次のような中学校の先生へ向けて書きました。
「問題集を選ぶ時の基準が分からない」
「問題集の使い方が定まらない」
「生徒に効果的に問題集を使用させたい」
基本的なことを中心に書いています。
1.問題集を選ぶときのポイント
(1)基本的な着眼点
・何度でも繰り返しできるように工夫されていること
・問題の量が多いこと
・解説が充実していること
(2)解答欄の構成
繰り返しできるようにしている問題集のポイントは、「問題文中に解答欄がないこと」です。
各ページ問題の右側に1列に揃えて解答が書いてあります。
「もう1回やりたい」時に、手や紙で簡単に隠せて繰り返し練習できるからです。
また、最近では、解答欄だけを集めた別冊学習ノートがある問題集も多いようです。
私は別冊学習ノート購入させ、提出させています。
「提出物をチェックすること」や「繰り返し同じ問題を解くこと」の是非については、今後変わっていくかもしれません。
アンテナをはっているつもりなので、気持ちに変化があればリライトする予定です。
(3)図や表で確認すること
・使用している教科書の図や表の構成と類似していること
図や表が大きく違えば、違う問題だと感じる生徒が少なからずいることです。
・所属している都道府県の入試問題と傾向が似ていること
「似ている」「似ていない」の判断は、過去の入試問題を分析するしかありません。
(4)入試問題研究でやっておくこと
入試問題の研究については、次のように考えています。
・所属している都道府県の問題は過去5年分解くこと
・過去3年間の全国の公立高校入試問題を見ること
5+46×3=143回分の入試問題を、少なくとも見ておく必要があります。
授業と定期テストと実力テストと入試が段階的につながっていることが理想です。
「定期テストでは点を取れるけど、入試や校外のテストでは点数が取れない」
これは生徒にとったらとても不幸なことだと思います。
これを防ぐために、入試問題を研究するのです。
授業と入試が乖離しないよう、くれぐれも意識していきましょう。
さて、入試問題対策は、一筋縄で身に付けることができません。
まとまった時間をとって勉強する必要があります。
まとまった時間がとれるのは春休み、夏休み、冬休み期間になります。
初めて中3の教科担当をするのであれば、2年生の終わりの春休みには、入試問題を研究しておく必要があるでしょう。
それが、授業準備の効率化につながります。
単元毎に、ルーチンの準備をしていては時間がかかります。
「同じ作業はまとめてする」が校務の効率化の基本の1つです。
(5)入試問題や新学習指導要領との関連性
入試問題とかけ離れた傾向の問題が含まれている問題集はNGです。
特に2020年度以降の問題集は、注意が必要です。
新学習指導要領完全実施に合わせて、この年の問題集は大きく改訂されます。
その結果、入試や教科書の内容と、かけ離れた問題が掲載される可能性も出てきます。
「新学習指導要領対応」と帯に書かれた問題が並ぶでしょう。思考力、主体的な学び、対話的な学びについての問題は、特に内容を確認する必要があります。
(6)弱点克服問題や強化問題の有無
生徒の弱点範囲等について、特設ページや対策ページがあるものを私は選んでいます。
例えば中2であれば、「電流・電力・電力量」の計算、湿度の計算、原子の記号・化学反応式が通常より多くの練習が必要となる範囲となります。
そういうところでページを割いて、繰り返しできるようにしている問題集を私は選んでいます。
(7)カラーか白黒かの判断基準
私は、「カラーすぎるもの」は選んでいません。
理由は、定期テスト問題が白黒だからです。
入試問題も今のところは、白黒の問題であることが理由です。
問題集の図やイラストがカラーで、定期テストの問題が白黒であると、それだけで解けなくなる生徒もいます。
(8)その他注意すること
・昨年度の同学年の問題集とは違うものを選ぶこと
・過去に自分が使った問題集とは違う問題集を選ぶこと
以前に自分あるいは昨年度当該学年で使っていた問題集と同じ問題集を使うと、定期テストの問題が似通ったものになりがちです。
そのような問題構成だと、生徒の力を的確に把握することができません。
また、過去問を手に入れた生徒だけが、明らかに有利になります。
こうならないような工夫や配慮が必要です。
同じ問題集を使うなら、少なくとも昨年度の定期テスト問題や一周前(3年前)に自分が作成した問題を配布しておくのがオーソドックスな方法でしょう。
2.問題集の使い方(活用法)
(1)基本的に授業内では使わない
私の場合、問題集を授業で使用することは、ほとんどありません。
テスト直前に、質問に来た生徒が多い問題について、必要に応じて解説することはあります。
しかし、それも本当に限られた場合だけです。
問題集については、自学自習が基本です。
解説を見ても理解できない場合は、
「質問受付のときに先生に聞くこと」
「友達同士で教え合うこと」
を、基本にしています。
私が授業で使う主な問題は、指導書に付属している形成テストや総括テストです。
(2)生徒が問題集をするタイミング
授業で教科書の何ページまで進んだかを生徒に伝えています。
問題集には、教科書の対応ページが書いてあるので、生徒は自ら問題集を進めていくことが可能です。
授業で、
「今日は教科書の何ページまで勉強しました。問題集の○○ページまで解くことができます」
とよく言います。
(3)提出物について
一般的には、定期テストのたびに問題集を提出させる先生が多いようです。
新しい考え方では、問題集を見ない先生もいるようです。
私も反対はしませんが、現在の入試制度や中学校の実態からすると、所属している市ではまだ早いというのが実感していることです。
ただ、今後、宿題や提出物については、何か違ったものになっていくのだろうなと思います。
(4)「本冊」ではなく、「別冊」を提出させる理由
本冊ではなく、別冊を提出させます。
理由は、提出している間も、本冊で生徒が勉強できるからです。
(5)提出日の設定
提出〆切は、「テスト直前の最終授業時まで」に設定しています。
チェックするのは、「授業中」です。
テスト直前、質問受付の時間を3時間取っています。
問題集をやる生徒もいれは、サブノート(授業プリントを冊子にしたもの)を仕上げる生徒もいます。
教室はシーンとなり、試験勉強に集中している状態になります。
そのテスト直前3時間のいずれかの授業の「最初の1分間」で、宿題を提出することにしています。
そして提出された冊子を、教室の後方で、名前を呼んで一人一人目の前でチェックしていきます。
別冊の裏表紙には日付を書く欄があるので、そこに日付を書きます。
不備のあるところは、その場で付箋を貼って、やり直しをさせてすぐに持ってくるように指示をします。
いろいろ試しましたが、この方法が最も効率的で効果的な方法だと思います。
目の前で提出物をチェックされると言うのは、生徒にとって緊張感のあることです。
「大丈夫かな?」と言って、チェックしているのをのぞき込む生徒もでてきます。
「あのチェックはプレッシャーだった(笑)」
成人式で生徒から言われることです。
私は提出物を回収し、放課後にチェックしたことは1度だけです。
教員1年目の1学期の最初の提出物のときです。
他の先生と同様、テストのある日に提出させ、放課後チェックしていました。
採点と提出物のチェック作業で、テスト期間の放課後と続く土日はすべて潰れました。
帰宅時間もとても遅くなりました。
それ以降、提出物のチェックは「授業中」と決めて、17年間やってきました。
話は変わってしまうのですが、徹底して「採点しやすい問題」を意識するようにもなりました。
「授業中にできることは授業中にする」
これは校務の効率化の基本です。