い出せないのかを知る」
ために使います。
例えば授業の最初に、
「前の時間に学んだことを、何も見ずに二つ書いてください」
とします。
書いた後に答えを確認します。
間違えても構いません。
思い出せなければ、
「あ、ここをもう一度勉強すればいいのですね」
と分かります。
点数化しなくても構いません。
成績に入れなくても構いません。
間違えることのできる、小さな学習の場
として使います。
そして、想起した後は必ず答えや解説を確認できるようにします。
思い出す。
確認する。
間違いを直す。
この一連の流れまでが学習です。

分からないまま何度もテストしない

想起練習には、もう一つ注意があります。
まだ理解していない内容を、何度も答えさせればよいわけではありません。
初めて学習する内容なら、
教師の説明を聞く。
教科書を読む。
具体例を見る。
一緒に問題を解く。
図や資料を見る。
意味や関係を考える。
まず、理解するための学習が必要です。
その後で、教材を閉じて思い出します。
思い出せなければ、もう一度見ます。
そして、また閉じます。
学ぶ→思い出す→確認する→学び直す
を往復します。
「理解」と「記憶」は、どちらか一方を選ぶものではありません。
理解しているから覚えやすくなることがあります。
基礎的な知識があるからこそ、その知識を使って考えることもできます。

一度に詰め込まず、時間を空ける

テスト前日に同じ内容を何度も繰り返すと、その場では答えられるようになることがあります。
しかし、少し先まで覚えておきたいのであれば、一回の長い学習だけで終わらせず、時間を空けて再び学ぶことが重要です。
これを分散学習といいます。
例えば、月曜日に英単語を覚えます。
その日のうちに10回続けて読むだけで終わらせず、
火曜日にもう一度答える。
木曜日にもう一度答える。
翌週に文章の中で使う。
というように、学習機会を分けます。
分散学習の効果は、多数の研究を統合したレビューでも確認されています。
つまり、
「一度にたくさん」より「何度か戻る」
という考え方です。

復習する間隔に万能の正解はない

「復習は1日後、1週間後、1か月後に行えばよい」
という説明を見かけます。
分かりやすい目安ではあります。
しかし、全員に共通する絶対的な復習日程があるわけではありません。
明日の小テストへ向けて覚えるのか。
1か月後の定期テストまで残したいのか。
半年後の入試でも使いたいのか。
目的によって変わります。
難しく、まだ十分理解できていない内容なら、早めに戻る必要があります。
何度も使い、すぐ答えられる内容なら、少し間隔を空けることができます。
大切なのは、
「一度学習したから終了」にしないこと
です。
学校でも、
授業の翌日。
一週間後。
単元終了後。
次の単元。
定期テスト前。
と、以前の内容が再登場する仕組みをつくることができます。

エビングハウスの忘却曲線を単純化しない

復習の重要性を説明するとき、「エビングハウスの忘却曲線」がよく紹介されます。
ただし、扱いには注意が必要です。
エビングハウスの実験を、
「人間は20分後に○%忘れる」
「1日後には○%忘れる」
というように、そのまま中学生の学校学習へ当てはめることはできません。
エビングハウスが用いた課題や測定方法は、現代の中学校で教科書を理解したり、数学の問題を解いたりする学習とは条件が異なるためです。
忘れ方は、
最初にどの程度理解していたか。
何を学んだか。
どのように学んだか。
既有知識と結び付いているか。
その後に使ったか。
などによっても変わります。
忘却曲線から「○時間後に○%忘れる」という数字だけを覚えるのではありません。
一度学習しただけでは記憶は安定しにくく、時間を空けて再び学習することが大切
という程度に捉えるのが適切です。

