所属している学年の先生に、
・もっている力を気持ちよく発揮してもらうこと
・私生活を含め、幸せな教師生活を送ってもらうこと
これは、学年主任の力量にかかっています。
「この学年主任についていこう」と皆が思ったのなら、生徒上課題の多い学校であっても、楽しくやっていけるでしょう。
逆に「この学年主任とは合わない。顔を見るのも嫌である」となる状況であれば、生徒指導面がうまくいったとしても、休みがちな教師が出てくるかもしれません。
本音を話せないかもしれません。
だから、今、学年主任の力量が問われるのです。
さて、後述しますが、学年主任像はこの数年で大きく変わっています。
「時代の流れをいかに読んで学年運営していくか」
これからの学年主任の先生は大切したいことです。
例えば、2020年3月の段階で、「Twitter等のSNSの先生アカウント」を見たことのない先生は、時代が読めなく、独りよがりの学年運営をする可能性があります。
また、年齢や圧力でしか合意形成を得られないような学年運営は、すぐに崩壊してしまいます。
「後輩とよく食事に行く」
強気の先生からこんな声をよく聞きます。
私からすれば、本当に大丈夫かなと思ってしまいます。
「後輩の先生から、学校以外の場所でどうしても相談したいと言われた」のなら話は分かります。
しかし、「昨日、後輩の○○さんが悩んでそうやったから、食事に誘ってやった」
こんなことが、往々にしてあります。
先輩の先生から、急に食事に誘われて「No」なんて言えない先生もいますよね。
いわゆる「年齢や圧力による合意」です。
私は、自分より年齢が上の先生と食事に行けば、気を使いまくって余計に疲れます。
特定の先生を除き、行きたくありません。
さて、これからの時代、後輩の先生の声にならない声に思いを馳せるアンテナや感覚が必要なのだと思います。
以下、私が大切だと思っていることをまとめたいと思います。
1. 「should型」から「want型」への変化
使い古された言葉かもしれませんが、
今求められている学年主任をする先生の特性が、should型から、want型へ変化しています。should型学年運営というのは、従来の学年主任像で、
「こうあるべきだ」
「これが正しいから、こうやっていこう」
というような自分の考えを前面に出した運営です。
「強いリーダーシップ」という言葉にも関係してきます。
このような先生の場合、やるべきことをいつも考えています。
そんなこともあり、ToDoリストに追われています。
かなり以前になりますが、初めて学年運営をしたときは、私もshould 型学年運営をしていました。
今から思えば、所属している先生方は大変だったんじゃないかと、猛省しています。
一方、want型学年経営というのは、
「私は◯◯を全員でやっていきたい。」
「 今、みんなができることを考えていこう」
そんな考えを共有していける先生です。
自分のwantが明確です。
また、メンバーも「自分のwant」を学年会議等で言いやすい状況です。
メンバー自身が考えることに自立した集団で、リーダーが不在であったとしても、誰もがその場の状況に応じてリーダーになり得えます。
今後5年間でさらに学年主任像は変わっていくでしょう。
働きやすい職場・職員室に変えていけるよう、バランス感覚をもちながら、自身も変わっていくつもりです。
2.「こうしたい」と意思表示する先生が少ないときに考えること
まだまだ、教員としての経験が浅く、自分で明確にやりたいことを意思表示できない先生が多い学年集団を考えます。
そんなときは、学年主任の先生が明確にゴールのイメージを伝える必要があります。
例えば、リーダーが文化祭の学年の演目で、学年主任がゴールのイメージをもっていなかったら、周りの教師はどのように動いたらよいのか分かりません。
「○○を基調にやっていく。フィナーレは○○で、保護者を巻き込む」といったような、具体的なイメージです(もっともっと具体的に)。
そして、それを実現するために、誰が、どの生徒を、どれだけ指導していくかも明確になっている状況です。
もちろん、状況が変化するかもしれません。
しかしそういう時でも、動じずにゴールに向かって的確な指示を出していくし、メンバーが極力自己判断できる場面を増やしていくのです。
他の教育活動についても同じことが言えます。
授業の受け方、行事に対する考え方、仲間に対する考え方、クラブに対する考え方、すべて、明確なイメージをもっています。
自分の答えをもっています。
3.プレイングマネジャーの視点とは
プレイングマネジャーについては、「プレイングマネジャーとして行動できる」で記事にしました。現場の最前線で生徒を見ながら、かつ他の先生にも思いを馳せる、そんなイメージです。
「学級経営やクラブ運営の腕は一流でも、いざ、学年主任をやらせてみると、全く駄目だった」
とならないよう、周到な準備が必要でしょう。
「自分の方法が絶対正しい。その方法に誘導していくためにどうすればいいか」、そんな考えでは周りの先生も心から学年主任の先生を信頼できないでしょう。
目の前の自分の見ている生徒がよければそれでいい、という視点で仕事をしてきた結果です。
学年主任という立場は、教師を大きく成長させます。
仮に校長先生に「名前だけだから。みんなでフォローしていくから」と言われてもその言葉通りに動いてはいけません。
所属学年の先生が背負っている家族を意識できるようになれば最高ですね。
4.中学校学年運営(学年経営)のヒント
(1)会議運営について
例えば、次のような問題について、自分の考えをもっておきましょう。
・開始時刻と終了時刻を徹底するにはどうするのか。
・提案や話し合い方のルールは決めているか。
・重苦しくならないようにするには、どうすればよいのか。
(2)それぞれの先生の働く時間について
残業についての自分の考えをもっておきましょう。
「もう、〇時を過ぎたから若い子は早く帰りや~」と言うだけで何の問題解決にもなりません。
(3)生徒対応方針について
学年生徒指導、学校生徒指導とやり方を確認しておきましょう。
(4)人間関係について
組織力の源となるのが、先生同士の人間関係です。
素晴らしい提案も、人間関係が悪ければ何の意味もありません。
(5)組織で仕事をすることについて
学年に所属する先生の一人一人の力を最大限引き出すことができるよう創意工夫します。
(6)リーダーとしての姿勢
信頼されるために気を付けることはたくさんあります。
(7)自身のメンタルについて
自分一人で何でも背負すぎてはいけません。
リーダーは、パスを受ける達人であると同時に、パスを出す達人でなければなりません。
(8)こんな学年主任は信頼を得ることができない
信頼を得ることができない学年主任・・・。
厳しめのタイトルを書きましたが、私への関連する相談メールも増えています。
最近特に多いのは、特定の教師と仲がいい学年主任です。
例えば、問題行動を起こす先生がいるとします。
その先生に対してどのように指導したらいいのかを、「仲のいい別の教師と別の部屋に行って密談する」構図です。
その学年主任は、良かれと思ってやっているのでしょうが、これはいけません。
当然ですが、学年主任は、学年のメンバーに公平に接するべきです。
それが学年主任です。
特定の教師と仲がいい状態であれば、「公平性」は担保されません。
その結果、学年所属の教師から、不安感・不信感・不満感がでてきます。
他の教師も「仲のいい教師と別の部屋に行って、不平不満を言い合う」状況が増えていきます。
「派閥」ができあがるのです。
完全な悪循環です。
いろいろなタイプの学年主任があっていいとは思います。
しかし、学年所属の教師に公平に接するために、「自立」していないといけません。
特定の教師と仲がいいのは、はっきり言いますが私はあり得ません。
どうしても他の先生に意見を求めたいのなら、「誰にもばれないように」「必要最小限の時間で」やるべきです。
5.さらなる成長を目指して
学年運営を考えることは、学校運営を考える入り口ともなります。
より鳥瞰的な視野での仕事を意識していきましょう。