生徒指導提要(改訂版)は学びの原点~生徒指導提要の重要性と世代別に読みたい項目~

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教師になったら、まず読んでほしい本があります。
文部科学省の『生徒指導提要(改訂版)』です。
私は、この一冊を理解することが、学校教育のかなりの部分の原点になると思っています。
生徒指導の本だから、生徒指導担当だけが読む。
荒れている学校の先生が読む。
問題行動が起きたときに調べる。
そういう本ではありません。
授業をする先生。
学級担任。
学年主任。
生徒指導主事。
教務主任。
養護教諭。
特別支援教育に関わる先生。
教頭。
校長。
学校教育に関わるすべての人に関係する基本書です。
約300ページあります。
全部を最初から最後まで一気に読む必要はありません。
まず、自分の立場に必要な部分を読む。
そして、書いてあることを一つ行動に移す。
それでいいと思います。
この一冊を読んだだけで生徒指導ができるようになるわけではありません。
しかし、何を大切にし、何を目指し、何をしてはいけないのか
その土台ができます。

私は、まず『生徒指導提要』を学ぶ。
そのあとに、さまざまな実践書や専門書を読む。
この順番をおすすめします。

この記事も二次情報です。必ず一次情報を読んでください。

ここで、一つだけ強く伝えておきたいことがあります。
この記事を含め、このブログに書いている内容は、あくまで二次情報です。
私が『生徒指導提要』を読み、自分の経験や考えと重ねながら整理したものです。
だから、この記事だけを読んで、
「生徒指導提要について理解した」
とは思わないでほしいのです。
大切なのは、一次情報である文部科学省『生徒指導提要(改訂版)』そのものを、自分で読むことです。
今の世の中には、情報があふれています。
ブログ。
SNS。
動画。
教育雑誌。
解説書。
研修資料。
そして生成AI。
一次情報を誰かが解説した二次情報。
その二次情報をさらに誰かがまとめた三次情報。
さらに短く切り取られた情報。
私たちは、気付かないうちに、原典から何段階も離れた情報だけを見て判断してしまうことがあります。
もちろん、二次情報には価値があります。
難しい資料を分かりやすくする。
全体像をつかむ。
読むべき場所を見つける。
実践と結び付ける。
このブログも、その役割を果たしたいと思っています。
しかし、二次情報は一次情報の代わりにはなりません。
例えば、
「生徒指導提要では、予防的な生徒指導が重視されている」
と誰かが説明していたとしても、そこで終わらず、実際の『生徒指導提要』を開いてほしいと思います。
すると、
発達支持的生徒指導。
課題予防的生徒指導。
課題未然防止教育。
課題早期発見対応。
困難課題対応的生徒指導。
という構造が見えてきます。
さらに前後を読むと、問題が起きないようにするだけではなく、すべての児童生徒の発達を日常の教育活動の中で支えることが、その土台にあると分かります。
「予防が大切です」
という一言の二次情報だけでは、ここまでの深さは伝わりません
特に、
いじめ。
不登校。
児童虐待。
自殺。
体罰。
校則。
合理的配慮。
こうした重要なテーマについて、
「○○先生が言っていた」
「SNSで見た」
「生成AIがこう答えた」
「このブログに書いてあった」
だけで判断することは避けたいところです。
「本当にそう書かれているのか」
「その前後には何が書かれているのか」
「原則なのか、具体例なのか」
「別の章ではどう説明されているのか」
一度、原典へ戻る。
これは教師の専門性として、とても大切な習慣だと思います。
私自身、このブログの記事についても、
「応援の空に書いてあったから正しい」
とは思ってほしくありません。
むしろ、
「本当はどう書いてあるのだろう」
と思って、文部科学省「生徒指導提要(改訂版)」公式ページを開いてほしいのです。
このブログは、原典の代わりではありません。
原典へ向かうための入口です。
おすすめしたい順番は、
一次情報を読む。
分からないところを二次情報で補う。
そして、もう一度一次情報へ戻る。
です。
二次情報を否定するのではありません。
一次情報と二次情報を往復しながら、自分自身で理解を深めることが大切です。
そして、それは『生徒指導提要』が大切にしている「自ら考え、選択し、決定し、行動する」という考え方とも重なるように思います。
子どもたちに、
「自分で考えよう」
と伝える教師だからこそ、教師自身も、誰かの解説だけを受け取るのではなく、原典を読み、自分で考える人でありたいと思います。

