中学生の夏休み、冬休み、春休みには、学習計画表や生活記録表を作成する学校があります。
ところが、休みの全日程を細かく埋めたものの、数日で予定が崩れ、その後は計画表を使わなくなることがあります。
計画どおりに進まなかったことを、
「計画性がない」
「やる気がない」
「自己管理ができていない」
と本人の問題だけにしてしまうと、次の学びにはつながりません。
予定を細かく立てすぎている。
学校の課題量を正確に見積もれていない。
部活動、習い事、通院、家庭の予定を考慮していない。
体調不良や予定変更に対応する余白がない。
記入する項目が多く、計画表を書くこと自体が負担になっている。
このように、計画表の設計が本人に合っていない場合もあります。
長期休みの計画表は、生徒を「計画を立てることが得意な生徒」「苦手な生徒」に分類するためのものではありません。
休み全体を見通す。
学校の課題を実行できる大きさに分ける。
生活、学習、休息、自由時間を調整する。
実行後に振り返り、必要に応じて計画を変更する。
そのための道具です。
この記事では、中学生の夏休み計画表を中心に、冬休み・春休みにも使える6種類のWordテンプレートを紹介します。
長期休みの計画表を作る目的
計画表の目的は、空欄を全て埋めることでも、毎日予定どおりに行動することでもありません。
主な目的は次の四つです。
・休み中の予定と課題の全体像を把握する
・大きな課題を、実行できる大きさへ分ける
・学習、生活、休息のバランスを考える
・実行後に振り返り、計画を修正する
最初に立てた計画が、実際の状況と合わないことはあります。
課題に予想以上の時間がかかる。
体調を崩す。
部活動の日程が変わる。
家族の予定が入る。
取り組んでみると、課題が思ったより難しい。
そのようなときに、優先順位を変えたり、内容を減らしたり、別の日へ移したりすることも、計画する力の一部です。
以前の長期休み計画表を見直す理由
これまで学校で使われてきた計画表には、次のような項目が設けられていることがあります。
・23時までに寝た
・8時までに起きた
・1日○時間勉強した
・毎日家の手伝いをした
・自己評価を5点満点で記入した
生活習慣を考えること自体は大切です。
しかし、全ての中学生へ同じ就寝時刻、起床時刻、勉強時間、家庭での役割を求めることは適切ではありません。
部活動の開始時刻。
家族の勤務時間。
きょうだいの世話や家庭内で担っている役割。
健康状態。
通院や福祉サービスの利用。
生活環境は一人一人異なります。
計画表では、一律の時刻や役割を達成できたか採点するのではなく、本人が健康を保ちながら生活と学習を調整できるようにします。
中学生の長期休み計画表6種類
1.長期休み全体を見通す計画表
夏休み、冬休み、春休み全体の予定を最初に整理する計画表です。
次の内容を記入します。
・学校からの課題
・自分で進めたい学習
・部活動、習い事、通院
・旅行、帰省、家族や地域の予定
・提出期限
・予備日、調整日
休みの全日程を毎日の課題で埋めるのではなく、
「学校の課題を一度終える日」
「進み具合を確認する日」
「遅れを調整する日」
「休み終了前に持ち物を確認する日」
など、大きな節目を決めます。
予定が変わったときに使える予備日を設けることが重要です。
2.1週間の学習・生活計画表
休み全体の計画を、一週間単位の具体的な行動へ落とし込む計画表です。
一日ごとに次の内容を書きます。
・主な予定
・学習する内容
・始める時刻や場所
・休息や自由時間
・実行後の記録
・翌日への修正
一か月先まで細かな予定を決めても、実際の進み方を正確に予測することはできません。
全体の見通しは持ちながら、具体的な計画は一週間程度で見直す方法が現実的です。
3.今日することを3つまで決めるシンプル計画表
記入項目が多いと、計画表を書くだけで疲れてしまう生徒もいます。
シンプル版では、今日することを三つまでに絞ります。
例えば、
1.数学ワークを2ページ進める
2.英単語を20語、何も見ずに確認する
3.理科のレポートの図を完成させる
とします。
「夏休みの宿題をする」
「数学を勉強する」
では、何から始めるのか分かりません。
終わったかどうかを確認できる大きさまで分けます。
三つ全てを必ず行う必要もありません。
最優先の一つを決め、終わったら次を選びます。
4.提出物と自主学習を分ける進行管理表
学校のワークやプリントを埋めることと、内容を理解して自力で解けるようになることは同じではありません。
この計画表では、次の二つを分けて記録します。
・提出するために必要な作業
・理解を確かめるための学習
例えば数学ワークであれば、
1.問題を解く
2.答え合わせをする
3.間違えた理由を確認する
4.何も見ずに解き直す
5.似た問題で確認する
という段階があります。
ワークを全て埋めた時点を「学習完了」にせず、理解を確かめる方法まで計画します。
