「来年度、主任をお願いしたい」と強く勧められたら|ミドル・ベテラン教師の仕事術③

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「来年度は、先生に学年主任をお願いしたいと思っています」

年度末が近づくと、校長や教頭から、このように声をかけられることがあります。

「あなたなら安心して任せられる」「若い先生たちをまとめてほしい」。期待されるのはうれしい一方、心の中では別の声も聞こえてきます。

今でも授業と担任業務で精いっぱいです。家庭の事情もあります。以前、主任を引き受けたときは、結局、自分がほとんどの仕事を抱えました。

それでも、「学校のためだから」と引き受けるべきなのでしょうか。

今回の連載では、学年主任・教務主任などの役割を強く勧められた場面を取り上げます。結論を先に言えば、引き受けるかどうかは、能力や意欲だけで決めることではありません。役割、権限、時間、支援体制を具体的に確認し、学校にとっても本人にとっても持続可能な形を探ることが必要です。

なお、ここで示す会話は実際の個別事例の再現ではなく、学校現場で起こり得る状況をもとにした例です。

1.「頼られている」と「引き受けられる」は別のこと

経験を積んだ先生ほど、周囲から頼まれる仕事が増えます。学年の調整、保護者対応、若手への助言、難しい生徒指導、行事の立て直し。こうした仕事を任されるのは、積み重ねてきた信頼の表れかもしれません。

しかし、信頼されていることと、追加の仕事を無制限に担えることは同じではありません。

管理職が「先生しかいない」と言ったとき、その言葉には二つの意味が混じっていることがあります。一つは、その先生の力量を評価しているという意味。もう一つは、学校の役割分担や後継者育成が十分でないという事情です。

後者まで一人の責任感で補い続ければ、学校は同じ問題を翌年も抱えます。まずは期待を受け止めながら、何を任されようとしているのかを具体化したいものです。

2.最初に確認するのは「肩書」ではなく仕事の中身

「学年主任」と聞いても、学校によって仕事の範囲は異なります。学年会議の進行が中心の学校もあれば、行事、保護者対応、若手育成、時間割調整まで集中する学校もあります。

そこで、受諾の前に、担当する仕事を三つに分けて尋ねます。

第一は、必ず担う仕事です。第二は、他の担当者と分担できる仕事です。第三は、これまで慣例で主任が担ってきたものの、見直せる仕事です。

「主任の仕事は去年と同じです」と言われたら、前年度の担当者の実際の業務を確認させてもらいます。肩書ではなく、繁忙期の仕事量と判断の範囲を見ることが、現実的な相談の出発点です。

3.受ける・条件付きで受ける・難しいと伝える判断軸

私は、次の五つを確認して判断することを勧めます。

①児童生徒と学校にとって、その役割が必要か。②自分の経験や強みを生かせるか。③授業・担任・分掌など既存業務との両立が可能か。④必要な権限と協力者がいるか。⑤健康や家庭生活を含め、一定期間続けられるか。

五つとも十分なら、引き受ける選択に意味があります。目的には納得できても、③や④が整っていなければ、条件付きで引き受けることを検討します。負担の調整ができず、⑤にも重大な懸念があるなら、難しいと伝える判断が必要です。

ただし、校務分掌の正式な決定や職務命令としての取扱いは、任用形態、学校管理規則、服務上の取扱い等によって異なります。「断る」と言えば必ず配置が変わると考えず、正式決定前に事情と代替案を具体的に協議してください。

4.場面①「来年度は学年主任を」と言われたとき

校長から「次の学年は若い先生が多いので、あなたに学年主任をお願いしたい」と言われたとします。

その場で「無理です」と返す前に、まず何を期待されているかを確かめます。

「学年運営の安定を期待していただいていると理解しました。具体的には、どの部分を私に担ってほしいと考えておられますか」

そのうえで、担当授業数、担任の有無、行事の主担当、若手の相談体制を尋ねます。若手が多いからこそ、主任が全ての相談を一人で受ける仕組みは避けたいところです。

例えば、学年会議の設計は主任が担い、行事の準備は複数人で担当し、深刻な生徒指導は管理職や校内組織へつなぐ。こうした役割分担が見えれば、引き受けるかどうかを判断しやすくなります。

