2学期始業式、担任は何を話す?中学生に伝えたい7つのこと|教科の初回授業でも

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2学期の始業式の日。
久しぶりに生徒が教室へ戻ってきます。
担任として、
「最初に何を話そう」
と考える先生も多いと思います。
2学期には、体育大会、文化祭、合唱コンクール、定期テスト、進路など、多くのことがあります。
だから、
「2学期は大切です」
「気持ちを切り替えて頑張りましょう」
「行事を成功させましょう」
と話したくなるかもしれません。
もちろん、それが間違いというわけではありません。
ただ、私は2学期最初の日ほど、生徒を鼓舞することより、安心して学校生活へ戻れる言葉を届けることを大切にしたいと思っています。
夏休みの過ごし方は、一人一人違います。
楽しかった生徒もいます。
部活動に打ち込んだ生徒もいます。
受験勉強をした生徒もいます。
何となく過ごした生徒もいます。
家庭で大変なことがあった生徒もいるかもしれません。
友人関係に悩んでいる生徒もいます。
「学校が始まるのが楽しみだった」という生徒もいれば、
「今日ここへ来るだけで精いっぱいだった」という生徒もいるかもしれません。
文部科学省は2026年7月3日の通知で、児童生徒の自殺者数は8月後半から増加し、特に長期休業明けの9月1日に多くなる傾向があること、直近2年間では9月の自殺者数が最も多かったことを示しています。2025年の児童生徒の自殺者数は538人で、過去最多でした。
不安をあおる必要はありません。
しかし、2学期最初の日の教師の言葉は、軽く扱えないと思います。
そしてこれは、担任だけの話ではありません。
数学。
国語。
英語。
理科。
社会。
保健体育。
音楽。
美術。
技術・家庭。
どの教科の最初の授業にも、生徒との関係をもう一度つくる機会があります。
2学期最初の言葉は、「頑張らせるための言葉」ではなく、「ここでまた学んでいける」と思える言葉にしたい。
この記事では、2学期始業式の日に担任が中学生へ伝えたいことと、教科の初回授業で伝えたいことをまとめます。

1.始業式の日の話は「2学期の決意表明」にしない

教師は、新学期になると気持ちが入ります。
「よい2学期にしたい」
「1学期より成長させたい」
「この学級をもっとよくしたい」
という思いがあります。
その思い自体は大切です。
ただし、教師の思いを全部、生徒へ背負わせないようにしたいと思います。
始業式の日に、
「2学期は勝負です」
「今日から気持ちを切り替えましょう」
「1学期にできなかったことを、今学期こそやりましょう」
と一気に話すと、それを前向きに受け取れる生徒ばかりではありません。
学校の生活リズムに戻すだけでも時間が必要な生徒がいます。
だから私は、
「今日から全力で」ではなく、「少しずつ戻していこう」
くらいの言葉から始めたいと思います。
2学期は長いです。
初日に完成させる必要はありません。
教師自身も、生徒自身も、少しずつ学校生活へ戻っていけばよいのです。

2.最初に伝えたい7つのこと

01.「また会えたこと」を短く伝える

特別に格好のよい言葉は必要ありません。
「久しぶりですね」
「また2学期を一緒に始められることをうれしく思います」
それくらいで十分です。
ただし、
「全員元気にそろって、本当に素晴らしい」
という表現には少し注意します。
その日に欠席している生徒がいるかもしれません。
遅れて登校してくる生徒もいます。
別室から学校生活を始める生徒もいます。
教室へ来られたかどうかだけで、生徒を評価しないことが大切です。
「今日ここにいる人も、今日はここにいない人も含めて、また2学期を始めていきます」
くらいの感覚を持っていたいと思います。

02.「夏休みは人それぞれだった」と伝える

「夏休み、楽しかった人?」
と聞けば、多くの手が挙がるかもしれません。
しかし、挙げられない生徒もいます。
家庭旅行。
帰省。
キャンプ。
部活動。
楽しい経験を話せる生徒ばかりではありません。
「夏休みを充実して過ごせましたか」
という問いも、生徒によっては答えにくいものです。
だから、
「夏休みの過ごし方は、一人一人違ったと思います」
とだけ伝えてもよいと思います。
話したい生徒は話せばよい。
話したくないことまで話さなくてよい。
学校は、生徒の私生活を発表させる場所ではありません。