そもそも「生徒指導」とは何か

『生徒指導提要』の最初に、非常に重要なことが書かれています。
生徒指導は、問題を起こした子どもを指導することではありません。
児童生徒が社会の中で自分らしく生きることができる存在へ、自発的・主体的に成長していく過程を支える教育活動です。
ここを理解することが、すべての原点です。
生徒指導の目的には、一人一人の個性の発見、よさや可能性の伸長、社会的資質・能力の発達、そして自己実現を支えることが位置付けられています。
さらに重要なのが「自己指導能力」です。
自分は何をしたいのか。
何をするべきなのか。
自ら問題や課題を見つける。
目標を選び、決める。
他者の主体性も尊重しながら、自分の行動を決断し、実行する。
学校が育てようとしているのは、このような力です。
学校は、教師の言うことをよく聞く生徒を育てる場所ではありません。
先生から指示されたことを、間違えずに実行できる子どもをつくることが最終目標ではありません。
自分で考え、自分で選び、自分で決め、自分で行動できる人を育てる。
『生徒指導提要』を読むと、この当たり前でありながら、学校では時々見失ってしまう原点へ戻ることができます。

最初に読むなら「生徒指導の実践上の4つの視点」

全部を読む時間がなければ、まず第1章の「生徒指導の実践上の視点」を読んでください。
示されているのは、次の4点です。
・自己存在感の感受
・共感的な人間関係の育成
・自己決定の場の提供
・安全・安心な風土の醸成
私は、この4点だけでも学校を見る目が変わると思っています。
「この子は、学校で自分が大切にされていると感じているだろうか」
「この教室では、間違えても笑われないだろうか」
「教師が全部決めるのではなく、生徒自身が選択する場面があるだろうか」
「安心して質問したり、助けを求めたりできるだろうか」
このように考えるだけでも、授業、学級経営、生徒指導のあり方は変わります。

生徒指導は「問題が起きてから」が本番ではない

今回の『生徒指導提要』で、特に理解しておきたいのが、生徒指導の重層的支援構造です。
大きく、
・発達支持的生徒指導
・課題予防的生徒指導
・困難課題対応的生徒指導
に整理されています。
さらに課題予防的生徒指導は、
・課題未然防止教育
・課題早期発見対応
に分けられています。
私は、この考え方こそ、これからの学校にとって非常に重要だと思っています。
生徒指導というと、
問題が起きる。
教師が呼ぶ。
話を聞く。
注意する。
保護者へ連絡する。
という場面を想像しがちです。
もちろん、その対応は必要です。
しかし、それだけを生徒指導だと思っていると、学校はいつまでも後手に回ります。
大切なのは、問題が起きにくい学校をつくることです。
問題が深刻になる前に気付くことです。
そして、そのさらに前に、すべての子どもの発達を日常から支えることです。
つまり、生徒指導の中心を、
「起きてから対応する」
から、
「日常の教育活動そのものを改善する」
へ移していく
必要があります。
このブログでも、「問題が小さい段階でどう対応するか――威圧に頼らない生徒指導の初期対応」で、問題が小さい段階で対応することの大切さを書いてきました。
ただし、早期対応とは、早く怒ることではありません。
安全を確保する。
事実を確認する。
本人の話を聴く。
背景を考える。
必要な人と共有する。
記録する。
その後も見守る。
こうした対応を組織として行うことです。

