4月の入学式。
中学校1年生にとって、新しい学校生活の始まりです。
新しい友達。
新しい先生。
新しい校舎。
教科担任制。
部活動。
定期テスト。
楽しみにしている生徒もいれば、不安を感じている生徒もいます。
文部科学省の中学校学習指導要領解説では、中学校入学当初は、新しい集団、教科担任制、新しい教科、部活動などに期待を持ちやすい一方、新たな人間関係や未知の事柄への不安も抱きやすい時期であると整理されています。(文部科学省)
だからこそ、入学式当日に配る学年だより第1号には役割があります。
たくさんのことを教える必要はありません。
大切なのは、
「ここで安心して学校生活を始めてよい」
「分からないことや困ったことは相談してよい」
「これから少しずつ中学校生活を知っていけばよい」
というメッセージを、生徒と保護者に届けることです。
- 1.第1号は「中学校生活の説明書」にしすぎない
- 2.「期待でいっぱい」と決めつけない
- 3.「中学生なのだから」と急に自立を求めすぎない
- 4.最初に「相談してよい」と明確に伝える
- 5.学年の先生を「役職」だけで紹介しない
- 6.保護者には「協力してください」より先に学校の姿勢を伝える
- 7.家庭の形を一つに決めない
- 8.「中学校は小学校より厳しい」と脅さない
- 9.最初から学年の「理想像」を押し付けすぎない
- 10.提出物と予定は「見れば分かる」形にする
- 11.第1号に全部載せない
- 12.第1号は「この学年なら大丈夫そうだ」と感じてもらう一枚にする
- そのまま使える「入学式当日の学年だより」文例
- 学年だより第1号チェックリスト
- 参考資料
1.第1号は「中学校生活の説明書」にしすぎない
入学式当日は、多くの情報が一度に入ってきます。
学校生活のルール。
提出書類。
時間割。
持ち物。
行事予定。
部活動。
保健関係。
新入生にとっては、覚えるだけでも大変です。
学年だより第1号まで細かな説明で埋め尽くす必要はありません。
第一号で伝えたいことを絞ります。
・入学を歓迎していること
・新しい生活に不安があってよいこと
・困ったときには相談できること
・学年の教職員が一緒に支えていくこと
・直近の予定と必要な提出物
この程度を中心にします。
詳細なルールは、必要な時期に必要な方法で伝えればよいと思います。
2.「期待でいっぱい」と決めつけない
入学式では、
「希望に胸を膨らませて」
「期待に満ちて」
という表現をよく使います。
もちろん、そのような生徒もいます。
一方で、
友達ができるだろうか。
授業についていけるだろうか。
先輩は怖くないだろうか。
学校へ毎日通えるだろうか。
と不安を抱えている生徒もいます。
学校移行期の支援は、本人や保護者の不安を軽減し、新しい学校への適応を支える取組として研究上も重視されています。(J-STAGE)
そこで、
「楽しみにしていることも、不安に感じていることもあると思います」
くらいの表現にします。
どちらの気持ちがあってもよい
と伝えます。
3.「中学生なのだから」と急に自立を求めすぎない
小学校を卒業した翌月から、突然すべて自分でできるようになるわけではありません。
提出物。
教室移動。
時間割。
持ち物。
定期テスト。
部活動。
人間関係。
中学校特有の仕組みを、これから経験しながら覚えていきます。
文部科学省も入学当初について、生徒が十分な情報を得て、見通しを持って学校生活へ取り組めるようにすることを求めています。(文部科学省)
「もう中学生です。自分で何でもしなさい」
ではなく、
「少しずつ自分でできることを増やしていきましょう」
と伝える方がよいと思います。
4.最初に「相談してよい」と明確に伝える
新入生の中には、
「こんなことを先生に聞いてよいのかな」
と迷う生徒がいます。
そこで、第1号には明確に書きます。
分からないこと。
困っていること。
心配なこと。
人間関係のこと。
授業のこと。
学校生活のこと。
どんなことでも、まず相談してよい。
担任だけでなく、学年の教職員、養護教諭など、学校には複数の相談相手がいることも伝えられます。
中学校での学校適応には、友人関係だけでなく、教師との関係や学業など複数の側面が関係することが研究でも示されています。(J-STAGE)
「困ってから相談する」のではなく、「困ったら相談できる学校だ」と最初に知らせておくこと
が大切です。
5.学年の先生を「役職」だけで紹介しない
第1号には、学年教職員の紹介を載せることが多いと思います。
名前。
担当学級。
担当教科。
学年主任。
副担任。
これだけでも必要な情報ですが、一言メッセージがあると人柄が少し見えます。
例えば、
「皆さんと授業で一緒に考えることを楽しみにしています」
