管理職になるか迷ったら、「向いているか」より「引き受けたい仕事」を考える

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「管理職試験を受けてみないか」と声をかけられたとき、多くの先生が最初に考えるのは、「自分は管理職に向いているのだろうか」ということです。

決断を急がされているように感じるかもしれません。しかし、「向いている・向いていない」だけで考えると、答えが出にくくなります。管理職に必要な力の多くは、経験や支援によって身につけていくものだからです。それより先に考えたいのは、自分はこれから、学校の中でどのような仕事と責任を引き受けたいのかという問いです。

1.「向いている人」の正解は一つではない

管理職というと、判断が速い、話がうまい、人を引っ張る力がある、といった人物像を思い浮かべるかもしれません。しかし、実際の学校には、前に立って方向を示す人だけでなく、話を丁寧に聴く人、情報を整理する人、困っている教職員に早く気づく人も必要です。

今の自分に自信がないことと、将来も務まらないことは同じではありません。一方で、周囲から評価されていることと、自分がその仕事を望んでいることも同じではありません。「推薦されたから受ける」「自信がないから断る」とすぐに結論を出さず、仕事の中身を具体的に知ることが先です。

自信のなさが一番の迷いなら、「私なんかが管理職で大丈夫ですか」と思っている先生へも参考にしてください。

2.やりたいことではなく、引き受けたい責任を考える

管理職になると、授業や学級で自分が直接できることは減ります。その代わり、教職員が働きやすい仕組みを整える、若手が一人で問題を抱えないようにする、事故や重大事案で組織として判断する、保護者や教育委員会と調整するといった仕事が増えます。

魅力的な仕事だけを選ぶことはできません。休日や勤務時間外の連絡、厳しい判断、人事や服務、対立する意見の調整なども含めて引き受ける立場です。だから、「学校を変えたい」という思いだけでなく、「その責任を負う日常を自分は引き受けたいか」を考える必要があります。

教頭の仕事を具体的に知るには、教頭の仕事が一つの入口になります。理想だけでなく、日々の実務を知ってから考えることが大切です。

3.今の役割で心が動く場面を振り返る

管理職を目指す理由は、立派な言葉でなくてかまいません。次のような場面を振り返ると、自分が引き受けたい仕事が見えてきます。

  • 若手が困っているとき、声をかけて一緒に整理したくなる
  • 個人の努力では解決できない仕組みの問題が気になる
  • 学年や分掌を越えて、学校全体をよくしたいと思う
  • 事故や苦情のとき、誰かを責めるより対応の筋道を考える
  • 授業をすることに、今後も一番の喜びを感じていたい

最後の答えも大切です。授業や子どもとの直接的な関わりを中心に生きたいなら、教諭として専門性を深める道があります。管理職にならないことは、成長を止めることではありません。どの役割なら自分の強みと価値観を生かせるかを考えることです。

4.肩書きではなく生活全体で判断する

管理職への道は、仕事だけの選択ではありません。健康、家族、介護、子育て、通勤、これからの人生設計にも影響します。今なら引き受けられる人もいれば、数年後なら考えられる人もいます。「受ける・受けない」だけでなく、「今なのか」という時間軸を持つことが必要です。

給与や役職だけでなく、失う可能性のある時間、得られる経験、支えてくれる人、避けたい働き方を書き出してみます。仕事だけで人生を埋め尽くさないという観点は、教師が仕事だけで人生を埋め尽くさないためにでも扱っています。

5.返事をする前に書き出したい三つのこと

  1. 引き受けたい仕事――若手支援、授業改善、学校運営、危機対応など、心が動くものを書きます。
  2. 引き受けるのが難しい条件――健康、家庭、勤務時間、異動など、現実的な制約を書きます。
  3. 判断前に知りたいこと――教頭と校長の違い、休日対応、給与、研修、試験時期など、情報不足を言葉にします。

この三つが見えると、「向いているか」という漠然とした不安が、「何を確認すれば決められるか」という具体的な問いに変わります。すぐに結論が出なくても、判断は前に進んでいます。

6.なるためではなく、決めるために読む

拙著『管理職(校長・教頭)への道を考え始めた先生へ』は、管理職になることを勧める本ではありません。管理職の魅力だけでなく、授業中心の生活からの変化、責任の重さ、休日対応、教職員や教育委員会との関係、管理職にならない選択も扱っています。

読み終えて「目指したい」と思っても、「今ではない」「教諭として歩みたい」と思ってもよいのです。迷いを消すためではなく、何に迷っているかを明確にし、自分で納得して決めるための材料として使っていただければと思います。

書籍の内容と、執筆に込めた考えを読む
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