5.場面②「教務主任は先生しかできない」と言われたとき

教務主任の仕事は、年間行事、教育課程、時間割、各種調整など、学校全体に及ぶことがあります。

「今までやってきた先生が異動するので、あなたしかいません」と頼まれた場合は、特に引継ぎと代替体制を確認します。

「引き受ける可能性は考えたいです。ただ、前任者の仕事をそのまま一人で引き継ぐ形では難しいと思います。年間業務の一覧と、教頭先生が判断する範囲を確認させてください」

時間割作成の補助、提出文書の担当、学校行事の調整など、切り分けられる仕事はないでしょうか。属人的な手順を共有資料へ移す時間も必要です。

「できる人がいるから任せる」ではなく、「その人が力を発揮できる体制をつくる」ことが学校運営の課題です。

6.受けるなら「何を減らすか」を同時に決める

主任の仕事が増えても、一日の時間は増えません。

そこで、受ける場合には、既存業務を一覧にして管理職と相談します。担当授業、担任、副担任、部活動、研究・研修、行事、委員会、若手支援などを並べ、繁忙期を確認します。

例えば、教務主任を担うなら、別の大きな行事の主担当を外す。学年主任なら、学年便りの作成を分担する。担任も兼ねるなら、保護者対応が重なる時期の支援者を決める。

何かを減らすときは、単に別の一人へ移すだけでは不十分です。業務そのものを簡素化・統合できないかも考えます。

新しい役割の依頼と、既存業務の調整は、一組で話し合うものだと思います。

7.「少し手伝ってくれればいい」の曖昧さを残さない

「名目上は主任ですが、実際にはみんなでやります」という説明もあります。

本当に分担できるなら、よいことです。しかし、誰が何を担うかが決まっていないと、最後は主任へ仕事が戻ってきます。

「みんなで」の中身を具体化しましょう。誰が会議資料をつくるのか。行事の最終案を誰が確認するのか。保護者から強い申し出があったとき、誰が対応するのか。欠員が出たとき、誰が調整するのか。

役割表を細かく作りすぎる必要はありません。少なくとも、担当者、判断者、相談先、期限が分かる状態にします。

「何かあったら相談して」だけでは、困ったときに相談する判断まで主任が一人で背負うことになります。

8.条件付きで引き受ける返答例

「期待していただいていることは理解しています。学校のために力を尽くしたい気持ちもあります。ただ、現在の担当をそのまま続けると、授業準備や学年運営の質を保つことが難しくなります。行事の主担当を外し、教頭先生との定期的な打ち合わせを設けていただけるなら、引き受ける方向で考えたいです」

この返答では、協力する意思と必要な条件を分けて示しています。

条件は、曖昧な「配慮してください」ではなく、変更できる業務や支援方法にします。例えば「週に一度、判断案件を教頭と確認する」「年度初めの時間割作成を複数人で行う」「学期末に負担を点検する」などです。

条件を伝えることは、わがままではありません。仕事の品質と継続性を確保するための相談です。

9.難しいと伝える返答例

「お声かけいただいたことは重く受け止めています。ただ、現在の授業と家庭の事情を考えると、来年度、主任として責任を持って仕事を続けることは難しいと考えています。中途半端に引き受けることは、学年の先生方にも負担をかけると思います」

必要なら、続けて「年間計画の引継ぎや、次の主任への資料提供であれば協力できます」と伝えます。

代替案を出せる場合は有効ですが、断るために必ず別の仕事を引き受けなければならないわけではありません。

健康や家族の事情を詳しく説明したくない場合は、必要以上に開示する必要はありません。勤務上の調整に必要な情報は、適切な相手と方法で伝えます。正式な校務分掌に関する協議であれば、最終的な取扱いを管理職に確認します。