「困ったときには気軽に話しかけてください」
「サッカーと読書が好きです」
程度で十分です。
長い自己紹介は必要ありません。
新入生にとって、
「名前を知っている先生」を少しずつ増やす
ことも安心につながります。
6.保護者には「協力してください」より先に学校の姿勢を伝える
保護者向けの文章では、
「学校教育へのご理解とご協力をお願いします」
だけにならないようにします。
まず、
学校がどのように子どもを支えていくのか
を伝えます。
例えば、
「一人ひとりが安心して中学校生活を始められるよう、学年教職員で連携して支えてまいります」
「ご心配なことがありましたら、遠慮なく学校へご相談ください」
とします。
文部科学省も、中学校入学当初には生徒へのガイダンスと個別の支援の双方を充実させ、家庭との連絡を密にすることを求めています。(文部科学省)
学校から協力を求めるだけでなく、
学校も家庭と一緒に子どもを支えていく
という関係から始めたいものです。
7.家庭の形を一つに決めない
文章では、
「お父さん、お母さんも」
「ご両親も」
といった表現を当然の前提にしない方がよいでしょう。
家庭には様々な形があります。
そこで、
「保護者の皆様」
「ご家族の皆様」
など、その学校の状況に応じた表現を使います。
必要以上に家庭像を想定せず、
様々な背景を持つ生徒が同じ学校で生活することを前提に文章を書く
ことを大切にします。
8.「中学校は小学校より厳しい」と脅さない
入学直後には、
「小学校とは違います」
「中学校では通用しません」
「中学生としての自覚を持ってください」
と厳しく伝えたくなることがあります。
もちろん、中学校には新しい学習や生活の仕組みがあります。
しかし、最初から不安を強める必要はありません。
文部科学省はむしろ、小学校での学級活動の経験を生かしながら、中学校でさらに発展させることを求めています。(文部科学省)
中学校は、小学校までの学びを否定してゼロから始める場所ではありません。
小学校までに身に付けた力を土台に、新しい経験を積み重ねる場所
として伝えます。
9.最初から学年の「理想像」を押し付けすぎない
学年だより第1号に、
「日本一の学年にしよう」
「全員が何事にも全力で」
「最高の学年に」
と大きな目標を書きたくなることがあります。
それ自体が悪いわけではありません。
しかし、まだ生徒と出会ったばかりです。
教師だけで完成した学年像を提示するより、
「これから皆さんと一緒に、安心して過ごし、互いに成長できる学年をつくっていきたい」
くらいの余白を残します。
現在の中学校特別活動でも、学級や学校生活への参画、話合い、合意形成など、生徒自身が集団づくりに関わることが重視されています。(文部科学省)
10.提出物と予定は「見れば分かる」形にする
第1号で実務上とても重要なのが、
提出物と直近の予定
です。
文章の中に埋め込まず、
提出物
□ ○○調査票 4月○日まで
□ ○○申込書 4月○日まで
□ ○○確認票 4月○日まで
今週の予定
4月○日 ○○
4月○日 ○○
4月○日 ○○
のようにします。
特に入学当初は情報量が多いため、
保護者が「何を・いつまでに」をすぐ確認できる紙面
にします。
11.第1号に全部載せない
入学式当日に伝えたいことはたくさんあります。
しかし、
年間行事。
部活動。
定期テスト。
評価。
校則。
学校生活。
持ち物。
すべてを一枚に詰め込めば、最も重要な情報が見えなくなります。
第1号は、
歓迎・安心・相談・直近の見通し
を中心にします。
必要な情報は、第2号、第3号や学校からの文書、保護者説明会等で順番に伝えます。
「全部知らせた」より、
「必要な情報が、必要なときに分かる」
状態を目指します。
12.第1号は「この学年なら大丈夫そうだ」と感じてもらう一枚にする
入学式の日、生徒も保護者も多くの情報を受け取ります。
その中で学年だよりを読んだとき、
「しっかりしなければ」
という緊張だけを残すのではなく、
「分からないことがあっても大丈夫そうだ」
「この先生たちに相談してよさそうだ」
「少しずつ中学校生活に慣れていけばよさそうだ」
と感じてもらえることを大切にします。
中学校入学当初について文部科学省が重視しているのも、十分な情報によって見通しを持たせ、新しい人間関係や学校生活への適応を支えることです。(文部科学省)
学年だより第1号は、学校から家庭へ送る最初のメッセージの一つです。
華やかな文章でなくても構いません。
「私たちは、皆さんが安心して中学校生活を始められるよう支えていきます」
という姿勢が伝わる一枚にしたいものです。
そのまま使える「入学式当日の学年だより」文例
1年学年だより
○○市立○○中学校