03.「最初から全部できなくてよい」と伝える

生活リズム。
授業。
提出物。
友人関係。
部活動。
2学期初日は、一気に多くのものが戻ってきます。
そこで、
「今日から切り替えましょう」
だけではなく、
「最初から全部を完璧に戻さなくても大丈夫です。少しずつ学校のリズムに戻していきましょう」
と伝えます。
これは甘やかすことではありません。
むしろ、自分の状態を理解しながら、少しずつ自分を整えていくことも大切な力です。

04.「分からない、間違える、助けを求めることを認める」と伝える

私は、これは担任の話だけでなく、教科の初回授業でも必ず伝えたいことだと思います。
「分からないと言っていい」
「間違えてもいい」
「もう一度説明してほしいと言っていい」
「困ったら助けてと言っていい」
この空気を教師がつくります。
『生徒指導提要』では、生徒が「自分も一人の人間として大切にされている」と感じられること、失敗を恐れず、間違いやできないことを笑わない人間関係をつくることが重視されています。
授業でも同じです。
正解できる生徒だけが安心できる教室にしないことです。
発言の速い生徒だけが活躍する授業にしないことです。
分からない生徒が、
「分かりません」
と言える授業にします。
教師がその言葉をどう受け止めるかによって、その後の授業の空気は大きく変わります。

05.「一人で抱えなくてよい」と具体的に伝える

「何かあったら相談してください」
だけでは、相談できない生徒がいます。
そこで、もう少し具体的に伝えます。
「担任でなくても構いません」
「話しやすい先生でいいです」
「養護教諭でもいいです」
「スクールカウンセラーに話す方法もあります」
「直接言いにくければ、別の方法でも構いません」
助けを求めることは、弱さではありません。
自分を守るための力です。
特に長期休業明けは、教師が「相談してよい」と伝えるだけで終わらず、実際に相談できる入口を示しておくことが重要です。文部科学省も、長期休業明けに向け、学校・家庭・地域・関係機関が連携した見守りと自殺予防の取組を求めています。
ただし、始業式の日に重く長く話す必要はありません。
短く、具体的に伝えます。

06.「2学期を生徒と一緒につくる」と伝える

教師が、
「2学期はこうします」
「このクラスはこうします」
と全部決めて伝える必要はありません。
「みんなが過ごしやすいクラスにするために、必要なことは一緒に考えていきましょう」
と伝えます。
教師が学級を管理するだけではなく、生徒自身も学級をつくる側にいます。
『生徒指導提要』では、自ら考え、選択し、決定する「自己決定の場」をつくることが重視されています。
例えば、
行事でどのように関わるか。
学級の困りごとをどう改善するか。
係活動をどう進めるか。
授業でどの方法を選ぶか。
教師から小さな決定を少しずつ生徒へ返していきます。
学校は、教師の言うことを上手に聞く人を育てる場所ではありません。
自分で考え、他者と話し、選択し、行動する力を育てる場所です。

07.「教師も変える」と伝える

教師が生徒だけに、
「2学期は成長しましょう」
と求めるのではなく、
「私も、よりよいクラスになるように考えます」
「授業も、分かりにくいところがあれば改善します」
と伝えてもよいと思います。
教師は完成した存在ではありません。
授業が分かりにくいこともあります。
説明が長くなることもあります。
判断を間違えることもあります。
大切なのは、教師も振り返り、変わる姿を見せることです。
生徒にだけ変化を求めないことです。

3.始業式の日に避けたい言葉

どの言葉も、絶対に使ってはいけないという意味ではありません。
ただ、生徒の状態が分からない新学期初日には、一律に投げない方がよい言葉があります。

「2学期が勝負です」

受験学年などでは意味のある言葉になる場合があります。
しかし、「勝負」という言葉が励みになる生徒ばかりではありません。
まず見通しを示した上で、何をどう進めていくのかを具体的に話します。