生徒指導の基本は、やはり授業

私が『生徒指導提要』の中で特におすすめしたいのが、第2章です。
「生徒指導と教育課程」
そして、
「教科の指導と生徒指導の一体化」
です。
ここは、すべての教師に読んでほしい部分です。
生徒指導は、放課後の生徒指導室で行うものではありません。
朝から始まっています。
挨拶。
授業。
声かけ。
教師の表情。
間違えたときの対応。
友達との関わらせ方。
課題の出し方。
評価の仕方。
すべてが生徒指導です。
特に、学校生活の大部分を占めるのが授業です。
だからこそ、授業が基本です。
『生徒指導提要』にも、授業はすべての児童生徒を対象とした発達支持的生徒指導の場であると整理されています。
授業の中で、
「自分も大切にされている」
と思える。
友達の間違いを笑わない。
自分の考えを表せる。
自分で選べる。
困ったときに助けを求められる。
こうした経験を毎日積み重ねることそのものが、生徒指導です。
授業そのものを点検するときは、「中学校の授業の基本――時間・視線・声・安全・学習環境のチェックポイント」も合わせて読んでいただければと思います。

「じっと・ずっと・ぼっと」の3悪になっていないか

私は授業を見るときに、
「じっと」
「ずっと」
「ぼっと」
という三つを気にしています。
私はこれを、授業の「3悪」と考えています。
50分間、じっと座る。
ずっと教師の話を聞く。
自分で考えたり、選んだり、動いたりすることなく、ぼっと受け身になっている。
このような授業です。
もちろん、静かに話を聞く時間は必要です。
座って集中する時間も必要です。
しかし、それが50分間ほぼ続く授業は、本当にすべての生徒にとって学びやすいのでしょうか。
特に、注意の持続、感覚、読み書き、コミュニケーションなどに困難のある生徒にとっては、極めて苦しい時間になることがあります。
そこで、
「落ち着きがない」
「集中していない」
「授業態度が悪い」
と生徒だけを評価してしまえば、本末転倒です。
授業の側に改善できることはないか。
説明が長すぎないか。
自分で考える時間があるか。
話す、書く、見る、操作する、移動するなど、活動に変化があるか。
学び方を選べる場面があるか。
『生徒指導提要』が示す自己存在感、自己決定、安全・安心という視点を授業へ入れると、授業の見え方が変わります。

「不機嫌は罪」と、自戒を込めて考える

私は、教師について「あえて言えば、不機嫌は罪」と考えることがあります。
もちろん、法律上の罪という意味ではありません。
教師も人間です。
疲れている日もあります。
悩んでいる日もあります。
いつも笑顔でいる必要もありません。
しかし、教師は教室の中で大きな影響力を持っています。
教師が朝から不機嫌である。
質問した生徒へ面倒そうに答える。
間違えた生徒に苛立った表情を見せる。
相談へ来た生徒に、
「今、忙しい」
と冷たく返す。
教師にとっては一瞬でも、生徒はよく見ています。
「今日は先生に話しかけない方がいい」
「間違えたら怒られる」
「相談しない方がいい」
という空気ができれば、安全・安心な風土は崩れます。
『生徒指導提要』には、日常の挨拶、声かけ、励まし、対話なども発達支持的生徒指導として示されています。
生徒指導は特別な技術だけではありません。
教師が普段どのように子どもと接しているか。
そこが基本です。
これは職員室も同じです。
教師が安心して相談できない職員室から、安心して相談できる教室をつくるのは難しい。
「温かい職員室が温かい教室を生む――心理的安全性、守秘、対話から考える」と私が考えている理由も、ここにつながります。