10.「将来は管理職を」と言われたとき

主任への依頼と一緒に、「いずれ管理職を目指してほしい」と言われることもあります。

拙著『管理職への道を考え始めた先生へ』では、学年主任などを担い、他の教職員と協力して仕事を進める経験が、自分の適性を考える機会になることを取り上げました。

主任の経験から、学校全体を見る視点や調整力を学べるのは確かです。しかし、主任を引き受けることと、管理職を目指すことは同じではありません。

「主任の仕事には関心がありますが、管理職への進路は別に考えたいと思っています」と伝えて構いません。

管理職を目指さない先生にも、学校を支える専門性があります。主任の経験を、特定の進路へ進ませるための踏み絵にしないことが大切です。

11.若手育成まで主任一人に集めない

「主任になったら、若い先生の面倒もお願いします」と言われることがあります。

若手を支えることには大きな意味があります。ただし、若手の相談、授業づくり、保護者対応、校務の進め方を全て主任一人が担当すると、本人も若手も苦しくなります。

若手の支援には、教科の相談相手、学級経営の相談相手、校務の相談相手など、複数の経路を用意したいものです。

主任は相談を一手に引き受けるのではなく、必要な人へつなぎます。若手にも、自分で考えて動ける余地を残します。

第1回の「若手の面倒を見てほしい」と頼まれた場合と同様、支援する人の時間を確保しないまま「育成」を上乗せしてはいけません。

12.主任になった後の最初の会議で伝えること

条件を整えて主任を引き受けたら、最初の会議で「私が全部やります」と言わないことです。

代わりに、「学年の子どもたちをみんなで支えたいと思います。私も責任を持って調整しますが、仕事は役割を分けて進めます。困りごとは早めに共有し、学年で抱えきれないことは管理職へつなぎます」と伝えます。

続けて、会議の進め方、情報共有、行事の担当、判断が必要な案件の報告経路を確認します。

全員の仕事を同じ量にすることが公平とは限りません。担当授業数、経験、専門性、健康や家庭の事情などを踏まえ、過度な偏りが生じないよう調整します。

主任の力量は、自分がどれだけ働いたかだけでは測れないのです。

13.校長・教頭へ相談する時点を先に決める

主任が最も疲弊しやすいのは、相談してよいのか迷う案件を一人で抱え続けるときです。

例えば、学年の教職員間で意見が対立したとき。生徒指導が複数の学級へ広がったとき。保護者対応が長期化したとき。授業や行事の安全に関わる問題が生じたとき。

こうした場面で、主任が全ての判断を背負う必要はありません。安全や権利に関わる事案は、学校の定める手順に従い、必要な校内組織や管理職へ速やかにつなぎます。

平常時にも、週に一度の短い打ち合わせを設けるなど、相談を習慣にします。

「何かあれば言ってください」ではなく、「どの段階で、誰に、何を共有するか」を事前に決めることが、管理職の支援にもなります。

14.「昨年はできていた」は比較の材料にならない

前任の主任が、毎晩遅くまで残って仕事を処理していたとします。

その仕事量を基準に、「昨年はできていたのに」と言われたら、どう考えればよいでしょうか。

まず、前任者が何時間かけ、どのような工夫や犠牲の上で成立していたかを確認する必要があります。

見えない時間外の準備や、休日の持ち帰り仕事に依存していたなら、同じ方法を引き継ぐべきではありません。

「前年度の実施内容は確認しました。ただ、現在の担当人数と勤務時間で継続できる形に見直したいです」と伝えます。

前任者を否定する必要はありません。過去の努力に敬意を払いながら、続けられる方法へ変えていくのです。

15.研究が示す主任の「見えない仕事」

高島裕美氏の2023年の研究は、教務主任への聞き取りを通して、組織上の調整役だけでなく、授業の補欠や担任への寄り添い、支援が必要な子どもへの対応など、柔軟なケアの役割が期待される実態を示しています。

これは少数の聞き取りを分析した研究であり、全ての学校に同じ状況があると断定するものではありません。

それでも、主任の仕事が業務分掌表に書かれた項目だけでは収まらないことを考える手がかりになります。

「調整」「気配り」「相談に乗る」といった仕事は、時間を測りにくく、成果も見えにくいものです。だからこそ、管理職は、主任の正式な担当業務だけでなく、実際に誰の相談をどれほど受けているかにも目を向けたいところです。