「ラッセルの復習曲線」を根拠として使わない

インターネット上では、「ラッセルの復習曲線」と呼ばれる図を見かけることがあります。
復習するたびに忘却曲線が緩やかになっていく形の図です。
しかし、この名称や図について、教育現場で根拠として使える明確な学術的原典を確認することは困難です。
「繰り返し復習すると保持がよくなる」という考え自体は、分散学習や想起練習の研究によって説明できます。
ですから、原典が明確でない図を使わなくても、
分散学習
想起練習
という、研究蓄積のある考え方を使えば十分です。

「分かった感じ」に注意する

学習では、
分かった気がすること
が起こります。
教科書を何度も読むと、文章が読みやすくなります。
先生の説明を何度も聞くと、よく分かったように感じます。
問題集の答えを何度も見ると、
「これは知っています」
と思います。
しかし、
「見れば分かる」

「何も見ずにできる」
は違います。
だから、
教科書を閉じる。
答えを隠す。
何も見ずに説明する。
自力で問題を解く。
という確認を入れます。
少し考えないと思い出せない。
問題を解いたら間違えた。
説明しようとすると言葉に詰まった。
これは、悪いことではありません。
自分がまだ十分に分かっていないところを発見できた
ということです。
ただし、難しすぎて全く手が出ない状態を長く続ける必要はありません。
少し考える。
分からなければヒントを見る。
学び直す。
もう一度挑戦する。
その繰り返しにします。

同じ問題を繰り返す意味

「同じ問題を何度も解いても、答えを覚えるだけではないですか」
という疑問があります。
同じ問題を繰り返すこと自体が悪いわけではありません。
特に、まだ基本的な手順を身に付けていない段階では、
一度解く。
間違いを確認する。
もう一度解く。
翌日また解く。
という練習が役立ちます。
ただし、
同じ問題を同じ順番で答えられるようになることを、学習のゴールにはしません。
答えの並びを覚えただけかもしれないからです。
基本ができるようになったら、
順番を変える。
数字を変える。
問われ方を変える。
別の単元の問題と混ぜる。
理由を説明する。
初めて見る問題で使う。
という段階へ進みます。
最初は同じ問題で定着させる。
その後は、少し条件を変えて使えるか確かめる。
この二つを組み合わせます。

問題集を増やしすぎない

勉強がうまくいかなくなると、
「もっとよい問題集があるのではないか」
と考えます。
新しい問題集を買うこと自体が悪いわけではありません。
しかし、
学校の問題集。
塾の問題集。
市販の問題集。
通信教材。
プリント。
と教材が増えすぎると、どれも途中になることがあります。
特に勉強に苦手意識のある生徒には、
まず、扱う教材を絞る
ことが有効です。
一冊の教材について、
できる問題。
少し考えればできる問題。
説明を見ても分からない問題。
に分けます。
間違った問題へ戻ります。
それでも余裕があれば、別の教材へ進みます。
「何冊やったか」より、
できなかった問題が、できるようになったか
を見ます。

苦手な生徒ほど「小さく始める」

勉強が苦手な生徒に、
「毎朝1時間勉強しよう」
「毎日新聞を読もう」
「問題集を3周しよう」
「休み時間も勉強しよう」
といった大きな方法を提示しても、実行できないことがあります。
できなければ、
「やっぱり自分は勉強ができない」
という感覚だけが残ることもあります。
まず、
英単語を5個確認する。
数学の例題を1問解く。
社会の用語を3個答える。
教科書を1ページ読んで、一つ説明する。
と、小さく始めます。
できたら、少し増やします。
勉強法は、理論上よいだけでは不十分です。本人が実際に始められる大きさである必要があります。

