いじめアンケートや面談記録の保存に関する留意事項|普通に教師を続けていくために、やってはいけないこと

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いじめに関するアンケートや面談記録を、「指導して仲直りしたから」「年度が替わるから」「個人情報なので残さない方がよい」と、担任の判断だけで捨ててはいけません。いじめの記録は、学校を守るためだけの書類ではありません。被害を受けた児童生徒の安全を継続して守り、対応を途切れさせず、後から新しい事実が分かったときに検証するための基盤です。

一方、何でも無期限に保存し、誰でも閲覧できる状態にすればよいわけでもありません。保存期間、保存場所、閲覧権限、引継ぎ方法は、学校設置者の文書管理規則や個人情報の取扱いに従って決める必要があります。この記事では、何を記録し、どこへ移し、誰と共有し、いつまで保存するかを、担任任せにしないための実務を整理します。

1.「解決した」と「記録が不要になった」は別である

児童生徒同士が謝罪した、表面上のトラブルが止まった、保護者が納得したように見えたとしても、それだけで記録が不要になるわけではありません。いじめは、形を変えて続くことがあります。直接の言動が止まっても、SNS、仲間外れ、視線やうわさなど、教師から見えにくい形へ移る場合があります。

また、その時点では軽いトラブルに見えた出来事が、欠席の増加、心身の不調、別の児童生徒からの情報などと結び付いて、後から重大な意味を持つこともあります。児童生徒や保護者が、相当の期間を経てから「当時からいじめが続いていた」と申し立てる場合もあります。その際、当時のアンケート、面談、校内会議、保護者連絡の記録がなければ、学校は子どもの訴えを丁寧に確かめることができません。

文部科学省の「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」も、定期アンケート、教育相談、通報・面談、学校いじめ対策組織の会議など、平時に作成した資料を調査に活用できるよう保存することを重視しています。「重大事態になったら記録を作る」のではなく、日頃から残しておくことが必要です。

2.保存すべきものを担任のノートだけにしない

いじめに関する情報は、正式な報告書だけに現れるわけではありません。日常の小さな情報が、後から全体像を理解する手掛かりになります。学校として、少なくとも次の資料をどう扱うか決めておきます。

  • いじめ・生活アンケートの回答原本と集計結果
  • 教育相談、個人面談、聞き取りの記録
  • 児童生徒や保護者からの相談、電話、連絡帳等の記録
  • 欠席、遅刻、保健室利用、心身の変化に関する必要な記録
  • 学校いじめ対策組織、学年会議、ケース会議の議事記録
  • 学校が確認したSNS投稿、画像、動画等に関する記録
  • 被害・加害双方への支援や指導、その後の見守りの記録
  • 教育委員会、警察、福祉・医療機関等との連携記録

担任が手帳や机上メモに残しているだけでは、欠勤、異動、学年替わりの際に情報が失われます。個人メモに重要な事実が含まれる場合は、そのまま放置せず、学校の統一様式や承認された校務システムへ移します。文部科学省は2026年3月19日の通知で、日頃の教育活動で作成・取得したメモ等を文書管理規則に基づいて管理し、統一様式など記録・保存の仕組みを整えることを求めています。

3.記録は「評価」より先に事実を書く

「本人同士のすれ違い」「悪気はなかった」「よくあるけんか」といった言葉は、事実ではなく評価です。最初から評価でまとめると、児童生徒が何をされ、どう感じ、学校が何を確認したのかが見えなくなります。

記録には、「いつ」「どこで」「誰が」「誰に」「何を」「どうした」を、分かる範囲で具体的に書きます。本人の言葉は要約し過ぎず、重要な部分はかぎ括弧で残します。教師が直接見たこと、児童生徒から聞いたこと、第三者から得た情報、教師の推測を分けます。分からないことは「不明」と書き、空白を推測で埋めません。

例えば、「AがBを無視した」だけではなく、「10月23日昼休み、Bが班の会話に二度加わろうとした際、Aを含む三人が席を移したとBが話した。担任はその場面を直接見ていない」と記録します。その上で、Bの受け止め、心身の状態、安全上の心配、学校が行った対応、次に確認する日を残します。

聞き取りの初期対応については、「いじめの訴えを担任一人で『様子見』にしない」も併せて確認してください。

4.「個人情報だから共有しない」も危険である

いじめの記録には、児童生徒や家庭に関する慎重な取扱いが必要な情報が含まれます。だからこそ、職員室の雑談や私的なチャットで広げず、目的と役割に応じて閲覧者を限定します。しかし、個人情報であることを理由に、担任一人が抱え込むことも適切ではありません。

法に基づく学校いじめ対策組織へ必要な情報を共有し、組織として認知、支援方針、安全確認、保護者対応を検討します。文部科学省の基本方針は、軽い言葉で傷つけた後に関係が改善したような場合でも、法の定義に該当するいじめであれば、学校いじめ対策組織への情報共有が必要だとしています。

共有の際は、全教職員に詳細を一斉送信するのではなく、誰が何のために必要かを考えます。保存場所は、学校設置者が承認したシステムや施錠できる所定の場所とし、私物端末、個人クラウド、個人のUSBメモリーへ保存しません。印刷物を会議後に机上へ残さず、回収・保管・廃棄の担当も決めます。