16.管理職は依頼する前に何をすべきか

ここからは、依頼する校長・教頭の立場で考えます。

まず、なぜその人へ頼みたいのかを具体的に説明します。「ベテランだから」「断らないから」では不十分です。

次に、前年度の主任の仕事を洗い出し、不要なものを減らします。授業数や担任配置、他の分掌との重複を確認し、代わりに誰がどの仕事を担うかを決めます。

さらに、判断の権限、相談先、繁忙期の支援、引継ぎ期間を示します。

依頼した後も、受けた先生が困っていないか確認します。役割を渡した時点で、管理職の責任が終わるわけではありません。

教職員の強みを生かすとは、力のある人に仕事を集めることではなく、力を発揮できる条件を整えることです。

17.強く勧めるときほど、本人の声を聴く

「学校が困っている」「他にできる人がいない」と繰り返されると、本人は断りにくくなります。

管理職は、本人が引き受けたいと思っているのか、何を心配しているのかを確認する必要があります。

「何があれば引き受けやすくなりますか」と尋ねるだけでなく、「今は難しいという判断も含め、事情を聞かせてください」と伝えます。

本人の意向を聴いたからといって、学校の人事や校務分掌が全て希望どおりになるわけではありません。それでも、異なる意見を言えることと、必要な判断の理由が説明されることは重要です。

正式な配置を決める際にも、健康への配慮、仕事の優先順位、相談体制について、管理職が責任を持って調整します。

18.文部科学省の働き方改革をどう生かすか

文部科学省は、学校における働き方改革について、教師が授業を磨き、効果的な教育活動を行える環境を整えることを目的に掲げています。

また、「学校と教師の業務の3分類」などを通して、業務の適正化と役割分担の見直しを進めています。

この考え方は、主任の仕事にも通じます。「主任の仕事だから」と、これまでの業務を全て残すのではなく、学校として必要な仕事か、誰が担うのが適切か、方法を簡素化できないかを考えます。

制度の細部や勤務上の取扱いは、国の資料だけでなく、所属する教育委員会の規程等も確認してください。

働き方改革は、仕事への熱意を弱める取組ではありません。大切な仕事に力を注ぎ続けるための条件整備です。

19.年度途中に「このままでは続かない」と感じたら

引き受けた後に、想定より仕事が増えることもあります。その場合、「自分で引き受けたのだから」と我慢を続けないでください。

一週間の仕事を記録し、授業準備、会議、保護者対応、調整業務など、どこに時間を使っているか整理します。

「今の担当を続けると、授業準備と生徒への対応に影響が出ています。主任業務のうち、行事調整と会議資料の作成について分担を見直したいです」と、具体的に相談します。

相談しても改善しない場合は、管理職との再協議や、所属する教育委員会の相談窓口等、適切な経路を確認します。

必要なのは、限界まで耐えた証拠ではなく、問題が深刻になる前に業務を組み替えることです。

20.次の主任を育てることも、学校の仕事

主任を引き受けた先生が優秀であればあるほど、翌年も同じ人へ依頼が集中することがあります。

しかし、長く続けるほど、学校はその人に依存してしまうかもしれません。

主任の経験を共有できるよう、年間の業務一覧、判断のポイント、資料の保存場所、引継ぎの時期を整理します。若手や中堅にも、適切な支援の下で一部の役割を経験してもらいます。

もちろん、「次の人を育てる」という仕事まで、現任の主任へ無条件に上乗せしてはいけません。育成の時間と体制を管理職が確保することが前提です。

一人の先生が頑張り続けなくても、学校の仕事が回る。その仕組みを残せれば、主任を引き受けた経験は学校全体の財産になります。

おわりに|引き受ける勇気と、条件を伝える勇気

主任を引き受けることには、学校の仕事を一段広い視点から見られるという意義があります。自分の経験を他の先生と共有し、児童生徒の学びを学校全体で支える機会にもなります。

一方、経験豊かな先生の責任感を当てにして、仕事を積み上げ続ける学校運営は長続きしません。

「ぜひ引き受けたい」と思うなら、その気持ちを大切にしてください。「この条件なら引き受けられる」と考えるなら、遠慮せずに相談してください。今は難しいなら、その事情を誠実に伝えることも必要です。

学校のために力を尽くすことと、自分を犠牲にし続けることは、同じではありません。

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