覚えるのが苦手な生徒への支援

何度書いても覚えられない生徒がいます。
一つの言葉を書くことに時間がかかり、覚える前に疲れてしまう生徒もいます。
そのような場合、「もっと書きなさい」だけでは解決しないことがあります。
例えば、
教師が問題を読む。
生徒が口頭で答える。
答えを確認する。
再び口頭で答える。
慣れてきたら書く。
というように、最初の負担を下げる方法があります。
カードを使う。
選択肢から選ぶ。
図を使う。
一問ずつ取り組む。
音読する。
人へ説明する。
いろいろな方法を試せます。
ただし、
「この生徒は聴覚型だから、聞いて覚えればよい」
「この生徒は視覚型だから、図で覚えればよい」
と固定的に分類することには注意が必要です。
学習者に好みがあることと、「その好みに合わせて教えれば学習成果が高くなる」という学習スタイル理論とは別です。学習スタイルに合わせた教授法の有効性を支持する十分な証拠は確認されていません。
大切なのは、
一つのタイプに決めることではなく、その生徒が取り組みやすく、実際に覚えられる方法を試し、結果を確かめること
です。

暗記カードは「見る道具」ではなく「答える道具」

英単語、漢字、社会や理科の用語などでは、暗記カードも使えます。
紙の単語カードでも、メモカードでも、学校で認められたデジタル教材でも構いません。
重要なのは見た目ではなく、使い方です。
表に問いを書く。
裏に答えを書く。
答えを見る前に、自分で答える。
答えを確認する。
間違えたカードをもう一度行う。
少し時間を空けて再び答える。
これなら、カードそのものが想起練習になります。
また、いつも同じ順番でカードを見ると、前後関係を手掛かりに覚えることがあります。
時々順番を変えることも有効です。
英単語なら、
英語→日本語
だけではなく、
日本語→英語
でも確認できます。
カードを作ることに時間をかけすぎず、カードを使って何も見ずに答える時間を増やすことが大切です。

ノートは「作品」ではなく学習の道具

ノートを丁寧に書くことには意味があります。
後から読み返せます。
考えた過程を残せます。
図や表で関係を整理できます。
間違いを記録できます。
しかし、ノートを美しく仕上げることそのものが学習の目的になってはいけません。
板書を完全に写す。
色を何色も使う。
長い時間をかけて清書する。
教科書の文章をそのまままとめ直す。
それによって、考える時間や問題を解く時間がなくなれば本末転倒です。
ノートを見るときは、
字が美しいか。
色分けされているか。
ではなく、
後から学習に使えるか
考えた跡が残っているか
間違いと修正が分かるか
自分の理解を確かめられるか
を見ます。

書く速さを学力と結び付けない

ノートを書くのが速い生徒もいれば、ゆっくり書く生徒もいます。
ここから、
「書くのが速い生徒は思考も速い」
と単純に結び付けるべきではありません。
書字には個人差があります。
丁寧に書く必要がある場面もあります。
書くこと自体に大きな負担を感じる生徒もいます。
大切なのは、
ノートを取る作業が、授業を理解する妨げになっていないか
を見ることです。
全部を書き写す必要がないなら、板書量を調整します。
資料を配付します。
写真やデジタル教材を学校のルールに沿って活用します。
重要な部分だけを書かせます。
ノートを取ることと、授業を理解することのバランスを考えます。

紙のノートとデジタルノートを単純に優劣で分けない

「手書きの方が覚えられる」
「デジタルの方が優れている」
と一律に決めることにも注意が必要です。
手書きには、自由に図や矢印を書ける利点があります。
デジタルには、修正、検索、並べ替え、資料との連携などの利点があります。
手書きとパソコンによるノートを比較した研究では手書き優位を示した研究もありますが、その後の直接追試では一貫した差が確認されず、「どちらが学習に優れる」と一般化するには慎重さが必要です。
大切なのは媒体より、
何を選んだか。
どう整理したか。
自分の言葉で考えたか。
後から使ったか。
思い出す練習につなげたか。
です。