第1学年
令和○年4月○日発行
No.1
ご入学おめでとうございます
新入生の皆さん、そして保護者の皆様、ご入学おめでとうございます。
今日から、中学校での新しい生活が始まります。
新しい友達、新しい先生、教科ごとに変わる授業、部活動など、楽しみにしていることがある一方で、「うまくやっていけるだろうか」と不安に感じていることもあると思います。
最初から、すべて分かっている必要はありません。
中学校生活については、これから一つずつ知っていけば大丈夫です。
分からないことがあれば聞いてください。
困ったことがあれば相談してください。
うまくいかないことがあっても、一緒に考えていきましょう。
私たち第1学年の教職員は、一人ひとりが安心して学校生活を送り、自分なりの目標を見つけながら成長していけるよう、学年全体で支えていきます。
これから皆さんと一緒に、互いを尊重し、安心して過ごせる学年をつくっていけることを楽しみにしています。
3年間の中学校生活の第一歩です。
焦らず、一つずつ始めていきましょう。
保護者の皆様へ
このたびは、お子様のご入学、誠におめでとうございます。
中学校への入学は、お子様にとって大きな環境の変化となります。
新しい生活を楽しみにしている一方で、学習や友人関係、部活動などについて不安を感じることもあると思います。
第1学年教職員一同、一人ひとりの様子を丁寧に見ながら、安心して学校生活を送ることができるよう支えてまいります。
学校生活の中でご心配なことや、お伝えいただきたいことがございましたら、遠慮なく学校へご相談ください。
学校と家庭で必要な情報を共有しながら、お子様の成長をともに支えていければと考えております。
一年間、どうぞよろしくお願いいたします。
第1学年教職員紹介
学年主任 ○○○○
担当教科:○○
一言:皆さんと一緒に学び、笑い、成長できる一年を楽しみにしています。
1組担任 ○○○○
担当教科:○○
一言:分からないことや困ったことがあれば、気軽に声を掛けてください。
2組担任 ○○○○
担当教科:○○
一言:皆さんの好きなこと、得意なことをたくさん教えてください。
副担任 ○○○○
担当教科:○○
一言:教室以外でも、見かけたらぜひ声を掛けてください。
※人数・役割に合わせて追加してください。
提出書類
□ ○○○○ 4月○日(○)まで
□ ○○○○ 4月○日(○)まで
□ ○○○○ 4月○日(○)まで
※提出の有無・締切は、必ず学校の最新情報に合わせて変更してください。
4月の主な予定
4月○日(○) ○○○○
4月○日(○) ○○○○
4月○日(○) ○○○○
4月○日(○) ○○○○
※学校行事予定に合わせて記入してください。
学年だより第1号チェックリスト
□ 新入生を歓迎する文章になっている
□ 「楽しみ」だけでなく「不安」があることも認めている
□ 中学生だから何でもできるという前提にしていない
□ 分からないことは質問してよいと伝えている
□ 困ったときは相談してよいと伝えている
□ 学年教職員で支える姿勢を示している
□ 家庭の形を一つに決めつけていない
□ 保護者へ要求事項ばかりを並べていない
□ 小学校までの経験を否定する表現になっていない
□ 教師側の理想を押し付けすぎていない
□ 教職員紹介が分かりやすい
□ 提出物と締切が一覧で確認できる
□ 直近の予定が分かる
□ 情報を詰め込みすぎていない
□ 学校独自のルール・日程を最新情報で確認した
入学式の学年だよりで一番大切なのは、格好のよい文章を書くことではありません。
生徒と保護者に、「この学校で一緒に始めていきましょう」という学校側の姿勢を届けることです。
完璧な中学生になって入学してくる生徒はいません。
中学校生活を送りながら、中学生になっていきます。
その最初の日に、
「焦らなくていい。分からなければ聞いていい。困ったら相談していい」
と伝える。
それだけでも、第1号の学年だよりには十分な意味があると思います。
参考資料
・文部科学省「中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 特別活動編」―入学当初に、生徒が学校生活について十分な情報を得て見通しを持つこと、ガイダンスと個別的な支援、家庭との連絡、小学校からの接続等を重視しています。(文部科学省)
・杉﨑雅子「スクールカウンセラーによる移行期支援に関する研究動向と課題」―学校移行期における本人・保護者の不安軽減や適応支援について整理しています。(J-STAGE)
・中学校への適応を生徒関係・教育指導の両面から検討した研究―友人や学級との関係だけでなく、教師との関係、学習、進路等の側面も学校適応と関連することを示しています。(J-STAGE)