学校は「教師の期待を再現できる生徒」を育てているのではない

私には、忘れられない生徒がいます。
生徒会長でした。
教師が何を求めているかを理解する力が非常に高い生徒でした。
職員室へ来ては、教師の意見を聞き、それを生徒会で実現しようとしていました。
教師から見れば、本当に優秀な生徒でした。
言われたことを理解する。
期待を察する。
その能力は抜群でした。
しかし、卒業後、社会へ出てから大きくつまずいたと聞きました。
私は後になって、このことを何度も考えました。
教師が望むことを実現する能力と、自分の人生を自分でつくる能力は同じではありません。
社会では、誰かがいつも正解を教えてくれるわけではありません。
例えば営業の仕事でも、
「これをやりなさい」
と言われたことを、そのまま実行すれば必ず成果が出るわけではありません。
相手を見て考える。
自分で課題を見つける。
方法を変える。
助けを求める。
場合によっては、上司の考えとは違う提案をする。
そうした力が必要になります。
ところが学校では、
先生の言うことをよく聞く。
静かに座る。
言われた期限を守る。
教師が期待する答えを出す。
そのような生徒を「よい生徒」としてしまう危険があります。
学校の評価軸が狭すぎれば、その子の個性や可能性を見落とすという話です。
『生徒指導提要』が目指しているのは、従順な生徒ではありません。
自己指導能力を持った人です。
自分で考え、選択し、決定し、行動する。
ここを学校が間違えてはいけないと思います。

不登校――「学校へ戻す」だけを目標にしない

不登校についても、『生徒指導提要』は非常に重要なことを示しています。
第10章では、不登校児童生徒への支援について、「学校に登校する」という結果だけを目標にしないことが明確に示されています。
目標は、将来の社会的自立です。
本人が自分の進路を主体的に捉え、自分なりの人生を歩めるよう支えることです。
不登校という状態そのものを「問題行動」と決めつけるべきではないことも示されています。
私は、この考え方を大切にしたいと思います。
学校に行かないという選択を、頭ごなしに否定してはいけません。
学校へ来ることによってさらに傷ついているのであれば、まず休む必要があることもあります。
学校以外の学び方が、その子に合う場合もあります。
しかし、そのことと、
「学校へ来なくてもいいのだから、学校側は何もしなくてよい」
ということは全く違います。
教師には、
「この学校なら行ってみたい」
「今日は教室へ行ってみようかな」
「この先生には会いたい」
「この授業は受けたい」
と思える学校をつくる仕事があります。
『生徒指導提要』の不登校の章には、発達支持的生徒指導として、
「魅力ある学校づくり」
「分かりやすい授業」
が明確に位置付けられています。
ここは非常に重要です。
不登校になった生徒への対応だけを充実させるのではありません。
そもそも、学校が安全で安心できる場所なのか。
授業が分かるのか。
自分の居場所があるのか。
自分の考えを言えるのか。
先生へ相談できるのか。
そこから見直す必要があります。
学校へ行かないという選択肢を否定しない。
同時に、学校に愛着を持ち、「学校に行く」という選択をする子どもが増えるように学校そのものを改善する。
私は、その両方が必要だと考えています。

予防的生徒指導は、学校づくりそのもの

不登校に限りません。
いじめ。
暴力行為。
自殺。
非行。
ネットトラブル。
学校で問題が起きてから対応するには、多くのエネルギーが必要です。
もちろん、起きた問題には全力で対応しなければなりません。
しかし、同時に、
「どうすれば起きにくくなるのか」
を考え続ける必要があります。
例えば、いじめを減らしたいなら、いじめ防止教室を年1回行うだけではありません。
普段の授業で人の意見を笑わない。
教師が失敗した生徒を馬鹿にしない。
少数意見を切り捨てない。
生徒が困ったときに相談できる。
生徒会で学校生活について話し合える。
このような毎日の教育活動そのものが予防です。
『生徒指導提要』の深さは、問題別の対処法だけではなく、学校の日常そのものを問い直しているところにあります。
具体的な初期対応については、「中学校の生徒指導で大切にしたい25の視点――安全・事実確認・組織対応・継続支援」でも整理しています。