「気持ちを切り替えなさい」

気持ちはスイッチのようには切り替わりません。
生活や身体のリズムを少しずつ戻していくことを伝える方が現実的です。

「夏休みボケしていますね」

教師にとっては軽い冗談でも、生徒を一括りに評価する言葉になります。
休業明けの体調や心理状態には個人差があります。

「みんな元気そうで安心しました」

表情だけでは分からないことがあります。
元気に友達と話している生徒が、悩みを抱えていることもあります。
教師が「元気そうだから大丈夫」と早く結論づけないことです。

「頑張れば何とかなる」

努力は大切です。
しかし、努力だけでは解決できないこともあります。
必要なときには、人に頼る。
方法を変える。
休む。
専門家につなぐ。
そうした選択肢もあります。

「このクラスなら絶対できます」

励ます意図でも、「できなければならない」という圧力になることがあります。
行事などでは、
「全員で成功させよう」
だけではなく、
「一人一人が自分なりの関わり方を見つけられるといいですね」
という伝え方もできます。

4.担任が話すなら3分程度でも十分

始業式の日は、教師が長く話さなくても構いません。
むしろ、短く話し、生徒を見る時間を残したいと思います。
例えば、私は次のような内容を考えます。

2学期最初の担任の話・例

「おはようございます。久しぶりですね。
今日から2学期が始まります。
夏休みの過ごし方は、一人一人違ったと思います。楽しかった人もいるでしょうし、いろいろあった人もいると思います。無理に人と比べる必要はありません。
2学期は長いです。今日から全部を完璧にしようとしなくて構いません。少しずつ学校のリズムに戻していきましょう。
このクラスでは、分からないことを分からないと言えること、間違えても笑われないこと、困ったときに助けてと言えることを大切にしたいと思っています。
もし何かしんどいことがあれば、私でなくても構いません。話しやすい先生、保健室の先生、スクールカウンセラーなど、話せる人につないでください。一人で全部抱える必要はありません。
2学期には行事もあります。テストもあります。それぞれいろいろなことがあります。
全部をうまくやることより、みんなが安心して過ごしながら、一つずつやっていけるクラスにしたいと思っています。
私も考えながらやっていきます。
また今日から、よろしくお願いします。」
これをそのまま読む必要はありません。
自分の言葉に直します。
教師が普段使わない言葉を突然使うと、かえって生徒には伝わりにくくなります。
大切なのは、立派な話をすることではありません。
教師が何を大切にしているのかが伝わることです。

5.教科の初回授業でも同じことを伝える

ここを特に大切にしたいと思います。
生徒は、担任とだけ学校生活を送っているわけではありません。
中学校では、一日に何人もの教科担任と出会います。
だからこそ、教科の授業そのものが、生徒を支える大きな場になります。
『応援の空』でも、授業を教科内容を教える時間だけではなく、生徒指導の場として考えてきました。「中学校教師の授業力を高める30のTips」でも、授業開始、指示、発問、間違いの扱い、生徒理解、安全・安心などを授業づくりの基本として整理しています。
2学期最初の教科授業で伝えたいことは、難しくありません。

①「分からないところから始めてよい」

1学期の内容を全部理解している生徒ばかりではありません。
「1学期の内容を忘れている人もいると思います。必要なところは確認しながら進めます」
と伝えます。

②「間違いは授業の材料になる」

間違えた生徒を笑わない。
教師も皮肉を言わない。
間違いから、
「なぜそう考えたのか」
「どこで分かれたのか」
を考えます。

③「分からないと言える授業にする」

「質問はありますか」
と聞くだけでは、質問できない生徒もいます。
机間巡視。
ミニカード。
ICT。
授業後の短い質問。
さまざまな入口を用意します。

④「授業の目的を見えるようにする」

2学期最初の授業で、
「この教科では何を大切にするのか」
を短く伝えます。
例えば、
「答えだけでなく、どう考えたかを大切にします」
「人と違う考えも一度聞いてみます」
「分からないところを見つけることも学習です」
などです。
教科担任の授業観が、生徒に伝わります。

⑤「教師も授業を改善する」と伝える

「分かりにくいところがあれば教えてください」
「授業の進め方も必要に応じて変えます」
と伝えます。
生徒の声を全部そのまま採用するという意味ではありません。
しかし、教師側も学びやすい授業を考え続ける姿勢を示します。