まとめノートは作った後が重要

教科書の内容をまとめることにも意味があります。
何が重要か選ぶ。
内容同士を関連付ける。
図にする。
自分の言葉で説明する。
こうした活動が入れば、理解につながります。
しかし、
教科書を短く写しただけのまとめノート
になれば、多くの時間を使っても定着につながりにくいことがあります。
まとめた後に、
ノートを閉じる。
何を覚えているか白紙に書く。
自分で問題をつくる。
説明する。
問題を解く。
とします。
まとめノートは完成させて終わりではありません。
次の学習に使う道具です。

学習計画表を作れば勉強できるわけではない

定期テスト。
夏休み。
冬休み。
春休み。
中学生に学習計画表を書かせる機会は多くあります。
計画を立てることには意味があります。
やるべきことを見えるようにできます。
期限から逆算できます。
教科の偏りに気付くこともできます。
しかし、立派な計画表を完成させたからといって、学習できるとは限りません。
計画を細かく書きすぎる。
色をきれいに塗る。
一日の予定をぎっしり埋める。
それだけで疲れ、肝心の学習が始まらないことがあります。
計画の目的は、
予定どおり完璧に生活することではありません。
行動を始めやすくして、途中で修正することです。
自己調整学習は、計画だけでなく、実行中のモニタリングや、その後の振り返り・修正まで含むものとして研究されています。

計画は「何をするか」まで具体化する

「数学を勉強する」
「英語を頑張る」
では、始めるときにまた考えなければなりません。
そこで、
「数学のワーク12ページの例題を3問解く」
「英単語20個を、答えを隠して確認する」
「社会の昨日間違えた問題を5問解き直す」
まで具体化します。
何を。
どこまで。
どの方法で。
を決めます。
さらに、
夕食が終わったら。
入浴する前に。
帰宅して着替えた後に。
など、始めるきっかけを決めることもできます。
「2時間勉強する」
より、
「最初の10分で何をするか」
が決まっている方が、始めやすい生徒もいます。

計画を立てる力にも差がある

一週間全体を見渡して計画できる生徒がいます。
一方、
「今日、最初に何をするか」
から一緒に考える必要のある生徒もいます。
全員に同じ複雑な計画表を配って、
「自分で計画しなさい」
だけでは十分ではありません。
計画が苦手なら、
今日やることを一つ選ぶ。
終わったら印を付ける。
次に一つ決める。
から始めても構いません。
できるようになれば、
一日。
三日。
一週間。
と少しずつ見通す範囲を広げます。
文部科学省の「個別最適な学び」でも、児童生徒が自己調整しながら学習を進められるようにするため、学習状況や特性等に応じた教師の支援が重要とされています。

夏休み・冬休み・春休みこそ「全部やる」をやめる

長期休業になると、
「苦手教科を全部復習しよう」
と考えます。
しかし、苦手な教科ほど範囲が広く見えます。
中学1年生の数学を全部。
英語を最初から全部。
理科を全部。
では、始める前から負担が大きくなります。
まず、
どこで止まっているかを探します。
例えば数学なら、
正負の数。
文字式。
方程式。
比例・反比例。
のように分けます。
その中から、
今後の学習にも影響する内容を一つ選ぶ
ところから始めます。
教材も、
説明が短い。
例題がある。
基本問題がある。
自分で答え合わせできる。
解説を読めば学び直せる。
といったものが取り組みやすいです。
何冊も買う必要はありません。
小さな単位で、
理解する。
基本問題を解く。
間違いを確認する。
次の日にもう一度解く。
と進めます。

中学3年生になってから一気に取り返す前提にしない

「中3になったら勉強します」
という生徒がいます。
もちろん、中学3年生から学習習慣が変わり、大きく力を伸ばす生徒もいます。
しかし、それを前提にはできません。
数学や英語をはじめ、中学校の学習には、前に学んだ知識や技能を使って次へ進む内容が多くあります。
中学1年生、中学2年生の間に大切なのは、
「ずっと高い点数を取ること」
ではありません。
分からないところを放置しない。
定期的に学び直す。
間違った問題へ戻る。
困ったときに質問する。
学習方法を少しずつ身に付ける。
ことです。
中学3年生になって急に「勉強の量」だけを増やすより、
1、2年生のうちから「学び直す方法」を持っておく
ことが、後の学習を支えます。

