今からでも遅くない|次期学習指導要領で重視される「外化」とは

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次期学習指導要領に向けた議論の中で、「外化」という言葉が目立つようになりました。2026年10月20日に中央教育審議会へ示された資料では、各教科等を通じて「自分の意見や考えを根拠をもって表現する活動」を充実し、AIに依存せず、書く・話すなどの外化を通して、習得した知識や自分の意見を表現する方向性が示されています。

ただし、これは新しい学習指導要領として正式に告示された内容ではありません。2026年10月5日に教育課程部会が取りまとめた「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」に基づく方向性であり、10月6日から11月5日までパブリック・コメントが行われています。現時点では「決定事項」ではなく、「審議中の改善方向」として受け止める必要があります。

一方、考えを言葉や図表で表し、他者への説明を通して理解を確かめることは、現行の学習指導要領でも重視されています。したがって、次期学習指導要領を先取りして新しい活動を増やすのではなく、今行っている授業の中で、子どもが何を考え、何を根拠に判断したのかを表せる場面を一つ整えることから始められます。

1.「外化」は頭の中の考えを学習可能な形にすること

外化とは、頭の中にある理解、疑問、判断、気付きなどを、他者や自分自身が確かめられる形に表すことです。発言や文章だけでなく、式、図、表、グラフ、スケッチ、動作、作品、モデルなども外化に含めて考えられます。

授業中、教師から見ると静かに考えているようでも、児童生徒の頭の中で何が起きているかは分かりません。本人も「分かったつもり」のまま進んでいることがあります。短い説明を書いたり、友達に話したり、関係を図にしたりすると、知識同士のつながりや、理解が曖昧な部分が見えるようになります。

大切なのは、外化を発表技術の訓練だけにしないことです。きれいに話せたかではなく、学んだ知識を使って何を説明できたか、どの根拠からその判断に至ったか、考えがどう変わったかを扱います。外化は、完成した答えを披露する最後の活動ではなく、学びの途中で理解を確かめ、考え直すための活動です。

2.現行制度にも既にある考え方

文部科学省は現行の授業改善について、習得・活用・探究の過程で、知識を関連付けて深く理解すること、情報を精査して考えを形成すること、問題を見いだして解決策を考えることなどを「深い学び」として示しています。また、学習内容を他者に説明することは、説明する側と聞く側の双方が理解を確認し、定着を図る上で有効だとしています。

言語活動の充実に関する資料でも、事実を知識や経験と結び付けて解釈すること、意見と根拠、原因と結果などの関係を明確にして説明すること、他者の考えと比較し、妥当性や信頼性を吟味することが重視されています。

つまり、外化という言葉だけを見れば新しく感じますが、授業で目指すことの多くは現行の実践とつながっています。新しい書式や特別な教材を用意するより、現在の発問や振り返りを、「答えを書かせる」から「根拠と考えのつながりを表させる」へ少し変えることが重要です。

3.「たくさん発表させること」と同じではない

外化を重視すると聞くと、発表、話合い、振り返りを書く時間を増やせばよいと思いがちです。しかし、活動量が増えても、ねらいが曖昧なら学びは深まりません。「近くの人と話し合いましょう」と指示しただけでは、既に分かっている答えの確認や、感想の交換で終わることがあります。

外化の前に教師が明確にしたいのは、何を表してほしいのかです。「答え」ではなく「そう考えた根拠」、「結果」ではなく「結果に至る過程」、「感想」ではなく「学ぶ前後で変わった考え」を求めます。例えば「なぜそう言えるのか、資料中の言葉を一つ使って説明する」「二つの方法を比べ、どの条件ならどちらを選ぶかを書く」とすれば、表す対象が具体的になります。

全員が順番に発表する必要もありません。個人で一文を書く、ペアで説明する、共有画面へ同時に投稿する、教師が幾つかを匿名で取り上げるなど、目的に応じて方法を選びます。外化する時間より、表された考えを比較し、問い返し、修正する時間の方が重要な場合もあります。

4.生成AI時代だからこそ「本人の考え」を確かめる

審議まとめの概要資料では、「AIに依存せず」という表現とともに、書く・話すなどの外化が示されています。これは、生成AIを一律に使わないという意味ではありません。AIが整った文章を短時間で出せる時代だからこそ、児童生徒自身が何を理解し、何を疑い、どの根拠から判断したのかを確かめる学習過程が重要になるということです。

例えば、最初からAIに文章を書かせると、本人の考えが形成される前に、完成度の高い表現が置かれてしまうことがあります。そこで、まず自分の仮説を三行で書く、根拠となる資料を示す、口頭で説明するなど、本人の一次的な外化を置きます。その後にAIの回答と比べ、足りない視点や誤りを検討するなら、AIを考えの代替ではなく、考えを見直す材料として使えます。