校則も、教師が決めて生徒に守らせるだけではない

『生徒指導提要』では、児童生徒の権利についても明確に扱っています。
意見を表明すること。
自分に関係することについて参画すること。
一人の人間として尊重されること。
校則の見直しについても、生徒の意見を聞いたり、生徒会などで議論したりすることが示されています。
これは、
「子どもの言うとおりにする」
ということではありません。
自分たちの学校のルールについて、
なぜ必要なのか。
誰のためなのか。
今の時代にも必要なのか。
別の方法はないのか。
自分たちで考えるということです。
これこそ自己指導能力を育てる教育です。
教師が決めたルールを、疑問を持たずに守る生徒を育てるだけではありません。
ルールの意味を考え、他者の権利も尊重しながら、自分たちの社会をつくる力を育てる。
生徒指導と主権者教育、キャリア教育、特別活動がつながっていることが分かります。

理念を実現するには、人・時間・予算が必要

ここは行政や管理職にも考えてほしいところです。
『生徒指導提要』には、理想論だけが書かれているわけではありません。
SC。
SSW。
養護教諭。
特別支援教育コーディネーター。
教育相談。
チーム支援。
ICT。
校内研修。
関係機関との連携。
別室での支援。
情報共有。
すべてを実際に動かそうとすると、人も時間も必要です。
そして、多くの場合、予算も必要です。
極端に言えば、学校改革には「すべてに予算がかかる」と私は思っています。
もちろん、お金をかけなければ何もできないという意味ではありません。
挨拶する。
生徒の話を聴く。
授業中に自己決定の場をつくる。
職員室で人を傷つける言葉を使わない。
今日から、予算ゼロでできることもたくさんあります。
しかし、
「チーム学校を進めましょう」
「不登校支援を充実しましょう」
「個別最適な学びを実現しましょう」
と言うのであれば、人員、時間、研修、環境、ICT、専門職などを具体的に支える必要があります。
理念を現場の善意だけに任せてはいけません。
管理職や教育行政には、理念を人・時間・予算へ変換する仕事があります。

『生徒指導提要』を読み込んだその先へ

この本で最も大切なのは、知識を得ることではありません。
行動につなげることです。
例えば「自己決定の場の提供」を読んだなら、次の授業で一つだけ選択できる場面を入れる。
「安全・安心な風土」を読んだなら、明日の授業で生徒が間違えたときの自分の言葉を意識する。
「発達支持的生徒指導」を読んだなら、一日一人、普段あまり話さない生徒へ声をかける。
「チーム支援」を読んだなら、一人で抱えている案件を学年主任や管理職へ相談する。
「不登校」を読んだなら、「どうしたら学校へ来るか」だけではなく、「どんな学校なら行きたいと思えるか」を考える。
一つ読む。
一つ変える。
それを繰り返せばいいと思います。

まず全員に読んでほしい5項目

約300ページを前にすると、どこから読めばよいか迷います。
まずは、次の5項目です。

1.1.1.1「生徒指導の定義と目的」12ページ~

生徒指導とは何か。
何のために行うのか。
「自己指導能力」とは何か。
すべての出発点です。

2.1.1.2「生徒指導の実践上の視点」14ページ~

自己存在感、共感的人間関係、自己決定、安全・安心。
授業にも学級経営にも生徒指導にも使える4つの視点です。

3.1.2「生徒指導の構造」17ページ~

発達支持的生徒指導、課題予防的生徒指導、困難課題対応的生徒指導。
生徒指導を「問題対応」だけで考えなくなります。

4.2.2.3「教科の指導と生徒指導の一体化」46ページ~

私は特におすすめします。
生徒指導は授業の中にあるということが、よく分かります。

5.1.5.1「児童生徒の権利の理解」32ページ~

児童生徒を「指導される側」とだけ捉えないために必要な部分です。

一校目・初任・若手の先生におすすめ

一校目の先生には、難しい個別事案の章から読むより、まず土台を読んでほしいと思います。
おすすめは、
・1.1.1 生徒指導の定義と目的
・1.1.2 生徒指導の実践上の視点
・1.2.2 発達支持的生徒指導
・1.3.1 児童生徒理解
・2.2.3 教科の指導と生徒指導の一体化