5.アンケートの原本を集計後すぐ処分しない

アンケートは、集計表へ数字を移したら役割を終えるものではありません。自由記述の言葉、回答の変化、無回答、同じ児童生徒について複数人が書いた情報など、原本でなければ確認できないことがあります。集計結果だけを残し、回答用紙を捨てると、後から重要な記載を検証できません。

保存期間は、担任や学校がその場で決めず、自治体・学校設置者の文書管理規則、学校いじめ防止基本方針、ガイドラインを確認します。文部科学省のガイドラインは、アンケートの質問票の原本等の一次資料を、少なくとも対象児童生徒が卒業するまで保存する考え方を示しています。また、聴取結果を記録した文書や調査報告書等についても、定められた期間の保存が必要です。

ただし、全国一律の運用だけで判断せず、所管教育委員会の規程が優先される場面があります。保存期間が不明なら、捨てる前に管理職と教育委員会へ確認します。「念のため個人で持っておく」のではなく、学校の正式な管理へ移すことが重要です。

6.デジタル情報は「証拠を集め過ぎない」

SNS上の投稿、画像、動画、メッセージは重要な手掛かりになることがあります。一方、教師が児童生徒に「全部こちらへ転送して」と求めたり、私物端末で撮影・保存したりすると、性的画像や個人情報を新たに複製・拡散する危険があります。

何を、誰が、どの端末で、どの方法により記録するかを管理職と確認し、必要に応じて警察や教育委員会へ相談します。削除を急ぐ必要がある場合でも、相談先の指示を受け、URL、アカウント、確認時刻、閲覧した内容など、必要最小限の情報を安全に残します。児童生徒の端末を教員が独断で長時間預かったり、パスワードを聞き出したりしません。

性的な画像を含む場合の初動は、「児童生徒の性的な画像が広がったときの対応の基本」で詳しく整理しています。

7.進級・転学・卒業で情報を途切れさせない

いじめの対応が年度内に落ち着いていても、進級時には新しい担任や学年へ、支援上必要な情報を引き継ぎます。被害を受けた児童生徒が安心して過ごすための座席、活動班、休み時間、相談先など、具体的な配慮を共有します。加害側とされた児童生徒についても、ラベルを貼るのではなく、再発防止と成長支援に必要な情報を引き継ぎます。

転学や進学の際は、何をどこまで伝えるかを学校だけで曖昧に判断せず、法令、設置者の規程、本人・保護者への説明を踏まえます。文部科学省の基本方針も、いじめに関する指導記録を保存し、進学・進級・転学時に適切に引き継ぐ体制を求めています。

「前の学校の話だから」「昨年度の担任の案件だから」と切り離すと、児童生徒は同じ説明を繰り返さなければなりません。引継ぎは、過去の問題を持ち越すためではなく、同じ被害や支援の中断を防ぐために行います。

8.重大事態の可能性が生じたら保存を止めない

不登校が続く、心身に大きな影響が出る、金品や性的な被害があるなど、重大事態の可能性が生じた場合、学校だけで「そこまでではない」と判断して資料を整理・廃棄してはいけません。学校設置者へ速やかに報告・相談し、関連する資料の所在を確認して保全します。

この段階で、過去の記録を書き直して一つの説明へ合わせたり、担当者同士で相談して記憶を統一したりしてはいけません。原本を保持し、後から追記する場合は、追記した日付と作成者を明確にします。事実確認と評価を分け、欠けている資料があれば、そのこと自体も記録します。

重大事態の判断と初期対応については、「いじめ重大事態を視野に入れるときに最初に考えること」、学校外の相談先との連携は、「こども家庭庁が学校外のいじめ相談体制を整理」も参考になります。

9.組織として明日確認する七つのこと

  1. いじめアンケートの原本と集計結果の保存場所を確認する。
  2. 教育相談や保護者連絡を記録する統一様式を確認する。
  3. 個人メモを正式な記録へ移す期限と担当者を決める。
  4. 学校いじめ対策組織で情報を共有する手順を確認する。
  5. 閲覧権限、持出し、印刷、廃棄のルールを確認する。
  6. 進級・転学・異動時の引継ぎ項目を決める。
  7. 保存期間が不明な資料は、廃棄前に設置者へ確認する。

まとめ

いじめの記録は、「学校が対応したことを証明するため」だけのものではありません。児童生徒の訴えを時間が経っても確かめ、支援を継続し、別の教職員や機関と連携するためのものです。解決したように見えても、担任の判断だけでアンケートや面談記録を捨ててはいけません。

同時に、情報を無秩序に集めたり、私物端末へ保存したりすることも避けます。何を残すか、どこへ保存するか、誰が見られるか、いつ引き継ぐかを学校の仕組みにする。記録を「個人の備忘録」から「子どもの安全を守る組織の資源」へ変えることが必要です。

参考資料

※具体的な保存期間、開示、引継ぎ、廃棄の方法は、学校設置者の文書管理規則、個人情報保護に関する規程等に従ってください。

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