教師が最後に判断するのは、提出物の文章が整っているかだけではありません。本人が内容を説明できるか、使った資料を示せるか、問い返されたときに考えを修正できるかを見ます。AI利用の有無を当てることより、学びの過程を授業内で見取れる設計にすることが現実的です。

5.授業の三つの場面に外化を置く

外化は、授業の最後だけに置く必要はありません。授業前半、途中、終末の三つの場面で役割が異なります。

学習前の外化では、既有知識や予想を表します。「知っていることを二つ書く」「結果を予想し、理由を一つ示す」とすれば、教師は出発点を把握できます。児童生徒自身も、自分の考えが授業後にどう変わったかを確かめられます。

学習途中の外化では、理解のずれや未解決の問いを表します。「ここまでを図で整理する」「隣の人に30秒で説明する」「最も確かでない部分に印を付ける」といった短い活動が有効です。教師は誤解を早く見つけ、説明や課題を調整できます。

学習後の外化では、知識を別の場面で使える形にします。「今日の考え方が使える別の例を作る」「最初の予想を根拠とともに修正する」「次に確かめたい問いを書く」とします。単なる感想ではなく、学習内容と自分の思考の変化を結び付けます。

6.各教科での外化は同じ形でなくてよい

国語では、文章中の叙述を根拠に解釈を説明することができます。社会では、複数の資料を関連付け、どの資料から何が言えるかを示します。数学では、答えだけでなく、式や図を選んだ理由、別の解法との違いを説明します。理科では、観察・実験の結果と考察を分け、データから言える範囲を表します。

外国語では、正確さだけでなく、目的や相手に応じて自分の考えを伝える活動を置けます。保健体育や技術・家庭では、実際の場面を想定し、選択した方法と安全面の根拠を説明できます。芸術では、作品そのものに加え、表現意図や工夫、鑑賞による見方の変化を言葉や図で表せます。

教科ごとに適切な外化の形は異なります。全教科で長い文章を書かせることが目的ではありません。教科の「見方・考え方」に合った表現を選び、知識と判断のつながりが見えるようにします。

7.話すことや書くことが苦手な子を置き去りにしない

外化を全員に求めるときは、表現方法を一つに固定しない配慮が必要です。大勢の前で話すことに強い不安がある子、書字に困難がある子、日本語の習得途中にある子などに、同じ方法と時間だけを求めれば、本来の理解を十分に表せないことがあります。

短文、箇条書き、図、選択肢と理由、音声入力、録音、写真への書き込みなど、複数の方法を用意します。文の型やキーワードを示すことも、考えを代わりに与えるのではなく、表現への足場かけになります。「私は〇〇と考える。なぜなら△△だからだ」のような型から始め、慣れたら徐々に自分の表現へ移します。

発言の速さや文章量を、そのまま理解の深さと見なしません。待つ時間、考える時間、修正する機会を保障し、児童生徒が安心して未完成の考えを出せる学級づくりと組み合わせます。

8.外化した量をそのまま評価しない

ノートの文字数、発言回数、振り返りの長さだけを評価すると、外化が「評価されるための作業」になります。よく話す子が有利になり、慎重に考える子や表現に時間がかかる子が不利になるおそれもあります。

外化したものは、まず指導改善の材料として使います。どの知識がつながっていないか、根拠と結論の間に飛躍がないか、別の考えを受けて修正できたかを見ます。評価に用いる場合も、学習目標と評価規準に照らし、表現の見栄えではなく、そこで示された知識・技能や思考・判断・表現を捉えます。

次期学習指導要領の評価方法は、まだ正式決定していません。審議中の用語だけを根拠に、新しい点数化や記録様式を先に始めるべきではありません。現行の評価規準を守りながら、児童生徒へのフィードバックと授業改善に生かします。

9.明日の授業で一つだけ変える

明日の授業では、これまで「分かりましたか」と聞いていた場面を一つ選び、「30秒で、なぜそう言えるかを隣の人に説明してください」に変えてみます。あるいは、「答えと、その根拠になった言葉・式・資料を一つ書いてください」でも構いません。

その後、教師は正解だけを確認せず、「どの根拠を使ったか」「説明して分からなくなった部分はどこか」「他の考えを聞いて何を変えたか」を取り上げます。全員に立派な発表を求める必要はありません。短い外化によって、教師と児童生徒の双方が現在地を確かめられれば十分です。

次期学習指導要領の方向性を学ぶ目的は、新しい言葉を先に使うことではありません。今の授業を見直し、子どもが知識を使って考え、その考えを確かめ、必要に応じて修正できるようにすることです。「外化」は、その過程を支える小さく実践的な手立てです。

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