6.教科の初回授業なら1~2分でよい

例えば、次の程度でも十分です。

2学期最初の教科授業・話す例

「今日から2学期の授業を始めます。
1学期に分からないところが残っている人もいると思います。必要なところは確認しながら進めます。
この授業では、分からないことを『分からない』と言えることを大切にします。
間違えても構いません。間違いには、どう考えたのかという大切な情報があります。
人の間違いや意見を笑わないことも、この授業の大切な約束です。
私も、できるだけ分かりやすい授業になるように考えます。
では、2学期を始めましょう。」
これだけでも、授業の空気は変わります。
そして、その後の教師の行動が重要です。
「間違えていい」と言ったのに、間違えた生徒を笑う。
「質問していい」と言ったのに、質問されたら面倒そうな顔をする。
それでは言葉は信用されません。
教師の言葉と日常の行動を一致させます。

7.教科担任だから見える生徒の姿がある

2学期初めは、担任だけで生徒を見る必要はありません。
むしろ、中学校だからこそ、教科担任制を生かしたいと思います。
担任の前では元気です。
しかし、数学になると急に表情が硬くなる。
体育には参加できない。
英語の授業では友達との関係が気になる。
美術では穏やかに活動している。
音楽では普段とは違う生徒と話している。
生徒には、場面によって違う姿があります。
一人の教師だけが見て、
「この生徒はこういう生徒だ」
と決めないことです。
教科担任だから見える姿があります。
その小さな気付きを、必要に応じて担任や学年へつなぎます。
以前作成した授業チェックでも、「一人の教師の見方だけで判断しない」「授業で得た気付きをチームにつなぐ」ことを大切にしています。

8.話した後こそ、生徒を見る

教師がよい話をしたかどうかより、その後に生徒がどうしているかを見ます。
始業式の日であれば、
・教室へ入ってきたときの表情
・友達との距離
・席に着いた後の様子
・提出物への反応
・休み時間の過ごし方
・給食の様子
・放課後の表情
などを見ます。
教科であれば、
・ノートを開けているか
・課題に取りかかれているか
・以前より手が止まっていないか
・友達との活動に入れているか
・教師の説明を聞きながら苦しそうにしていないか
などを見ます。
一つの様子だけで判断しません。
しかし、
「いつもと少し違う」
という教師の気付きは大切にします。

9.「少し気になる」を一人で抱えない

長期休業明けだからといって、すべての変化を深刻な問題と結びつける必要はありません。
一方で、
「気のせいだろう」
と全部流してしまうのも違います。
気になることがあれば、
担任。
学年主任。
養護教諭。
生徒指導担当。
教育相談担当。
特別支援教育コーディネーター。
スクールカウンセラー。
スクールソーシャルワーカー。
管理職。
必要な人とつなぎます。
中学校では、多くの大人が一人の生徒を見ることができます。
これは大きな強みです。
担任一人が全部を背負う学校ではなく、複数の大人の目で生徒を支える学校にしたいと思います。

10.教師が話す言葉以上に、毎日の授業がメッセージになる

始業式の日に何を話すかは大切です。
しかし、一度の立派な話で、生徒との信頼関係ができるわけではありません。
「間違えてもいい」
と言った翌日に、間違えた生徒をからかわない。
「話を聞く」
と言ったなら、生徒が話しかけてきたときに一度手を止める。
「一人一人を大切にする」
と言ったなら、よく発言する生徒だけでなく、静かに過ごしている生徒にも目を向ける。
「分からないと言っていい」
と言ったなら、本当に分からない生徒を置き去りにしない。
「生徒との関係をつくる教師の言葉・対応30のTips」でも、教師の何気ない言葉と日常の行動の積み重ねが、生徒にとって「この先生には話しても大丈夫か」を判断する材料になることを整理しています。
2学期最初の日だからといって、特別な名言を用意しなくてもよいと思います。
むしろ、
これから毎日どのように生徒と関わるのか。
その方向を、短く言葉にすればよいのです。
担任であっても。
教科担任であっても。
学校で出会う大人の誰か一人でも、
「この先生なら少し話せそうだ」
と思えることには意味があります。
2学期最初の言葉を、その関係づくりの入口にしたいと思います。

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12.参考資料

文部科学省『生徒指導提要(改訂版)』
文部科学省「令和8年7月3日 児童生徒の自殺予防に係る取組について(通知)」

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