です。
最初の数年間は、
「注意の仕方」
「叱り方」
「生徒を動かす方法」
を知りたくなります。
しかし、その前に、
「何のために生徒指導をするのか」
を理解しておくことが重要です。
授業づくりについては、「中学校の授業の基本――時間・視線・声・安全・学習環境のチェックポイント」と合わせて読むと、生徒指導と授業が別物ではないことが見えてきます。

二校目・中堅・主任を担い始めた先生におすすめ

二校目以降になると、自分の学級、自分の授業だけではなく、学年や後輩へ視野を広げる必要があります。
おすすめは、
・1.3.4 チーム支援による組織的対応
・1.4.1 教職員集団の同僚性
・2.1.3 学級・ホームルーム経営と生徒指導
・3.2.2 学年・校務分掌を横断する生徒指導体制
・3.4 生徒指導と教育相談が一体となったチーム支援

です。
「自分ならこうする」
だけでは学校は動きません。
誰が見ても同じ事実を共有する。
必要な情報だけを共有する。
役割を決める。
記録する。
支援を振り返る。
こうした組織としての生徒指導が必要になります。
「中学校の学年主任の役割と仕事――学年経営、会議、情報共有、チームづくり」も、この段階で合わせて読んでいただきたい記事です。

三校目以降・学校の中核を担う先生におすすめ

学年主任、生徒指導主事、教務主任など学校の中核を担うようになったら、組織づくりとして読むことをおすすめします。
・1.4.1 教職員集団の同僚性
・1.4.2 生徒指導マネジメント
・3.1 チーム学校における学校組織
・3.2 生徒指導体制
・3.3 教育相談体制
・3.6 生徒指導に関する法制度等の運用体制

このあたりです。
生徒指導力の高い先生が一人いる学校ではなく、その先生が異動しても機能する学校をつくる必要があります。
個人技を仕組みに変える。
若い先生が困ったときに相談できる。
情報が必要なところへ届く。
事案が一人の担任に集中しない。
この視点が必要になります。
「温かい職員室が温かい教室を生む――心理的安全性、守秘、対話から考える」も、この部分と非常に深くつながります。
また、組織の意思決定という観点では、「学校の意思決定はどうあるべきか――会議、合意形成、リーダーシップの設計」も関連します。

管理職におすすめ

管理職には、第1部を一通り読んでほしいと思います。
特に、
・1.4.2 生徒指導マネジメント
・3.1 チーム学校における学校組織
・3.2 生徒指導体制
・3.5 危機管理体制
・3.6 生徒指導に関する法制度等の運用体制
・3.7 学校・家庭・関係機関等との連携・協働

です。
さらに、第2部の、
・第4章 いじめ
・第7章 児童虐待
・第8章 自殺
・第10章 不登校
・第13章 多様な背景を持つ児童生徒への生徒指導

は、必要なときにすぐ確認できるようにしておきたいところです。
管理職の仕事は、
「先生方、生徒指導を頑張ってください」
と言うことではありません。
学校として何を大切にするかを示す。
役割を決める。
時間を確保する。
情報共有の仕組みをつくる。
必要な専門職につなぐ。
必要な予算を求める。
事案が起きたときに組織を動かす。
そして、日常の授業や学校文化を改善する。
そこまで行って、初めて生徒指導マネジメントになります。