点数が下がったときに「スランプ」と決めつけない

一生懸命勉強したのに、テストの点数が下がることがあります。
そのとき、
「スランプです」
と感じる生徒もいます。
しかし、一回のテストだけで判断する必要はありません。
テストの難易度。
出題された単元。
ケアレスミス。
体調。
学習方法。
学習量。
さまざまな要因があります。
まず、
どの問題を間違えたか。
なぜ間違えたか。
前回と何が違ったか。
を確認します。
努力しているのに結果が出ないと、不安になって、
新しい問題集を買う。
勉強法を全部変える。
急に学習時間を増やす。
ことがあります。
しかし、必要なのは全面変更ではなく、
原因に対応した小さな修正
かもしれません。
覚えていなかったなら想起を増やす。
理解できていなかったなら学び直す。
時間不足なら計画を変える。
問題形式に慣れていなかったなら、類題へ取り組む。
点数の上下に振り回されるのではなく、答案を次の学習の情報として使います。

勉強法を一つに固定しない

ここまで、分散学習、想起練習、問題演習などを紹介してきました。
しかし、
「想起練習だけすればよい」
という意味ではありません。
初めて学ぶ内容には説明が必要です。
複雑な問題には、じっくり考える時間が必要です。
実験や観察が必要な内容もあります。
人と話すことで理解が深まることもあります。
図にした方が分かりやすい内容もあります。
実際に操作することが必要な学習もあります。
重要なのは、
学習内容と目的に合わせて方法を選ぶこと
です。
覚えたい。
理解したい。
説明できるようになりたい。
問題を解けるようになりたい。
考えを深めたい。
目的によって方法は変わります。

教師は勉強法そのものを教える

「自分に合う勉強法を見つけなさい」
とだけ言っても、生徒は方法を知らないことがあります。
ですから、授業の中で勉強法そのものを教えます。
例えば、
「今から教科書を閉じます。今日の重要なことを三つ思い出してください」
「答え合わせの後、間違えた問題だけ印を付けてください」
「この問題は来週もう一度出します」
「まず5問だけやって、できたら次へ進みます」
「計画どおりにできなかった理由を一つ探してください」
と、方法を経験させます。
生徒が使えなかったときも、
「やる気がありません」
だけで終わらせません。
やり方が分かっていたか。
一人でできる大きさだったか。
教材が難しすぎなかったか。
計画が複雑すぎなかったか。
学び直す機会があったか。
を確認します。

授業の中に分散と想起を入れる

効果的な学習方法を家庭だけに任せないことも大切です。
家庭によって、
使える時間。
学習環境。
支援してくれる人。
端末環境。
は違います。
だから、授業そのものにも、
思い出す機会と、時間を空けて戻る機会
を入れます。
例えば、
授業開始時に前時の内容を二問。
説明後に教科書を閉じて一文。
授業の最後に今日の重要語句を三つ。
一週間後に以前の問題を一問。
単元末に過去の単元を混ぜる。
などです。
特別な教材は必要ありません。
毎回長い確認テストを行う必要もありません。
二問、三分、一つの説明。
短い想起を積み重ねます。