5.生活リズムと健康を整える計画表
長期休みには、就寝・起床時刻が大きく変化することがあります。
一方で、全員へ同じ時刻を指定するのではなく、自分の予定と必要な睡眠時間を踏まえて生活を整えます。
厚生労働省の『健康づくりのための睡眠ガイド2023』では、中学・高校生は8~10時間を参考に睡眠時間を確保することが示されています。
ただし、必要な睡眠時間には個人差があります。
計画表では、次の内容を考えます。
・目安にする起床時刻
・目安にする就寝時刻
・日中に体を動かす方法
・食事と水分
・休息と自由時間
・デジタル機器を使う時間の区切り方
・体調が悪いときに相談する人
睡眠時間の数字だけで評価せず、日中の眠気、疲労感、気分、体調も振り返ります。
6.振り返りと計画修正シート
振り返りを、
「予定どおりできた」
「できなかった」
だけで終わらせないための用紙です。
次の内容を整理します。
・進んだこと
・うまくいった方法
・予定どおり進まなかったこと
・進まなかった理由
・減らすこと、後回しにすること
・次に優先すること
・自分で変えること
・相談や支援が必要なこと
できなかった理由は、本人の性格ではなく、
課題量。
難しさ。
始める時刻。
環境。
体調。
必要な支援。
という具体的な条件から考えます。
夏休み計画表の作り方
1.学校から配布された資料を集める
最初に、次の資料を集めます。
・宿題一覧
・提出期限
・部活動予定
・補習や登校日の予定
・行事や面談の予定
教科ごとの宿題を別々に見ていると、全体量を把握しにくくなります。
一つの一覧へまとめます。
2.学習以外の予定を先に入れる
部活動、習い事、旅行、通院、家庭の予定など、動かしにくい予定を先に書きます。
その後、現実に使える時間を確認します。
学習時間を増やすために、睡眠や休息を削る計画にはしません。
3.課題を実行できる大きさへ分ける
「読書感想文を書く」という課題は、次のように分けられます。
・本を選ぶ
・読む日を決める
・印象に残った部分へ付箋を貼る
・書く内容を三つ決める
・下書きをする
・文章を見直す
・清書する
大きな課題ほど、最初に行う具体的な行動を決めます。
4.提出期限より前に、確認日を設ける
提出期限の前日に完成させる計画では、修正する時間がありません。
可能であれば、期限の数日前に一度完成させる日を決めます。
その後、抜けや誤りを確認します。
5.予備日を設ける
予定は変わるものです。
休みの最後まで毎日課題を入れるのではなく、何も決めない予備日や調整日を設けます。
予備日に予定がなければ、休息や自由時間として使って構いません。
6.一週間ごとに修正する
最初に立てた計画を休みの終わりまで固定しません。
週末などに短く振り返ります。
・予定量は適切だったか
・課題は難しすぎなかったか
・始める時刻は現実的だったか
・使った学習方法は有効だったか
・次週に減らすことは何か
必要に応じて予定を書き換えます。
冬休み計画表として使う場合
冬休みは夏休みより短く、年末年始の家庭行事が入りやすい期間です。
長期間の細かな計画より、次の内容を明確にします。
・学校の課題と提出期限
・家族の予定
・部活動や受験準備
・課題に取り組める日
・始業式前の確認日
受験を控えた中学3年生であっても、学習時間だけで一日を埋めるのではなく、睡眠と休息を確保します。
冬休みの計画表を別に作り直す必要はなく、今回の6種類から必要な用紙を選んで使えます。
春休み計画表として使う場合
春休みは学年の切替えに当たります。
大量の先取り学習を求めるのではなく、次の内容を整理します。
・前学年で理解が不十分だった内容
・新学年へ持っていく物
・教科書、ノート、プリントの整理
・部活動や家庭の予定
・新学期へ向けた生活リズム
短い期間であるため、長期休み全体表とシンプル計画表を組み合わせる方法が適しています。
長期休みの学習を定着させる方法
計画表へ「教科書を読む」「ワークをする」と書くだけでは、学習方法が明確ではありません。
複数の日に分ける
一度にまとめて学習するのではなく、数日後に再度確認します。
英単語を学習する場合は、
・最初に覚える日
・翌日に確認する日
・数日後に再確認する日
を計画します。
教材を閉じて思い出す
教科書やノートを見続けるだけでなく、何も見ずに説明する、白紙へ書く、小テストを行うなど、思い出す練習を入れます。
間違いの理由を確認する
正解か不正解かだけでなく、
・用語を覚えていなかった
・問題の条件を読み落とした
・計算方法を理解していなかった
・途中で確認をしなかった
と原因を分けます。
具体的な学習方法については、中学生の学習を定着させる方法――分散学習、想起練習、ノート、学習計画で詳しく整理しています。
計画を作っても始められない場合
計画を立てても学習を始められない場合は、計画方法以外の背景も確認します。