第2部は「困ったときに開く辞書」として使う

第2部には、
いじめ。
暴力行為。
少年非行。
児童虐待。
自殺。
中途退学。
不登校。
インターネット・携帯電話に関わる問題。
性に関する課題。
多様な背景を持つ児童生徒への生徒指導。
が整理されています。
全部を暗記する必要はありません。
事案が起きたとき、
「そういえば、生徒指導提要にはどう書いてあったか」
と確認する習慣をつける。
それで十分です。
このブログの「中学校の生徒指導で大切にしたい25の視点――安全・事実確認・組織対応・継続支援」も、具体的な学校現場での初期対応を考える際に合わせて読んでいただければと思います。

この一冊には、多くの人の思いが詰まっている

『生徒指導提要』の「まえがき」も、ぜひ読んでください。
平成22年版から12年ぶりに改訂されました。
その改訂には、協力者会議の委員をはじめ、多くの執筆者が関わっています。
デジタルテキスト化についても、多くの労力をかけて作成されています。
300ページ近い内容です。
これだけの内容を、国が無料で公開しています。
私は、最高の教材の一つだと思っています。
冊子版も出版されています。
紙で書き込みながら読みたい人は冊子。
検索しながら必要なところを読みたい人はデジタル版。
自分に合う方法で使えばよいと思います。
しかも、文部科学省の「生徒指導提要(改訂版)」公式ページでは、PDFだけではなく、デジタルテキストの活用ガイドや改訂履歴も公開されています。
『生徒指導提要(改訂版)』PDFはこちらから直接読むことができます。
一度作って終わりではなく、デジタルで参照されることを前提とした基本書になっています。
この企画を考え、作成に関わった方々には、本当に感謝したいと思います。

次期学習指導要領に向けても、まず現在の基本を理解する

2026年現在、次期学習指導要領に向けた議論は進んでいます。
学習指導要領の構造化、デジタル化、教育課程の柔軟化など、これから学校教育はさらに変わっていくでしょう。
それに伴って、将来『生徒指導提要』の内容も更新されていくと思います。
自己存在感。
共感的な人間関係。
自己決定。
安全・安心。
発達支持。
未然防止。
児童生徒理解。
授業との一体化。
チーム支援。
社会的自立。
これらは、これから学校教育がどう変化するのかを考える上でも、重要な土台になります。
次期学習指導要領に向けた現在の検討状況については、文部科学省の「教育課程企画特別部会における論点整理について」から確認できます。

まず、この一冊を学んでから

教育書店へ行けば、生徒指導の本はたくさんあります。
授業づくり。
学級経営。
不登校。
いじめ。
特別支援教育。
教育相談。
心理学。
コーチング。
ファシリテーション。
どれも学ぶ価値があります。
しかし、私はまず『生徒指導提要』をおすすめします。
この一冊の深さを理解する。
そして、自分の学校、自分の授業、自分の行動へ落とし込む。
そのあとに、自分がさらに学びたい分野の専門書を読む。
そうすれば、個々の実践を「技」だけで終わらせず、何のために行うのかを考えながら学ぶことができます。
生徒指導とは、問題を起こした生徒を何とかすることではありません。
すべての子どもが、自分らしく社会の中で生きていくための力を育てる教育です。
その中心にあるのは、特別な生徒指導の時間ではありません。
毎日の授業です。
毎日の対話です。
毎日の学校生活です。
問題が起きてから動くのではなく、問題が起きにくい学校をつくる。
学校へ行かないという選択を否定しない。
その一方で、
「この学校なら行きたい」
と思ってもらえる学校をつくる。
教師の指示をよく聞く子どもではなく、自分で考え、選び、決め、行動できる子どもを育てる。
その原点を確認するために、私は『生徒指導提要』を何度でも読み返したいと思います。
まず、この一冊からです。

参考資料

文部科学省『生徒指導提要(改訂版)』(令和4年12月)公式ページ
文部科学省『生徒指導提要(改訂版)』PDF
中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会「教育課程企画特別部会における論点整理」

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