中学生が使いやすい学習の基本形

学習方法に迷う生徒には、まず次の形を伝えると分かりやすいです。

1 理解する

教科書を読む。
説明を聞く。
例題を見る。
分からなければ質問します。

2 閉じる

教科書、ノート、答えをいったん見えなくします。

3 思い出す

書く。
話す。
説明する。
問題を解く。

4 確認する

正解と比べます。

5 間違いだけ学び直す

全部を最初から繰り返す必要はありません。

6 時間を空けてもう一度答える

次の日や数日後など、再び取り組みます。

7 少し違う場面で使う

数字を変えます。
順番を変えます。
別の問題に使います。
説明します。
この流れを、何度か繰り返します。

一週間の学習例

例えば、月曜日に新しい内容を学んだとします。

月曜日

内容を理解した後、最後に何も見ずに三つの要点を書きます。

火曜日

昨日の内容を短時間で思い出します。
答えを確認し、間違えたところだけ学び直します。

木曜日

関連する問題を数問解きます。

日曜日

一週間で学習した内容を混ぜて確認します。

翌週

別の単元の学習中にも、以前の内容を一問入れます。
これはあくまで一例です。
すぐ忘れていた内容は早めに戻ります。
簡単に答えられた内容は、少し間隔を空けます。
自分の結果に合わせて、次の学習を変えます。

学習を定着させる五つの問い

生徒が自分の学習を振り返るとき、次の五つを使えます。

1 何も見ずに答えられるか

「見れば分かる」と「自分で答えられる」を分けます。

2 間違えた理由は何か

覚えていなかった。
意味を理解していなかった。
問題を読み違えた。
解き方を選べなかった。
計算で間違えた。
原因を分けます。

3 いつ、もう一度取り組むか

一回で終わらせません。

4 別の場面でも使えるか

同じ問題だけでなく、別の問題、説明、比較などで使います。

5 次に最初に何をするか

「次は頑張る」で終わらせず、具体的な行動を一つ決めます。

学習計画より大切な「自分で修正する力」

立派な計画表を作ることが目的ではありません。
美しいノートを作ることが目的でもありません。
長時間勉強することを競うことでもありません。
大切なのは、
自分は何が分かっているのか。
何をまだ思い出せないのか。
どの方法を使うのか。
いつもう一度戻るのか。
結果を見て何を変えるのか。
を少しずつ自分で考えられるようになることです。
文部科学省も「個別最適な学び」について、児童生徒が自己調整しながら学習を進められるようにすることの重要性を示しています。
最初から全部を本人に任せる必要はありません。
最初は教師が方法を示す。
一緒に行う。
小さな成功を経験する。
結果を振り返る。
次は少し自分で選ぶ。
その範囲を徐々に広げていきます。
学習が定着しない生徒に、
「もっと勉強しなさい」
「もっと繰り返しなさい」
だけを伝えても、具体的な行動にはつながりにくいです。
何を。
どのように。
どこまで。
いつもう一度。
間違ったらどうする。
そこまで伝えます。
勉強ができるようになるということは、何でも一度で覚えられるようになることではありません。
分からないことに気付き、方法を選び、学び直し、もう一度挑戦できるようになることです。
その力を育てることも、教師の大切な仕事です。

参考資料

・文部科学省「『個別最適な学び』と『協働的な学び』の一体的な充実」 文部科学省資料
・文部科学省「育成を目指す資質・能力と個別最適な学び・協働的な学び」 文部科学省資料
・Dunlosky, J. et al. (2013), “Improving Students’ Learning With Effective Learning Techniques” Association for Psychological Science
・Roediger, H. L. & Karpicke, J. D. (2006), “Test-Enhanced Learning: Taking Memory Tests Improves Long-Term Retention” PubMed
・Cepeda, N. J. et al. (2006), “Distributed Practice in Verbal Recall Tasks: A Review and Quantitative Synthesis” PubMed
・Karpicke, J. D. & Blunt, J. R. (2011), “Retrieval Practice Produces More Learning than Elaborative Studying with Concept Mapping” PubMed
・Pashler, H. et al. (2008), “Learning Styles: Concepts and Evidence” PubMed
・Panadero, E. (2017), “A Review of Self-regulated Learning: Six Models and Four Directions for Research” PubMed
・Morehead, K., Dunlosky, J. & Rawson, K. A. (2019), “How Much Mightier Is the Pen than the Keyboard for Note-Taking?” ERIC

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