睡眠不足。
学習内容のつまずき。
失敗への不安。
友人関係。
家庭環境。
心身の不調。
スマートフォンの使用。
課題量。
本人のやる気だけを問題にせず、何が始めることを難しくしているのかを考えます。
詳しくは、中学生が勉強したくない100の理由――意欲が出ない背景と教師・保護者にできる支援で整理しています。
教師が長期休み計画表を使うときの注意点
・複雑な計画表を選ぶ生徒が優れていると扱わない
・全員へ同じ生活時刻や学習量を求めない
・勉強時間を学級内で競わせない
・家庭での手伝いを一律に義務づけて評価しない
・計画表の記入量を成績評価へ安易に結び付けない
・本人の健康、家庭環境、文化的背景へ配慮する
・予定どおり進まなかった理由を一緒に確認する
・必要に応じて記入を手伝い、支援を徐々に調整する
計画表を配布して、
「自分で考えて書きなさい」
だけで終えると、課題を分けることが難しい生徒は、記入の段階で止まります。
学校の課題を一覧にする。
一日の現実的な量を一緒に考える。
最優先の課題を決める。
最初の一歩を具体的にする。
必要な支援を行います。
保護者が支援するときの注意点
・計画表を監視表にしない
・できなかった項目だけを責めない
・本人の予定を全て大人が決めない
・睡眠や休息を削って学習を増やさない
・兄弟姉妹や友人と比較しない
・勉強時間より、取り組んだ内容や方法を確認する
・困っている場合は、学校へ具体的に相談する
保護者が確認する場合は、
「今日は何時間勉強したの」
だけではなく、
「どこまで進みましたか」
「どの方法が使いやすかったですか」
「明日は何を変えますか」
と尋ねます。
よくある質問
夏休み計画表は毎日書かせる必要がありますか
毎日の記録が役立つ生徒もいますが、全員に必要とは限りません。
週単位の確認や、節目での振り返りでも構いません。
記録の負担が学習を上回らないようにします。
計画表は紙とデジタルのどちらがよいですか
全体を一覧しやすく、手書きしやすいのは紙です。
予定を移動・修正しやすく、共有しやすいのはデジタルです。
本人が使いやすく、学校の情報管理方針に合う方法を選びます。
学習時間は記録した方がよいですか
時間配分を確認する目的で記録することはできます。
ただし、長時間学習したことだけを評価しません。
何を行い、どの程度理解できたのかを併せて確認します。
計画表が空白のままの場合はどうしますか
叱って全て埋めさせるのではなく、最優先の一つを一緒に決めます。
「今日することを三つまで決めるシンプル計画表」から始める方法があります。
学校で全員に同じ計画表を配布してもよいですか
基本様式を共通にすることはできます。
ただし、記入項目を減らした版や目的別の用紙を用意し、本人が選べるようにすることが望まれます。
Word版・中学生の長期休み計画表6種類
この記事で紹介した6種類のテンプレートを、一つのWordファイルにまとめました。
印刷して手書きすることも、Word上で直接入力することもできます。
中学生の長期休み計画表6種類(Word版)をダウンロード
収録している用紙は次の6種類です。
・長期休み全体を見通す計画表
・1週間の学習・生活計画表
・今日することを3つまで決めるシンプル計画表
・提出物と自主学習を分ける進行管理表
・生活リズムと健康を整える計画表
・振り返りと計画修正シート
学校や自治体で指定された様式がある場合は、その様式を優先してください。
長期休み計画表は、管理するためではなく調整するために使う
中学生の夏休み計画表は、生徒の生活を教師や保護者が細かく管理するためのものではありません。
自分の予定を把握する。
学校の課題を分ける。
学習、休息、自由時間を調整する。
困ったときに助けを求める。
実行後に方法を振り返る。
必要に応じて計画を変更する。
そのための道具です。
計画どおりにできなかったことだけを問題にするのではなく、計画を変更できたことも学びとして捉えます。
一人一人の生活と学び方に合った用紙を選び、自分で調整できる範囲を少しずつ広げていくことが大切です。
参考資料
・文部科学省「『個別最適な学び』と『協働的な学び』の一体的な充実」
・文部科学省「『個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実』のためのサポートマガジン『みるみる』」
・厚生労働省『健康づくりのための睡眠ガイド2023』
・Australian Education Research Organisation「Spacing and retrieval practice guide」
・Roediger, H. L. & Karpicke, J. D. “Test-enhanced learning: Taking memory tests improves long-term retention”

